ガールズ&パンツァー 宮舞高校戦車整備科 作:キングコングマン
大洗女子学園とはその名の通り女子校である。しかも学園艦だ。という事は同年代の男子との接触は無いも同然であり、いきなり二人きりで会話をするとどうなるかというと、
「へぇー、綺麗に整備されてますね、この戦車は武部さんが整備したんですか?」
「へぃ!?あ、あの、えーっと、私が整備したってゆうか、その……」
こうなる訳である。普段彼氏が欲しいと100万回ほどのたまわっている武部だが、いざ話すとなるとあまりの緊張に会話に全くならなくなっていた。先程の失言は周りに彼女の仲間がいて勢いに任せてあのようなことが言えたが、今は同年代の男性と二人きり。意識をしまくっているのである。
武部は自分の男性経験の無さを嫌というほど痛感するのだった。
「えっと……そんな緊張しなくて良いですよ。別に襲ったりしませんから」
八潮とともに大洗の派遣研修に来ている一人、整備科2年生の泉が困ったように笑ってそう言う。
「……うぅー、分かってるんだけど……」
落ち着いた様子の泉に対し武部はしどろもどろに返事をする。
「……しかしかなり質の良い整備をしていますね。とても今年初めて戦車道を始めたとは思えません。あ、悪い意味じゃないですよ?」
泉がそう言って冗談っぽく軽く笑う。少しフランクになった彼に武部も幾らか緊張が緩和された。
「えっと、その、ウチの戦車整備はレオポンさんチームがやっているんです」
少し落ち着きを取り戻した武部がやっと会話を始める。
「……レオポンさんチーム?」
聴き慣れないファンシーな名前に泉は首を傾げる。
「うん、もともとは自動車部の人たちなんですけど私たちの戦車を全部見てくれているんです」
泉はそれを聞いて納得した顔になる。確かに自動車に精通していれば戦車もある程度は弄れる。それなら出来たばかりの大洗戦車道があれだけの戦車のスペックを引き出せるのにも納得がいくのだ。
「へぇー、成る程、自動車部ですか」
だが泉が驚いたのは次に武部が言った言葉だった。
「うん、4人だけなのに凄いよねー」
武部が発する言葉に泉は耳を疑う。
「え、4人ですか……?」
「え、うん4人だけど……あたし何か変な事言いました?」
泉は再びその言葉を聞いて唖然とした。
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「成る程、これならスペック以上の戦車の力を出せるのも納得出来ます。
「いえ、正直整備に関しては自動車部の方々に頭が上がりません」
泉と武部から離れた別の場所では八潮と西住が会話をしていた。西住の方は先程のテンパり具合から落ち着いたのか、冷静に八潮の質問に返答していた。武部とは逆である。
一方八潮は先程の西住の焦り具合から、打ち解けるまでかなり時間がかかるかと思っていたが、案外男性に慣れてるのを見て内心安堵していた。
「整備技術もしっかりしているのでこれなら僕らとしてもいい意見交換が出来そうです」
「はい。私達からも答えられる事があれば、何でも言ってくださいね」
そう言って西住は柔らかく微笑む。すると
「っ!!」
八潮はその可憐な笑顔に少し頬を赤らめて目を逸らす。彼とて男子校出身なのであまり女性に耐性がないのだ。
「……ありがとうございます」
言葉に詰まった八潮は短くそう言うしかなかった。
「……」
「……」
少しばかり気まずい沈黙が流れる。西住の方も同年代の男性と話した事があるかと言われれば殆ど経験がない。気まずい空気をなんとかするため何か話題があるものかと頭の中で模索していると、喋り始めたのは八潮の方だった。
「えっと、そろそろ戦車に触らせて貰いたいんだけど大丈夫ですか?」
「え!?あぁ、はい!だ、大丈夫ですよ!」
いきなり喋りかけられると思っていなかったのか西住がぎこちなく返事する。
側から見るとその光景はお互い妙に異性を意識してしまってぎこちなくなっている青い二人の微笑ましい姿だった。その後も互いに意見を交換し合いながら時間が過ぎる。
研修はまだ始まったばかりだが今後、彼らは大洗の戦車道に益々驚かされる事になるのだ。
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そんな時間あっという間に過ぎてもう時刻は夕刻。もうそろそろ学校を閉めなければいけない時間であり、大洗戦車道の面々も各自片付けを終えてぼちぼち帰り始めていた。その中で角谷と八潮はまだ格納庫の中に残っていた。
「いやー、お疲れさん。どーだった?ウチの戦車」
相変わらず気の抜けた声で角谷がそう言う。
「あ、角谷さん。……驚かされっぱなしですよ。何というか、どの高校よりも発想が突飛してるとゆうか……こんな戦車は初めてです」
そう答えた八潮は少し興奮気味になっていた。
彼らが大洗の戦車を見た時、まず驚いたのはその整備の質だった。大洗は戦車道が出来たばかりの学校であるため整備の『質』に関しては正直、全く期待していなかったのだが、いざ見てみると整備不良どころか全ての戦車が万全に近い状態であった。部品の破損は見当たらず、ギア、装甲、エンジン、履帯。あらゆる面で丁寧にケアされているのが見受けられたのだ。
何よりもこれを4人だけで全て整備を受け持っていると言うのが驚きだった。
『何ってゆうか、戦車って自動車より大きいじゃないっすか。その分整備は手先の細かい作業とかがやりやすくなるんすよね』
そう言った4人の内の1人の言葉を八潮は思い出す。自動車部でこれだけのスキルが身につくものなら今度自分も車の勉強をしてみようか。
そう思う八潮であった。
「おー、それは褒められてるのかな?何にせよみんな仲良くやれそうで良かったよ」
角谷がほっと一息、そう呟く。
「ええ、ここの人達は良い意味で考えが固くないと言うか、とにかく柔軟なんですよね」
そう、八潮が最も驚いたのは『戦車道』と言うものに対しての考え方だった。
戦車道とは武道である。それ即ち礼節、伝統を重んじる考えが強く、昔からの技術や戦法を重宝し、新しい技術は取り入れない。詰まるところ、保守的な考え方をする傾向が強いのだ。
だがこの大洗女子学園と言う高校は一味も二味も違う。今まで定石であった戦法を使わず機転を利かせた戦い方、自動車の知識を取り入れた大胆な戦車整備。何もかもが新鮮で八潮はこの大洗を選んだ事に間違いは無かったと早くも確信するのであった。
「ほぉー、そこまでベタ褒めだと照れちゃうなー」
全く照れる様子もなく角谷は気の抜けた声でそう言う。
「学ぶところはまだまだ多いです。改めてですが1ヶ月半、ここで色んなことを学んでいけると思うのでよろしくお願いします」
そう八潮が言うと深々と頭を下げる。
「そうかしこまらないで、もっと楽にいこーよ、まだまだ時間はあるんだからさー」
「そうは言いましても……」
八潮は苦笑いをしてそう返す。いつも通りの角谷に八潮も調子を崩される。彼はどこか既視感があるとさっきから感じていたのだが、なるほどこの角谷と言う女性、自身の隊長と似たところがあるのだ。
そんな相変わらず堅い八潮に対して角谷は少し思案する。彼女としても真面目なのは結構な事だが、それも過ぎれば彼にストレスを溜めてしまうと危惧していた。どうしたものかと少し目を瞑ると、何か閃いたように角谷が口を開く。そしてそれはこの年頃の男女なら避けては通れない話題だった。
「うーん、そうだねぇ、八潮ちゃんはもうウチの子たちと全員顔合わせは済んでるんでしょ?」
「え、はい。そうですけど……」
唐突に話題を変えられて八潮は面を喰らう。対して角谷はこれはしめたと思い不適に笑う。
「いやー、八潮ちゃんはどんな子がタイプなのかなーって」
「……はい?」
全く予想していなかった質問だったのか、八潮の反応が遅れて返ってくる。
「ウチの子たちはカワイイ子多いと思うんだけどなー。ねえねえ、どの子が良いのー?」
意地悪な笑顔で角谷が急かす。
「……知りませんよそんなの、まだ初日でまともに話したことのない人の方が多いんですから」
対して八潮の方は必死に表情を崩さないように無表情でそう答える。ここで取り乱しては相手の思う壺だ。それは古葉に散々弄られた経験から得た八潮の答えだった。
「えー、つまんないのー。1人くらいいるでしょー?そーだねー、武部ちゃんなんかはどう?」
「今朝のアレを見てますから……」
「うーん、じゃあ、かーしまなんかは?」
「根は良い人そうですね」
淡々と返す八潮に対して角谷は段々と楽しくなってきているようだ。やはり華の女子高生。こう言う話題を始めると止まらなくなるものなのだろう。八潮は適当にあしらうように返事をする。
だが次の角谷の言葉で八潮の無表情が崩れた。
「ふーん、じゃ本命、西住ちゃんは?」
「っ!!……良い人だと思いますよ」
それは一瞬だったが、少し表情が変わったのを角谷は見逃さない。
「……へぇー、八潮ちゃんは西住ちゃんがタイプかー、ほんわかカワイイ系って感じだね」
今日一の笑顔で角谷が詰め寄る。
「……そんな事一言も言ってないですけど」
八潮の方は無駄な足掻きだと薄々感じつつも否定的な言葉を口にする。やはりこの角谷という少女、古葉に似ている。
「あっはははー!!ホント八潮ちゃんって分かりやすいねー、古葉ちゃんのお気に入りなのもうなずけるよー」
完全に手玉に取られている。こうなってしまっては全て角谷のペースで話が進むのだ。
「もう、勘弁してくれ……」
八潮は参ったと言わんばかりにそう呟く。
「ねぇねぇ、何で西住ちゃんなの?やっぱウチの隊長だから?」
一方角谷の方は話を終わらせるつもりなど毛頭なく、八潮は下校時間ギリギリまで質問の嵐を喰らう事になったのだ。
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「あー!!緊張したー!!」
ところ変わって何処かの通学路、そこには5人の少女の姿がありその中の1人、武部が大きく背伸びをして吐き出すようにそう言った。
「ククっ、傑作だったなアレは、最初の方なんか会話になってなかったじゃないか」
冷泉が武部の惨状を思い出したのか吹き出してそう言う。
「うっ……し、しょーがないじゃない!……同い年の男の子と喋るのなんてかなり久しぶりだったんだから……」
昼間の事を武部も思い出したのか苦い顔で呟く。
「で、でも皆さん良い人そうで良かったでありますな!」
秋山がそんな武部を慰めるようにして話題を変える。
「ええ、皆さん戦車に対して誠実な方々でしたから。私が分からないことも丁寧に教えて頂きました」
柔らかい笑顔で五十鈴も同調する。
「それに班長さん、すごい知識量でありましたな!!男性の方であれだけ戦車を語れる方を見たのはは初めてであります!!」
秋山は興奮したように昼間、ずっと八潮と戦車談義をしていた事を思い出す。それに冷泉が付け加える様に
「……確かに班長は凄かったな、だが副班長の泉の方も良かったぞ。同じ操縦士として彼から学ぶべきところは沢山あった。なぁ、沙織」
「うぇ!?わ、私!?えっと……泉君は、その……」
泉の名前を出した途端、武部は急にしどろもどろになる。顔も真っ赤になっていた。
「……沙織、まさかとは思うが、早すぎないか?……」
何かを察した冷泉が冷ややかな目線を武部に浴びせる。すると、今までずっと静かだった西住が止めの一撃を喰らわす。
「沙織さん、泉さんのことが好きなんですか?」
茹で上がったタコがそこには居た。オーバーヒート寸前の武部はまるでその溜まった熱を排熱するかの様に捲し立てる。
「な!?、好きってゆうか...確かに良い人だとは思うけど、とゆうか何で私が泉君の事を好きって話になってるの!?ま、まだ出会って初日なんだしそういうのはこう、もっと、そう!!お互いをよく知ってからお付き合いとかそういう事なんじゃないかな!!!」
まるで自分が将来泉と付き合うとでも言わんばかりの発言に冷泉はドン引きする
「……いくら何でもチョロ過ぎだ。将来ダメな男に引っかかるぞ……」
「うーっ!しょーがないじゃない!!普通あんだけ優しくされたら惚れるでしょー!?」
もはや泉が好きな事を隠そうともせず開き直る武部。挙動不審な自分に優しく丁寧に接してくれた泉に対し武部が陥落するまで、そう時間は掛からなかった。それにしても早過ぎるが。
「ま、まあ、まだ研修は始まったばかりですしいっぱいチャンスはあると思います……よ?」
暴走しかける武部を必死に西住が宥めようとするも、
「そーよ!1ヶ月半!!こんだけ期間があるんだから絶対私のものにするんだから!!!」
宥めるどころか火に油を注ぐ結果になってしまった。
「ってゆーか、そう言うみぽりんはどーなの!?班長さんと何やらいい感じだったじゃない!!」
「えぇー!?」
突如飛び掛かった火の粉に西住は対応できず素っ頓狂な声を出す。
「確か、八潮さん、でしたっけ?あの方も好青年で印象は良かったですねえ」
五十鈴がマイペースに同意する。
「そーそー!!ちょっと顔が幼いのが私の好みじゃないけど結構カッコ良かったじゃん!!みぽりんああゆうのがタイプなの?」
「うぅー……わ、分かんないよぉ……」
西住もしどろもどろになりながらそう答える。ただ武部と違うのは彼女の場合、本当に分からなくて困惑しているのだ。まともな恋バナすらしたことのない彼女にとっていきなり男性のタイプを晒け出せと言うのも酷な話だった。彼女自身の性格もあるのだろうが。
「もー、そんなんじゃダメだよみぽりん!聖グロの隊長さんも言ってたでしょ?『イギリス人は恋と戦争じゃ手段を選ばない』って!!」
「お前が言うと説得力が無いな」
「うるさい麻子!!ともかく、今の時代女子もグイグイ行かないとダメなの!!みぽりんもボーッとしてると班長さん取られちゃうよ!?」
「いや、まだ好きって決まったわけじゃ……」
武部のテンションについていけず西住は苦笑いすると、
「でも自分は西住殿と班長殿、お似合いだと思います!!」
意外なところから武部の援護射撃が加わった。秋山は目を輝かせながら武部に同調する。
「私もみほさんと八潮さん、相性いいと思いますよ?」
「は、華さんまでー……」
五十鈴からも援護射撃を喰らい、話の収集がつかなくなってくる。
流石は華の女子高生。こう言う話題になれば何時間でも盛り上がれるのだ。
お待たせしました。リアルが少し忙しかったのもありますがこれから何故こんなに間が開いたか言い訳タイムに入りますので興味のない方は読まなくてもオッケーです。
時は遡って5月の中旬、私は友人と他愛もない会話をしておりました。そしてどの様にしてそう言う話題になったのかは思い出せないのですが『ポケットモンスター、縮めてポケモン』の話題になり、友人と世代が同じ事も相まって大層盛り上がりました。すると私の中である感情が芽生えたのです。この感情は今後の執筆活動に影響が出ると自覚しており、大変危険な思想だったのですが、気がつけば私の手元にはニンテンドーDSiとポケットモンスターダイヤモンドを握りしめていました。
それから時が経ち、6月に入った頃、その間何があったのか自分でもうまく思い出せないのですが、無意識に握っていたニンテンドーDSiに視線を落としてみるとトレーナーズカードの『プレイ時間』と言う項目に[63:54]との文字が記してありました。そこで私は全てを思い出します。
何と業の深い事をしてしまったのか。私は激しく自分を責めました。
およそ64時間の間、私はポケットモンスターダイヤモンドに囚われ続けていたのです。恐らくその時間を執筆に充てれば10話は書けていたでしょう。
ただこの時間は無駄ではなくこの64時間と言う業の積み重ねによってシンオウ図鑑を完成させると言う快挙を成し遂げました。やったぜ。
さて、ここまで話して私ことキングコングマンに弁明の余地が無いことは明らかですが、執筆が遅れた責任を全て私に押し付けるのは違うのでは無いかと、異議を唱えます。
と言うのも『ポケットモンスター』シリーズには強い中毒性があることは科学的にも証明されております。この中毒性は強く、一説には廃人化して普段の生活を送られなくなった方もおられると聞いたことがあります。そんな悪魔的なゲームを生み出してしまった『ゲームフリーク』と言う諸悪の根源にも私は責任の一端があるのでは無いかと激しく抗議する次第で御座います。
今回の件、私の心の弱さが露呈してしまったのは言うまでもありません。今後この反省を活かし、安定した投稿を出来るよう心掛けていく次第であります。以上、言い訳終わり。
追記:スイッチとポケモン剣盾って合わせて今いくらぐらいなんですかね?