ガールズ&パンツァー 宮舞高校戦車整備科   作:キングコングマン

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しほさんの夫、常夫さんが戦車の整備士だと知って思いついた作品



本編
舞鶴の学園艦


 

 

 

 

 

 

 

 京都の舞鶴に一つの高校がある。

 校名は『京都府立宮舞高等学校』と言う男子校で、地元ではちょっとした有名高だ。舞鶴湾の内湾に停泊するこの学校は「学園艦」と言うシステムを取っており、古くから軍港として栄えてきたこの街にイヤと言うほどの存在感を放ちながら鎮座している。

 空母をモチーフにしているからか海抜は高く風通しも良い。なので今の9月中旬の時期には心地の良い風が吹く。

 そんな学校の屋上では遮るものが何も無いので昼寝に最適で、今日とてその屋上に一人の男が我が物顔で眠っていた。

 

 「……zzz」

 

 気持ちの良さそうな表情で静かな寝息を立てている男がいる。短髪で少しキリッとした目元に少し焼けた肌、身長は170後半で薄水色のツナギを着ておりその胸元には『戦車整備科 三年』と書いてある名札を付けているいかにも好青年と言うような出で立ちの男だ。

 どれくらい寝ていたのかは分からないが、そんな男に一人の影が近づいてきた。

 

 「隊長、古葉隊長」

 

 同じく薄水色のツナギを着た少年に声をかけられて古葉と呼ばれた男の体がピクンと動く。

 

 「こんなところにいたんですか。もう整備講習終わっちゃいましたよ。久我さんなんか相当怒ってましたよ」

 

 少し困った様子で少年がそう言うとゆっくりと起き上がり、少し寝ぼけ眼な顔を少年に向けてやっと口を開いた。

 

 「んおー、やっつんか。悪いね起こしてもらって、講習が終わったってことは次実習か、もうちょっとで行くから先に整備ドック行っといてな」

 

 気の抜けた声を出して、講習をサボったことなど1ミリも悪びれる様子のない男に対して、やっつんと呼ばれた少年は苦笑いを返す。

 この"隊長"と呼ばれる男の名は『古葉賢介』。ここ、宮舞高校の3年生であり、これから話す物語の主人公である。  

 

 「隊長は今更座学なんてしなくても良いかも知れませんが、一応この整備科の班長で隊長なんです。1、2年生が真似し出したらどうするんですか……」

 

 対して古葉に"やっつん"と呼ばれたこの少し幼い顔立ちをした身長160後半くらいの少年、本名は八潮学と言う。この光景を見る限り、結構な頻度で古葉に振り回されてるのだろう。

 

 「はぁ...」と八潮がため息を吐くと、古葉は対照的にニヤリと笑う。

 

 

 

 「そうだな、そん時は"戦車道"の模擬戦で一番のやつがサボれることにしよう」

 

 

 

 「そんなん、ずっと隊長がサボるじゃないですか...」

 

 そう、この物語のテーマは"戦車道"。乙女の嗜みであるこの武道に、世の中の男達がどのようにして向き合って行くのかを描く物語である。

 

 

 

 ______________

 

 

 

 

 ここ宮舞高校には、8つの学科がある。

 学園艦という学校のシステム上、生徒数は多くなりこの高校も7000人以上もの生徒が在籍している。そしてそれだけの生徒を抱えていると、学科ももちろん増える。

 

 その中でも一際目立っているのが「戦車整備科」だろう。

 

 文字どうり将来戦車の整備に携わる人材を育成する学科であり、ここを卒業すると戦車道関連の仕事につくことが殆どだ。しかも戦車の整備を専門とし、なおかつ男子校なので世間からは何かと目立つことが多い。

 この戦車整備科は全校生徒約7000人に対して定員が4〜50名とかなり少なく、校内でも「戦車整備科です」などと名乗ると物珍しい目で見られる始末だ。

 

 そんな整備科の格納庫では只今絶賛整備中であり、古葉はその光景を高台の足場から見下ろしていた。

 

 「隊長ー!、チトの整備もう少しで終わりそうっす!」

 

 「隊長!ゴムパッキンの在庫ってどこあります?」

 

 「ギャー!!オイルが顔にー!!!」

 

 矢継ぎ早に飛んでくる質問や報告に一切慌てることなく古葉は拡声器で的確な指示を出す。

 

 『おっけー、それ終わったら休憩して次チリの整備なー』

 

 『パッキンの在庫は第二倉庫ね』

 

 『目に入ったか?早く洗ってこい泥パックみたいになってんぞ』

 

  そんな光景を、少し離れていたところから見ていた少年が居た。

 

 「………すごいな。全部捌いてる。聖徳太子かなんかか、アレ」

 

 一人、自身の整備を終え、感心した様に八潮は独り言を呟く。整備科の隊長と言う肩書きがある程だ。古葉もそれ相応のリーダーシップは持ち合わせている。

 

 「はぁ……僕も……」

 

 少し肩を落とし、今度は羨む様な目線を古葉に送る。

 そんな八潮に、背後からまた別の人物が近付いて来た。

 

 「随分と考え込んでるね。やっつん」

 

 「あ、誠さん、お疲れ様です」

 

 現れたのは胸元の名札に"整備科三年 浅井誠"と書かれたツナギを着た男だった。

 古葉と同じく3年生で身長は170半ばで顔立ちが非常に整っており、美青年であるが少し彫りの深い顔立ちで男らしさも感じるイケメンである。

 

 「いや、隊長見てると、ほんとに人間かなって思えてきて」

 

 視線を古葉に戻して八潮がそう言うと、浅井もなんだ、そう言う事かと言うふうに納得した様な表情を見せる。

 

 「一年生の時からあんな感じだからね、俺ら3年生にとっちゃ日常の光景になっちゃったよ」

 

 「そういえば隊長と誠さんは同い年ですから、一年生のころから知ってるんですね」

 

 この浅井と隊長の古葉は同い年の3年生。八潮は年上として古葉を見ているので、まだ整備科で一番下だった頃の古葉を知らない。

 

 「うん、隊長は一年生の頃から先輩達に指示とか出してたからね、模擬戦でも車長を任されてたし」

 

 なんだか懐かしむ様に、浅井は言葉を返す。それを聞いた八潮は苦い顔になった。

 

 「うへぇ、大変ですね」

 

 「ん、何が?」

 

 「だって、当時の先輩達から反発とかあったんじゃないんですか?」

 

 当時の先輩達からしたら、入学したばかりの一年生の古葉に指示されるのは溜まったものでは無いだろう。その居心地の悪さを想像してしまった八潮は嫌そうな顔をする。

 

 「最初だけね。でも彼と話した人たちはことごとく彼の言う事を聞くようになっていったよ。そこは彼の戦車道の流派も関係してくるんじゃないかな?」

 

 浅井は何かを見透かした様に古葉を見据えながら呟く。古葉の流派。八潮もその言葉に心当たりがあるのか古葉の方を見る。

 

 

 「古葉流ですか...」

 

 

 八潮はそう言って考え込むように腕を組んだ。

 

 

 

 

 戦車道はその歴史の古さ故に流派も存在する。代表的なのが戦車道の二大流派と言われる西住流と島田流だ。その他にも多く流派があるが大体はこの二つの流派に影響されているものがほとんどである。だがこの古葉賢介という男の流派は独特であった。

 

 

 『古葉流戦車道』

 

 

 彼と同じ名字のこの流派は西住、島田のどの流派の影響も受けていない。西住流の統制された陣形で、圧倒的な火力を用いて短期決戦で敵と決着をつける単純かつ強力な戦術でなければ、島田流の"ニンジャ戦法"のような臨機応変に対応した変幻自在の戦術を駆使する戦法でもない。

 

 「あの流派なら、人の心を見透かす事なんて簡単でしょ?」

 

 古葉流の戦車道の戦法は"卓越した心理戦"の巧さにあった。相手チームの深層心理を巧みに利用してパニックにさせたり、相手の隊長の性格やその流派がどのような戦法で来るかを読み、常に先手を打つなど、先述の二大流派とは全く違う戦法なのだ。

 その流派の直系である古葉はやはり人の心理や考えていることを読むのが上手く、当初反発していた先輩も古葉本人によって上手く丸め込まれたのだ。

 

 「心を読むって、ホントにそんな事が可能なんですかね?」

 

 「さあ?でもその結果、今彼は隊長やってるからね」

 

 八潮と浅井は互いに未だ拡声器で指示を出している古葉を見据えながら、そんな会話を交わす。

 

 すると、いきなり誰かから背中を「バンッ!!」と強く叩かれた。

 

 「うわっ!?」

 

 「何が古葉流じゃ!あんなんに流派名乗られちゃ戦車道も堕ちたもんじゃ思われるわ!」

 

 突然現れて特徴的な方言で捲し立てるように言ったこの男に、八潮も浅井も少々面食らってしまう。

 

 「久我さん……ビックリさせないで下さいよ……」

 

 不意打ちに背中を叩かれた八潮がホッとした様にそう返す。

 理由は分からないが癇癪を起こしているこの男は名は、久我龍平と言う。

 整備科の三年生でイガグリみたいなツンツンとした頭は金髪で目つきは鋭く三白眼でいつも眉間にしわが寄っているので見てくれは完全に不良だ。

 しかしお世辞にも高いと言えない身長なので、何かと子犬が吠えている様な印象になってしまっていた。

 

 「なんだいくがちん、午前中隊長が講義サボったことまだ根にもってんのか?」

 

 「根になんてもっとらん!あとくがちんゆうな!!!」

 

 浅井に揶揄う様にそう言われ、すぐさま久我が噛み付く。

 

 「まあまあ、隊長は講義はサボれど戦車に関してはここの誰よりも詳しいじゃないですか」

 

 そんな久我を宥める様に八潮がそう言うも、当人はは鼻で笑って一蹴した。

 

 「ハンッ、いくら戦車に詳しいゆうてもあいつはここの隊長じゃ、隊長なら連中の見本にならんにゃいけんのに。アイツの真似する1、2年奴が出て来たらどうするつもりじゃ」

 

 今朝、自分が言っていたことと同じ事を久我が言って八潮は少し苦笑いを返す。この男、口が悪く見た目も厳ついが根は真面目なのだろう。

 

 「でも此処では隊長の言う事を聞かないやつは居ないよね」

 

 そんな中、浅井があいも変わらずニコニコと笑いながらそう言った。

 

 「やっつんだってちゃんと言うこと聞いてるし、くがちんだって隊長の指示を無視したことないじゃん」

 

 続けて浅井がそう言うと、久我はその表情に一層皺を寄せる。

 

 「やかましい!お前は隊長に心酔しとるけえ分からんかもしれんが俺はあのいつもヘラヘラした態度が気に入らんのじゃ!隊長ならもっとシャンとせい!!」

 

 会話の中で、久我がだんだんヒートアップしてきて周りの注目を集め出したころ、高台から機械的な声が聞こえてきた。

 

 『こら、そこ3人。いつまで休憩してんの、次はチハの整備でしょ。それともくがちんもうへばったの?情けないなー』

 

 古葉が煽るようにして久我達に声を掛ける。

 

 「うっさい!分かっとるわ!!あとくがちんゆうな!!!」

 

 悪態を返しながらも、久我は自分の整備に戻って行く。

 

 「ハハッ、了解、作業に戻るよ」

 

 「すみません、僕も作業に戻ります」

   

 浅井と八潮も返事を返すと戦車整備へと戻って行く。やはり此処では皆、隊長の言う事を聞ようだ。 

 

 「古葉流、かぁ……」

 

 そして古葉流の話題が出るたびに八潮は常々思う。女性が主流の戦車道において、もし古葉賢介が"女性"であったらどれほど今の戦車道に影響を与えていたのだろうかと。

 

 

 

 ______________

 

 

 

 そ整備実習も佳境に入り時刻は午後7時を回ろうとしている。それぞれ今日のカリキュラムを終え、道具の片付けをしているところだった。

 粗方片付いたのを確認すると、古葉から整備中の作業員全員に声が掛かる。

 

 「各員お疲れさん、片付けが完了したら全員ミーティング室まで集合な」

 

 「「「ハイッ」」」

 

 古葉の号令に宮舞の整備士達から威勢のいい返事が聞こえる。すると八潮が不思議そうに首を傾げた。

 

 「...なんでしょう?実習後に全員を集めるなんて珍しいですね」

 

 基本古葉という人間は放任主義なところもあり、こうして全員を集める事はあまりない。疑問に思っている八潮に、一緒に片付けをしていた浅井が話しかけた。

 

 「もうそろそろ『あの』時期だからでしょ。周りを見てみ?落ち着かないやつばっかでしょ」

 

 「……ああなるほど、"派遣研修"ですか、そりゃみんな浮き足立ちますよね」

 

 納得した様に八潮が呟く。

 そう。この"派遣研修"と言うワードが、宮舞の整備士達を落ち着かなくさせていた。

 

 宮舞高校戦車整備科では戦車の整備のためという名目で複数の戦車を保有している。その全てが日本の戦車で、多い順から四式中戦車チト、五式中戦車チリ、最後に九七式中戦車のチハだ。しかし外国の戦車は保有しておらず、学園艦と言う外界から遮断されるこの状況において、他国の戦車は手を付けたくても付けられない状況なのだ。

 

 そこで宮舞高校では1年に一回、他国の戦車に触れノウハウを付けさせるとゆう名目で全国戦車道大会が終わり、落ち着いてきた10月の初めの時期に毎年この学校から整備員の生徒を様々な高校に派遣する『派遣研修』というものを行っている。

 

 ここでポイントとなるのが「戦車道」の課程を取っている高校に派遣されるというところだ。戦車道は『乙女の嗜み』と呼ばれるほど女性比率が高く派遣先でも居るのは全員女性だ。男子高校生と言う思春期に加えて、ただでさえ男子校で出会いの少ないここの飢えた狼供にとって、この派遣研修というものは正に夢のイベントなのである。

 

 そして今、宮舞の戦車格納庫の端に併設されたミーティング室では整備科の連中がすべて集まり、誰もが落ち着かない様子でいた。そこにプリントを持った二人の男が最後に入って来ると、全員が整列をして背筋を正す。

 

 「……よーし、全員集まったね。それじゃあ今からプリントを配るから各員よーく目を通すように」

 

 二人のうちの一人、整備科の隊長である古葉がそう言うと順番にプリントが配られ始めた。妙な緊張感に包まれたミーティング室で紙の擦れる音だけが聞こえる。八潮も例外ではなく変な緊張感を持ってプリントが回ってくるのを待っていた。

 そして回ってきたプリントに目を通すと、第一希望、第二希望、第三希望と書かれ、プリントの下の方には派遣先の学校の名前がズラリと並んでいた。プリントが全員に行き渡るのを確認すると、最後に入って来た二人のもう一人の方が口を開いた。

 

 「今年も派遣研修を実施する。期間は10月の初旬から1ヶ月半、11月の中旬ごろまで、1年はこれから詳しい説明をする。2、3年生は熟考の上第三希望まで埋めて1週間後に柴原まで提出してくれ。誰しも第一希望が通るとは限らないので留意する様に」

 

 低めのバリトンボイスでそう言ったこの男は整備科3年の柴原樹と言う。180超えと高い身長だが線は細く、天然パーマがかかった長めの髪は前髪で目を隠しており整備科の人間からは「ノッポ」や「ノッポ先輩」などと呼ばれている。

 説明を終えると、古葉が付け加えるように口を開いた。

 

 「ノッポの言った通り今季も派遣研修をやるよ。あと今回は去年より2校増えているからそこも加味して考えるようになー」

 

 気の抜けた声で古葉にそう言われて八潮は再び視線をプリントに落とす。すると、確かに去年までは無かった2つの高校の名前がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 『大洗女子学園』

 

 

 

 

 

『黒森峰女学園』

 

 

 

 

 

 

 

 この二つの校名を見て、八潮は妙な胸騒ぎを感じた。

 

 

 

 




はじめましてキングコングマンです。小説書くのは初めてなので誤字や矛盾、至らない点などがありましたら遠慮なくいってくだしあ。
 設定はある程度考えたんだけど割と見切り発車なので第一話で女の子が一人も出てこないという事件。これからだすからゆるして。
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