まるゆはこんなこと言わない!
嗚呼そうさ。
だって色々あるんだもん。
海から生まれる深海の化身…
否、深海に沈んだ孤独な彼女達
そして、自らから人々を守る為に立ち上がった正義の存在
彼女らのいる世界は
『艦隊これくしょん』
と呼ばれていた。
その世界にはありとあらゆる物が流れ着く。
古いロボットとその操縦士
東の方の巫女達
一億人を殺したとある獣
偉大なる潜入の達人
何処から現れた天使
果てには犬や鳥
彼らは皆提督と呼ばれていた。
されど、この世界はそんな彼らがいた世界から少し離れた、小さな世界。
偉大なる彼らが来なかった世界。
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「あれ?なんだろう」
砂浜で黒い髪の女の子が何かを見つけた。
錆びているが、明らかにあれは鎧である。
バケツをひっくり返したような形の兜
太陽が書かれたふさふさしていそうな鎧
無骨な足甲
無骨な腕輪
明らかに時代が違う。
とっても不思議に思って少女が近づくと不意に鎧が動いた!
「わぁ!」
驚いた彼女は尻餅をついてしまった。
ゆっくりと鎧が立ち上がる。
そして腕を大きくちょうどYの字になるように伸びをした。
すると目の前に尻餅を突きながら唖然としている少女を見つけた。
「貴公、無事か?」
「はい、まるゆは大丈夫……でしょうか?」
少女は驚きながらも曖昧な回答とは反対の輝かしい笑顔で答えた。
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されど彼はやってきた。
彼は選ばれなかった。だけど、だからこそ彼が世界を救うのさね。
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「貴公…それはどっちなんだ?」
「多分大丈夫です」
「うーむ」
彼は物凄く悩んだ。本当に無事なのだろうか?見るからに軽装なまるゆと名乗った彼女は明らかに危なそうである。
「大丈夫です!」
それを感じ取ったのかまるゆははっきりと答えた。
「ふむ、それでここがどこか判るか?記憶に無い所のようだ。それに貴公は、軽装と見た。それであるならば危険だ。引き返さなければ」
「?」
首を傾げていて、よくわかっていないようなので彼は訂正した。
「ここはどこか判るか?」
「日本の南東の島ですけど…なにか?」
帰って来たのは予想だにしない答えだった。
兜に手を当てて物凄く悩む。
「日本とは何処だ?いいや、私はアノールロンドからイザリスへ…いや、イザリスに着いていた?あれ?私はいったい…」
最初は面白そうに見ていたまるゆも心配そうに見ている。
「ああ…貴公。すまない、取り乱してしまったようだ」
「記憶喪失…ですか?」
「?」
「記憶が無いようで、何か混乱していたようだったので…」
「ああ、きっとそのキオクソーシツだろう。すまない」
「大丈夫です。まるゆはげんきです!」
ありがとう。と、小声で呟くと彼は名乗った。
「私はソラール。今はそれだけしか判らないが貴公…助かった。私は自分を探す旅に出る」
そう言うと彼は海岸沿いを歩き始めた。
「ところで貴公、何故着いてくる?」
「向こうに行っても出られないよ」
「ふむ、ならば逆か」
「そっちもダメですよ」
「なぜ?」
「ここは島です。船もなかなか来無いです」
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「貴公……済まない。私に食事を…ここに泊まるようにしてくれて」
「大丈夫です。まるゆは寂しかったので」
「それで、鎮守府や艦娘や深海棲艦や日本について教えてくれ」
「日本語は読めるでしょうか?」
「日本語…?」
「…先ずは試せです!」
向かった先には椅子と机が置いてあるだけの部屋が有った。
「ここは…」
「ここで寝泊まりして下さい。布団は押し入れに入っています。記憶が戻るか、この国の事を完全に覚えるまで、ここで寝泊まりしていて下さい」
「分かった」
「そして、この隣が提督であるまるゆの寝室です!」
「提督?」
「艦を率いるリーダーです。ここは提督が居ないのでまるゆが替わりにやっているだけです」
「ふむ…」
「この隣が執務室です。普段は艦隊の指揮を執る場所なのですが…あまり使ってないです」
「ふむ」
「ですが、ここの本棚にいっぱい資料があるので、説明するものが出来るまで部屋で待機していて下さい」
「分かった」
「あっ!自己紹介をするのを忘れてました。まるゆはまるゆです。ここの鎮守府の…提督と艦隊両方を務めています」
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部屋は十二畳程で、そこそこ広い。
まるゆが用意してくれたTシャツとズボンを履く。
鏡を見ると目の前には金髪の男が立っている。さながら外国人観光客であるが本人は風貌についてあまり考えていない。
外を眺めると眼下に海と泊地、赤い煉瓦の建物がいくつか見える。
動きやすい服、見慣れない景色にとても心が躍っている。
「まるで夢の世界のようだ」
そう呟く。
何故か体が震えて来た。
ああ、まるで…そうだ。私は。
太陽を求めていた。
窓の外の海に何かが見えた。
黒い粒だ。
それがこちらへ向かって来ているようだ。
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「とりあえずこの資料はまとめられました」
山の様な資料を数枚の紙に絵付きで纏めてある。
「問題は日本語が読めるかですが…会話が出来れば大丈夫ですか?」
誰もいない広い空間に聞いてみる。
提督机の上にはまるゆと一人の男が写った写真が置いてある。
だって色々あるんだもん。