最期の旅路の果てに 作:夕闇
白い竜人に拠点が攻撃される前、私は街から離れ、廃村をカモフラージュとして生活する人間らとコンタクトを取っていた。もちろん、目の特徴が異質すぎるので黒いミラーのゴーグルを装着している。服装も軽装でなく、スチームパンクを意識した格好だ。
初めは彼らに取り囲まれ物々しい雰囲気であった。相手も私と同様、ゴーグルで目元や顔下を布で半分覆ったりして素顔を隠している。女一人に銃器を持ち取り囲むとは、市民ゲリラや暴力集団を彷彿とさせ、どうにも真っ当な集団でないように思えた。
拘束されはしないが、背中に散弾銃を突きつけられ、荷物も取り上げられた。今の私は丸腰だ。説得をしてゴーグルだけ外させはしなかったが。
簡素な部屋にリーダー風の青年が一人、左右には同年齢の男と女が一人ずつ私を囲む。彼等との会話を一通り終えると、勧誘され、しかし私はその話を断った。
「お話は理解しました。けれども、お断りさせていただきます。私には一人旅の方が性に合っていますので」
「まぁ、そう言うなって。化け物共が暴れるに暴れて工事が遅々として進まない”ハイブ”って言うコロニーが一部開放されるそうなんだ。これでようやく食料の生産が安定して、避難済みの上級国民だけじゃなく、俺等にもまともな配給が回ってくる。
それでも外部居住区の受入れが飽和状態で定員オーバーなんだが、どうにかチケットを手に入れてな、もう野ネズミのような怯える日から解放されって訳だ。野盗の生活からおさらばなんだよ。
だけどな、俺等の仲間でもないアンタを連れてってうっかり口を滑らされると周りの印象が怖いだろ? なぁに、仲間には女もいる。ただ、俺等と一緒に家族としてハイブに受け入れてもらうだけさ」
「こうして会話できて嬉しくはありますが、再度お断りします」
群れるのが嫌いという訳ではない。下手に人の輪に加わってしまうと食料の調達が難しそうなのだ。それにクルスと議論を重ねた上で判断したい。何故か人との交流を嫌がっている。廃村でもそうだったが、何かトラウマがあるのかもしれない。憂鬱状態が続くのは、私の精神衛生面でも良くないのだし。
交流を持つなら、ハイブへ向かう彼らより、身分証明が難しそうな村や町が良いだろう。幸いにして、化け物が進行していない安全地帯があるというのだ。
ゆえに、彼らとはここでお別れだろう。彼らはハイブへと数日の内に移動するとのことである。
「だったら一人で歩いて行くんだな、ハイブの場所も教えねぇ。ARAGAMI共の進行を食い止めて無事な街や村はあるが、アンタが乗ってきたバイクも回収させてもらうぜ。命だけは取らないんだから安いよなぁ?」
「優しいのね」
一向に承諾しない私に、リーダー風の青年は強情な女だと呆れた。
その後は、リーダー風の青年が仲間を呼んで来たときと同様、背中に銃を突きつけられ、村の外へと生身一つで追い出された。
帰り道は少々億劫だ。例え、訓練された人間でも、次の町や村まで辿り着くのに徒歩で数日の日数を必要とする。普通に死ぬ距離はある。今の身体スペックならば、走って今日中に帰宅できるが、背中に突き刺さる監視の目がある。監視網を抜けるまで我慢だろう。
カミラが村から離れる際、外で待機していた仲間の一人にカミラの監視を任せた3人は、引き続き会話を再開する。先に口を開いたのは左右で囲んでいた若い男であった。
「やーい、フられてやんのー。なっさけね~」
「んだよ、うるせえなぁ……っ」
「ねぇ、無理矢理仲間にできなかったの? あの人死んじゃうよ?」
若い女がカミラの身を心配する。
「はー、無理に決まってるだろ、あんな不遜な女。下手すりゃ、直接手を下さないといけねぇし、ここにきて仲間に余計な被害を出したくねぇよ」
「もし、あの人がどうにもできなくなって戻ってきたら助けられないかな……?」
「ないな! ……いや、涙目になんなよ。あの女は戻ってこないって意味だ。自尊心が高そうな奴だ、道半ばで死ぬだろうよ。そうやって優しいことばっかしてると、また怪我するぞ。刺された傷、完全に治ってないんだろ?」
「そうそう。絶対俺等には頭下げねーよって態度が滲み出てたわ。血統書の犬が野生に帰りましたって感じ、お高くとまってるよな。だから気にすんなって」
「う、うん……」
若い女は指摘されると、小さく呟き俯くばかりで反論することはなかった。
アラガミの被害を受けていない安全な村や街は確かに存在している。けれど、輸入が限られ、人の受入れが飽和し物資が不足する