新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~   作:たい焼き

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お楽しみはこれからさ!!


決着

 銃を構え、相手に向けているその目は、まるで鷹が獲物を狩る時のように、標的だけを見ていた。

 

 「えっ・・・?ワイリー・・・さん。」

 

 無理もない。今まで一緒にいたが、これほどの神業をたった一度のチャンスでやってのけたのび太に対して、鈴仙は驚きを隠せなかった。

 

 「くそ・・・◦ずいぶんと躊躇いなく撃ってくれるじゃないか…!」

 

 魔理沙は手の痺れが治ったのか、落としたミニ八卦炉を拾い、のび太の方へ向き直る。

 

 「さっき僕が撃ってなかったら、君があのまま鈴仙さんを撃っていただろう?違うか?」

 

 「ご名答だぜ。」

 

 両者がバックステップで距離を取る。魔理沙はそのまま上へ飛び、弾幕を放つ。星型の弾幕がのび太に向けて放たれる。

 

 対してのび太は空を飛ぶことが出来ないため、地面を走り、スクラップの山を壁にしながら弾幕を避けていく。

 

 魔理沙の弾幕が床に着弾し、その度に床に傷がついたり、スクラップの山が崩れたりする。

 

 魔理沙の弾幕は鈴仙の物と比べ、弾速や威力が高い。その代わりに、曲がったり、止まったりなどの複雑な動きはしないシンプルな弾幕だ。

 

 だが、飛んでいないために前や後ろ、右、左そして斜め移動しか出来ないのび太にとっては十分脅威と言ってもいいだろう。

 

 幻想郷で弾幕ごっこを嗜む者の殆どは空を飛べるため、先程の動きに加え、上や下への動きが増える。それが、弾幕ごっこが面白い理由のひとつだ。どんな方向にも自由に移動できることによって、戦略の幅が無限に広がるからだ。

 

 対してのび太は、上と下への移動が出来ない。ということは、それだけのび太の移動に制約がかかるといことだ。

 

 のび太は爆風を利用しながら飛び、スクラップの影に隠れる。もちろんのび太だって、ただ逃げているわけではない。スクラップからスクラップへと移動していたのは使えそうな物を探していたからである。

 

 使えそうな物を拾い集めた結果、今使っている拳銃の弾である9mmパラベラム弾が1発とバールが一つ。バールは使えないだろう。まさか、仮にも少女をバールで殴るわけにはいかない。

 

 (さて、ここからどうする・・・)

 

 何しろ、遠距離からの攻撃で牽制しつつ攻撃も行う相手とは戦ったことがないからだ。同じく遠距離から攻めてくる相手なら知っているが、そいつは勝負を決める場合は必ず近寄ってくるからなんとかなった。

 

 魔理沙は自分の撃った弾幕が着弾した際に起きた煙でのび太を見失っている。

 

 チャンスだと思い、のび太は拾った一発しかない9mm弾を拳銃に装填する。

 

 物陰から魔理沙の様子を確認する。魔理沙の場所を確認すると後ろに誰かいる気がした。振り返り銃を構えると、そこにいたのは鈴仙だった。

 

 「ちょっと!!撃たないで下さい。私ですよ。」

 

 鈴仙は慌てて手を上げる。のび太も気がついて銃を下ろす。

 

 「鈴仙さん!!大丈夫でしたか?」

 

 鈴仙がのび太と合流する。

 

 「怪我とかは大丈夫ですか?」

 

 「大丈夫ですよ。だけど、ちょっと能力を使いすぎたかも・・・。」

 

 鈴仙も先程の弾幕ごっこで力をかなり使ったため、妖力を消費してしまっていた。

 

 「そうですか。さて、ここからどうしようか・・・。」

 

 のび太は今使える手持ちの物を確認していた。弾が一発だけ入った拳銃一丁とバール。鈴仙もいるが、妖力があまり残っていない鈴仙に無理をさせるわけにもいかない。

 

 「どうしましょうか、ワイリーさん?」

 

 「とりあえず、策は三つ思いつきました。ですが、二つは却下です。」

 

 それは、魔理沙を直接撃つ事と、バールで直接殴る事である。それが一番楽なのだが、のび太自信が望んでいないし、誰も望まないだろう。

 

 「では、もう一つとは・・・?」

 

 「これもあまりいい作戦ではありません。囮を使う作戦です。」

 

 どちらかが囮となって注意を引きつけ、その隙にもう片方が魔理沙を抑えるというものだ。だが、コレにも問題がある。

 

 まず、魔理沙に作戦を悟られないこと。作戦がバレれば対策がとられ、囮の価値がなくなる。それに、魔理沙が地上にいること。空中にいる場合、高い位置にいるため魔理沙の視野が広くなる。その分囮の存在に気が付かれやすいのだ。そして、のび太と鈴仙の身体能力が問題になる。鈴仙は先程の弾幕ごっこで体力を消耗しているため、囮として動くのは少しキツイだろう。かといってのび太が囮になるとスピードが足りず、魔理沙の注意をそらすことは厳しいだろう。

 

 (くそっ・・・彼女の視力や反射神経の前じゃ囮が役に立たないだろう。どうしても足りない。何か使えるものはないのか?)

 

 のび太はふと自分が持っているバールに視線を移した。

 

 「そうだ!!コレを使えば。」

 

 「何かいい作戦が浮かんだんですか?」

 

 「ええ、コレをこうしてですね・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔理沙は隠れた少年を探していた。空中からでは物陰に隠れられた場合探しにくいため、地上に降りる。さっき倒した鈴仙もいつの間にか姿が見えなくなっていた。おそらく少年と合流したのだろう。

 

 「いざとなったら、このガラクタをふっ飛ばせばいいんだろうけど、にとりになんと言われるやら・・・。」

 

 そんなことを呟いていると、目の前の山からかすかに物音が聞こえてきた。

 

 「そこだな。やっと見つけたぞ。」

 

 魔理沙は星形の弾幕を作り、いつでも撃てるようにした。魔理沙がスクラップの山に近づくと、人影が二つ同時に飛び出した。鈴仙とのび太だ。二人は全くといっていいほど同じ速度で走り、魔理沙を撹乱する。

 

 「くっ・・・。」

 

 魔理沙は何かあると思ったのか、二人の連携を阻止しようと箒に魔力を込めて、武器として使おうとする。

 

 「させるか!!」

 

 のび太は最後の9mm弾を箒の柄の部分に撃つ。箒に9mm弾が撃ち込まれ、箒の柄に(ひび)入り、魔理沙の手から箒が引き剥がされる。

 

 「くそ・・・やってくれるな!!」

 

 魔理沙はまず厄介な鈴仙から先に叩く事にした。いくら体力を消耗しているからといって、彼女の能力『波長を操る程度の能力』はいろんな事に応用が効く分放っておくと厄介になるからだ。

 

 「まずはお前だうどんげ!!」

 

 魔理沙はあらかじめ作っておいた弾幕を鈴仙に向けて放つ。だが、鈴仙もまた弾幕ごっこに慣れた猛者である。魔理沙のスペルを躱し、持っていた物、のび太が拾ったバールを取り出す。そしてそれを振りかぶる。

 

 「それで殴る気なのぜ!?」

 

 魔理沙はバールをガードするために防御用の壁を魔法で作り出す。

 

 鈴仙はそれを魔理沙に向けて・・・・・投げずに、なんと自分の右に投げ捨てる。

 

 「何っ!?」

 

 思ってもいない行動に出た鈴仙によって、魔理沙の視線は一瞬バールに移る。

 

 「目の良さが命取りよ!!」

 

 鈴仙はその隙に巨大な弾丸型の弾幕を作り出し、魔理沙に向けて構える。

 

 「あれはやばい。」

 

 魔理沙は張っていた防御用の魔法の出力を上げ、鈴仙の巨大な弾幕に備える。しかし、いつまで経ってもそれを撃つ気配はない。

 

 「・・・妙だな・・・まさか!?」

 

 魔理沙は後ろに振り返る。しかし一瞬遅かった。

 

 「動かないでください。」

 

 いつの間にかのび太が魔理沙の後ろに立っていた。既に拳銃を突き付けられている。

 

 「参った。降参だ。だから撃たないでくれよ。」

 

 魔理沙は諦めたのか、両手を上げて、降参の意思を表す。

 

 「いいんですか?この拳銃、もう弾入っていませんよ?」

 

 「いいんだよ。あんたらが初めてだぜ・・・私を完全に負けたって思わせたのは。」

 

 のび太は持っていた拳銃をもう用済みなのか、その辺のスクラップの山に投げ捨てる。実は撃っている時も調子が悪く、いつ壊れてもおかしくなかった。

 

 「どうせ、お前が撃たなくても、あいつが撃つんだろ?」

 

 魔理沙は親指を立て、鈴仙を指差す。

 

 「気がついていましたか。」

 

 「で、どうするんだ?私を引っ捕らえるのか?」

 

 「いえ、そんな荒っぽい事はしませんよ。」

 

 「いいぜ。設計図はさっきからあそこに隠れてるにとりってやつが持ってるぜ。後、盗んでるんじゃなくて、借りてるだけだからな。」

 

 魔理沙は屁理屈を言うが、ちゃんと返す意思がある分、本当なのかもしれない。

 

「じゃあ、私は帰るぜ。またな。」

 

 魔理沙は壊れかけた箒に乗って、にとりの工房から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 のび太は久しぶりに戦ったためか、だいぶ体力を使ってしまった。

 

 「ふぅ・・・なんとか勝てたな・・・」

 

 のび太の体力もだいぶ減ってしまったが、それ以上に鈴仙の体力の方が消耗してしまっていた。

 

 「やりましたね・・・ワイリーさん・・・」

 

 汗を流し、息も上がっていて、肩で呼吸している彼女は、もう殆ど体力が残っていないようだ。

 

 「大丈夫ですか?少し休んでいてください。」

 

 「でも・・・まだやることが残っているじゃないですか・・・」

 

 河童から盗まれた設計図を取り返すことがまだ残っている。

 

 「こっちは大丈夫です。ですので、少し寝ていたらどうですか?」

 

 「それなら・・・お言葉に甘えて、休ませて貰うわ・・・。」

 

 そう言ってから10秒も経たずに、鈴仙は寝息を立てて眠ってしまった。

 

 「お疲れ様です。鈴仙さん。」

 

 スクラップの山を背もたれにして鈴仙を寝かせたのび太は、にとりのいる工房の中心にある作業台に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作業台まで行くと、河童のにとり隠れていた。

 

 「ひゅい!?人間!?」

 

 幻想郷の河童は基本的に人間に対して友好的だ。にとりも例外ではないが、彼女は人見知りする性格のようだ。

 

 「そんなに怯えないでくださいよ。別に設計図を取り返そうとは思ってませんよ。ただ、取引しませんか?」

 

 「取引だって?」

 

 思いにもよらない返答に驚くにとり。

 

 「え?それで・・・取引の内容は?」

 

 「簡単ですよ。その設計図全部と、僕が欲しい物ひとつと拳銃一丁でいいですよ。」

 

 「それだけで・・・いいのかい?」

 

 「ええ、設計図自体は全部頭に入っているので。」

 

 「なら、君はどうして魔理沙を追ってここまで?」

 

 のび太は鈴仙が起きていないか確認してから小声で言った。

 

 「それはですね・・・河童の技術がどんなものか知りたかったのと、弾幕ごっこを間近で見たかったんですよ。」

 

 「それだけ・・・なのかい?」

 

 「ええ。あっ鈴仙さんには内緒ですよ。あんなに一生懸命になって頑張ってくれたのですから。」

 

 のび太とにとりは眠っている鈴仙に目を()る。余程疲れたのか、ぐっすりと寝ている。普段から永琳の手伝いを率先してやっているためか、自分でも気がつかない内に疲れが溜まっていたのだろう。今回は休むにはいい機会だ。

 

 「わかったよ。それで、何が欲しいんだい?」

 

 「そうですね・・・と言ってもまだ決めてないんですよね。」

 

 のび太は作業台の上にあるものを物色する。光学迷彩やロボットアームなど、当時の最新技術を改良した物が置かれていたが、のび太には興味がなかった。

 

 のび太はしばらく物色していたが、やがて一つの武器に目が止まる。

 

 「どうしてこれがここに!?」

 

 のび太は見覚えのある物を見つけた。それはかつて別れた仲間から託された大切な物だった。




vs魔理沙戦 終了です。

このところ3日に1話以上という予定を守れていていい感じなんじゃないでしょうかね?

次回の話のことなんですが・・・ぶっちゃけると、まだ決めていません。

ネタはいくつかあるんですがね・・・

まあ、書きたいこと書いていけば、3000から4000は行くので、そんなに時間はかからないと思います。

それではまた次回
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