今日は久しぶりの休みだ。クリーニングに出してある白衣の回収、煙草の補充、あと何だ……何があった……。俺は休みにやらなければならないことを思い出しながら朝食を作った。
千聖は仕事のためいない、終わったら迎えに来てくれとまで言われている。一人で帰れるだろと言いたいが、断ると五月蝿くなるから従わないといけない。これじゃあどっちが立場上なんだよと思ってしまう。
「まるであれだな。俺は千聖の飼い犬みたいだな……って俺は何を言ってるんだ」
こんなことを考える辺り疲れてるかもしれない。白衣を取りに行ったらすぐ帰ろう。帰って寝て、夕方に千聖を迎えに行く、それでいいか。
いや、待て。次の授業のプリントも作らないといけないよな?今日の予定を建てようとした途端にこれだ。最悪だ、俺は溜め息を吐いた。教師になったからにはしょうがない。
授業のプリントを作るというのは最早お約束だ。俺はフライパンで焼いた目玉焼きを皿に移し、コーヒーを入れて机に置いた。あとはパンか……。
「えっとパンは焼けたか……しまった、焼けてなかった」
ああもう、焼くの忘れたじゃねえか!俺はまた溜め息を吐いた。千聖がいないと駄目だなんて、俺はダメ教師だな。せめて家事だけは出来るようにしないといけないな。
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ベースを弾き終え、休憩に入る。どのくらい練習したのだろう、かれこれ2時間くらいになるのかしら。私は楽器をスタンドに立て掛け、床に置いたペットボトルを手に取った。水分補給は大事だ。ここで水分取っておかないと倒れてしまう。私は前に一回経験したから、水分の大事さは誰よりもわかっていると自負している。
「チサトさん、ニノミヤ先生とはどこまでイキましたか?」
「イ、イヴちゃん!?何を言ってるのかしら!?」
イヴちゃんの一言に私を始め、彩ちゃんと麻弥ちゃんは驚いた。日菜ちゃんは目を輝かせて私を見つめた。やめて!そんな目で見ないで!私は全力で千秋との関係を弁解した。
「イヴちゃん、二ノ宮先生とは教師と生徒の関係よ?特に何もないわよ?」
「え?千聖ちゃん、二ノ宮先生とは親しいんじゃないの?」
「彩ちゃん、そんなことはないわよ?」
「本当かな?二ノ宮先生とは幼馴染みだよー何て誰かが言ってたけど……」
ちょっと待って!?幼馴染みって誰かが言ったのってあの子しかいないわよね!?せから始まってるで終わるあの貴公子擬き、もとい薫!薫にはまたお仕置きが必要ね。
「ねえ日菜ちゃん、その誰かってもしかして薫?」
「うん!薫くんだったよ!」
「
「千聖さん!母国語出てます!」
誰がロシア人よ!私はこれでも日本人よ!私は麻弥ちゃんにロシア語で反論をした。酷いわね皆。千秋は何をしているのかしら。多分だけど、煙草でも買ってるのかもしれないわね。
休憩を終え、私達は曲の練習に戻った。今日は千秋に色々愚痴ろう。今度薫にはお説教をしないと駄目ね。あの子、私のことを応援してるけど、絶対に楽しんでるわね。
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白衣を回収し、買い物をする。さっき携帯を見たが、千聖荒れてたな。日本語とロシア語が混じってて怪文書みたいになっていたが、あいつ大丈夫か……。
面倒だからレトルトにするか。とにかく、生徒と会わないように祈ろう。会うのは千聖と松原だけで充分だ。特に薫には会いたくない。会ったら会ったで面倒になるからな。
「やぁ、兄さん。相変わらず眼鏡が似合っているね」
「誰が兄さんだ。ここで何をしている薫」
「こころを待っていたのさ。兄さんは買い物かい?」
そうだ、と俺は薫の質問に答えた。言った側から会うなんて、付いてないな。しかも弦巻を待っているときた。ここで弦巻と会ったら胃がマッハだ。何となくだが、奥沢の苦労が分かってきたような気がした。
俺は心の中でここにいない奥沢に手を合わせてうちの幼馴染みが迷惑を掛けたことに謝った。
薫には千聖と関係は上手くいってるかいとか聞かれたが、何のことだ?わからないことを聞くか……。とりあえず薫と別れるよう、あとで千聖と話をしてみるか。
デパートを出て、俺は車で家に戻ることにした。今日の夕方のためにレトルトはカレーだ。料理はしようにも面倒だから、レトルトに限るな。
「荷物置いたら、千聖迎えに行かないだよな」
独り言のように喋べながらこの後に予定を確認した。なんか今日は薫の掌の上で踊らされたような感じがして気分が悪い。
車で事務所の駐車場まで行き、千聖を待つことにした。待つまで1時間30分掛かった。早くに着いておかないと何か言われかねない。だから、こうやって早く着かないといけないんだ。
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練習が終わったのは6時だった。千秋を待たせてるかもしれない。彼には申し訳ないわね。合流したら謝ろう。
私はそう思いながら事務所を出た。駐車場まで早足歩きで急いだ。予定は車の中で確認しよう。あと、千秋にも愚痴ることがいくつかある。
「千秋、待たせてごめんなさい!」
「いや、大丈夫だ。千聖、お疲れ様」
「ありがとう千秋」
私は労ってくれた千秋にお礼を言った。ベースを入れたケースに後ろに置いてあるから大丈夫よね。疲れたせいか眠いわね。私は千秋に寝てていいかを聞いた。彼からの返答は寝てていいぞ、だった。
「ありがとう……千秋……」
「相当疲れてるようだな。おやすみ、千聖」
おやすみという言葉が聞こえたような気がする。お礼を言わなきゃと口を開こうにも、私は眠りに落ちてしまった。愚痴はまた今度にしよう。
そして、私は千秋に起こされた。そうか、家に着いたのか。ベースのケースは千秋が肩に掛けていた。持ってくれるのね、ありがとう千秋。家のドアを開け、私は靴を脱いだ。ベースのケースを千秋から受け取り、彼に送ったくれとお礼を言い、また今度と別れを告げた。
今は少し寝よう、ご飯は後で食べよう。今日は疲れたわ、いない筈の彼、千秋に語りかけるかのように私は口に疲れたことを口に出した。彼はもう帰ったんだ。何を私は寝惚けているんだ。
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夕食を食べ終えた俺は洗濯物を畳むことにした。食器洗いは後にするか。なんか今日は騒がしかったな。メールのことも聞きそびれたな、まぁ今度聞けばいいか。
千聖もだいぶお疲れだったんだ。あの状態で聞くのは彼女に対して失礼だ。
「食器洗ったらプリントの方やらないとだな。途中だったから徹夜しないと駄目だな」
仕事が増えたが、迎えは千聖のためだからしょうがない。本人はこんなことは言えない。いや、言いたくないの間違いか。
今度時間が空いてる時に聞こう。薫のことを話したら松原にも謝られそうだな。むしろ、謝りたいのは俺達の方だ。
俺はそんなことを心の中で呟きながら作業に戻った。
幼馴染みの掌の上で踊らされるのは嫌だよねー