やっぱり、深海棲艦とダクソ3の人の膿とか、深海の時代とか、なんか凄いインスピレーションを受けるんだわ。
それにさ、ほら、キーワードにも出てくる月とか、そういうのがマッチする気がしなくも無い。
月光とか、跳ねる武器が好きなだけなんですけどね。
「しっかし、本当に何にも無いな」
「そうですね。流石は北海道と言ったところでしょうか。私、艦娘辞めたら、北海道に移住して、ジャガイモ農家になるんだ」
「はいはい。戦う前じゃ無いし、フラグにはならないと思うぜ。はぁ、新規の鎮守府への移動を前に、こんな出張とか有りかよ」
「総司令官は日時の都合上来れないですし、今、本土とこの北海道を行き来できるのは、鎮守府の護衛がついた船だけですからね」
「はぁ…こんな5年やそこらで今や古参の扱い。世知辛いな」
「そうは言っても、第二次本土防衛戦の最大の功績者ですしね。いよっ、英雄」
「そんな大層な渾名は付かないけどなぁ」
「いよっ、鬼の八。不屈の八」
「だから、その名は止めろ。ええ加減にしないと、このだだっ広い北海道の僻地に置いてくぞ」
「やってみろ〜。この超主力級の私を捨てて良いなら」
「ああ、分かった」
車を脇道に止める。
「えっ?何を」
助手席側のドアをあける。
「降りろ」
ドスの効いた声だ。
「ちょっと、待って、冗談だから」
「生憎だが、大和型二隻に長門、正規空母数隻、更に北上を中心としたヤバイ奴らが居るんだ。駆逐艦一隻の代わりは効く」
「え…」
衝撃のセリフ、意識は果てしなく高い場所へ。否、深い場所へ。
魂が戻ったときには既に自分は降ろされており、車が遠くに行っていた。
「ちょ、待って、置いて行かないで」
ーーーーー
「ええと、山田さんがここか」
目の前には如何にも農家な住宅がある。
生垣で囲われ、立派な門の向こうには、母屋と蔵が別々になっており、庭はとても広い。
「ええと、インターホンは」
門の辺りを探していると後ろから声がかかる。
優しそうなおばあちゃんだ。
「貴方、もしかして、噂の鎮守府の凄いお偉いさん?」
「いや、自分は偉いのかどうかは判らないんですが、鎮守府の者です」
「…貴方。もしかして、TVに出た事有ります?」
「ええ。広報関係で」
「もしかして、あの小さい子なんだっけ。ええとー」
「春雨ですか?」
「ああ、そうそう。その子。春雨ちゃん。…⁈ひぇー。まさか、こんな大物が!」
「ああ、そうか、そうだった」
全てを理解して、額に手を当てた。ずっと鎮守府勤めで失念していたが、自分は意外と有名人なのだ。
「サイン…色紙が無い。ええと、うんと」
「あの。タイゾウさんはどちらへ」
「ああ、こんな所で長話するのもなんだから、入っちゃって」
「あの、インターホンは?」
「宅配便でも無いのにそんなもの要らないわよ。ヅカヅカ入っちゃって問題ないわ」
そのまま流れるままに家に上がらせられてしまった。
サイン色紙の山が渡されるのも時間の問題だろう。少なくとも目の前のおばあちゃんが孫に自慢する姿がパッチの目には浮かんだ。
そう。どこへ行っても苦労する羽目になるのだ。
ーーーーー
「あ、あのー、ここら辺にある漁村ってあとどれぐらい掛かります?」
車が行ってしまった方向から歩いてきた女性に声をかける。
「漁村…だったら、この道を真っ直ぐ。それで着く。案内しようか?」
そういうと、元来た道を引き返し始めた。春雨はそれに着いていく事にした。
「ありがとうございます。…うん?何処かで会いました?」
「記憶には無いんですが、その。そんな気はするような」
「あれ?」
春雨はふと思い至る
「まさか…ね」
春雨の顔が青くなる。
白い肌に長い背丈と髪の毛、そして白いワンピースに麦わら帽子。覇気のない声。
前にテレビのホラー番組に出ていた幽霊そのものだ。
あの時はパッチを茶化すのに使っていたが、まさか現実になるとは。
まさか、自分の魂がまだ体に戻っていないのかと、後ろを振り向くも、体はここにあるため、またいた場所には何も無い。
ーーーーー
「それで、ええと、話というのはですね」
色紙の山に即興で作ったサインを書きながら、件の話を始めた。
「鎮守府設備の増設じゃないのか?」
目の前の老人が凄い不思議そうな顔で尋ねる。
「それだったら、航空写真や地図、その地域の歴史的背景を見て考案しますが…。今回は別ですよ。そもそも、ここら一帯はまだ疎開先に選ばれていないので、失礼ですが重要な防衛地点でも無いですし。それに加えてここは、近くの鎮守府からすぐに来れる距離に有ります」
「じゃあ、なんだっていうんだい」
「人探しです。こちらに流れ着いて居ないんですか?」
「な、流れ着くってなんだ?瓶詰めの手紙か?」
「金剛、島風、雪風の三隻です。一刻も早く見つけたい」
「し、知らんな」
「そうですか」
パッチはスッと目を細める。
「嘘、じゃないですよね。もしも嘘だとしたら、今の鎮守府の権限がどれくらいなのか。もちろん、知って居ますよね」
「ひぇ」
「ふむ。まぁ、いいでしょう。必要な情報はありますし」
机から立ち上がる。
「え、あ、お茶は」
「朝ご飯を食べすぎましてね。失礼ですが、大丈夫です」
そういうと、そのまま玄関から出て行き、タイゾウがショックの余りにボケーとしている間に、車のエンジンの音が聞こえてきた。
「お茶…あれ?八さんは?」
ヨメが持っているお盆に乗せられた湯呑みから、湯気が昇る。
ーーーーー
目の前の黒い髪の女性の後ろを疑心暗鬼になりながら歩いている。
「あの、その、あのー」
「どうしたの?」
「ヒィ」
流れる黒髪が、顔の前に行き、まさに、そう。完全に、それだ。悲鳴を上げながら、拳を構えて臨戦態勢になるのは流石と言えるだろう。
目の前の彼女は、それを見て逆に驚き尻餅をついた。
「ひ、殴らないで」
「あ、すみません。ごめんなさい。驚いちゃって。職業柄こうなっちゃうんです」
「職業柄?」
「ええ。テレビで私、見たことないですか?」
「テレビ?ええと。その格好…もしかして艦娘さん?」
「そうそう。白露型5番艦の春雨です。No.25です。まぁ、ほかの春雨の娘とは違うんですけど」
「…何か違うの?性能?」
「性格ですよ。どうもほかの娘と違って、自由人らしいんですよ。ほかの子は輸送任務とをせっせとこなす頑張り屋だけど、私は好き勝手にやって攻略。もしかして、自分は夕立じゃ無いかって偶に思うんですけど、やっぱり春雨なんですよね」
ーーーーー
日が西に傾き、空が色づいたころ。
遠くから車の音が聞こえてきた。ピタリと家の前で音が止むと、今度は庭の砂利道を歩く音が聞こえる。
パッチは玄関の前のインターホンを押した。
「ごめん下さい。山田さんはいらっしゃいますか」
「ああ、八さん」
少し寂しそうな顔で、タイゾウが出てきた。せっかく、やって来た若い子が居なくなるのは寂しいのだ。
「探してる人は見つかったのか?」
「いいえ。ですが、ある程度は大丈夫でしょうが、少しばかりね、用事ができてしまったんですよ」
「?」
「司令官、ここでいいですか?」
大きな箱が乗ったリヤカーを引っ張りながら、春雨がやって来た。
「ああ、春雨。一旦そこに置いておいて」
「もしも、あの子達が現れたなら。あれを渡しておいて下さい」
「そんなに大きい物…」
パッチがニッと笑う。
「わ、分かりました。どうかこの事は内密にお願いします」
「初めからそのつもりですよ」
「へ?」
「証拠作り。信用できる人物の云々が有れば、多少はいいんじゃないか?」
「…貴方は全く、テレビの通りですね。鬼ですよ」
「生憎、それで生き延びたんだ。それに、そうでなければ長くは続きませんよ」
「そうですか。面倒はしっかりと見ますよ」
「お願いしますね」
ーーーーー
「…司令官!」
車が目の前で止まった。
「はぁ、ほら、乗ってけ。まったく、反省はしただろうな」
「どうでしょうか?」
「…あの。この子の上司の方ですか?」
「うん?ああ、まぁそうです」
「どうでしょうかね。私を道端に落とすなんて非道な事するなんて」
「下手しても迷わない道で落としただろう。それに、直ぐに迎いに来てやっただろ」
「はいはい」
「ああ、うちの春雨の面倒を見てくれてありがとうございました」
「あ、どういたしまして」
「バイバイ」
そういうと、すぐに車は内陸の方へ走っていった。
しかし、すぐに近くの脇道でターンして戻ってきた。
「つかぬ事を聞きますが、お昼ご飯が食べれるところって近くにあります?」
「え?あ、ツネさんのお店なら多分何かあるんじゃないでしょうか?」
「案内してくれる?」
「あ、はい」
「春雨、後ろに移って」
「はいはい」
ーーーーー
「…あんた。はぁ、言わなかったのが仇になるとは」
「?」
「ええと、お客さん。すみませんがね」
断ろうとするものの、そう言いかけると、二人のお腹から、音が響く。
「あ、凄いお腹すいた」
「司令官は、面白い具合になりますね」
「お前もだろう」
「女の子に失礼です」
「女の子って、そう思えないな」
「失礼な」
「あの、料理は売ってないんですが、お昼ご飯。食べて行きませんか?」
少し神妙そうな顔をして、ツネは昼飯に誘った。
流石に小さい子に貧しい思いはさせたくないのだろう。
ーーーーー
「ねえねえ、パッチさんってなんの仕事してるの?」
「役所の人だ。ほら、2人とも制服を着てるだろ?」
「本当だ」
テーブルにならんだお皿を六人で囲う。
「え?あんた」
「ええ、公務員ですよ」
「ああ、そうかい。ありがとう」
「?どうしたんですか?急に」
「さあね。歳を取るとよくわからん」
「そういうものですか」
迎いに座った三人の少女達は嬉しそうに話している。
「まぁ、取りに行かなきゃな」
「?」
「ご馳走様。お代はコレぐらいで」
そう言うと、財布から二千円を取り出した。
「え?そんなに沢山要らないよ」
「なら、彼女たちに一皿多く食べさせてやってくれ」
オリ設定
大きな箱の中身
彼女たちはいつか、思い出すだろう。
そうしたら、出来ればこちら側に来て欲しい。
だが、それ相応の事があったのならば、それは余り良いとは言えない。
だからこそ、コレを置いて行こう。
せめてもの祝福のために。