新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~ 作:たい焼き
射命丸文は、妖怪の山の天狗達が暮らす里に戻っていた。
ワイリーから預かった書状を、自らの長である天魔の元に届けるため。
幻想郷一と言われている速さで天魔がいる屋敷まで飛ぶ。屋敷の入り口まで来ると、天魔の警護の任についている天狗が文が来ることを知っているかのように扉の前から離れ、それと同時に扉が重々しい音を立てながら開いた。
文が中に入り、扉が閉まるとそこは薄暗くて、ただ広い空間が広がっていた。ろうそくが灯った燭台が規則正しく並んでいることが部屋に入った者を天魔の元へと導く。
「射命丸よ。何用だ。」
「は!!この度の騒動の原因となるワイリーからの書状を届けに参りました。」
考えられうる全ての外界へと通じる情報から完全に隔絶された密室で文と天魔の二人は密談を交わしていた。
天魔は文から書状を受け取ると、中身も開かずに手紙を破り捨てる。
「なっ!?」
天魔は細かく破った紙を捨て、文に命令した。
「射命丸よ。この者に伝えよ。『こんな物を送らずに直接ここまで来い』とな。私自らの目で見極めよう。」
「は!!」
文はそう言って、天魔の屋敷を後にした。
「後、ついでに何か上手い物を持ってくるように伝えよ。」
天狗としての意見ではなく、完全に私情である。
「かしこまりました。」
そう言って文は、天魔の屋敷を飛び出していった。
のび太は、文に天狗の長宛の手紙を渡したことで、とりあえず第一段階を突破したため、一息ついていた。
レミリアとのび太、それと鈴仙は、紅魔館にあるテラスで咲夜が淹れた紅茶を飲みながら、今後の事を話し合っていた。
「ひとまず、これで天狗の方達に攻撃されるということはないと思います。」
「ええ、ありがとう。流石に天狗から総攻撃を受けたら耐えれないからね。」
紅魔館にしても、天狗達の妖力と数、それら全てを活かす団結力は恐ろしい物だった。
「・・・そろそろ教えてくれませんか?何故幻想郷が僕を必要としているかを。」
紅茶の入ったカップをテーブルに置き、話題を変える。
「そうね。貴方が体験したことが起きるって言えばわかりやすいかしら。」
のび太はそう聞いて一瞬で理解する。
「まさか!?こうしてはいられない。」
「鈴仙さん。今すぐ永遠亭に戻って、僕の部屋の押入れの中にある資料を永琳さんの所に持って行ってください。」
「え!?どうしたんですかいきなり血相を変えて・・・」
「お願いします。対応が少しでも遅れたら・・・」
「遅れたらどうなるのですか?」
「幻想郷は間違いなく滅びます。」
のび太は鈴仙に事の重大さを伝える。
のび太のその言葉と同時に、紅魔館の門が乱暴に開かれる。門のそばには、門番の紅美鈴が倒れていた。
「ぐ・・・お嬢様、申し訳ありません。侵入者を倒すことが出来ませんでした。」
美鈴はそこで気を失う。侵入者は二人、小野塚小町と魂魄妖夢だ。流石に自分と同じくらいの力を持っている敵を二体相手にするのはきつかったようだ。
「あらあら、人気ね貴方。」
レミリアはこの状況も楽しんでいる。
「咲夜。美鈴を回収してきて。」
「鈴仙さんは裏から永遠亭に向かってください。」
「かしこまりました。」「・・・はい。」
咲夜と鈴仙は同時に動く。咲夜は美鈴を回収して大図書館へ、鈴仙は永遠亭へと向かった。
「さて、一体何の用かしら?いきなり殴りこんできて、間違えましたじゃ済まさないわよ。」
レミリアとのび太も紅魔館の中庭に降りてくる。レミリアは日傘を差しながら、のび太と共に侵入者の二人と相対する。
「貴方の隣にいるその男をこちらに引き渡しなさい。そうすれば私達もこれ以上そちらに関与しません。」
妖夢が持っている刀を抜き、切っ先をレミリアに向ける。
「引き渡すも何も、彼は私のお気に入りよ。そう簡単に渡すとでも?」
レミリアが膨大な量の魔力を込め、右手に紅い槍を作り出す。その槍は、月をも貫くようなイメージをここにいる者全てに見せた。
「レミリアさん。この戦い、僕に任せてくれませんか?」
のび太がレミリアの前に出る。右手ににとりが作ったハンドガンを持ち、既に戦闘態勢が整っている。
「あら?いいのかしら。なら、お手並み拝見させてもらうわ。」
レミリアは後ろの下がり、そばにあったベンチに腰を掛ける。
「貴方一人で二人を相手するってこと?舐められた物ね。小町さん、行きますよ。」
「あ、私はパスで。」
小町も後ろに下がり、地面に腰を下ろす。
「小町さん!?」
「いやぁ、流石に二対一で戦う気にはならんでしょ。だからアタイはここで見物させてもらうよ。」
小町は近くで見ている気らしく、仕掛けなければ仕掛けてくることはないだろう。
「まあいいです。私一人で十分です。」
妖夢がのび太の方へ向き直り、再び刀を構える。
「白玉楼庭師兼護衛役魂魄妖夢、推して参る!!」
妖夢は一振りで幽霊十匹分の殺傷力を持つとされる刀、楼観剣を片手に一瞬で間合いを詰め、手にした楼観剣を振るった。のび太は瞬きも身動き一つせず、ただその場に立っていた。
楼観剣がのび太の首を切り落とそうと迫るが、間一髪のところで刀がピタリとその場に止まる。妖夢が既でのところで止めたのだ。
「何故避けなかったのですか?」
のび太は動揺一つしていない。のび太は妖夢の問いに答えた。
「殺気がなかったからだ。今のは止めるとわかっていた。」
妖夢はのび太の首から楼観剣を自分の手元に戻し、一歩離れる。
「へぇ・・・肝が据わってるな、あいつ。」
その様子を見ていた小町が関心しながら様子を見ていた。一歩間違えたら首が胴体と生き別れになるからだ。
「なるほど・・・今度は本気で行きます。」
妖夢は今度は刀を鞘に納め、居合い斬りの構えでのび太に接近する。瞬発力では幻想郷最速と言われている文のスピードを超えるであろう。一瞬でのび太に接近し、先程と同じように、さらに速く抜刀された刀がのび太の首を跳ね飛ばそうとするが、それをのび太は前に屈むことで難なく回避する。
「この・・・!!」
妖夢は間髪入れずに何度ものび太に斬りかかるが、のび太に全てギリギリで回避される。
「これなら!!」
妖夢は二本目の刀、白楼剣も抜き、二刀流でのび太に斬りかかる。が、全てが的確で無駄のない動きで回避される。手数で攻撃し、壁に追い詰めることに成功するが、大きくジャンプされ、妖夢の頭上を超えて後ろに回り込まれる。
それに気がついた妖夢が振り向きながら、横に一閃するが、これもバックステップで回避される。
妖夢は攻撃を全て回避されているため、息が上がっているが、のび太は最小限の動きで回避しているため、全く息が上がっていない。
「なんで攻撃が一回も当たらない!?あんなただの人間に!!」
妖夢は悔しがりながら、ふた振りの刀をのび太に振りかぶる。しかし、今度はのび太が攻勢に出る。振りかぶった刀を持つ妖夢の手首が一箇所に重なる瞬間、妖夢の手首を掴む。
「!?」
これによって、妖夢は刀を振ることが不可能になる。妖夢がなんとか振りほどこうと暴れるが、のび太は冷静に妖夢を引き寄せ、その勢いを利用して妖夢の足を
「がはっ!!」
背中から受け身もとらずに落ちたため、多少呼吸困難に陥りながらも、妖夢は落とした刀を拾い、構え直す。
のび太は妖夢に対して、冷徹な視線を向ける。
「はぁぁぁぁぁ。」
妖夢はもう自棄になってただ刀をのび太に向けて振り続ける。だが、冷静さを失った妖夢の攻撃はもはやのび太には届かない。
「くそっ、何故、何故なんだ・・・」
「簡単なことだ。」
それまで一言も喋らなかったのび太の口が開く。
「弾幕ごっこならまだしも、実戦で人を斬ったことはないんだろう?」
「・・・それがどうした。」
肩で息をしている妖夢がのび太に聞く。
「人を斬ることに
「・・・れ・・・」
「斬りたくもない人を斬ることが、どれほどの迷いを生むかわかるか?それだけ君は優しいって証拠だ。」
「・・・黙れ・・・」
「今回君がここに来た理由も自分の意思じゃないんだろう?あそこにいる彼女も。」
「黙れと言っているのが聞こえないのか!!」
妖夢の怒声が響く。怒りに任せた一閃がのび太を斬り裂く。不意を突かれたのび太は回避が一瞬遅れる。バックステップで躱したのび太の服と薄皮が斬られ、血が滲み出る。
「そうだ、たまには自分のために、自分が正しいと思ったことを貫き通してみたらどうだ?」
「う、うるさい!!」
妖夢は再度納刀し、居合い斬りの構えでのび太に接近。最初の居合い斬りとは全く違う、迷いのない純粋な一撃だ。
「いい攻撃だが、これ以上時間を掛けるわけにはいかなんだ。悪いがこれで終わりにさせてもらうよ。」
のび太は妖夢の居合い斬りを見切って躱したのち、振り抜かれた腕を掴み、そこから捻りを加えて相手の体ごと旋回させて妖夢の体を投げる。
旋回しながらホルスターからハンドガンを取り出したのび太は威力を最小限にまで落とし、妖夢の腹部を撃ち抜く。
「みょん!?」
その一撃で妖夢は気絶し、地面に倒れる。
「終わったか。」
小町が立ち上がり、倒れている妖夢を回収すると、紅魔館を後にする。紅魔館から離れていく二人を見て、これ以上の戦闘は無意味と判断したのび太はホルスターのハンドガンを収める。
「見事だったわ。」
日傘をくるくると回しながら、レミリアがのび太の元に寄ってきた。
「どうかしら?うちに来てくれないかしら?給料は弾むわよ。」
「申し訳ありませんが、お断りします。まだ、永遠亭の方達に恩を返しきっていないので。」
「ふふ、ますます気に入ったわ。」
「・・・それはどうも・・・」
レミリアの誘いを断ったのび太は先程戦った妖夢の事を密かに心配していた。
永遠亭
全速力で走り続け、永遠亭に辿り着いた鈴仙は、ただいまとも言わずにワイリーの部屋に向かう。しばらく走り続け、ワイリーの部屋に辿り着いた頃にはもう肩で息をするほど呼吸が荒くなっていた。
「ハァ・・・ハァ・・・えっと、押入れの中と・・・」
鈴仙は少しだけ呼吸を整えると、押入れの中を探る。
「!これかな?」
鈴仙は押入れの中で幻想郷では使われていない紙に書かれた資料を発見した。書かれている文字は読めるが、文字を書いている物がわからなかった。少なくとも墨ではない。
鈴仙は永琳が持っている資料の中で見かけたマークを見つけた。
そしてその資料のタイトルにはこう書いてあった。
『T-ウイルスの性質、治療法及びB.O.W.について』
最近やたらと執筆の速度が早い気がする。
明日からこちらも学校が始まるので、流石に今までみたいな投稿ペースは保てないと思いますが、なんとか早いうちに投稿出来るように善処します。
それでは、また次回