最期の旅路の果てに   作:夕闇

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 敵を喰らう武器「神機(じんき)」を振るい、アラガミを倒す専門のハンター”神機使い”。それらを束ねるフェンリルという組織。そのフェンリルに所属し、ロシアハイブにて派遣された男性士官は防衛任務に就いていた。

 

 男性士官はハイブを囲う外壁の屋上から、外部居住区へ移り住むための手続きをしている国民を見下ろす。かなりの行列である。違反者も見られ、連行されてりもしていた。

 

 ちなみに、ああいった手続きの条件を満たしてない者の一部はハイブの周りでテントを張り、僅かにでも助かろうとするのだが山のごとく巨体を持つ”ウロヴォロス”と”ハンニバル”が共闘し駆逐してしまった。そのため、今では滅多に見かけない。ただ、わざと見殺しにしたのではないかとの意見もあり、勝手に住み着いたのだからという言い訳は難しく、対価を貰って仕事している以上、人命だとかで世間から責められ叩かれる。

 

 

「人類の生存可能域も減っていってるし、国が力を合わせて殲滅作戦でもしてくれるといいんだが……はぁ……」

 

「お前は暗い顔ばっかだな」

 

 

 落ち込んだ気分でいると、ハイブに派遣された軍の軍人に肩を叩かれる。神機使いより五つ年上だ。

 

 男性士官は振り向くと、投げられた珈琲缶を片手で受け取る。

 

 

「おっと、これは准尉殿、お疲れ様です」

 

「おう、お疲れさん。お前に朗報持ってきたぜ」

 

「はぁ、朗報ですか」

 

「気の抜けた返事だな。OUROBOROS(ウロヴォロス)が消え、ARAGAMIの個体数が減っているっていうに」

 

「おぉ、本当ですか!」

 

「本当だよ。今日だって小型の襲撃なかっただろ? おかげ様でほぼ休みがない状態から解放されたもんだ」

 

「はー、軍の方で何かされたんですか?」

 

「いや、ARAGAMI……というよりかはHANNIBAL(ハンニバル)の動きが変わったんだ。他を屈服させて仲間を集めている感じだ。とんでもなく脅威だが動きが鈍い。しかも、増えると思えば減っているときもある。こっちは困惑気味だよ。微妙な顔をすんな。散開した奴等が防御力の低い場所を襲うことが減るんだ、壊滅する村や町を思えば悪いことばかりじゃない」

 

「当然、原因は――「知らん」ですよね」

 

「かなりの集団だからとミサイルの発射が決定し射出された――が、迎撃された。やはりMAIDEN種は厄介だな。ああも撃ち落とされては容易に手が出せん。かといって広範囲高威力の核の使用は上級国民が許してくれないしな。せっかくARAGAMI共から距離が離れているんだ。ちっとの影響くらい許容しろって話だわ」

 

「未だに手を拱(こまね)いて見ることしかできないってことですか……」

 

「OUROBOROSがまだ健在だったらハイブを襲った経緯もあって撃てたんだろうが、消えちまったからなぁ。外で頑張ってる神機使いと軍の奮闘に期待って感じだ」

 

「あ、後、各国との足並みは揃いそうですか?」

 

「そりゃお前、俺のわかることじゃねぇよ」

 

「連合軍、早くARAGAMI共を殲滅してくれ……」

 

「まぁ、気持ちはわかるわ」

 

 

 会話が途切れると准尉は煙草に火をつけ、吸い、吹かす。安全を求めて国民がハイブに集っている。眼前に広がる光景は決して良いとはいえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 留守中に拠点を襲われ、白い竜人の化け物を取り逃がした私は、より安全地帯を求めて拠点を地下へと移した。と、言ってもヤドリギに関して私のできることは少ない。主にクルスが頑張った。

 

 そして今は就寝し、精神世界にてクルスの要望を叶えている最中。私のできない行為を補佐してくれる彼女へ、お礼の気持ちとその謝礼である。

 

 

「はい、できたわ。三つ編みよ。貴女の髪、長いからいじりがいがあるわね」

 

『次これやって』

 

「夜会巻きね、わかったわ」

 

 

 クルスにヘアスタイルのカタログを見せられ、次の髪型を指定される。現実世界で閲覧した雑誌はこうして精神世界にももたらされる。編むのに時間がかかった髪だけれど、私自身もいじるのが好きなので、特に意に介さず三つ編みを解いた。

 

 今は無き実家であるクルス好みに魔改造された部屋にて、私はクルスの髪をいじる。ご機嫌メーターが上限突破し、津波のような感情を私にぶつけてきた。世話する私も純粋な喜びを教えられれば気持ちがいい。

 

 

『ねぇ、カミラ』

 

「何かしら」

 

『カミラって許婚がいたんだよね』

 

「そうね、時代錯誤だっていって無くなった家もあるけれど、私の家にはあったわね」

 

『もしも、その人が生きていたら結婚とかしたい?』

 

「大崩壊がなければ結婚していたでしょうけれど、家がなくなった今はどうかしら……再興する気もないし、会ってみないとわからないわね」

 

『ふーん?』

 

 

 嫉妬。クルスから話しておいて、機嫌が悪くなっていくのがわかった。友達を取られるみたいで嫌なのだろうか。

 

 

「でもそうね、恋愛をするにしても今は駄目ね」

 

『駄目なんだ』

 

「喜ばないの、せめて言葉の感情くらい抑えなさい」

 

『だって、駄目だったし』

 

「それは今の私が貴女の姿だからよ。他人の女の姿なのに好きになりました、なんて言われても複雑すぎるじゃない」

 

『じゃあ、ずっと駄目だねー』

 

「ふぅ……もう……。なら、クルスはどうなのよ」

 

 

 人々のために犠牲になってしまったとはいえ、研究にトラブルなく順調であれば、いずれは再びルームメイトと一緒に学生生活を送れただろう。容姿に優れているのだし、彼女を放置する異性はそういないはずだ。

 

 

『わたし?』

 

「そう」

 

『昔のことなんて知らないし、今で満足だよ』

 

 

 どうにもクルスは過去のことを否定し続ける。そこに違和感があるのは確かだが、追求を恐れている感情もあるし、クルスと不仲になっても良いことはない。私は言葉を飲み込み、クルスの髪をいじり続けた。

 

 

 

 

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