最期の旅路の果てに   作:夕闇

24 / 26
24

 

 

 

 あらゆる障害を潰し、または探しては処理し、私は化け物が飼われている巨大な区画に到着した。区画の中央には天井に逆さまで胸から下を埋め込んだような女神像が鎮座している。

 

 ノヴァは育成途中らしく、地球を呑み込むには足りないように思える。しかし、今まで見たどの化け物よりも巨躯を誇り、クイーンと殺し合いをした時のような強者の気配を滲ませていた。

 

 

「まぁ、強そう」

 

《むむっ、わたしの方が強いよ!》

 

 

「張り合わないの」

 

 

 昔の彼女とノヴァを比較したことで対抗心をくすぐったようだ。

 

 そんな話をしていても、ノヴァに反応はない。待っていても同様、抜け殻のようだった。なんというか、全体的に確固たる意思を感じない。生きただけの屍だ。

 

 

「幾ら強大な存在であっても、中身がなければただの人形よね。拍子抜けしたかも」

 

《でも、アレを見てるとなんかムカつく》

 

 

「既視感? 私はこの化け物と相対するのは初めてよ。クルスを討伐する時期に現れたこともないし、その当時に現存していたら二重に騒ぎになっていたわ」

 

 

 私はクルスと会話しながらノヴァに近づく。これだけの化け物だ。ヤドリギの養分としてもさぞ素晴らしい効果を得るだろう。それを、私もコアも無傷で手に入るのだから喜ばしいことだ。

 

 とはいえ距離を置いて、クルスに粛清の棘を飛ばすよう指示する。空中に棘が出現し、ノヴァを襲撃した。

 

 鋭い一撃がノヴァに突き刺さり、出血する。致命傷でもなく軽い傷だ。ノヴァのコアを綺麗に剥離するための解体作業なので、体の強度を確認したのだ。

 

 しかし、ノヴァに命が吹き込まれたかのように両目を開き、咆哮。活動を始めた。 

 

 

「あらやだ、中身がないのは擬態だったのね」

 

 

 化け物の瞳は意思の強い優しい信念を持った存在を感じさせた。まるで善良な人間が憑依したようだ。

 

 次に気になること。クルスの驚きを露わにした感情が私に伝わった。そして、一瞬の内に感情が沸騰して、激しい憎悪をノヴァに叩きつける。

 

 

《カミラ、アレがいる! あの化け物の中にアレがいるよ! 自害できないくせに、お友達にわたしを殺そうとしてもらうとか絶対に許さない! 殺してやるんだからぁ!!!》

 

 

 

 アレ。シルヴァの娘がここにいる筈も、その死体がノヴァに加わるとも思えない。クイーンを討伐した際、後の事を託したのだ。シルヴァとジャックが人格者だと信じている。他の可能性を考えるとするなら、シルヴァの娘に似た愛他的な人物なのだろう。

 

 

「直接壊すのは私の役目よ。クルスは今まで通りサポートに回って、全てを私に委ねなさい」

 

《カミラだけずーるーいーっ!!》

 

 

 言い方は可愛いかもしれないが、増悪と破壊衝動の濁流が私を押し流そうとする。それでも、主導権を奪わず、こちらの言う事を聞くのだから昔よりは成長しているのかもしれない。

 

 

「止めを刺すのは譲るわよ。もちろん、遠隔攻撃でそのまま仕留められそうなら始末していいから」

 

《ほんとにほんと? 可哀相だからやっぱなしーは駄目だからね!》

 

 

 

 話している間にも、ノヴァの両目から飛んでくる光線を避ける。

 

 

「手加減無用な戦いをしたじゃない。ここに来るまで、神機使いを除いても何人の人間を殺したと思っているの? 他人の影と重ねられるのは不愉快だわ」

 

《……そうだったね! ――カミラだーい好きーっ!!》

 

 

 

 天井に張り付いていたノヴァの髪が半ばから折れ、その切断面から大小様々のミサイルが飛び出し、襲い掛かってくる。私は冥血を消費して最大威力の衝撃波で迎え撃ち、一斉ミサイルを軋ませた。

 

 私とノヴァの間に一〇〇を超える爆裂が横一面に発生する。

 

 

「ああ、もうっ! こっちの会話より向こうに集中して! お喋りの方が楽しくなってどうするのよ!」

 

 

 ノヴァは私達を倒そうと必死になっているのに、その私達がお喋りに興じてどうしろというのか。そもそも殺したいんじゃなかったのか。頭の中が殺したいコールからラブコールに切り替っている。

 

 私は真剣に戦っているのに、リフレインする大好きという甘い声。この戦闘に空しさすら覚えた。

 

《本気の本気、すごーく本気なのにー!》

 

「私も本気で戦っているの! クルスを待っているせいで防戦一方よ!」

 

 

 衝撃波では抑えきれないレーザーを中心にノヴァが怒涛な攻撃を繰り出した。その中に、ノヴァの髪が触手となって襲い来る。私は広大な室内を縦横無尽に駆けて回避を行い、逃れられぬ攻めは胎動する黒鉄の剣に力を集約させて、オーラ斬りをし強引に突破。

 

 赤い軌跡を残して全ての触手を切り落とし、私は片腕に赤い燐光を纏わせ、片手から巨大なレーザーを放っては、ノヴァの光線にぶつけて相殺した。

 

 側(がわ)だけ見れば、白熱した殺し合いだろう。

 

 そんな中なのに、クルスは必死に私を如何に好きかを語りにくる。私は一体どうすればいいのだろうか。次に答えなければ、ノヴァを殺ってしまおう。

 

《ごめんねー?》

 

「何て呑気な声!?」

 

 

 クルスに緊張感がまるで感じない。私が負けるわけがないと信じているのは嬉しいが、これでは真剣に戦っている相手に失礼だ。

 

 ノヴァは触手による攻撃手段を失うと、天井から巨大な片腕を生やし、上に振り上げては拳を振るう。

 

 これは迎え撃てるかわからない。巨大な剛腕に私は回避を選択する。振り上げた拳が床に叩きつけられる。直撃はまぬがれたものの、私の真横に風圧が発生。床は大きな地響きを起こし、崩れ、地形の形を変えた。

 

 

「くっ……!?」

 

 

 油断していた訳ではないけれど、床の鋼鉄板がひび割れて沈み、それがトラップのような効果を持ち、一瞬だけ移動が緩まってしまう。ノヴァの両眼から光線が放たれ、私は跳躍してその場から離れる。だが、足に光線が被弾。肌が焼け、煙が立った。

 

 肌が軽く焦げて出血はある。しかし、行動は弱まる程度ではない。再生力もあり、瞬時に回復する。

 

 けれど、クルスが爆発した。

 

 

《よくもカミラを……殺してやるっ!!!》

 

 

 とうとうクルスが殺る気になった。しかし、私は頭痛を覚えた。本気になるまでのタイムラグが酷い。必死に戦っている者達を観戦して楽しいとか、そういった愉悦や気楽さはあるがこれは違う。こんな頭の痛くなる戦い、生まれて初めてだ。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定