最期の旅路の果てに 作:夕闇
今までは優しい質問だったが、今回からはキツイ。さて、どうなるだろうか。
『お手柔らかにお願いします』
「はい、か、いいえでね」
『はい』
「始めるわ」
正直、予想もつかない。
「貴女はクルスが嫌い」
『……』
「貴女はクルスが嫌い」
『……あの』
「貴女はクルスが嫌い」
ここは譲らない。
「……」
『……はい』
「貴女はクルスに否定された」
『……はい』
「貴女はクルスに捨てられた」
『違う、わたしの方から捨てた』
「別回答も受け付けていないわ。はい、か、いいえよ」
『……はい』
「貴女は思うがままに力を振るった」
『はい』
「貴女は貴女を生み出したキッカケとなったARAGAMIが嫌いだ」
『はい』
「貴女は貴女を生み出した人間が嫌いだ」
『はいっ!』
「クルスを除いた吸血鬼が嫌いだ」
『……カミラは好きだよ』
「まぁ、こんなものかしら。自由に発言してもいいわよ」
異端な審問官ごっこは終わり。村や町を巡った時、クルスは出てくることはなかった。存在ごと海の底へ沈めたかのように。嫌悪の感情を抑えきれないとわかっていたのだろう。
決定打はハイブでの出来事だ。決めつけではあるが、力を持ったお人好しが誰も助けないで静観をするとは思えない。私と口論さえなく、沈んでいた。愛他心の強い女性なら、無理してでも目覚めていたように思う。けれども、その素振りさえない。
沢山の人間が死んでいるのに、その事が伝わっているはずなのに。悲しみに歪むことなく、クルスは微笑を浮かべ、健やかに寝ていただけだった。
『やっぱり、綻びはでちゃうかぁ。でも、カミラはアレの事を神聖視しすぎだと思うよ』
「アレ呼ばわり、ね……隠すのに諦めがついたのね」
『そうだね』
彼女の波が、奔流が、私を叩きつけ蝕もうとする。
「よく私の方へ乗り換えたわね。私は貴女を殺すことばかり考えていた女よ」
『んー、カミラの自決がきれいな姿だったから。アレを否定したのも最高だね!』
「悪趣味ね。自滅特攻で他者に責められたり、悲しまれたりされたことはあったけれど、自殺そのものを褒める人は初めてだわ」
『……嫌いにならないの?』
嫌いになってどうしろというのだろう。私の性格は知っているだろうに。
「私の言葉を忘れたのかしら。嫌いになっていたら、ハイブにいる化け物共にこの身を差し出していたわ。そんなことよりも、エイジス島の襲撃でも引っ込むのは許さないから」
『わたし、とってもとーっても悩んだのにあっさりだね……手加減とかやだよ?』
「あるもの全てを完膚なきまでに叩き潰して更地にするわ。下手な希望が残っても嫌だもの」
『わたし、楽しくなっちゃうけど、否定はしないでね』
「楽しくなってもいいけれど、実りある遊びをしてね。わざと取り逃しなんてしたら殺すわよ」
『いいなぁ……やっぱり、カミラは好きだよ』
彼女は仮面を捨ててあるがままを見せつける。それは、人の皮を被ったイキモノだった。
「無邪気ね。それと純粋な破壊衝動」
これを友や身の回り、人々を救いたいと願う心優しい者へぶつけてしまえば、シルヴァの娘だって化け物呼ばわりする。サイコキラーと善人は互いに理性で線引きできても、感情的に分かり合えない。大方、攻撃的な思想を共有しようと心を侵蝕したのだろう。しかし、それを否定された。幾ら言葉を重ねても、正直な想いは伝わってしまうのだから。
きっと、彼女の何一つを否定せず、そのままを受け入れなければならない。難儀な子だ。
私はクルスに近づき、顔をよく見せてと頬に触れる。
「ほんと、とても怖くて、だけど綺麗で、おぞましいほどに素敵な笑顔だわ」
少しくすぐったそう。
ハイブの情報が違っていてもそれでいい。彼女を私の中から逃がさないための口実なのだから。こんな手の掛かる子供を他人に預ける気もない。
私は私の意志により沢山の人間を屠る。躊躇しないし止まらない。その時、彼女は子供のように声を上げて笑うだろう。
Q.クルスとクイーンの違いがわからない。
A.ゲームをプレイした際、精神世界のチュートリアルクルスと暴走クルスの外見特徴より。特に4話で内面の指摘を示唆したつもりです。アラガミ達の邪悪なナニカも同様。