今日は一部を除いた学生が嬉しく感じる金曜日。
僕は後輩である黒髪を前をパッツン、後ろを二つで結んでいる少女、
「そ、それでですね、友達を作るために物を贈る練習、毎日300回してるんですが……」
「上手くいかないと?」
「……はい」
僕の言葉にまゆっちは暗い表情で頷きます……。
フム、まゆっちは確か地元で友達が出来ず、こっちに引っ越して来たらしいですからね。友達の作り方が分からないからかもしれませんが、この子は変なベクトルに頑張ってますね。
とりあえず、これだけは言っておきましょう。
「何ですか?友達に物を贈る練習って……そんなんだから友達が出来ないんですよ」
「ウッ……!」
「『うわ~、どストレートで言いやがった』」
「当然でしょ、松風?」
僕の言葉にまゆっちはさらに表情を暗くさせ、馬のストラップ――名前は松風――が感想を言う。
ちなみに、まゆっちが言うには松風は馬のストラップに宿った九十九神らしいのですが……正直言うと、ただのまゆっちの腹話術です。だが、まゆっちは腹話術では無いと言うので、彼女の意見を尊重して、僕の中でも九十九神という設定にしています……。
と、話が逸れてしまったが、彼女は根本的に間違っている。
何故なら……。
「まゆっち、松風、友達は『作る』んじゃない。『出来る』んだよ。」
「出来るですか?」
「うん。確かに自分から作りに行くのは大事だよ。だけど、それは何処ぞの軍師気取ってる大和みたいに『何か利益がある』友達を得る時だけだよ。本当の友達、利益云々じゃなくて……コイツと一緒にいたい。コイツとなら喧嘩してもいい、どんな事があっても絶対に見捨てない……。そう言う友達は出来るんだ。ただ自然と、まるで運命がそう決めていたみたいに」
「……私にも出来るでしょうか?そんな友達が……」
まゆっちは先程とは違う暗さを表情に出しますが……先程から何を言ってるんでしょうか、この子?
「僕とまゆっちはそう言う友達でしょ?僕は少なくともそう思っていますよ」
「ッ……はい!わ、私も、私もそう思ってます!!」
「『お、お~、ま、まゆっちに友達が出来た~!!』」
「やりましたよ、松風!」
まゆっちは瞳に涙を浮かべ、松風は嬉しそうな声色で喜び合う。
「まゆっち、そういう時は泣くんじゃなくて、笑顔ですよ。笑顔」
「は、はい!」
僕の言葉にまゆっちは頷き、笑顔を見せてくれました……。とても素晴らしい笑顔でしたよ?顔が強ばって、ヤのつく職業の人が裸足で逃げ出しそうな怖い顔でしたよ……。しかも、刀を持っているから怖さ倍増……。
「……すみません。さっき偉そうなこと言いましたが、考え直させてください」
「ど、どうしてですか?!」
「『と、とんでもない手のひら返しだぜ?!』」
いや、だって怖いですし……。
「ご、ごめんなさい!」
僕は逃げ出した……。父さん、母さん、両親のお仲間たちのような人たちを知っている僕でもあの笑顔は無理でした。
「ま、まままま松風、ど、どどどどどうしましょう?!」
「『落ち着け、まゆっち。とりあえず、友達第一号のみぶっちを追いかけるんだYO』」
「そ、そうですね、松風!お、お待ちください宗紫さん!!」
国の許可を得て帯刀している友達の女子高生に追われ、本気で逃げてそのまま学校の敷地内に入る男子高校生がいた……。僕だった。
……こうして僕はまゆっちからの逃走を成功させ、そのままSクラスに入室することが出来ましたとさ……。後で、まゆっちに謝っておきましょう……。
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僕がまゆっちから逃走を成功させてから数時間が経ち、何の代わり映えのない朝のHRが始まる……と考えていた時期が僕にもありました。
朝のHRは、とある生徒によって一時中断しました。
何故なら……。
金髪で西洋系の顔立ちをした、性別女性の転校生が乗り込んできたからです……。
馬で……。
大事な事なので、もう一度言います。転校生が馬で登校してきたのです。
流石のSクラスの皆さんもザワつきましたよ。まあ、数名――準、冬馬、ユキ――はいつも通り――準はロリでないことを嘆き、冬馬は
それよりも、僕は……いや、僕たちSクラスは全員思いました。
あの転校生、典型的な日本を勘違いしている外国人だと……。
そして、我がクラスの委員長がいつも通りの登校スタイルで、転校生の前に現れたことによって、あ、絶対勘違いを加速させていると……。
普段、争っているSクラスの心が一つになった瞬間でした……。
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転校生の衝撃的登場を見届けた僕たちは、この学園の特徴の一つである『決闘システム』によって、グランドに来ていました。
詳しい説明を省きますが『決闘システム』は学校側が認めればどんな形式で戦っても良い、合法的に生徒同士が行う決闘のことで、決闘が始まるということで、HRは中止になり、ほとんどの生徒が決闘を見に来たというわけです。
ちなみに、決闘をしたのは一子さんと転校生さんで、勝ったのは転校生でした。
一子さんの敗因はたった一つ、シンプルな答えです……てめぇは、私を怒らせた……と言う訳ではなく、ただ単に修行用の重りリストバンドを外さずに戦ったからです。
そして決闘を終えた今は、互いに付けた愛称に対する不満で睨み合っています。
と、そんな風に傍観してる場合じゃありませんでしたね。
僕は保健室から借りてきたコールドパックを持って、一子さん達の所へ向かいます。
「大丈夫ですか、一子さん?」
「宗紫?」
僕が近づくと二人は睨み合うのを止め、僕の方へ視線を向けてきました。僕はアイスパックを一子さん渡すと、一子さんは一言お礼を言ってくれてから転校生にレイピアで突かれた箇所を無言でアイシングをし始めます。僕は一子さんがアイシングしている間に転校生さんの方へ近づく。
「初めまして、一子さんの彼氏で、Sクラスの壬生宗紫と言います。転校初日から一子さんがすみません」
「いや、良い経験が出来たんだ、謝らないでくれ。自分はクリスティアーネ・フリードリヒ、クリスと呼んでくれ」
僕はクリスさんに謝罪し、握手を交わしながら自己紹介をします……。この時、Fクラスの男子――特にガクト、福本――から嫉妬や憐れみの混じった視線を向けられましたが、何故でしょうか?と、考えていると一子さんが僕の方へと近寄り……。
「えい!」
抱きついてきました。普段より積極的な一子さんに驚きつつも、僕も一子さんを抱きしめ、一子さんの体温と柔らかい感触を楽しみます。
「どうしたんですか、一子さん?」
「……クリのことばっかり見てた」
「いや、自己紹介しただけですよ?」
「そうだけど……うぅ、でもぉぉ」
一子さんは可愛らしい声を出しながら、若干上目遣いで見てきます……。ヤバい、僕の彼女が可愛すぎてヤバい!女神!
「一子さん、可愛すぎです」
「う、は、恥ずかしいこと言わないでよぉ」
「イヤです。一子さんは世界一可愛いですよ」
「うぅぅぅ」
一子さんは恥ずかしかったのか、抱きしめる力を強めて僕の胸の方に顔をうずめます。周りからピンク空間を形成するな!とか、誰かブラックコーヒーを!とか、この川神1のバカップル!とか、大和、私たちもバカップル呼ばわりされよ!とか、京、お友達で!とかが聞こえてきたり、クリスさんがシスコンにお姫様抱っこされてようが、知ったこっちゃありません。
今はこの一瞬の幸福を感じて……。
「もう我慢ならん!!」
と、僕の幸福の時間は一つの怒声で終了しました。
一体誰ですか、空気を読まずに叫びやがったKYは?と、思いつつ声が聞こえたほうを向くと……。
「うわぁ」
僕の視界にはKKKと言う文字付きの鉢巻をし、一子さんの顔をプリントしたシャツを着ている集団がいました。
「俺は親衛隊
KKKと名乗った彼は自分の持つワッペンを取り出し、僕の足元に投げつけてきました。
どうして、僕が貴方達と決闘しないといけないんですか?と言う気持ちを表情に出しながら首を傾げると……。
「貴様は、俺たちの女神である一子さんを誑かしている!そんな貴様を俺たちは許さない!!」
彼の言葉に賛同するように、他のメンバーであろう人たちも頷きます……。つまり、一子さんの彼氏である僕に嫉妬して、決闘という形で制裁を加えようとしているわけですね。
「わかりました。その決闘……」
僕は自分のワッペンを取り出し……。
「Sクラスの
「何故、此方なのじゃ?!」
制服ではなく着物を着て、黒髪で二つお団子を作っている女子生徒が叫ぶ声が聞こえますが……まったく、冗談なんですからそんなに慌てなくても……。
「とは冗談で、Sクラス壬生宗紫その決闘受けま……せん!」
「「「ハァァァ?!」」」
僕が勢いよく言い放った決闘しません発言によって、周囲はざわざわと騒ぎ始め、さらにはブーイングや非難するような視線を向けられる。
「う、受けんのか?」
「ええ、そう言ってますが、学園長」
確認のためか聞いてくる学園長に何言ってんだ、コイツ?って表情をしながら返答する。
そもそも……。
「僕が決闘を受けてあげる理由がまったくありません。結局は、私怨的なことでしょう? そんなことに時間を割いてあげるほど僕は暇ではありませんので……さあ、一子さん戻りましょう。あ、一応保健室にも行かないとですね」
「う、うん」
呆然とする皆さん、顔を真っ赤にして怒りで震えている宮本さんを無視して、僕は一子さんの手を取りその場から去ろうとする。
「き、貴様ァ!!」
「待て、宮本!」
すると、怒りの頂点に来てしまったのか宮本さんがこぶしを振り上げ、僕に殴り掛からんと走ってくる音と、宮本さんを制止しようとする小島先生の声が聞こえ……。
「ハァ」
溜息を吐きつつ僕は振り返り、宮本さんを少しだけ睨む。すると、宮本さんは額に汗を浮かべ拳を振り上げた不自然な状態で動きを止める。体調でも悪かったのでしょうかね?
「宮本さん。納得できないのなら、放課後に決闘しましょう。当然、観客はナシで、いるのは先生方、それでいいですか?」
「……わかった」
僕の提案にゆっくりとだが、頷く宮本さん。いやはや、納得していただいてよかった。
こうして、僕は周囲の皆さんと動けなくなった宮本さんを無視して、一子さんを連れて保健室に向かうのだった。
感想待ってます