とでも、言うと思ったかい。
この程度。想定の範囲内だよ。
地球防衛軍5、トロコンチャレンジに戻れば良いのだよ。
「黒い鳥。何してる?」
「うん?現在地の確認」
「片方の腕を真上にして、もう片方の腕を真横にして、それを交互に入れ替えて、どうしてわかるんだ?」
「交信」
「は?」
「だから、交信」
「へ?」
ーーーーー
天龍が木箱を大事そうに笑みを浮かべながら抱えている。
「…天龍ちゃん。私の薙刀…その箱、なあに?」
後ろから急に肩を叩かれて悲鳴を上げる。
「キャッ…怖いな」
「…実の妹に、そんなセリフ」
「ああ、いや、そうじゃなくて」
「はい、もーらい、重!」
持てない重さでは無かったが、その重さに驚いて、そのまま腰からガクッとなり、箱は床に叩きつけられた。
「あっ。俺の46cm三連装砲」
箱の中身は46cm三連装砲だったようだ。
中を慌てて確認すると、砲身がポッキリ。
「あ、あらー」
額から冷や汗が滝の様に湧き出る。
「ええと、その」
困り顔の姉に、土下座する。
「ごめんなさい」
「へ?…ああ、良いよ。また、提督に頼めば」
「でも、それって」
「ん?ああ、頼めばドックに入れて元に戻せるよ。…あ、そうだ龍田。お前の薙刀、提督が借りてったよ。なんでも、今後の為に欲しいって」
「へ?」
ーーーーー
ソラールが工廠で、明石相手に駄弁っている。
パッチが連れて来た彼女は、武器のメンテナンスも上手く、良い話し相手になる。
「それで、ええとこの盾を」
「ああ、そうして…ダメだ。それだと壊れる」
「ソラールさん?何してるんですか?」
「ああ、明石さんに、予備の武器を頼んでてな」
まるゆが興味深そうに見つめている。
「今は叩き直しをしているんだ。これからは盾受けも考えなければならないから。頑丈に頼んだ」
「彼の武器は、よく丁寧に整備されていて、こちらも気合が入ります」
炉から、真っ白に熱せられた太い鋼材を取り出し、叩いて平くする。
艦娘ならではの高い打撃力で、あっという間に剣の形になっていく。
そして、それをソラールがじっくりと眺める。
「鍛えるのは形が出来てからなのか?」
「ええ。ある程度形が出来たので、次の工程です。妖精さんにも手伝って貰うんですよ」
「ふむ。成る程」
「貴方のその剣。相当な思い出が詰まっているので、それと出来るだけ近いものにします」
太陽の直剣をまだ刃も柄も付けられてない剣の隣に置いた。
「ここからは、少し危険なので着替えて来ます」
「ふむ。そうなのか」
「ただいま戻りました」
「ああ。よろしく」
明石は分厚い作業着にゴーグルを装着して戻ってきた。
「それで、あの、申し訳ないんですが」
「…作業中は見るなって事か」
「ええ、ちょっと特殊なので」
「分かった」
仕方なく工廠から出る。
後ろを振り向くと建物の中からオレンジ色の光が光っていたり、なんかよくわからない絶叫が聞こえてきたが、無粋に開けるわけにいかない。
「ソラールさん。大丈夫なんでしょうか?」
「一応信頼はしている。あんまり長い仲では無いが」
「それって信用して良いんですか?一応、明石さん達はみんなが認める技術屋ですけど」
「俺に話しかけてきて、剣の手入れを知っていた。それに勝る話はない」
「…そうですか」
「そうだ。俺に話しかけてきて、この太陽の直剣…ああ、渡してた。を貸して欲しいって。嬉しかったよ。興味深そうに見つめててな」
「嬉しそうですね」
「ああ。この時代の人間でも、評価してくれる人は居るんだと思ったよ。手入れを欠かさないで良かった」
ーーーーー
「…、やあ。こんにちは」
「な…北方棲姫⁈ここはさほど高緯度では無いはず」
空母棲姫が驚く。確かにここは北方海域では無い。
「虫追。信号を受け取った。君の生存を心から喜んでいる」
「虫追?…ああ、あ?ああ!そうか。久しぶり。よろしく頼む」
北方棲姫は手を伸ばし、六と握手した後に笑顔を見せる。
「そちらの友人方は、こっちに来るか?」
「え、ええと。どういう事?空母棲姫…」
「…北方棲姫?へ?どういう事?」
目の焦点が合わない。
「へあ⁈えっあ、あの。先ずは説明を」
「ようは、日本の鎮守府…じゃなくて、総司令官の元につけって話だ」
「…なんで鎮守府じゃ無いんでしょう?」
空母棲姫が質問する。
「…今、とうとう上が動き出してね」
「そうか、なら、そうだな。他の皆は…」
手に指を当てて六を制止する。
「気にするな。とは言えないが。気にするな」
硬い瞳で六を見る。
「ああ。分かった」
「上で何があるの?」
「脱艦娘?そんなのをやって何になる?」
「敵が減って、良い事じゃ無いのか?」
「違う。悪い事だ。我々も貴方達に協力する。阻止してくれ」
「残念だけど、来ちゃったみたいだな」
北方棲姫が来た道を振り返ると、3人のバケツ鎧に赤目の男と3人のスキンヘッドに赤目の男が整列しているのが見える。
「成る程、こりゃあ、胸糞悪い」
六は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
「よほど、俺たちが怖いと見た」
「ふむ、動いているのは初めて見るよ」
北方棲姫と六が構える。
「アルブム、いったん引きます。空母には近接は無理。護衛は出来る?」
「ええ、一応、記憶の中では剣を振った事もあります」
「なら、頼むわ」
「はい!」
ーーーーー
「提督〜私の薙刀どこにやったの?」
「明石の所で複製して貰ってる」
「そう。ならなんで無断で持っていったのかしら?」
「それよりも46cm三連装砲を壊したって話じゃ無いか」
スキンヘッドの男がニヤリと笑う。不気味な程に。
「ひっ」
「どうすべきか分かってるよな」
恐ろしい。龍田は泣きそうな目で土下座する。
「ごめんなさい。何でもしますから、天龍ちゃんだけは」
「何もしないよ。ていうかなんで土下座なんだ?普通に謝れば良いじゃない」
「へ?」
「プレゼントした46cm三連装砲を壊して、天龍に謝ったみたいだし。気にしないよ。これぐらいでも、ドックに突っ込めば治るし」
別に特段気にしていない様子で立ち上がる。
「それよりも、薙刀、明石の所へ取りに行こうぜ」
急にパッチの背筋が凍る。
「私の薙刀。私に言わずに持ち出したでしょう」
真後ろにいつの間にか龍田が立っている。この間を瞬時に動いたのだ。パッチは慄きながらも毅然として答える。
「いや、天龍に許可は貰ったぞ。壊すわけじゃ無いし。借りパクする訳でも無いから」
「あら〜。天龍ちゃんね。それよりも、私の薙刀。明石さんに預けてたの?なんで?」
ーーーーー
「さて、ふむ。おお」
「どうですか?馴染みますか?」
「ああ、少し危ないから2人共、離れていろ」
ソラールも2人から離れたところに行き、ブンブンと振る。
剣を引いて突く。後ろを振り向き、そのまま振る。ローリングした後、突く。
その後、剣を大きく構えて、剣を押し出す。
「ふん」
しかし上手く入らず、剣が下に落ちそうになる。
「おおっと」
「あれ?突きが上手く」
「あれ〜、重心が間違えちゃったかな」
「うん。大きな構えからの突きが出来なくても、普通の突きは問題なくできたし。重心は合っていたぞ」
「それじゃあなんで?」
「まぁ、分からない話でも無い。腕が劣っていたのかもな。最近は振るだけだったし」
「そうですか?」
「ああ。多分そうなんだろう」
「あっ、龍田さんと提督かアレ」
「うん?ああ。パッチか」
青い顔をして、歩いている男はきっと、天龍に大和砲をあげる代わりに刀を貸して貰った事を知られたのだろう。
何を代償にされるか分かったものでは無い。
後日、ケーキを旨そうに食べる龍田の姿があった。
目を輝かせた三人組と天龍などの仲間たち達に切り分けて振る舞っているその顔は笑顔である。
逆に提督の財布は雀の涙であった。
そのあと、ムシャクシャして、波止場で黄昏ていたソラールを蹴り落とした事も、海上に立っていたソラールに足を引っ張られて仕返しされ、そのまま海中にダイブする羽目になった事も内緒である。
オリ設定
脱艦娘主義
その名の通り、艦娘の運用を止める主義。これは、自由意志のある兵器である彼女達に運命を預ける不安。即ち、過去の戦いの記憶を持っている彼女達は自発的に深海堕ちをしないのか?もしくはその圧倒的な力を用いて人類の支配をしかねない。と言った不安により生まれた。だが、今までは深海棲艦という脅威には、艦娘しか効率的に対抗できなかった。そのため、一部の人々しか主張していながったが、確かに軍部にその思想は根付いており『project dark』の成功を確認した後、『project phantasma』の実行を開始した。