6月26日、中間テスト最終日。今日の天気は大雨が降るんじゃないのかというくらい悪い。俺は心の中で舌打ちをした。この天気では帰りはヤバいな。
「……時間だ。後ろの者は解答用紙を集め、俺の所に持ってきてくれ。お前達、結果を楽しみにしていろよ。日直、号令を頼む」
中間テストの最後は現代文だ。そしてこのクラス、もとい千聖のいる2-Aは俺が担当となっている。担任ではないが、テストでは監督役を任されたのだ。
さて、授業は午前中だけ。生徒達は午前で終わりだが、俺達教師は午後も仕事がある。何故、午後もやらなきゃいけないんだクソッタレ。千聖にこの愚痴を吐きたいが、そんなことをしたら千聖も仕事の愚痴を吐こうとする。最悪、煙草と酒に逃げるというのも手だな。
「先生」
「白鷺、どうした?」
教室を出ようとした時、千聖に呼ばれた。俺は千聖の元に行き、何の用だ、と聞いた。千聖は俺の顔を見ることなく、俺だけに聞こえるように小言で話した。
「後で貴方の家に行くけど、いいかしら?」
「好きにしろ。何時に来る?」
「午後の3時には行くわ」
「わかった」
ありがとう、千聖が小言で言った。こいつ、生徒の前でよくこんなこと出来るな。周りに聞こえてたらどうするんだ?聞かれてたらマジで洒落にならんぞ?全く、ヒヤヒヤさせるな。
俺は改めて教室を出た。さて、これから地獄の答え合わせだ。担当は2-Aだが、他のところもある。そうなってくると、遅くても夕方には終わるか。とりあえず、突貫で終わらそう。答え合わせが終われば帰れるんだ。
――あと千聖、お前には聞きたいことが山ほどあるから待ってろよ?
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私は千秋の家に行く支度を始めた。千秋には家に行くとは言ったけど、部屋は大丈夫かしら?また散らかってるかもしれない。そうなったら、私が綺麗にしよう。
「雨、降りそうね。そうなると、少し早めに出ようかし、」
時間は2時半。支度が終わり次第行きましょう。レオンは家に入れておいたから大丈夫、お母さん達には千秋の家に出掛けてくると言ってある。あとは千秋に行くことをメールで送っておこうかしら。
千秋にメールを送り、私は家を出た。途中で濡れたりしたらシャワーを借りよう。傘も持ったし、合鍵も持った。あと、念のためベースも持ってきておこう。よし、準備は万端ね。
千秋の家はここからだと20分くらい掛かる。少し遠いけれど、そこは問題ない。千秋の家に行くためなら、私はそれでも構わないと思っている。さあ、雨が激しくなる前に急ぎましょう。
私は早歩きで千秋の家に向かった。途中で雨が降り始めたけど、どしゃ降りになることはなかった。私は大丈夫だけど、千秋が心配ね。千秋の家は5階建てのマンションで、彼の部屋は2階にある。私は合鍵を使ってドアを開け、千秋の家に入った。靴は揃えてある。
「入り口とリビングは綺麗になってるわね。部屋はどうなってるのかしら……」
千秋の部屋は入り口から見て左よね。リビングを出て、千秋の部屋に入る。これは……酷いわね。
千秋、貴方さすがにこれはないわよ。作業机には書類が貯まっていた。これじゃあ崩れちゃうじゃない。それに、ベッドの布団も汚いし……。はぁ、私はあまりの酷さに溜め息を吐いた。
――
▼▼▼▼
千聖は3時に家に行くと言ったが、早めに出るとメールがあった。俺が仕事を終えたのは3時半だ。突貫でやろうとしたが、途中でダウンしてしまい、タイムロスを起こしてしまった。
「答え合わせなんてクソッタレだな」
教師である以上、やらなければいけない。帰ったら紅茶を淹れて落ち着くか。俺は千聖に電話をすることにした。仕事が終わったから今から帰る、そう伝えよう。しかし、千聖は電話に出なかった。
何かあったのか?何かに夢中になっているのか、それとも寝ているのか。どっちかだな。それならメールを送っておくか。そのうち気づく筈だ。
やはり車で行けばよかったな。家に着き、チャイムを押した。反応無しか。俺は鞄から鍵を出し、入り口の鍵を開けた。その時、ガチャンと音がした。あ、閉めちまったな。ということは開いてた。いや、千聖が開けたが正しいか。
「間違えて閉める、まぁよくあることか。さて、入るか」
鍵を開け、ドアノブを回す。よし、成功だな。靴を脱ぎ、自分の部屋に入る。朝と雰囲気が違うな。机の書類も種類ごとに纏めてあるし、布団も畳まれている。これをやったのは千聖だな。
鞄を置き、洗面所へと向かった。しかし、そこで事件が起こった。事件というより、事故と言った方がいいか。そう、俺は遭遇したのだ。金髪で細い身体をした少女、もとい――
――千聖に遭遇した。
「あ」
「ち、千聖!?」
「……千秋」
「な、何だ?」
「
ごめん、俺は出ていきながら謝った。そのまま壁に凭れ、息を吐いた。やべぇ、今の千聖は怖かった。ロシア語が出てるってことは相当怒ってるな。というより、シャワーを浴びてたなんて聞いてないぞ!?
▼▼▼▼
「全く、帰って来るのなら連絡くらいしなさいよ」
「しただろ。だったら何で出なかった?」
「シャワーを浴びてたからよ。そこは私も謝るわ、ごめんなさい」
「俺もすまなかった。ノックをするべきだった」
私達は互いに謝った。掃除が終わった後、私はシャワーを浴びることにしたのだ。そして今の私は、部屋着状態だ。そう、私が千秋の家に来た理由は掃除ではない。泊まるために来たのだ。
「しかし、聞いていないぞ。泊まるなんて」
「それはアレよ。貴方を驚かせるためよ」
「驚かせるってお前なぁ……。まぁいい、今紅茶を淹れるから待ってろ」
「私がやるわ。千秋は仕事から帰ってきたばかりでしょ?ゆっくりしてていいわよ」
なら任せる、千秋はそう言ってソファーに座った。仕事が終わったばかりなんだ、それなら私がやってあげないと。明日はちょうど休みなんだ。たまには千秋の家でゆっくりするのも悪くない。
千秋からマスコミやファンにはバレてないのか、と聞かれた。そこは大丈夫だ。ちゃんと変装もしたし、サングラスも掛けた。私は千秋にバレてないわよ、と答えた。
「それで、何日いるつもりだ?」
「明後日までいるわ。それまでは家でゆっくりしましょ」
「そうだな。下手に出たらバレるからな。明日は俺も休みだから、ゆっくりしているさ」
千秋も休みか。明日は何をしようかしら。私は紅茶を淹れながら色々なことを考えた。千秋を労う?それとも、あれかしら?い、家デート的なことをしようかしら……。
今はやめよう。こんなこと考えてると紅茶が溢れる。どうするかは彼と話し合って決めよう。私はテーブルに二人分の紅茶を置き、千秋の隣に座った。隣にいるだけなのに、緊張するわね。
「ねえ千秋、明日はどうするの?」
「明日は何も決まってないな。紅茶を淹れる練習か、または読書か。色々だな」
「本当に何も決まってないのね」
これは困ったものね。私は紅茶を飲み、渇いた喉を潤した。正直私も何も決まっていない。一応ベースも持ってきたけれど、最悪ベースを聞かせてあげようかしら。
家での過ごし方はそれぞれ、ただし計画的に