ソラール提督がいく(改修中)   作:タータ/タンタル

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きっと、大好きだったのだろう。


きっと


第四話

夢を見た。

自分の背丈の何倍も…何十倍も大きな城だ。

目の前には巨大な女性…グウィネヴィア。太陽の女王だ。

だが、私が目指すのは太陽である。彼女は太陽というにふさわしい力を持っている。

「太陽の女王様に恥を偲んで窺います。太陽とは何ですか。どうすれば太陽になれるんですか?」

彼女は言葉を詰まらせ口を閉じた。

 

そのままソラールはアノール・ロンドを出て行ってしまった。

きっと、ここに太陽は無いのだ。ただそれが胸に詰まる。

ここにこそあるはずの太陽。

 

太陽?たいようタイヨウたいようタイヨウたいようタイヨウ?

視界が暗転する。

 

ーーーーー

 

「うわぁ!」

「あわわ!びっくりした。まるゆは操縦してるんです。驚かせないでください」

「失敬、すまない。昔の話だ」

どこか欠けている。昔の夢である。

何かが足りない。もっと大切な何かだ。きっと、太陽に近い。

「ところで、陸まであとどれぐらいだ?」

「総司令官の別荘まであと20分です」

「ああ、そう言ってたな。そのソーシレーカンという将軍の別荘によるんだったな」

「どうしたんですか?また記憶が戻ったんですか?」

「…ああ。だが、コレでは無い。私の求める記憶はこれじゃ無い」

ソラールは涙をながし悔しそうにゴムボートの縁を叩く。

「まるゆは詳しい事は判りません。貴方は不思議で雲のようで、本当に何者なのかすら分かりません」

まるゆは上を向いて、話を続ける。拳を握り、ソラールにはまるで戦場に行く覚悟を決めたように見える。否、そうなのだろう。

「まるゆは…まるゆの正式名称は三式潜航輸送艇って名前です」

「サンシキセンコウユソウテイ?」

「はい!人や物資を運ぶ海に潜る船って意味です。とても大切な役割を担いました。とても小さな艦で、24トンのまでしか運べず、おまけにとても遅くて、中に乗った人達はみんな文句を言ってました」

「そうか。でもなぜそれを今」

「前に説明したみたいに、みんな艦だった頃の記憶を少なからず持っているんです。夢見たいなとても曖昧な。だけど、私の記憶はとても鮮明で、沢山のことが分かるんです」

「そうか……でも」

「まるゆは全部で38隻居ました。そのみんなの記憶があるんです。時化の時に苦労したこと、味方に敵と思われて攻撃されたこと、敵が沢山いる中を進んだ事。そして、物資や人を届けた事」

ちょうど船の向きが変わり、まるゆの上に太陽が来た。

「そして、みんなが戦っていた事。まるゆは戦闘が出来なかったけど、みんなの為に闘った。きっと、みんなの笑顔になったと、その為にまたこの身体で産まれたんだって思うんです。だから、きっと。ソラールさんも…」

言葉が途切れる。きっと出せる単語が無いのだろう。

それでも恐らく届いたはずである。

ソラールは頭を抱えて考え始めたのだから。

 

ーーーーー

 

ハードを被った3人組の一人が双眼鏡を覗いている。

「…、うーん。あれはまるゆだな。No.123だろう」

「見せろ」

「おい、俺の双眼鏡を取るなよ」

「お前のじゃなくて私のだ」

一人が『ゴツン』とゲンコツで二人の頭を殴る。

「二人で仲良く使え」

「痛み」

「痛っ」

そこへ、背後からもう一人現れる。

「遊んでないで、索敵はどうだった?」

先に覗いていた一人が答える。

「ゴムボートにまるゆNo.123と思われる個体と謎のおっさんが乗っていてこちらに向かっている」

「謎のおっさん?詳細に」

「金髪で三十代ぐらい、体格的に工場で働いていそうな感じだな」

「さて、お出迎えの準備をしなければな」

 

ーーーーー

 

「あれがそうです」

目の前の岬には、削って作ったであろう階段が見える。

そして岬の上に平屋の一軒家が見えた。

「うむ…貴公」

「ええ、これは来てますよ」

万が一の為に持っている最低限の装備を取り出す。

まるゆはコンバットナイフと拳銃。ソラールは警棒と太陽のタリスマンである。

ゴムボートから海上に降りる。

「!ソラールさん、雷撃です」

「了解した」

雷の槍が魚雷に当たり、爆発。

水しぶきが飛ぶ。

二人して、目を腕で守ってしまう。

「やあ」

目の前に現れたのはフードの女の子である。顔は隠れてうまく見えない。

そして無論、水上に立っている。

「奇妙な術を使うね。そこのおじさん」

「貴公よりは不気味では無い」

「ああ、そうかい」

光の加減で薄らと顔が見えた。

白い肌に青い瞳だ。薄らと笑っている。

「!ソラールさん、逃げて下さい援護し

水上を真横に飛んだ。否、飛ばされた。

「だ…誰?」

「もう一人いるのに気が付かないとは、まだまだ未熟というわけか…それともただのまるゆかな?」

蹴った片足を下ろした新手は紫色に目が光っている。

「貴公!」

「よそ見をしている隙はあるのかなぁ?」

魚雷が六機放たれる。

「…間に合わん」

回避し切れず一発に当たって吹っ飛び、そのまま海面に打ち付けられる。

「ぐぁ」

その起き上がれない隙に相手は一歩ずつ歩いて近づいて来る。

「電撃を放つまでに多少の隙が生まれる、だから回避する。回避出来ないから片足を前に出して構える」

ソラールはそのまま痛みを堪えて立ち上がる。

「ずいぶん戦闘に慣れているみたいね。でも、装備は万全じゃないみたい。まぁ、私達には関係ないけど」

 

ーーーーー

 

フードを取ると、白い髪に白い肌が現れる。

「レ…レ級」

資料に載っていたのを前に読んだ。カテゴリはイロハ級だが扱いは鬼級とほぼ同等かそれ以上。多彩かつ強力な攻撃をしてくる。

もし、本土河合に出現すれば、総司令官直属の特殊艦隊が迎撃に来るが、それでも町一つを失う覚悟が必要である。

それが今目の前にいる。

「お前はNo.123だな」

「な、そんな。なんで知ってるんです!」

「それはうちらが繋がりを持っているからな。其方の総司令官とね」

尻尾に付いている砲身をまるゆに向ける。

「良いことを教えてやろう。あの金髪の外国人が立ち向かってるのは軽巡棲鬼だ。ちなみにあと空母水鬼、北方棲姫、軽巡棲姫、戦艦水鬼がここにいる」

「え……」

「残念だけど、嘘じゃないんだ…君たちには悪いけど」

まるゆは慌ててゴムボートに向かう。

「ケータイを忘れたのかなぁ?お出かけには必須でしょ?」

『ドゴン』『ドゴン』

ゴムボートの周りに水柱が上がる。

「だけど、行かせないよ。最弱艦のまるゆくん」

レ級が宙を跳び、ゴムボートの前で着水する。

風に二人の短い髪がなびく。

 

ーーーーー

 

「くっ。まだまだぁ」

「ゼェゼェ」

先程から軽巡棲鬼が魚雷を放ち、ソラールがその隙に雷の槍を放つという我慢比べの様な状態が続いている。

「あっ、切れちゃった」

どうやら、軽巡棲鬼の魚雷が切れたようだ

だが、臆さない。

「さっきまで魚雷だけだったけど、こっちでやるか。魚雷よりも速いからちゃんと見切ってね」

砲身をソラールに向ける。その瞳は蘭々と輝き、向い風で外れたフードから長い髪の毛がたなびく。

ソラールはその見た目に驚きながらも、納得する。

「貴公。行くぞ」

ソラールは海を蹴った。

 

ーーーーー

 

「良い判断だ。海上防衛隊に連絡しようって話だろう。そんなのは困るなぁ」

「な!」

「言っただろ。総司令官と繋がりがあるって」

ニッと不敵な笑顔を見せる。

「まるゆちゃんは最弱だものね。まぁ、‘一発だけなら耐えられる’けど」

足が海の中に沈みかけている。

装備も貧弱。文字通り『轟沈』寸前だろう。

先程の蹴りで大破まで持っていかれていた。

だが、

「ふふ、まるゆは屈しないです。まるゆは陸の艦です!」

大地を蹴った。

選んだのは接近戦である。

 

艦娘が艦の記憶を持っていたとして、それが何の役に立つのだろうか。憎悪から来る力に果たして生半可な力は勝てるのだろうか?否、勝てない。思いの力は果てしなく重く積もる。

 

水面を駆け抜ける。

鈍足の彼女に向けられる魚雷たち。

その全てを躱す。

 

まるゆという船は最弱である。

そもそも、彼女‘達’は潜航輸送艇であり、戦闘する為の装備が一切載っていない為である。根本からして海軍の艦とは目的が大きく異なる。

 

であれば一隻のまるゆでいる事を辞めれば良い。

 

黒い瞳が僅かに赤く金色にチラつく。

赤い粒子が辺りに漂い、短い髪の毛が下からの風になびく。

大破して沈みかけた足が再び海上に立つ。

 

「再起動…あり得るのか」

レ級はニッと満面の笑みを浮かべる。

 

ーーーーー

 

水柱が二つ上がり、思わず其方の方を向いてしまった。

「がはっ」

「これで6ヒット。なかなかやるんじゃないかしら?でも、もう終わり。隙を見せなければ良かったのに」

砲身が目の前来る。

「これでは逃げようがないよね」

『ドン』

 

 

 

 

 

 

 




特殊艦隊
緊急時に超音速輸送機に乗って現場に駆けつける特殊部隊。
その正体は極秘。
総司令官直属の部隊である事、その強さ、その存在のみが知られている。

まるゆ
最弱の艦娘。No.123
文字通り最弱。戦闘における長所といえば一撃だけ耐えられる事だけ。
まだ改すらに達していない為、本当に弱い。
特徴があるとすれば他の同型含む艦娘よりも鮮明な戦時中の記憶があるだけ。
ただそれだけ。
それだけ。

ソラール
まるゆに拾われたおじさん。
記憶を無くしているが少しずつ思い出している。
思い出した記憶はどこか不完全であり、不完全である事はわかるのだが、何が不完全なのかはそもそもの記憶が無いので分からない。
太陽の戦士。アストラのソラール。
しかし彼の求める太陽は彼が目指した先にはなかったようだ。
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