白い鷺は理系擬きの幼馴染みを想う   作:ネム狼

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それは隠し事なのか


白鷺の溜め息、様子のおかしい理系擬き

 七夕は終わり、夏は本格的になりつつある。今日も俺は煙草を吸う、外を眺めながら……何かを考えて……。

 

「千秋、外何か見てどうしたの?」

「千聖か……。色々と考えていただけだ」

「考え事?貴方が?」

「今日は大雨になるとか今日の煙草は不味いとか、色んなことを考えているんだ。あとは、今日は誰が相談に来るんだとかだな」

 

 そんな大したことじゃないがな、俺は煙草を携帯灰皿に押し付け、火を消しながら言った。花女は灰皿を置いてる所は無い。こうして携帯灰皿を持っておかないといけない。面倒だが、仕方ない。

 

 今日の天気予報では午後から大雨になると言ってたな。今の天気は曇り、梅雨が明けるのはまだ先か……。

 

「松原は一緒じゃないのか?」

「花音は部活の打ち合わせでいないわ」

「打ち合わせ?松原は部活に入ってたのか?」

「ええ、茶道部に入ってるわ。イヴちゃんと同じよ」

 

 若宮と同じか。確か、若宮は部活を3つ掛け持ちしてたっけな。剣道、茶道、華道、この3つだったか。最近の女子は部活を掛け持ちするんだな。

 

 そうなると、今は俺と千聖の二人きりか。二人きり、心の中で言っても意識しちまう。それも幼馴染で生徒の千聖が相手だと、余計意識する。

 

「ねえ千秋、私に何か隠してることはない?」

「隠してること?俺が何か隠してるように見えるか?」

「ちょっとだけそんな風に見えたのよ。特に無いのならいいわ」

 

 

ーーちょっとだけ見えた、か。

 

 

 ちょっとだけならまだいいか。怪しまれたらマズかったな。俺は安堵するかのように息を吐いた。何だろうな、今日は雨に打たれたいような気分だ。

 

 俺は千聖と話をすることにした。しかし、内容はほぼ同じだった。主に仕事でのことくらいだった。大半は千聖の愚痴を聞くだけになった。

 

「愚痴ばっかりになってごめんなさい」

「いや、いいんだ。溜めていては体に毒だ。言っただろう?愚痴はいくらでも聞くと」

「ありがとう千秋、私……千秋が幼馴染でよかったって思ってるわ」

 

 千聖が微笑みながら言った。よかった、千聖は大丈夫だ。ストレスを溜めて倒れたりしたら洒落にならない。

 

 そろそろ授業が始まる、俺と千聖はそれぞれの場所に戻った。話が出来ただけでもよかった。もし、ここに丸山や松原がいたら色々聞かれていた。それも千聖には言えないことばかりだ。とりあえず切り替えるか。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 次の日、私は薫と会う事にした。薫からは喫茶店で待ち合わせをしようと言われた。喫茶店なら落ち着いて話せるからちょうどいいわね。薫に会ったらお礼を言わないといけないわね。

 

「薫はどこにいるかしら……」

「千聖、私はここにいるよ」

 

 喫茶店に着いたと同時に薫に声を掛けられた。薫は席を確保してくれていたようだ、しかも優雅に紅茶を飲みながら待っているという。様になってるのが腹立つわね。

 

 私は薫の待つ席に向かった。あら?隣に誰か座っているわね。隣にいるのは見覚えのある人だった。私の友人、花音だった。花音が薫と一緒にいる、何かありそうね。

 

「あ、千聖ちゃん!おはよう!」

「お、おはよう花音……どうして貴女がここに……」

「千聖、まずは座ろう。花音のことは私が話すよ」

 

 私は店員を呼び、紅茶を注文した。薫と話をする前に花音がどうしてここにいるかを聞こう。薫の説明によると、花音も待ち合わせの喫茶店に行こうとしていたのだ。しかし、花音は道に迷ってしまった。迷っていた最中に薫とバッタリ会い、目的地が同じということで一緒に来た、それが花音がここにいる理由だった。

 

 花音がいても困ることは無い。今回薫に話すことは千秋の事だ。私は薫に千秋の事を話した。千秋は七夕の日から何か変わっていた。どこか上の空だった。白衣を着忘れることもあったりと、本当におかしい。

 

「なるほど、兄さんがおかしいと……」

「そうなの、薫は千秋がおかしいなって感じたことは無い?」

「兄さんと会ったのは5月だったから分からないな。それも買い物をしてた時だったからね」

「5月……それってだいぶ前じゃない!」

 

 役に立てずすまない、彼女は暗い顔をしながら謝った。薫が暗い顔をするなんて相当だ。普段は明るく優雅に振る舞うのに、こんな表情をするなんて……。そんな顔をされたら私まで申し訳ない気持ちになる。

 

「いいのよ薫、千秋の事を聞けただけでも私は嬉しいわ」

「そう言ってくれると助かるよ、ありがとう千聖」

「あの……薫さん、薫さんと二ノ宮先生って幼馴染なの……?」

 

 花音は私と千秋が幼馴染ということは知っている。でも、薫と千秋が幼馴染ということは知らない。ちょうどいいわ、花音には薫と千秋が幼馴染ということは話した方がよさそうね」

 

「そうだよ。私と兄さんは未来を約束した仲で……」

「薫、シメられたいのかしら?」

 

 その冗談は堪忍袋の緒が切れるからやめなさい、私は薫に怒りを抑えながら笑顔で言った。花音はふぇぇ、と言いながら怯えた。これはやり過ぎたわね。私は花音に怯えさせてごめんなさい、と謝った。

 

 私は花音に千秋と薫が幼馴染である事を話した。薫は千秋の事を兄さんと呼んでいる、前はお兄ちゃんって呼んでいたのに、いつから兄さんって呼ぶようになったのかしら……。まぁ、私も千秋のことは子供の頃はお兄ちゃんって呼んでいたけどね。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 千聖から連絡があった。今日、薫と松原と喫茶店で話をした、という連絡だった。連絡というより話を聞いてほしいような物か。しかも紅茶とケーキの写真まで送ってくるとは……。

 

「この時間に送るのは卑怯だろ。夜の10時、飯テロじゃねえか」

 

 飯テロと言っても、飯は作らねえ。この時間に料理をするのは面倒だし、洗い物増えるしで嫌になる。俺はさっきまで事務作業をしていた。今はベランダで煙草を吸いながらスマホを見ている、所謂休憩だ。

 

 紅茶淹れの練習は順調だ。このまま上手くいけば、千聖や松原からお墨付きを貰える。千聖からも前より良くなってると言われた。あの言葉は俺の心に今でも残っている。

 

「あんなに言われると嬉しいものだな。まるで昔を……」

 

 昔を思い出す、そう言いたかったが、口に出せなかった。昔が恋しいが、前には戻れない。もし、昔の頃に戻れたらどれくらい幸せか。あの頃の青春、大学に通っていた頃の青春……。

 

 いや、何を考えているんだ俺は……。もう戻れないんだ、あんな辛い想いはもう御免だ。隠し続けると決めたんだ。

 

 彼女に隠し事をしているのは本当だ。この前は怪しまれていた、隠し通せるのは時間の問題かもしれない。

 

 

 

 

ーーそう、俺は彼女に想いを寄せていた。それはもう過去の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー俺は″あいつ″のことが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー千聖のことが……()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 




その想いは過去のもの
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