仮面ライダーゼロワン外伝 「仮面ライダーバンバルカン」   作:不破コラ違反者

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 第二話です。ここから皆壊れていきます。


第二話

 青空の下、飛電或人(ひでんあると)は公園を歩いていた。昨日、朝から晩まで途切れることなく続いた大雨から一夜明け、日が全く見えないほど深く空を覆っていた雲はどこかへと消え去りどこまでも澄み切った心地よい光を全身に浴びる。

 

「うっー! 今日は昨日と違って気持ちがいいなぁー」

 

 ピタリ。或人はその場で立ち止まり舞台に立つ芸人の如く仰々しい動きを始めた。

 

「おはよう太陽! 今日も元気にサーン行こーう! はいっ! アルトじゃーないと!」

 

 ビシッと擬音の付きそうなほどキレのある動きで指を前へさす。

 しかし、彼のそんな様子には慣れっことばかりに公園にいる子供や老人、果ては動物すら反応を示さず、ただ無情にも風が一陣ひゅうっと吹いた。

 

「今のは太陽という意味を持つ『サン』と『さあ行こう』の『さあ』を掛けた、大変面白いギャグです」

「だからギャグを解説しないでぇー!」

 

 彼の後ろで付いて歩いていた秘書型アシスタントヒューマギアのイズがくすりとも笑うことなく冷静に彼のギャグに解説を加えた。彼女は『飛電インテリジェンス』の社長である或人の助手として仕事のサポートを職務としている。流石にギャグの解説まで仕事に含まれているわけではないがどういうわけかイズは或人が度々拾うする(本人曰く)爆笑ギャグをこうして説明するのを好んでいるようだった。

 そんなイズに或人もまたツッコミを入れる。これが二人のお決まりのやり取りであり、(本人にとってだが)自慢のギャグを笑ってもらえないことが悲しくはあるが、こうしてイズが反応してくれることは嬉しかった。

 

「しっかし、本当に晴れてよかったよなぁー。もう、ずっと雨のまんまかと思ってたし。しかもマギアまで現れるし」

「昨夜の戦い、お疲れさまでした。或人社長」

「イズこそお疲れ様。いつも支えてくれて」

「それが私の仕事ですので、お気になさらず」

 

 昨夜起こった暴走したヒューマギアとの戦いを思い出す。

 突然、現在はもう使われていない採石場に現れたトリロバイトマギアとの戦闘。数が数だったために諌変身するバルカン、唯阿の変身する『仮面ライダーバルキリー』と或人の変身する『仮面ライダーゼロワン』は共に戦ったのだった。

 

「それにしても少し変だったよなぁ。昨日の戦闘」

「変とは、どういうことでしょう?」

「いや、いつもだったら暴走したヒューマギア達の近くには、ほら……ゼツメライズキーでもっと強い姿に変身したマギアがいるじゃん? でも、昨日は格下ばかりで滅亡迅雷の姿もなかった」

「彼らも雨の中活動するのは嫌だったのではないでしょうか」

「そうなのかなぁー。なーんか、引っかかるんだよなぁー」

 

 或人は心のどこかに昨夜の一件が気がかりでありそれを今までずっと考えてきた。そこへ冷たい風が吹き、二人の間をすり抜けていく。

 軽くくしゃみをして或人は鼻を抑えた。

 

「ううっ……、寒ぅぅぅ」

「或人社長、大丈夫ですか」

 

 すぐさまイズは或人に駆け寄り肩を持った。瞬時に彼の身体をスキャンするも特に異常は発見されず問題ないことを伝える。

 

「見たところ、特に体調を崩されているということはありませんが。念のため、用心しておいたほうがよろしいかもしれません。昨夜はかなり濡れていましたので」

「あぁ。ありがとなイズ。社員に心配してもらえるなんて幸せものの社長だな」

 

 彼女に笑顔を向け感謝を示した。イズもまた彼に笑みを返した。

 

「でも不破さん大丈夫かなぁー。昨日も戦いの後、事後処理があるとかいって変身解いてどこかにいってたしなぁ」

「彼の心配なら無用だと思いますが。彼ほどの肉体を持っていれば多少の寒さなど問題はないはずです」

「でも心配だなぁ。 って、あれ不破さんじゃん!」

 

 或人の視界の端。木の陰にポツンと置かれたベンチに腰掛け険しい表情を浮かべて横にいる誰かと睨み合っているのが覗いた。

 おーい不破さん。と、或人は駆け寄るが彼の正面へと回り込んだ途端、信じられないといった表情を浮かべ、動きを止めた。

 

「或人社長、どうされま――」

 

 心配して寄ってきたイズの動きもまた止まった――二人の不破諌の目の目で。

 

「ふ、不破さんが二人ぃぃぃ!」

「「ああっ!? 邪魔をするな社長!」」

 

 声を上げる或人と何度も目をパチパチとさせるイズ。自身の目を疑うしかない光景を前に事態は更に混乱を極めていくのだった。

 

 

 

 

「どうなってんだよ一体……」

 

 或人は先ほどまで諌の掛けていたベンチに座り目の前で繰り広げられる光景を眺めていた。鮮やかで色とりどりの花々と噴水を見ながら感傷に浸ることのできる場所だが今日に限っては。

 

「お前が偽物だろうが!」

「お前のほうが偽物だろうが!」

「うるせぇ! 人工知能特別法違反でしょっ引くぞ!」

「こっちのセリフだぁ、それは!」

 

 二人の不破諌は依然、どちらが本物かの取っ組み合いを続けていた。黒いスーツの不破諌(こっちが本物。以後も表記はそのまま)と継接ぎスーツの不破諌(こっちが偽物。以後イサム表記)の醜い争いは終わる気配を見せないどころかその矛先を或人達に向かいつつあった。

 

「「おい社長! どっちが本物だ!?」」

「えっ!? えーっと……」

「俺だろ!?」

「いーや、俺だ!」

「「なんだとぉ!」」

 

 胸倉をつかみ合いメンチを切り合う二人。

 或人は横に座り黙って状況を見守っていたイズに助けを求めた。

 

「ねぇイズ、どっちの不破さんが本物なの?」

 

 或人の問いにイズは塔載されている人間とヒューマギアを識別するスキャンを行う。彼に聞かれる前にも何度か実行してはいるのだが、しかし――スキャン途中にノイズが走ってはいたが――結果はどちらも人間と表示されるだけだった。

 

「やはり、どちらも人間のようです。お役に立てず申し訳ございません」

「うそでしょ~!」

 イズの報告に愕然とする。ヒューマギアである彼女なら判別できると思っていたのだが不可能だったことに驚きを隠せなかった。

 再度、二人の不破諌を見比べても人間である或人には違いなど判らなかった。

 

「どうすりゃいいんだよぉー」

 

 どうすれば見分けられるのか。答えが分からずに困り果てているとイズが再び口を開いた。

 

「では、こういうのはいかがでしょう。二人の不破諌さんにクイズを出題。本人ならわかって当然のことが分からなければどちらが本物か偽物か、はっきりするはずです」

「そうか、その手があったか! さっすがイズ!」

 

 示された解決案に或人は飛び上がった。褒められたことにイズは嬉しそうに頬を緩めていたがそれに気づくことなく或人は不破諌んい駆け寄った。

 

 

「それじゃあ、第一問!」

 

 場所を移して遊具などの並ぶ開けた広場。

 クイズ番組の司会よろしく派手な衣装へと着替えた或人が舞台に見立てた小さな木箱の上に立つ。ちなみに二人の不破は芝生の上に敷かれたビニールシートの上に正座している。

 

「不破諌さんの年齢は――」

「「27!」」

 

「じゃ、じゃあ……誕生日は……」

「「2月8日! ふざけてるのか社長!」」

「えっ、えーっと……イズ?」

 

 本人以外が知っていてもおかしくはない、簡単すぎる問題に諌は声を荒らげた。これではいつまでたっても自身が本物であると照明が出来ない。

 イサムもまたイズに詰め寄り苛立ちを向けていた。

 

「おい、もっと俺が本物だと証明できる問題はないのか!」

「俺が本物だ!」

「なんだとぉぉぉ!」

「二人とも落ち着いて……イズ、もっと難しいものはないの?」

 

 再び衝突しかける二人を或人は止めに掛かる。

 

「残念ながらA.I.M.S.の隊長である不破諌さんのデータはかなり厳重に保管されているようでして……」

 

 申し訳なさそうに頭をさげるイズを前にして或人は何も言えなくなってしまう。

 一方、二人の不破は何の意味もなかったことに苛立ちを一層募らせ今にも爆発寸前だった。

 

「もっと他に方法が……、そうだ! 不破さんといえばプログライズキーをこじ開けられるあのパワー! 偽物ならできないことだからきっと見分けられるはず! というわけで不破さんたち、キーは……」

「「ない!」」

「うそーん!」

 

「「社長、プログライズキーを貸せ!」」

「えっ!? ダメだって! ちょっ、やめっ……何でこんな時だけ息ピッタリなんだよ!?」

 

 二人の息の合ったコンビネーションで身動きを封じられキーを懐から奪われかけてしまう。抵抗するも強固なキーをこじ開ける諌が二人も相手では敵うはずもなかった。

 窮地に陥った或人を他所にイズの目にあるものが止まった。

 

「ではお二方、あちらはいかがでしょう?」

「「ああぁぁぁん!?」」

「んっ?」

 

 或人もつられた視線の先。そこでは二人の子供が手製の人形と土俵を使ってトントン相撲で遊んでいた。

 

 

 

 

「絶対に負けねぇからな偽物野郎」

「こっちのセリフだ偽物!」

 

 急遽、作成された紙土俵を挟み諌とイサムは向かい合う。

 じゃんけんの結果、諌の駒は厚紙で出来たバルカンによく似た駒でイサムの駒はトリロバイトマギアによく似た駒だった。

 

「それでは、勝負はどちらかの駒が倒れるまで一回のみの勝負です」

「上等だ」

「あぁ、望むところだ」

 

 自身によく似た駒を人形劇のように扱いながらイズはルールを再度確認した。

 トントン相撲ではあるが己の存在を掛けた戦いだけあって広場から彼らを除く全ての者が逃げ出すほどの気迫が場を支配する。

 

「どっちの不破さんも頑張れー! はいっ、それじゃあ、スタァァァトォォォ!」

 

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」

 

 ゼロワンによく似た人形を動かし或人は開戦を告げる。凄まじい勢いで二人の不破は机をドンドンと叩き始めた。

 

「おおおぉぉぉぉ! うぉぉぉ! はぁぁぁぁぁぁ!」

 

 鬼のような表情で机を連打する諌。木製のテーブルが割れるのではないかと心配になるほどドシドシとゴリラが胸を叩くように激しい音を鳴らす。

 しかし、状況はイサムのほうが優勢であった。

 

「ハァァァァァァァァァァ! フンッ! ハァァァァァ!」

 

  諌に負けず劣らずのパワーとスピード。しかし、イサムは相手の出方を自分でも驚くほど冷静に観察しどう動けば勝てるかを分析して机を叩いていた。

 

「何ぃぃぃ!? 負けるかぁぁぁ!」

 

 諌も負けてはいられないとより力を込めて机を大きく揺らす。すると、少しずつだが諌の駒がイサムの駒を押し始めた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 行けぇぇぇぇ!」

「馬鹿な……、負けてたまるかぁぁぁぁ!」

 

 両者の力は拮抗し決着が中々つかない。土俵の上ではバルカンとマギアが取っ組み合いぶつかり合う。

 或人とイズが固唾をのんで見守る中――二人の駒は同時に倒れた。

 

「「はっ!?」」

「えぇぇぇぇぇぇ~! どっち? どっちが先に倒れた!?」

 

 転がった駒を見下ろして或人はイズにどっちが勝ったのかを問う。二人の不破が見守る中イズの答えが出た。

 

「――判定の結果。どちらも同時に倒れていました。よって、勝敗は両者引き分けとなります」

 

「馬鹿な! 俺のバルカンのほうが長く持ちこたえていたぞ!」

「何を言う偽物! 俺のマギアのほうがお前より耐えていたぞ!」

「なんだと偽物野郎!」

「やる気か!?」

 

 胸倉を掴みリアルファイトに突入しかける二人。もう止める気力もなくなってきた或人は何だか馬鹿らしくなったのか、この場から立ち去ろうとするが――

 

「こうなればトコトン勝負してやる!」

「望むところだ!おい、社長。付き合ってもらうからな!」

 

 イサムに呼び止められビクリその場で固まった。

 

「い、いや~。悪いね不破さん達、俺社長の業務が……」

「「そんなもの知るか!」」

 

 頭に血が上った不破相手に逃げられるわけもなく。それが二人ともなればまず不可能だった。

 




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