真剣で殺し愛夫婦の子供に恋しなさい   作:紅 幽鹿

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第伍話

 今日は、風間ファミリー――アタシ、キャップ、お姉様、大和、京、モロ、ガクト幼馴染メンバー――の金曜集会。

 風間ファミリーの秘密基地であるとある廃ビルに集まって、何気ない時間を過ごす。そんな集会。

 まあ、今日は転校生のクリス――私はクリと呼んでいる――を風間ファミリーに入れるかどうかの議題があったけれど、メンバーの多数決の結果、様子見という形になったわ。

 でも、正直……。

「クリス云々は別に良いとして、宗紫にファミリーに入って欲しいよな」

 と、大和が私の考えを代弁するかのように言うと、皆も確かに。と、普段は私の彼氏である宗紫を追いかけまわすお姉様でさえ賛同してくれる。

「でも、本人があまり乗り気じゃねぇんだよなぁ」

「乗り気じゃないと言ってもなかなか金曜日に来れないだけみたいだし、暇があるときはこっちに顔を出してくれてはいるから、ほぼファミリーに入ってるものだと考えても大丈夫だと思うよ」

「よし! なら、宗紫はファミリーの仲間だな!」

 ガクトの言葉にフォローを入れるような形で言ったモロに、キャップが力強く宣言すると、皆も快く頷き始める。

 アタシの大好きな人がみんなに認められているのを感じて、私も自然と笑顔になる。

「でも、不思議だよなぁ。出会ったのは中学生ぐらいだけど、それこそ風間ファミリーができた頃からずっといるような感覚になるんだよなぁ」

「分かる」

「俺様もついうっかり小学生の頃の話とかして、何それ知らない。って表情とかされるときあるしな」

「そうなると、あの頃の大和を宗紫は知らないんだよね」

「み、皆。そんな目で俺を見ないでくれ。や、やめろぉ」

 京の言葉に、みんな一斉に温かい瞳で大和を見ると、大和自身は当時の黒歴史を思い出したのか身体を震わせる。

「身悶える大和も素敵、結婚して!」

「京、お友達で……そういえば、宗紫のやつ決闘どうだった?」

 いつも通りの直江夫婦のやり取りを繰り広げながら、大和はふと思い出したかのようにアタシの方に視線を向け、みんなも心配だったのか、一斉にこっちを見てくる。

 私は皆に携帯のメール画面を見せながら……。

「無事、勝ったらしいわ!」

 と、胸を張りながら告げると、皆が安堵の表情を浮かべつつ、わっ!と盛り上がる。

「宗紫のやつ勝ったのか!」

「ふ、ふん。ワン子の彼氏なんだから勝って当然だ。勝ってなかったら、二人の仲を引き裂いていたところだ!」

「ちょ、ね、姉さん。照れ隠しだからってそんな冗談、言わないでくれよ。ほら、ワン子の表情が……」

「あー、あれは……。とりあえず、ご愁傷様」

 京と大和が何故かおびえているけど、アタシは気にしないわ。お姉様、とりあえず後でお話し、しましょう?

「まあ、とりあえず、だ! 今度、宗紫の奴が来たらアイツの勝利を盛大に祝ってやろうぜ!」

「「「おー!」」」

 アタシの彼氏が、皆に愛されていて嬉しい。と、思いながら頬を緩ませていると……。

「それじゃあ、もう一つの議題。壬生夫妻の質問会はじめるぞ」

「ふぁ?!」

 キャップがとんでもない議題を始めようとしていた……。

「ちょ、ちょっと! 急に壬生夫妻なんて言わないでよ!」

「あ、突っ込むところ、そこ、なんだ……」

 モロの呟きなんて気にしないわ、ええ、気にしないわ。

「まだ結婚してないのに!」

「でも、いずぅれぇは?」

「するわ」

 巻き舌風に言いながら京の言葉に対して、私は即答する。

 ええ、するわよ。必ず宗紫さんと結婚するわよ。

「ま、待て! 結婚なんて、私はみとめ――」

「はい、質問。ワン子は宗紫のどこが好きなの?」

「遍く総て」

「おぉ。ワン子、遍くなんて言葉、知ってたんだな」

 お姉様の言葉を遮るように出された京の質問に即答すると、大和に失礼なことを言われる。アタシだって、宗紫とのお勉強会で頑張ってるんだから!

「それじゃ――」

 様々な宗紫とアタシに関する質問が出されて、全部即答する。こんな風に楽しい時間を過ごしながら、今回の金曜集会は過ぎていった……。

 

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~~~~~~

 風間ファミリーが金曜集会を開いている同時刻。

 川神市で最も治安の悪い場所、親不孝通りにあるアパートの一室にて壬生宗紫は腕を組み、目の前に置かれている3つの段ボール箱を見ながら悩んでいた。

 3つの段ボール箱に貼られた送り状の依頼主名の部分には『壬生宗次郎』、『壬生紫織』、『坂上覇吐』と書かれており、普段は送ってこない人物の名前が、しかも2つの段ボールよりも一際大きい段ボールであることが彼の悩みの原因だ。

「覇吐さんと母さんの送ってきたものは『アレ』でしょうが……父さんは何でしょうか?まさか、母さんたちと同じものではないでしょうし……」

 疑問を抱きつつ、宗紫は段ボールを開封していく。母親と彼の両親の仲間である坂上覇吐の段ボールの中身には、彼が想像していた通りの品……。青少年の聖典でもあるエロ本が隙間なく詰め込まれていた。さらには詰め込まれているエロ本のジャンルは様々であり、まさに古今東西ありとあらゆるエロ本が詰め込まれていると言われても過言ではなかった。

「ハァ、よくこんな沢山のエロ本を送ってきますね。頭、お花畑なんですかね?」

 軽く言葉の毒を吐きつつ、数本エロ本を取り出し部屋の隅に置き、残りは幾つかの透明なビニール袋に仕分けしていくように入れていく。

「これは大和、これはガクト、これはモロ、これは……。ああ、川神鉄心さんと百代さんにもいろんな意味でお世話になっていますから、段ボールで梱包して送ってあげましょう。さて、問題はこの父さんの段ボールですね……」

 エロ本の仕分けを終えると、自然と彼の父親が送ってきたモノへと目が向けられる。

「さて、残りは父さんの段ボールですが……はてさて、何が入っているのやら」

 恐る恐ると、段ボールを開けていく。中身は緩衝材カラーコーンが詰められており、贈り物は見えない状態になっている。

「ハァ、ここまで厳重にするなんて、そんな立派なものを父さんが持っているとは――」

 緩衝材を除けつつ父親に対しての文句を言っていた宗紫の言葉が止まる。

 緩衝材に包まれていたモノ、朱色の鞘に納まっている日本刀を手に取り、鞘から抜いて刀身を露にする。

 刃こぼれ一つなく、まるで流水のような美しき波紋。見る者すべてを魅了するかのような刀身だ。そんな刀を数秒見つめた後、宗紫はゆっくりと息を吐きながら刀を鞘に納める。

「いい刀ですね……。しかし、僕たちが刀を所持しておくのに一般の方と違い、面倒な手続きをしないといけないのを、父さんは分かっているでしょうに」

 苦笑いを浮かべつつも、どこか嬉しそうにしながら宗紫はケータイを取り出し、とある人物へと電話をかける。

「あ、もしもし。あずみさん? ちょっと、日本刀所持したいので諸々の手続き九鬼の方でお願いできますか? お礼として、今度の仕事の給金は半額か無償でいいですので」

[ハァ?! いや、なんであたいが――]

「ありがとうございます! よろしくお願いしますね!」

 壬生が、日本刀を所持する為の手続きを頼む宗紫に対して文句を言おうとしたあずみだったが、宗紫はその言葉を遮るように一方的に感謝の言葉を述べ、通話を切るのだった……。

「さて、明日の準備をしないとですね」

 こうして、壬生宗紫の夜は過ぎていく。

 




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