ソラール提督がいく(改修中)   作:タータ/タンタル

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ソラールの出番がなさ過ぎる。
やっぱり、タイトルを変えた方が良いかな





Another Age 1

ソラールが流れ着くおよそ11年前。

沖縄本島沖南へ約500キロメートル

 

「くっ、大破しました!」

ボロボロになりながら、金剛に不知火が告げる。

「…半数が既に大破…。かなりdifficultネ。暁ちゃん」

「全艦撤退!」

暁が叫ぶ。

「あ…すみません。不知火の…落ち度です」

「仕方ないネ。生きるのが優先」

「はい」

進路を変える。

ふと、追撃して来ないのか後ろを振り向くと、不敵に笑みを浮かべる少女が面白そうに手を大きく振った。

まるで、遊んだ後にバイバイと言うように。

レ級との初めての遭遇である。

 

「で、敗因は人型の深海棲艦だと」

「ええ、新手の深海棲艦でした」

「…ふむ。魚雷が使えてかつ大型の主砲を持つか…他の特徴は?」

「艦載機を飛ばして」

「空母もか?…文献にそんな艦はあったかな?」

「…?分からないわ。でも、砲撃も雷撃も爆撃もやってのけるのよ。私たちの艦隊じゃ無理よ」

「艦載機には高射砲を積んで対策するしかないか…」

「でも、今はその装備は開発できていないわ」

「…他の提督に頼むしかないか」

「ええ、シーレーンを護れ無ければ、物資を断たれたら日本は崩壊するわ。そんなの、もう見たくない」

「わかってる。だからこそ、政府が頑張ってる。昔と同じ過ちを冒さないようにな」

「ええ。司令官、ありがとう」

 

ーーーーー

八ヶ月前

 

「…私が、提督…ですか?」

和室に置かれた丸いちゃぶ台に中年の男と、もうすでに十分老いている男が向かい合って茶をすすっている。

40代後半の男は提督という大層な名前を聞き、不思議そうに目の前の老人を見つめる。

「ああ、提督。敵性勢力と戦える兵器を見つけた。と言ったら、どう思うかね?」

「…船の様なものって事ですか?」

「ああ。暁、こっちにきてくれ」

生やした老人が家の奥に向かって呼んだ。

「…返事が来ないな。…そう言えば、あやつは朝ご飯を食べていたかな?食べてないか。…そうか、ねてるのか」

「?もしかして、兵器って…」

「いや、ロボット兵士だのサイボーグだのを作れるほどの技術は持ち合わせていないさ。それはお前が知ってるだろ?なんせ一番弟子だからな」

老人が立ち上がり、襖を開けて手招きする。

老年に入りかけた男が後を付いていく。

年季の入った日本家屋である。だがリフォームした時に無理やりつけたであろう、この家屋に似合わない洋風の扉が目に入る。

「見た方が早い」

そう言って、その木の扉を引いて開けた

 

目の前には布団に大の字になって寝ている女の子がいた。

なんとも豪快である。まるで、自分の娘や義息の様だと思いながら少し微笑ましく思う。

「…これが兵器ですか?」

「ああ!驚いた事に、浜で拾ってきてな」

「誘拐じゃないですか」

「いや、しっかりと警察に連絡した。女の子が流れ着いてきた!って」

「それで、なんで先生の家に」

「それが、どの役所にもデータがないって言われてな。仕方ないから戸籍を作って、養う事になったんだが」

「ただの女の子ではなかった…」

「ああ。自分は暁型駆逐艦一番艦の暁だと言うし、それならその船はいつ、何をしたんだ?って聞くとピッタリ史実をいうのさ」

「…この歳でそんなことを知っているのか?」

「私も役所の人も最近の若い子はこんな事までネットで調べてるのかと感心したんだがな、質問の所々で青い顔になって、最後の事を質問しようとしたら物凄い蒼ざめた顔をするんだ。まるで、本当に遭ったみたいに」

「…子供の感受性…って話じゃなさそうだな」

「ああ。私も子や孫を見てきたが、あそこまで感化されるのは見たことがない。それに、他の艦の話を聞くとそこまでピタリと言えないんだ」

「…暁型駆逐艦一番艦の熱狂的なファンというのはあり得ないよな。普通だったら艦が好きだとか」

「ああ、普通だったら他の艦についても調べてる筈…あ、忘れてたんだが、決定的なことがあってだな」

「?」

「インターネットを知らなかったんだ。おまけに、デジタルTVもデジタルカメラもケータイも。あの時代以降の物は全て」

「…なら、この子が暁型駆逐艦一番艦だと」

「ああ、にわかには信じ難いが…だが、幽霊の様なものが海に出るなら、有り得ない話では無いんじゃないか」

「…艦の幽霊…か」

「どうだろうか?」

「ふむ…先ずは、話を聞かないとな」

 

「君は、暁型駆逐艦一番艦の暁だって言うけど本当?」

「失礼ね。正真正銘の暁よ。でも、みーんな信じない。失礼ね」

「はは、それは失敬。だけど、今はその時代から1世紀ぐらい過ぎたんだよ」

「…知ってる。私の知らない事ばかり。私の事が本に載ってたり、この国が平和になってたり…今は、アイツらが来てるからそうじゃないけど」

「アイツら?」

「艦の亡霊。深い海に沈んだ船の怨念が具現化したやつ。魚みたいで口の中に砲がある」

「…あれ?先生、教えた?」

「いいや。教えてないが…。ふむ、どこで知った?」

「…襲われたの。気がつくと海の上に二本足で立ってて、何も分からない時に、被弾して、それで逃げてる途中で大破して、力尽きた所て、気がつくとあのお爺さんが私を警察や役所で色々振り回されて」

「ふむ、暁ちゃんは、どうしてソレが艦の亡霊だって分かったの?」

「どう見てもそうじゃない。暗くて深くて…それでいて、何処となく私みたいだった。とても冷たくて、悲しそうだった」

二人の男は顔を見合わせた。

 

ーーーーー

 

「ふむ、戦艦という事で上層部は纏まったか…。自我が薄くて言語を話さない。戦力としては鬼姫級だが、そうとは言えない…か」

「でも、あれは愉しむ目でした。とても怖かった」

「戦いを愉しむ目か…生まれながらにそうなっていたか、或いは…」

「…狂って堕ちた…ね」

 




オリ設定

十一年前の艦娘
大本営が設立されて間もなく、基本装備やその派生品しか出回っておらず、非常に苦戦していた。
後の要になる近代化改修も行われていない。

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