真剣で殺し愛夫婦の子供に恋しなさい   作:紅 幽鹿

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久々に更新いたしました。

無茶苦茶ですが、楽しんで下さったら嬉しいです

キャラ崩壊注意です。

では!


第拾弐話 

 今日は風間ファミリーとの旅行、当日。僕は、集合場所である川神駅の方に向かっていた。

 前日に、京さんとユキ、一子さんが買い物に出かけて色々楽しんだらしいことは、昨晩、家に来訪して下着姿を披露してきたユキから聞きましたが……いやはや、まさか京さんとユキがあんなに仲良くなるとは、思ってもいませんでした。

 二人とも元いじめられっ子という共通点はありますが、片や風間ファミリーに入れた女(大和に救われた女)、片や風間ファミリーに入れなかった女(大和に救われなかった女)ですからね、最初の方こそぎくしゃく――主に京さんが――していましたが、今ではいい友情を築けていそうで良かったです。

 これも全て、一子さんの性格のおかげですかね。しかしまあ、それが原因で一子さんの周辺ではプチハーレムが形成されてるわけで。英雄に忠勝――(みなもと)忠勝(ただかつ)。F組に在籍していて、皆からは源さんと呼ばれている――に心さん、それとユキと、宮本さん……あとはクリスさんも若干怪しそうな気配を感じますね。とまあ、恋人が愛されているのは彼氏として嬉しいとも思うのですが、油断は出来ません。いつ横から奪われてしまうか気が気でないと言いますか……。

 しかし、まあ……。

 彼らになら、僕がいなくなった後、一子さんのことを任せることができます……。

 と、色々と思考を巡らせているうちに集合場所である、川神駅に到着していました。駅構内ではすでに風間ファミリーが集結しているようで、集合時間通りとはいえ、どうやら僕が一番遅かったようだ。

「すみません、遅れました」

 一番最後なので、皆さんに謝罪しつつ小走りで皆さんのところに向かう。きっと皆さん、最後の僕に笑いながら軽口を言ってくるんだろうなぁ。と思っていると、僕の考えとは違い何故か皆さんの表情は慌てており……。

「宗紫、逃げろォ!!」

「逃げて、超逃げて!!」

 と、直江夫妻が真剣で慌てている声色で僕に逃げるように促してくる。

 はて、なぜ逃げないといけないのでしょうか?という疑問を抱きますが、その答えは僕のすぐ背後から聞こえてきまして……。

「ねぇぇ、宗紫……」

 まるで地の底から聞こえてくるような声色が気になりつつも振り向くと、僕の一子さんがまるで幽鬼のような表情で立っており、その拳は表情とは違い力強く握りしめられて……。

「この浮気者ォ!」

「オワッ?!」

 僕の鳩尾辺りを的確に狙った、それこそ一子さんの武道家として出せる威力を持った拳が放たれる。

 僕は少しばかり拳に込められた一子さんの愛情(殺気)に反応してしまい、咄嗟に掌を拳と鳩尾の間に入れ受け止め、拳が壊れないようにゆっくりと握り返す。

「か、一子さんどうしました? しかも、浮気って……」

「……フン! ユキに聞いたんだから。宗紫、ユキが毎回購入してきた下着をユキが着けてる状態で見せてもらってるって、ユキのあのマシュマロおっぱいは宗紫が毎日揉んで育てたって!」

 ……コイツは、公衆の面前で何を言っているんだ? と、いけない、予想外過ぎて口調が……。まあ、一子さんの言ってることは事実ですし、否定は出来ないんですが、訳だけはしっかりと話さないといけませんね。

「一子さん、一子さんが言ったことは事実ですし、その事実を否定することは出来ません。でも、理由はしっかりとあるんですよ」

「……やっぱり、アタシみたいなちんちくりんは嫌だった?」

「ハァ、嫌だったら恋人なんてなってませんよ。それに、体型とかではなく、僕は一子さんの中身に惹かれたんですよ……」

 まあ、ここ最近は、一子さんのその肉体……お体にドキドキしてしまうこともありますが……。

「でも、紫宗は……」

「そのユキのことに関しては、確かに恋人がいるのに軽率な行動でした。ただ、言い訳させて頂くと、下着に関しては幼少の頃からの……彼女がまだ榊原小 雪ではなかった頃からの習慣でした。胸云々に関しては訓練をしてる時の毎度おなじみのような事故です……一子さんも知ってると思いますが、彼女のスピードは僕自身でも捉えられない程に速い。まるで、誰にも触れられたくない。と言わんばかりに……。そんなスピードで動かれては、僕自身は殆ど勘で動かざる得ない。それで動く度に、手がユキの胸に当たってしまっているんです」

「……酷い言い訳。宗紫さん」

「……はい。酷い言い訳です。でも、その言い訳も事実なんです。ごめんなさい、一子さん。今後は気を付けるようにします……許して貰えませんか?」

 僕がそう言うと、一子さんは無言のまま空いてる片手を背中に回し、顔を僕の胸の辺りに埋めるように、ぎゅっと抱きしめてくる。

 一子さんの女性特有の柔らかさに、匂い、体温を一瞬で感じ、どきっ、としてしまうが、そんな状態にあることを一子さんが知るわけもなく、ゆっくりと確かめるように顔を動かし、まるで僕の感触を感じるかのように顔を擦る。

「か、一子さん?」

「……ユキの件は、今のこの状態で許してあげる。宗紫がユキとあんなことや、こんなことをしたのは事実だけど、アタシと言う恋人を放っておいて、ユキと……あんなことや! そんなことや! こんなことを!! したのは事実だけどッ!!」

「か、一子さん、なんかエキサイトしてませんか? 心なしか、腕の力と、顔と体の密着具合が強くなってる気が……」

「でも、許す。アタシは宗紫の恋人だもん。アナタは誰にも渡さない。だから許してあげる」

「一子さん……ありがとうございます」

 より一層、抱きしめる力を強めてくる一子さんに、僕も空いてる片手を彼女の腰に回し、抱きしめる。

 彼女のぬくもりが、より一層強くなり幸せな気分になる。とても、大切な瞬間(刹那)

父から聞いた、母から聞いた、覇を吐いた男から聞いた、あの仲間たちから聞いた、一度だけ見た、偉大な宇宙の恩人(・・・・・・・・)もこのような日常を護りたかったのだろうか……。

 僕もできることなら、そういう人間でありたい。でも、僕は――。

「昼ドラ並みの修羅場が始まったと思ったら、とんでもない甘ったるい光景を見せられた」

「ウェェ、口の中と言うか、全身が甘ったるいなぁ」

「大丈夫、大和? 一応、缶コーヒー、ブラックもあるけど」

「モロ、それ、俺にもくれ」

「なあ、公衆の面前であれは良いのか、まゆっち?」

「あ、あわわわわ……」

「『刺激が強いぜ。しかし、あの小さい頃のみぶっちを考えると、人はこうも変われるのか』」

「ははは、アイツら本当に仲がいいよな!」

 僕の思考を遮るように、友人たちの声が聞こえる。あぁ、しまった、忘れていた。此処は川神駅だった。こんな場所で、先程までのやり取りなんてしていたら、大変なことに……いえ、時既に遅しですね。友人たちを除く、周囲の人間の視線、表情が痛い……。ニヤニヤするもの、嫉妬の視線を向けて来るもの、写真を撮り逃げるように去って行く赤髪の益荒男、軽蔑の視線を向けて来るもの……。

 うん? 何か今変な人物がいたような……。

 まあ、そんな事より、早くここから逃げなければ!!

「か、一子さん、今すぐここから逃げましょう! さあ、早くこのずっと味わっていたい一子さんの抱擁を止めてくだ……一子さん?」

 僕の言葉に全く反応を示さない一子さんを訝しむ。そういえば、おかしかったんだ。エキサイトしていたとはいえ、友人たちの声が聞こえれば、公衆の面前の状況であれば、彼女は凄く可愛く即座に離れる。

 なのに、彼女は今この状況でも全く離れない。

 一体、どうして……。

「か、一子さん?」

「……きゅぅぅぅぅ」

「一子さんッ?!」

 埋めたままの顔を優しく体から引き離し顔を見ると、一子さんは顔を真っ赤にし、目を回しながら気絶していた。

「一体、どうして?!」

 おのれ、あの視界の端に移った益荒男の仕業か!!

「あぁ、あんな長時間近距離でいたから、宗紫成分を過剰摂取したせいだね」

「知っているのか京電」

「うん、アレは大好きな人の近くにいると起こる現象だよ。ワン子は、たまにドロッてしたり、過激になるけど、根は純情だから。大好きな、大好きな、大好きな宗紫と長時間近距離で、匂いと肉体の感触とぬくもりを摂取し続けて、純情リミットがブレイクしたんだよ。ちなみに、大和。私はそうならない様に、夜な夜な忍び込んで、摂取して馴染ませてるから、安心してね」

「いや、別の意味で安心できないから」

 京と大和、二人の茶番を聞き流しつつ、僕は一子さんの抱擁を優しく解き、お姫抱様抱っこのような姿勢に変える。

 電車に乗り、一子さんを早く休ませなければ。あと、先程から無言で怒気を放ってくる武神から逃げなければ……。

「おい、宗紫――」

「こんなところにいられるか! 僕は電車の方に向かわせてもらう!」

「おい、待て!宗……うわぁ、なんだあの動き、気持ちわるっ?!」

 一子さんを休ませるため、武神から逃れる為、僕は無駄に玖錠降神流(くじょうこうじんりゅう)の技術をフル活用して、電車に向かうのだった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 壬生宗紫が、駅で変態機動をしている同時刻。

 川神学園学園長室に3人の人物が居た。

 一人は川神学園の学園長にして、武道の総本山とも謳われる川神院の総代である、川神鉄心。

 一人は、見目麗しい外見に、物静かな雰囲気を醸し出す男性。世界に剣神と謳われる壬生(みぶ)宗次郎(そうじろう)

 一人は、野性的だが品が有り、宗次郎よりも背の高い女性。宗次郎と同じように世界に拳神と謳われる玖錠(くじょう)紫織(しおり)

 その3名が、学園長室に備え付けられているソファに座り、教師と保護者のような形で、対面していた。

「しかし、お二人方が来たときは大変驚きましたよ。何の連絡もありませんでしたからな。ただ、ここに来る前にいたモンスターペアレントに殺気を当てるのは如何なものかと……」

「まあ、僕たち自身がある意味、流浪の民のようなことをしていますからね。連絡なんてできませんよ。殺気の件は……まあ、此方の話の方が重要ですからね。さっさと話し合いをしたいが為に黙ってもらいました」

「私は止めときなよ。って、言ったけどね。宗次郎は大切な大切な息子に関することだからって、先走っちゃって」

「紫織さん、茶化すのは止めて下さい。それに、大切な大切な息子と言うのは貴女もでしょう。 知っていますから、時たま玖錠降神流の技術を無駄に活用して、バレない様に、宗紫の様子を見に行ってるのを」

「ごめん、ごめん……って、それバレてたんだ」

 若干の殺気を込め、視線を鋭くしながら紫織を見る宗次郎。そんな宗次郎の殺気に対してまったく物怖じもしない。むしろ、それこそが日常だとでもいう態度のままの紫織。

 鉄心は、そんな、50年前(・・・・)から、まったく姿、やり取りが変わらない二人を見て内心溜息を吐く。

「ああ、こんな話をしている場合ではなかったですね、鉄心。今日は大切な話が合って来たんですよ。」

「ああ、さっきも言っていましたな……それで、話の内容とは?」

 その鉄心の問いに、宗次郎はゆっくりと、相手に届きやすいように、これから起こる鉄心の苦労を考え、労りを混ぜつつ、告げる。

「ええ、うちのバカ息子が考えている、武神(笑)の決闘と、決闘後の自主退学についてのお話ですよ」

 




益荒男、一体どこの紳士なんだ?

宗紫両親は、若干親ばか入ってます。

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