新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~   作:たい焼き

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特技

 のび太がこの幻想郷に来てから一ヶ月程経った。

 

 のび太はにとりから貰った拳銃の手入れをしていた。

 

 H&K USPの9mmパラベラム仕様を改造したそれは、見た目は変わらないものの、常人が使っても当てやすいように反動も軽減され、使いやすさはのび太に合わせて調整されていた。

 

 それに加え、のび太の天性的な射撃センスも伴って百発百中どころか、千発撃っても外さない。まさに一発必中の性能を備えていた。

 

 弱点として、殺傷能力を持っていないことが挙げられるが、殺すことはのび太も望まないし、この平和な幻想郷に殺傷能力を持った銃は要らないだろうとのび太も考えていた。

 

 なお、弾丸は幻想郷に漂っている霊力や妖力といった力を弾丸に変換して撃ち出すため、実質弾は無限に撃てる。しかし、これは幻想郷が霊力や妖力が満ち溢れた世界だからだ。のび太が外の世界に戻ってしまったら、ただのガラクタになってしまう。

 

 のび太は手入れが終わった拳銃を簡易的に作ったホルスターにしまう。当然この幻想郷にナイロンや樹脂、ゴムなどあるわけないので、たまたま人里見つけた革製の物を作り直した。

 

 腰のホルスターに収められた拳銃を見てのび太は、あの時のことを思い出す。

 

 自分が生まれ育った街が、地獄に変わってしまったあの時のことを。

 

 (出来れば思い出したくもないんだけどね。トラウマを振り払うのは簡単じゃないな。)

 

 竹林の中に竹が生えてない広場のような場所がある。そこには一本だけ巨大な竹があり、その竹の中にある空洞がのび太のお気に入りだ。

 

 この場所は竹林内に住んでいる藤原妹紅と永遠亭の住人達しか知らないが、のび太がここにいることは誰も知らない。ただ一人を覗いて・・・

 

 「またここにいるんですか?」

 

 鈴仙だ。のび太がいつもどこに行くか気になったらしく、後を付けられたことがあった。それ以来この場所はのび太と鈴仙が二人きりになる場所になった。

 

 「そういえば、にとりの工房の時もそうでしたけど、ワイリーさんって銃を扱ったことがあるんですか?」

 

 魔理沙との弾幕ごっこの時に魔理沙のミニ八卦炉を撃ち抜いた時のことが気になったのか、のび太に聞いた。

 

 「本物の銃を使ったことは一回しかありませんが、射撃は結構得意でしたよ。」

 

 手入れの終わった拳銃を見て、のび太は答える。

 

 「そうなんですか?じゃあ、見せてもらってもいいですか?」

 

 鈴仙は嬉しそうに答えた。100m先から目標に寸分狂わず撃ち抜いたのび太の射撃の腕を見てみたかったからだ。

 

 「あんまり見せられるような物じゃないんですけどね。」

 

 のび太は恥ずかしそうに顔を赤らめながら立ち上がる。そして、鈴仙が用意した的代わりの丸い印を書いた竹から50mほど離れて立つ。

 

 しかし標的の前に立つと、のび太から先程までの優しそうな一面は一切消え、代わりに瞳に刃のごとき光が宿っているのに気付いた鈴仙は思わず息を呑んだ。

 

 のび太は意識を標的だけに向ける。竹林に風が吹き抜け、枝についてた葉が地面に着くと同時にのび太が拳銃をホルスターから抜く。

 

 ダァン!!

 

 乾いた銃声が竹林に響く。すると竹はつけた目印のちょうど真ん中綺麗に撃ち抜かれていた。

 

 「すごい・・・」

 

 拳銃の有効射程はおよそ30~50mである。しかし50m離れた標的に命中、ましては中心に当てることは限りなく難しい。

 

 「慣れればこんなことくらいならできると思いますよ。」

 

 のび太は弾痕を確認すると同時に標的を元の場所に立て直すと、再び50m先に立ち、引き金を引く。

 

 ダァン!!

 

 先程と何も変わらない銃声に鈴仙は疑問を感じながら、標的の竹を確認する。一見先程の穴以外に穴はあいていない。しかし、竹の中を確認をすると中には弾丸の代わりに使われた霊力の塊が竹の中に六発入っていた。

 

 つまり、のび太は銃声が一発しか聞こえない程の早撃ちでなおかつ、全く同じ場所に六発の弾を撃ち込んだのだ。この神業を完成させるには、目にも留まらぬ早業と、針の穴を通す程の正確性を両立させなければならない。

 

 「こんなものです。やってみますか?」

 

 「え!?これをですか?」

 

 「最初は確実に中心当てることだけを意識すればいいと思いますよ。」

 

 のび太の言葉に感化されたのか、その視線をのび太が撃っていた的へと向けた。

 

 人差し指を的に向け、弾幕を二発放つ。鈴仙もかなりの腕の持ち主なため、二発とも命中したが、中心に当たってはいなかった。

 

 「う・・・できない・・・」

 

 「始めからできるような人はいませんよ。少しずつできるようになればいいんですよ。」

 

 鈴仙は何度もやってみたが、二連続で真ん中に当てるどころか当てるだけで精一杯だった。

 

 「これ何かコツがあるんですか?」

 

 何度も挑戦していたが、どうしても成功しない鈴仙はのび太に助けを求める。

 

 「そうですね・・・僕はこういうときは絶対に失敗にしないってイメージしてますよ。」

 

 「イメージ・・・ですか?」

 

 予想していなかった答えが返ってきた鈴仙は呆然としている。

 

 「始めからできる人なんていないさ。鍛え抜き、知り尽くし、それを応用して使いこなす。それができる人が強いんだよ。」

 

 「そうですかね・・・。よし!!頑張りますよ。」

 

 鈴仙がやる気を出し、のび太が見せた神業に挑戦し続ける。

 

 (始めからこれだけ出来たなんて、口が裂けても言えないよな・・・)

 

 のび太は鈴仙の射撃訓練を見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 やがて日も落ちて辺りが暗くなった頃、のび太と鈴仙は永遠亭に帰ってきた。何をやっていたのか、二人共傷や泥まみれになっていた。それを見た永琳は思わず聞いた。

 

 「・・・一応聞くけど、何やってたの?」

 

 「えっと・・・鈴仙さんの射撃訓練と、僕が幻想郷の人達と対等に戦えるように弾幕ごっこの戦い方と対策の研究をしていたら、いつの間にか二人で撃ち合っていて・・・」

 

 「なにをどうやったら、二人で撃ち合うことになるのよ・・・」

 

 永琳は半ば呆れながら答えた。

 

 「まあいいわ。二人共こっちに来なさい。治療してあげるわ。」

 

 のび太は永琳のその笑顔の裏に何かがあると気がついたが、鈴仙が何も警戒せずに行ってしまったため、のび太も後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 医務室で鈴仙とのび太は治療を受けたが、特に何もなく治療も終わった。

 

 「ありがとうございます。先生。」

 

 「いいのよ。大したことじゃないから。」

 

 「それでは師匠。私達はこれで。今から食事の支度をしますので。」

 

 「待ちなさい。まだ最後の仕上げが終わってないわよ。」

 

 何もなかったことに違和感を感じたが、とにかく治療も終わったので、医務室を後にして食事の支度に向かおうとした二人を永琳が引き止める。

 

 「え?でも治療は終わって・・・」

 

 「いいから来なさい。」

 

 永琳は二人をもう一度座らせると、二人の手首に手錠をつける。

 

 「・・・あの、何ですかこれ?」

 

 「何って、手錠は手錠でしょ?」

 

 「そうじゃなくて・・・なんで手錠なんてかけるんですか!?これじゃあ、食事の準備もできないじゃない・・・」

 

 「あら?大丈夫よ。食事の準備なら姫様がやっているわ。」

 

 「とにかく、これを外してください。このままじゃ、日常生活に支障が・・・」

 

 「いいじゃない。これでしばらく休めるわよ。」

 

 冗談混じりで答える永琳にのび太は呆れていたが、のび太がため息一つを吐き出すと永琳の顔つきが真剣なものに変わる。

 

 「貴方達、二人とも働き過ぎよ。」

 

 鈴仙は魔理沙と戦う前は永琳の仕事の手伝いに加え、人里で薬の販売、輝夜の世話などを行っていた。魔理沙との一件の後は、それらの殆どをのび太が引き継いで行っていた。

 

 「しばらくはてゐが代わりにやるから、貴方達は休んでいなさい。」

 

 永琳は医務室から出ようとするが、出口の前で立ち止まった。

 

 「ちなみに、貴方達が働いているのを見つけたら、鎖でベットに縛り上げてでも休ませるから。つまらないことで体を壊さないでちょうだい。」

 

 永琳が出て行った医務室の中でのび太と鈴仙は呆然としていた。




いつの間にか投稿期間がどんどん短くなってきている気がする・・・

どうも作者です。未だにバイオ要素は出てきていませんが、必ず出す予定なので、しばらくお待ち下さい。

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