ガールズ&パンツァー 宮舞高校戦車整備科   作:キングコングマン

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アンツィオ編
アンツィオ編1 : お調子者×お調子者=


 舞鶴の港からそれぞれのフェリーが出発してから数時間後、前山の乗るフェリーはすでにアンツィオの学園艦に着いていた。街に入るなり、前山はアンツィオの独特な雰囲気に戸惑っていた。

 何故なら街に出るや否や周りは屋台、屋台、屋台……アンツィオ高校の校門に至るまで数え切れないほどの露店が並んでいたのだ。そんな中を前山達が歩くと、様々な露店からひっきりなしに声が掛かる。

 

 「おにーさん!ウチの名物のペペロンチーノはいかが?」

 

 「こっちのラザニアもうまいよ!」

 

 「ねえねえ!こっちも見てってよ!」

 

 数多の誘惑に前山はヨロヨロとあっちこっちに行きそうになる。その中でも一際彼の興味を引く看板が建っていた。

 

 『鉄板ナポリタン 250円』

 

 前山がその看板の前に立ち止まると、屋台でナポリタンを作っていた少女が前山に話しかけた。

 

 「お?おにーさん、ウチの鉄板ナポリタンに目をつけるとは中々良いセンスしてるっすねえ、観光の人っすか?」

 

 少女は得意げな笑みを浮かべてそう言った。前山は少し驚きながらも落ち着いて言葉を返す。

 

 「いえ、この先のアンツィオ高校に用があるんすよ。にしても凄いっすね、この屋台の数。何かお祭りでもやってんすか?」

 

 「いーや、ウチはいつもこんな感じっすよ。ってかその敬語やめてもらっていいっすよ?あんたの胸の文字見る限りあたしと同じ2年生だろ?」

 

 少女は前山の左胸に『整備科二年 前山翔吾』と書いてある名札を見たのか、敬語を取るように催促する。それならと、前山も堅苦しい喋り方をやめ、自然体で少女に接する。

 

 「へー、君も同じ二年生なんだ。……って事はアンツィオの生徒さん?」

 

 「おうよ、今日は天気も良くて屋台としちゃあ絶好の掻き入れ時だからな。授業サボってもう儲けはウハウハよ」

 

 少女は授業をサボっている事など1ミリも悪びれる様子がなくゲスい笑顔を浮かべながら豪快に笑った。

 

 「授業は出た方がいいんじゃ……でも250円って凄い安いな……これで儲かるもんなの?」

 

 前山は疑問に思ったのかそう少女に尋ねる。

 

 「あたりめーだろ?どういう仕組みかは一切分かんねーがウチの鉄板ナポリタンは出せばいつも売り切れるんだぜ。ほら、騙されたと思って一つ食ってみな」

 

 少女は件の鉄板ナポリタンなるものを前山の前に差し出す。それは鉄板の上にナポリタンが乗ってあるものだった。ただ、普通のナポリタンと違うのは、パスタの上にさらに細切れにした肉をスクランブルエッグで絡めたものを乗っけているところだ。そんな見た目も匂いも美味しそうなそれに前山は喉を鳴らす。

 

 「うまそうっすね……それじゃあいただきます」

 

 前山は一口、ナポリタンを口にする。

 ーーその瞬間、彼の目が大きく見開いた。

 

 「こ、これは……!!」

 

 一口、また一口と、掻き込む様に前山はナポリタンを食べ進める。

 

 「う、美味いっ……!トマトソースにチーズがバランス良く絡み合って手がとまんねぇよ……!!」

 

 前山のリアクションに少女は心底嬉しそうな顔をしてテンションを上げる。

 

 「だろー!?やっぱ分かるやつにわかんだねー。あんた気に入ったよ!えっと、名前は前山でいいのか?」

 

 少女は再度前山の名札を見てそう尋ねる。

 

 「うっす!本名は前山翔吾、みんな前やんって呼んでるからそう呼でよ」

 

 「おー!じゃあよろしくな!前やん!あたしはペパロニってんだー。ここの二年生で戦車道やってんだ」

 

 それを聞いた前山は興奮した様子でペパロニに詰め寄る。

 

 「マジで!?実は俺、ここに派遣研修としてきてんだー。いやー、ペパロニさんと会えて良かったよ」

 

 「へー!!じゃああんたらがドゥーチェの言ってた整備士達かい!こりゃ期待が持てそうだねー!!」

 

 「そうそう!バッチリ期待といていいぜ!!!」

 

 ペパロニも前山のテンションに乗せられて負けじと興奮したような声で話す。調子の乗りやすい者が二人、その二人のテンションについて行けず、後ろで待機していたあと4人の整備班員たちは唖然としてその光景を見ていた。ペパロニはそんな後ろの4人にも気がつき、声をかける。

 

 「ほら、あんたらも食いなよ。特別サービスだ!100円負けて150円で食わしてやっから!!」

 

 「マジっすか!!ペパロニ姐さんアザッス!!!!」

 

 前山が体育会系な返事をすると後ろの4人もおずおずと鉄板ナポリタンに手を伸ばす。彼らも一口、それを口に入れた瞬間、怒涛の勢いでナポリタンを食い始めた。

 

 

 

 「おかわりいいっすか、姐さん!」

 

 いつのまにか前山に姐さん呼ばわりされているペパロニ。だが彼女もそれが満更でもないのか、どう見ても最初の時より大盛りなナポリタンを盛り付けて前山に差し出す。

 

 「いやー、やっぱ男子高校生ってのはよく食うもんだねー」

 

 ペパロニはそう言いながらも前山達があまりにも美味しそうに食べてるのを見て自分もそうしたくなったのか、彼女もナポリタンを食べていた。

 

 「まだまだ行けるっすけどね!ってゆうか姐さん、ほんとに150円でいいの?大丈夫?」

 

 「何言ってんだい、これから長いことお世話になるんだ。これくらいなんともないさ」

 

 「姐さん...」

 

 前山は感動してペパロニの顔をみつめる。その言葉を言うのに前山には何の迷いも無かった。

 

 「姐さん、俺感動したよ。気前もよくて料理も上手いとかもう最高っす!!結婚しよう!!!!」

 

 「ハハハッ、寝言は寝て言え、ダラズ」

 

 「え、ひどくない?」

 

 いくらノリがいいとは言えペパロニもそこまで馬鹿では無かった。その後も気の合った二人は他愛の無い話を続ける。

 だがこの時、二人の頭からは『両校の顔合わせのための集合時間』の事などすっかり忘れてしまっていたのだった。

 

 

 

 _____________

 

 

 

 

 「………遅い」

 

 一方こちらはアンツィオ高校の戦車格納庫。そこではイライラしながら貧乏ゆすりをしている少女がいた。この頭の両側にドリルのような特徴的な髪型を持つ少女の名を、安斎千代美、またはアンチョビという。ここ、アンツィオ高校戦車道の隊長であり、皆からは『ドゥーチェ』という愛称で親しまれている。

 そんな彼女が何故こんなにイライラしているのかと言うと、いつまで経っても研修に来る整備員達が現れないからだ。ついでにアンツィオの副隊長が居ないのも関係しているのだが。時計を確認すると既に約束の時間から30分もオーバーしていた。

 

 「遅いですねー、去年はこんな事無かったんですが……」

 

 綺麗なのんびりとした声で金髪の女性がそう言う。彼女の名はカルパッチョ。アンツィオのもう一人の副隊長であり上記の通りアンツィオでは珍しいおっとりとしたタイプの女性だ。

 

 「連絡も無いしな。……まさか事故に巻き込まれたとかでは無いのか?」

 

 アンチョビが最悪の事態を想像して深くため息をつく。

 

 「その可能性は低いんじゃないですかねー?それよりペパロニが居ないのが気になりますが……」

 

 カルパッチョがそう言うとアンチョビはこめかみを押さえるような仕草をする。

 

 「……はぁーー。またアイツか、まあどのみち来ないとどうしようもないからな...もうちょっと気長に待つか」

 

 アンチョビはペパロニが何かしでかしたことを察しながら、深いため息をつく。

 

 

 「それに今年はいい人材が来てくれないとこちらとしても困るからな」

 

 

 そして今度は苦い顔になりながら、ポツリと呟く。

 

 「……はい、確かに今年は去年のような事にはしたくないですからね」

 

 カルパッチョも同意するように頷いた。

 

 アンツィオでは去年も宮舞高校からの派遣研修を受け入れていたがその時は『自分達の戦車を触らせるだけ』で終わってしまい、彼らから整備のノウハウを吸収することは叶わなかった。

 ______いや、正確に言えば『吸収しようとしなかった』と言った方が正しいだろう。それはアンツィオの【整備軽視】が顕著に出た例であり、今年から戦車道履修者の急激な増加も相まって、現在のアンツィオの戦車は全体の60%程の力しか出せない物が殆どであった。

 

 「……今のウチの現状を向こうが見れば唖然とするだろうな。いや、失望もあり得るか……」

 

 アンチョビはそう言いながらどんどん暗くなる。

 

 「……もう過ぎた事は仕方ありません。これから学んで行って私たちの台には立派な整備が可能になるようにしましょう」

 

 カルパッチョがアンチョビのフォローをするようにそう言う。アンツィオにとってこの派遣研修は、未来のアンツィオ戦車道にとっても、かなり重要な意味を持っていた。

 

 「まあ、うちの生徒には単純な奴が多いからな。話を聞かないって奴は少ないと思うけど」

 

 この楽観的な思考が、今後どの様な影響を与えるのか。

 アンチョビが困った様に笑ってそう言うと、カルパッチョも笑みを返す。

 

 「あら、それはひょっとしてペパロニの事を言ってるんですか?」

 

 「ひょっとしなくてもそうだ」

 

 

 何処てま油でも売っているのか。そう思いながら、アンチョビは困った様に返事を返した。

 

 

 「_____________チェー……!」

 

 

 そうこう話をしていると、外の方から何やら声が聞こえてきた。

 

 

 「________ゥーチェー……!」

 

 声がどんどん近づいて来る。気になってアンチョビが格納庫の外を覗いてみると、

 

 

 「ご、ごめんなさいー!!!遅れたっすー!!」

 

 

 「ドゥーチェー!!スンマセンっす!!飯食ってたっす!!」

 

 

 

 口の周りを赤く汚した馬鹿二人が走りながら近づいて来ていた。

 

 

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