新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~   作:たい焼き

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自分の知っている事の全てが真実とは限らない


真実

 あれから紫が協力してくれる人を集め終わるまでにそれ程時間がかからなかった。

 

 一つは、一度紫の元に幻想郷の殆どの有力者が集まったから。もう一つは、既にのび太が手を回していたからだ。のび太のことを信頼して集まったという人達が殆どだった。

 

 今回の会議には、永遠亭や紅魔館の住民はもちろん参加している。積極的に異変を解決しようとする下級妖怪や上級妖怪達がいた。それに加え、冥界の西行寺幽々子。旧地獄の管理者の古明地さとり、命蓮寺の住職の聖白蓮、霊廟の豊聡耳神子などの大物達も参加していた。

 

 「それでは、始めましょうか。」

 

 会議の主催者である八雲紫の声によって会議が始まる。

 

 「起きてすぐこれなんて、嫌になっちゃうな・・・」

 

 「文句言わないの。これも幻想郷のためよ。」

 

 目をこすって眠気を覚ましながらも、会議に参加する永遠亭の住民。彼女達は、今まで殆ど寝ずに幻想郷の住人全てのデイライトを作成していた。全身に疲労をまとわりつかせている鈴仙達を尻目に会議が始まる。

 

 「まずは現状から。あの亡者達に白狼天狗達が大きな打撃を受けてしまったようね。」

 

 会議の進行役を引き受けた霊夢が文が調べた現地の状況を記した資料を読み上げていく。

 

 「初動がもう少し早ければ、もっと被害を抑えられたかもしれないわね。」

 

 「半日遅ければ、手遅れでした。」

 

 紫の希望的予測を、のび太が絶望的予測で遮る。今まで起きたこともないタイプの異変に周りからああだこうだと意見が挙がり、既に静粛に会議が行える状態ではなかった。

 

 「そもそも、この亡者達はどのような存在なのでしょうか?」

 

 直接ゾンビを見たことがない白蓮や神子を始め、多くの妖怪達が霊夢に問う。

 

 「それは僕から説明します。」

 

 霊夢への問いをのび太が引き受ける。

 

 「まず彼らは、元は普通の生きていた人間です。その人間がある菌に感染して死亡した物があの亡者、外の世界の言葉で『ゾンビ』と呼ばれている存在です。」

 

 のび太は今回の異変で現れたゾンビについて説明する。

 

 「それは、風邪とかと同じなんですか?」

 

 「ゾンビにならない方法や治療法はあるのか?」

 

 あちらこちらで質問や疑問の声が上がる。

 

 「落ち着いてください。。」

 

 のび太が皆を落ち着かせる。

 

 「今回の異変の元凶であるT-ウイルスにこの幻想郷を汚染される訳にはいきません。そこで、皆さんの力を借りたいのです。」

 

 T-ウイルスという単語に敏感に反応した人物がいた。緑色の長髪に、霊夢によく似た白と青を基調にした巫女服。髪には蛇と蛙をあしらった2つの髪飾りを着けている。

 

 「T-ウイルスですって!?」

 

 机を叩いた音と相まって、大きな音を出す。のび太の話を黙々と聞いていた一同は、その大きな声の方に振り向く。

 

 「どうしたんだ早苗?」

 

 早苗と呼ばれた少女をよく知っている魔理沙や霊夢は、何かを知っている早苗を問い詰める。

 

 「久々に思い出しましたよ。あの事件は世界中で大きく報道されましたし・・・」

 

 一人で話を進める早苗に周りはついて行けなかった。

 

 「あの・・・もしかして、この方って・・・」

 

 「ああ、外の世界から幻想入りしてきた奴だぜ。」

 

 早苗も幻想郷の生まれではなく、生まれた後から幻想郷にやって来たのだという。

 

 「私はニュースや特番で知った程度なんですけど・・・」

 

 早苗はT-ウイルスについて、知っている事を話しだした。

 

 「製薬企業アンブレラ・・・そこで造られたT-ウイルスが漏れて、一つの都市が滅んだんです・・・」

 

 「分かりやすく言えば、「兵器」として造られた「病原体」です。」

 

 「造られた病原体・・・って事は今回の異変は・・・」

 

 「間違いない、だろうね・・・」

 

 「あの時は日本でも、毎日ニュースがやっていたからね~・・・嫌でも記憶に焼き付いちゃうよ。」

 

 早苗の両隣に座っていた二人の女性、八坂神奈子と洩矢諏訪子が早苗の言葉に続けて答える。

 

 「今回幻想郷で発生した異変の原因は早苗が話した『T-ウイルス』で間違いないよ。」

 

 「ちょっと!!さっきからT-ウイルスT-ウイルスって言ってるけど、それがあの亡者達と何の関係があるのよ?」

 

 さっきから話しに入り込めない霊夢が痺れを切らしたのか、強引に会話の中に割り込む。

 

 「病気と亡者の関係?そんなの、簡単で単純なつながりさ・・・」

 

 「だって、T-ウイルスは・・・感染した人間を亡者に変えてしまうから・・・」

 

 「なん・・・ですって・・・!?」

 

 霊夢のみならず、その場にいたほぼ全員がその言葉に驚愕する。

 

 「またとんでもない物が流れ着いたみたいですね・・・」

 

 何度も何度も幻想郷の異変に立ち会って来た幻想郷の住民は、重いため息を付く。

 

 「早苗、その滅んだ街ってどんなところなの?」

 

 「アメリカ、という国にあるラクーンシティという都市です。」

 

 「それだけじゃない、日本では政府が報道に規制がかかったからあまり知られていないけど、日本でもT-ウイルスによって滅びた街がある。」

 

 今まで静寂を保っていたのび太が口を開く。

 

 「!?そんな!!」

 

 「それが今回幻想入りした街、すすきヶ原です。」

 

 妖怪の山のそばに現れた街は、博麗神社からでもよく見えた。

 

 「とりあえずの今の課題は、あの街をどうにかして処理する事です。」

 

 「街ごと処理だって!?どうするんだよ。」

 

 「ウイルスは高温に晒せば死滅するわ。」

 

 「よし、なら私が街を焼いてくる。」

 

 「待つんだ妹紅!!流石にあの街の全てを焼くには一人じゃ火力が足りないぞ。」

 

 「うにゅ!!私も行くよ。」

 

 部屋のあちこちから意見が挙がり、収拾がつかなくなっていた。今にも妹紅や火を使える者が揃って街に向かってT-ウイルスを焼こうとしていた。

 

 「皆さん待ってください!!」

 

 のび太が席を立とうとしていた妹紅達を止める。

 

 「何だよ!!すぐにでも処理しないと感染者が増えるんじゃないか!!」

 

 「少なくとも結界が張られている今は大丈夫です。それに無計画に焼いたら、逆に幻想郷が滅びます。」

 

 「・・・どういうことなんだ?」

 

 のび太の説得で落ち着いた妹紅達がのび太にそのワケを聞く。

 

 「街にT-ウイルスを漏らしたアンブレラ社は、生物兵器を造っているため、証拠隠滅に異常な程力を入れていました。」

 

 「勿体振らずに教えてよ。」

 

 今すぐにでもT-ウイルスを消し去りたい妹紅は、焦りの表情を見せていた。

 

 「あの街には、核爆弾があります。」

 

 「核だって!?」

 

 今度は、機械に詳しいエンジニアの河城にとりが大声で叫んだ。

 

 「今度はお前か、にとり・・・」

 

 先程から大声しか聞いていないため、うんざりしている魔理沙は耳を抑えていた。

 

 「本当なのかワイリー!?あの街には核爆弾があるのか!?」

 

 にとりの何かを恐れているような表情に周りの人間は驚いている。

 

 「はい。」

 

 ワイリーも包み隠さずに答えた。

 

 「勝手に話を勧めないでよ!!大体、その核ってのは何なのよ?」

 

 のび太達の話に周りの人達がついて行けていない。

 

 「皆、お空の力は知ってるわよね?」

 

 「ええ、核爆弾って要するにお空の力に似た物でしょ?」

 

 「殆ど一緒だよ。だけどね、お空は核融合で発生した熱だけを利用してるからまだ安全なんだ。だけど、核爆弾は核融合や核分裂で発生した熱ともうひとつ、放射線を利用した兵器なんだ。」

 

 にとりは持ってきたジャンク品を使って作った簡易的なコンピュータを取り出し、もし核が爆発した時の被害を計算し始める。

 

 「その放射線って一体なんなんだ?危険な物なのか?」

 

 「生物にとっては猛毒な物って考えてくれればわかりやすいかな?で、肝心の被害なんだけど・・・」

 

 「直接被害を受けるのは街全体と妖怪の山の辺り、放射線で汚染されるのが幻想郷のほぼ全域です。」

 

 にとりが計算の結果を出す前にのび太が口を開く。

 

 「洒落になんないな・・・」

 

 「ですが、起爆装置は既に壊れているはずなので、殆ど誘爆する心配はないと思いますよ。」

 

 「・・・随分詳しいですね・・・」

 

 今まで話に参加せず、冷静に聞いていた聖や神子、そしてさとりがのび太達の話に介入してきた。

 

 「何か、変な所がありましたか?」

 

 のび太は素の顔のままさとり達に答えた。何も悟られないように。

 

 「ええ、かなりありますよ。確か貴方は今から100年以上未来の人間って言いましたよね?」

 

 「そうですが、何か?」

 

 「だとすると、矛盾する部分があるんですよね。例えば・・・」

 

 さとり達三人が同時に言った。

 

 『何故、100年も未来の人間の貴方が』

 

 『この時代に生まれた早苗達よりも』

 

 『この事件のことを知っている?』

 

 レミリア以外のその場にいた全ての者が凍り付く。

 

 「確かにそう言われてみればそうだな。」

 

 さとり達の言葉によって新たな疑問が部屋の中にいた者の中に生まれた。

 

 「・・・これだけの大惨事の元のデータです。100年後の未来にもしっかりと残っていたんですよ。」

 

 のび太は大して動揺もせず、いつもと変わっていなかった。冷静にさとり達への返答を用意する。

 

 「なら、これはどう説明するつもりかしら?」

 

 さとりは一枚の紙を手にとってのび太の見せる。

 

 「これは貴方が今さっき書いたあの街の地図ですよね?」

 

 それはのび太が書いたすすきヶ原の地図だった。学校などの主要な施設の見取り図から、裏道などの情報まで細かく書かれていた。

 

 「大体の地図ならともかく、ここまで細かい地図を書くには実際にあの街を自らの目で見たことがある人にしか出来ないわよ。」

 

 さとり達はのび太を追い詰めるために更に追求した。

 

 「そう言われてみると、確かに怪しい点は多いわね。」

 

 「え?師匠!?」

 

 さとり達の話を聞いていた永琳も話に参加する。

 

 「あのT-ウイルスの資料はこの時代の技術で作られていたわ。だけど100年以上も本が老朽化せずに残ってることはまずありえないわ。」

 

 永琳がさらに追求する。実のところ、鈴仙達ものび太の昔のことが気になっていた。

 

 「貴方にはこちらのことを全て話しましたよ。なら、貴方も自分のことを全て隠さず話しなさい!!」

 

 さとり達がのび太に怒鳴る。のび太は表情をまったく変えないまま、後ろを向き、無言になった。

 

 「貴方が話さないのなら、私達は貴方には一切協力しません。」

 

 「なら結構です。僕が一人で街の中に入ります。お手数をお掛けしまして、申し訳ありませんでした。」

 

 のび太がさとりの方を見ようともせず、後ろを向いたまま部屋を出ようとする。

 

 「はぁ・・・出来れば貴方の口から直接言って欲しかったのですが・・・」

 

 先程からさとりは自分の体の一部とも思えるような赤い目玉越しでのび太を見ていた。

 

 「いい加減、自分を偽るのはやめにしたらどうかしら?野比のび太くん?」

 

 「!?」

 

 何の前触れも無く、突然さとりの口から出た自分の本当の名を耳にして、のび太は完全に凍り付いた。

 

 「え?この人はワイリーさんですよ?」

 

 話について行けていない鈴仙やその他の一部の妖怪達が、さとりの言葉を遮る。

 

 「それは身元を隠すために使っていた名前。彼の本当の名前は野比のび太よ。」

 

 さとりは、人の心を読むことが出来る覚(さとり)妖怪だ。自身の能力を使い、のび太の心を読んだのだ。

 

 「それに100年後の未来の人間って言うのも嘘よ。彼の生まれはこの時代よ。」

 

 次々に明かされるのび太の事について、周りの妖怪、特にのび太を知っている者は驚きを隠せない。

 

 「・・・今の僕はワイリーです。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

 それ以上は何も言わずに、のび太は部屋から出て行った。




こんなシーンばっかり書いていて、『つまらないなぁ』って思っている方も多いかと思いますが、少しお待ちくださいね。

この小説ののび太がスペルカードみたいな必殺技を使ったどうなるんでしょうかね?

案があまり浮かばないな・・・

誰か案はないかなぁ・・・(/ω・\)チラッ
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