最期の旅路の果てに   作:夕闇

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 辺境の村に数日滞在した後、アリサとその両親に別れを惜しまれつつ、村から出発した。それと、辺境の村から結構離れた場所に、男の顔を持った黒いヴァジュラが森の熊さんこんにちはと偶然出くわしたので、私は死ねと挨拶をし、剥離したコアに道中の付き添いをしてもらうことにした。なお、遺体は森に還って頂いている。

 

 まったく、比較的安全とはなんだったのか。周囲の村々を滅ぼしてもお釣りがくる強さ。とんだ辺鄙(へんぴ)な場所へ出没したものだ。

 

 その後、ハイブが陥落したという情報を得た私は、地域住民と避難することなく、ハイブへ向かった。危険は承知である。他人の不幸で申し訳ないが、貴重な資料やらを入手できる絶好の機会なのだし。

 

 徒労に終わるかもしれないが、この世界で吸血鬼として自由を謳歌するならばやる価値はあるように思える。人間側に私という肉体素材を一切渡さず、得られるものがあるならそれで良い。

 

 私は敵に察知されない程度にハイブ周辺に待機し、冥血を消費してカモフラージュを自身に付与する。BOR寄生体因子をクルスが弄って開発した能力だ。

 

 イカの色素胞の仕組みを取り入れたと笑顔でのたまっていた。その頃が少し懐かしい。けれども、体臭まで誤魔化しきれないので素早く行動しなければ。

 

 

(グチャグチャだこと、酷い有様。竜が空を飛び回っているし、悪魔の居城のようね)

 

 

 以前立ち入れなかったハイブ。中はあちらこちら人間の死体で一杯だった。人間側は頑張ったようだが、多数のアラガミの姿を確認できる。ただ、一つ良いことに、焼けた鉄の臭いや死体の臭いにより私を感知しづらくなったはずだ。

 

 

(軍事施設、神機使いの拠点は何処かしら……運が巡ってくれるといいのだけれど)

 

 

 倒壊した建物、化け物達が漁っている現場、地下施設と大都市並みの広さだけあって遅々として探索が進まない。

 

 

(またハズレ、同じ結果ばかりね)

 

 

 クルスのサポート無き今、それらしき建物を発見するまで時間を要した。

 

 建物を発見後は、屋内に侵入する。一部焼け焦げ欠落しているが、防衛拠点のような建物はなかなかに広い。オーガテイル等の小型のアラガミも徘徊しており、一筋縄ではいかなそうだ。

 

 

(電力がまだ生きてるのよね……まずは監視カメラを落とさないと)

 

 

 私は引き続きカモフラージュを維持して、人間の死体を漁るアラガミを避け監視室を探しだした。カメラのシステムをシャットダウンさせては、記録が残らないようメモリー媒体を破壊する。それからは、出会うアラガミを意気揚々と始末した。

 

 閉じた扉は化け物のしでかした所業と思わせるため、素手を吸血牙装のオウガ型に変貌させて破壊。己の影に冥血を伸ばして影を拡げ、地面から狼のようなハウンズ型を出現させてはアラガミや人間の遺体を貪らせ、取り込み、処理をする。

 

 今や私は吸血牙装備なくとも、それに酷似した攻撃方法ができるようになっていた。ハウンズ型を介して、身体にもたらされた人間の血液は甘味である。元人間だけあって、私の好みは新鮮な人の血なのだろう。クイーン討伐時期に好きではなかった輸血パックも、今では好物の一つだ。

 

 

(だからって、狩らないけどね……獣ではないのだし。でも、実際首を差し出されたら喜ぶかも……)

 

 

 牙を伸ばして吸血もできる。人間の感覚もだいぶ薄れた。伝奇のごとく、吸血鬼(レブナント)から立派な吸血鬼(ヴァンパイア)へと着実に成っている。

 

 閑話休題。今はまだ、アラガミ蔓延る敵地だ。余計な雑念を捨て、次へ向かう。有益な情報がありそうな事務所を見つけたが、パスワードがいる。個人の荷物や職員の死体から手掛かりを見つけなければ。

 

 武器施設の扉の前に到着すると、破られた防壁に人の残骸が散乱していた。外に残って戦ったか、避難が間に合わなかったか。なんにせよ、化け物の食べ残しは他より酷い。

 

 中から人の気配もする。化け物も当然いる。

 

 

(広いフロアね、訓練場も兼ねているのかしら。とりあえず、お食事中の化け物をおびき寄せないと)

 

 

 私は人の残骸を拾い上げると、武器施設にたむろする化け物達の前に投げる。相手は私に気づいたようで追いかけて来た。一旦武器施設から引き離す。

 

 ほとんどの化け物はこうして襲い掛かってくれる。けれども、時折、戦わずに逃げる個体もいるので、それが一番厄介だ。

 

 再び戻ると、人の気配を探って歩き、少しずつ濃くなる新鮮な血の匂いにまだ生きていると確信を持って距離を縮める。

 

 私はクローゼットのような武器入れの前に立った。見たこともない武器が扉の前に散乱しているので、非常にわかりやすい。

 

 扉に軽く力を入れると、抵抗された。

 

 

「Open(オープン) Sesame(セサミ)」

 

「ひぃ……っ」

 

 

 中で充満していた血の匂いも開放される。腕に怪我をした若い女が中に隠れていた。これは私が血の匂いに敏感なだけなので、大きな怪我ではない。

 

 

「あ、あぁっ……! 良かった、人だぁ……!」

 

 

 目尻に涙を溜め、感激する若い女。何か既視感がある。私は若い女を見定め、覚えのある血の匂いを頼りに、記憶の片隅にありそうな過去を掘り起こす。

 

 

「あ、あの……! 救助に来てくれた方ですよね……っ!?」

 

「……また会ったわね。2年ぶりかしら?」

 

「へ……?」

 

 

 若い女は何のことかよくわからなそうな、きょとんとした顔をする。

 

 思い出した。この若い女は野盗の腰巾着のような女だったはずだ。きっちりと制服を着こなしている。ここの職員になっていたか。

 

 若い女はしばらくの間ぼんやりとし、そして理解したらしく、顔を真っ青にして震えあがった。2年前と恰好も違うのによくわかったものだ。記憶力が良くて助かる。

 

 優秀な彼女に、私は微笑んだ。

 

 

 

 




Q.野盗の女の登場時期って?
A.9話。
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