真・恋姫†夢想-革命- 世界の破壊者   作:サラザール

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前半は桂花編で、後半が栄華編となっております。


拠点フェイズ8

 俺が廊下を歩いていると、向こうの方から喧噪(けんそう) ———いや怒声が聞こえてきた。

 

<司>「騒がしいな……誰か喧嘩してるのか?」

 

 向かった先には(しゅん)(らん)(しゅう)(らん)、そして軍師の(けい)(ふぁ)がいた。

 

<春蘭>「うぬぬ、言わせておけば……」

 

<桂花>「全く、これだけ言っても分からないの?」

 

 この状況から考えると、春蘭と桂花が(かん)(がく)々の言い争いをしているようだ。

 

<司>「何かあったのか?」

 

<秋蘭>「おお、檜山(ひやま)。こんなところでどうした?」

 

<司>「警備の仕事が早く終わったから、事務処理をしようと思ってな……」

 

 街の警邏(けいら)を終わらせた俺は、報告書と警備の予算を(まと)めるため自分の部屋に戻ろうとしていた。

 

 今週は問題も起こらず、先週ワームが現れてから怪人は姿を見せていない。

 

 まあ何もないのが一番良いが、奴らが何もしていないとは限らない。警戒は怠ってないがな。

 

<司>「それで、この二人は何やってんるだ?」

 

<秋蘭>「ああ、それがな……」

 

 俺が秋蘭と話している間にも、春蘭と桂花は言い争っている。

 

<桂花>「だから貴女は馬鹿だって言うの」

 

<春蘭>「何っ! もう一度言ってみろ!」

 

 話の流れからすると、桂花が春蘭に喧嘩を売っていると推理できる。しかし何故そんなことになったのだろう。

 

<桂花>「何度だって言ってあげる。盗賊や小部隊と戦う時なら、貴女の突出は勇敢な突撃となるわ」

 

 なるほど。春蘭のやり方に意見しているようだ。

 

<桂花>「だけど、大部隊が相手のときに無駄な突撃なんてされると、兵が消耗するし、下手をすれば戦線が瓦解するのよ」

 

 確かに春蘭なら大勢の賊でも正面から突っ込むだろう。しかし桂花が恋敵相手にここまで丁寧に意見するとはな。

 

<桂花>「だからやめなさい、猪みたいな突進は、と。そう言ったの。理解してもらえたかしら?」

 

<春蘭>「ぐっ……! 貴様ぁ!」

 

<司>「…………」

 

 言い方に問題はあるし、挑発もしているが言っていることは間違ってないな。

 

<秋蘭>「落ち着け姉者。ここで声を荒げて何になる。それに桂花の言っていることも一理あるぞ」

 

<春蘭>「秋蘭……」

 

 秋蘭の言葉で春蘭は今にも死にそうなほど青ざめた表情で見つめる。

 

<秋蘭>「そんな顔をするな。別に姉者の意見が全て間違いと言っている訳でもない。……なぁ、檜山?」

 

 秋蘭はそう言って俺に話を振ってきた。

 

<司>「そうだな。状況にもよるが、策を弄して確実に勝つのが一番良いかもしれんが、春蘭の突撃なら相手にとっては脅威になるな……」

 

 俺は戦士だが武将でも軍師でもない。兵を率いたことなど一度もないし、指揮したことすらない。とりあえず()(しゅう)での戦を思い出しながら意見を言う。

 

<桂花>「そんなのはただの賭けじゃないの。戦いに賭けを持ち込んでしまえば、勝ち負けは限りなく運になるわ」

 

 確かにそうだが、今まで戦ってきた俺はこれでやってきたからな。この世界での戦では余り好まれないやり方だろう。

 

<春蘭>「では、どういうものが貴様の考える戦いだと言うのだ!」

 

<桂花>「心理と思考の読み合い。そこから紡ぎ出される完璧な策こそが、予定調和としての勝利を()(りん)さまに捧げることが出来るのよ」

 

<春蘭>「……はんっ」

 

<桂花>「何よ、その笑い方は!」

 

 桂花の持論に春蘭は鼻で笑った。どうやら春蘭なりの考えがあるようだ。

 

<春蘭>「予定調和としての勝利など無い。戦場は千変万化の生き物なのだからな」

 

 これも間違ってないが、そんなやり方をしてくるのは盗賊か怪人くらいなものだ。

 

<司>「さっきから口出ししてないがいいのか?」

 

 俺は秋蘭の方へと振り向く。このまま時間が無駄に流れるだけで話し合いは平行線のままだ。

 

<秋蘭>「この二人は犬猿の仲だからな。私が口出ししたところでどうにかなるものではない」

 

<司>「それじゃあ収拾がつかんだろ?」

 

<秋蘭>「実際のところ、二人には二人なりの持論があり、必ずしも間違っているとは言えないからな。どちらか片方を悪者にすることは私には出来んさ」

 

 秋蘭の言ってることも最もだ。この状況を収拾できるのは華琳だけだが、この場にはいないからか。

 

<司>「こんなことのためにお前らの主を呼ぶわけにもいかないもんな……。どうすればいいんだ?」

 

<秋蘭>「ふむ。まぁ今は見守るしかあるまい」

 

<司>「その内終わればいいけどな」

 

 はっきり言ってこのまま夜になっても喧嘩は続くと俺は考えている。互いの考えを認め合うのが一番だが、この二人は絶対そんなことはしない。

 

<春蘭>「とにかく! 貴様のような甘い考え方では、華琳さまに勝利など捧げられん」

 

<桂花>「ふん。それこそ視野の狭い脳味噌筋肉の言いそうな台詞ね」

 

<春蘭>「だ、誰が脳筋だと!」

 

 桂花の挑発に乗った春蘭は、腰の剣に手をかけた。まあ、いくら味方でも剣を抜くような真似はしない筈…………よな?

 

<司>「はぁ、仕方ない……」

 

 危ない雰囲気が漂ってきたのを感じた俺は、この状況をなんとかするために新たな標的が必要だと考える。

 

<司>「こんなところで剣を抜くなよ」

 

 俺は春蘭を抑えるため手にかけている剣の柄を握りしめる。

 

<春蘭>「離せ、檜山! こやつに分からせてやらねばならん!」

 

 俺は春蘭を抑えるため手にかけている剣の柄を握りしめる。それでも必死に俺を振り解こうとする春蘭。この状況を抑えるには俺が悪者を買って出るしかない。

 

<司>「落ち着けよ馬鹿! ここで怒れば自分が馬鹿だって言ってるようなもんだぞ、馬鹿!

 

<春蘭>「なん……だと?」

 

 俺は馬鹿という言葉をわざと(・・・)強調しながら止める。そして案の定、春蘭は反応して標的を俺に変えた。

 

<春蘭>「誰が……三代前まで受け継がれたバカだとぉーっ!」

 

<司>「そこまで言ってねぇよ! てか本当に抜きやがったなコイツ……」

 

 春蘭は手にかけた剣を抜き、俺に振り下ろした。俺は(ふところ)から "ライドブッカー" を取り出す。

 

 ディケイドに変身してなくても武器に変えることができるため、ソードモードにして春蘭の攻撃を防ぐ。

 

<司>「ふん!」

 

<春蘭>「はぁっ!」

 

 流石は三国志の世界で "魏武の大剣" と言われた武将だ。攻撃を防ぐもなかなかの威力だ。

 

<春蘭>「やるな……。貴様とは一度やり合ってみたかったところだ。覚悟しろ!」

 

<司>「場所を考えろ! こんなところでやったら迷惑だろ!」

 

<春蘭>「うるさい!」

 

 春蘭は全然聞く耳を持たず、再び剣を振り下ろした。

 

 彼女の目は(らん)(らん)と輝き、怒りと興奮を漂わせながら俺との間合いを計る。

 

<司>「上手くいったか……」

 

<春蘭>「何か言ったか?」

 

<司>「別に……」

 

 この状況を解決するにはこれしかなかったからな。最も春蘭がここまで短気なおかげでさっきまでの喧嘩は終わった。

 

 桂花も何処かに行ったのか、見渡すとどこにもいない。後はコイツをなんとかするだけだが……。

 

<春蘭>「檜山(ひやま)、そこになおれ! 私を猪バカ扱いしたことを後悔させてやる!」

 

<司>「そこまで言ってねぇよ!」

 

<春蘭>「知らん!」

 

 ここまで理不尽に攻撃されるのは初めてだ。とりあえず適当に相手して気が済むまでやってやっておくか。

 

<春蘭>「ふははははっ! 待て檜山! 刀の(さび)にしてくれるわーっ!」

 

 そういえば自分の世界にこんな言葉があったな。 "君子危うきに近寄らず" 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<司>「アイツ、手加減ってものを知らんのか……」

 

 (しゅん)(らん)と一悶着あってから時間が経った。あれから廊下で何度も剣を交え、新作の饅頭の話を出して状況を回避した。

 

 この前、(しゃん)(ふー)の部屋を掃除した後に食べた饅頭がこんなところで役に立つとは思わなかった。

 

 事態をなんとか収拾し、部屋で報告書を(まと)めた俺は警備隊の予算計画書を手に(えい)()の部屋へと向かっていた。

 

<司>「大丈夫かな。前みたいにやってもまた聞き入れてもらえないんだろうなぁ……」

 

 (ちん)(りゅう)に来てから数日後、俺は栄華とコミュニケーションを測ってみたが、邪険に扱われるという結果に終わった。

 

 だからといって、あの男嫌いな彼女に突っぱねられたくらいで引き下がるつもりはない。

 

 俺がこの世界で目的を果たし終えるまでにはまだまだ時間が掛かる。それまで仲良くなるように努力していくしかないな。

 

 そうしている内に、栄華の部屋の扉の前にたどり着いた。

 

<司>「さてと……ん?」

 

 俺は部屋の扉を開けようとするが、中から話し声が聞こえてきた。恐らく文官たちと仕事をしているのだろう。

 

 このまま入っても邪魔になるだけだと思い、俺は終わるまで待つことにした。それまで暇だったため、扉の隙間を見て中を覗き込む。

 

<栄華>「先の決算報告書はどちらですの?」

 

<文官A>「こちらでございます」

 

<栄華>「ふむ……うーん、やはり……先月、先々月のものもいただけますか、推移を確認します」

 

 栄華は執務室の中心で、他の文官にテキパキと指示を与えながら、開いた(ちく)(かん)を難しそうな表情で見つめている。

 

<栄華>「はぁ……やはり食費が当初の予定よりも、かなり多くなってきていますわね……兵の数が増えていますし、当然と言えば当然なのですが……」

 

 警備隊の方にも入隊してくる人が増えてきたから、これから先も経費が掛かるだろう。

 

<栄華>「先日得た戦利品の一覧は?」

 

<文官B>「でしたらあちらの棚に……今お持ちします!」

 

<栄華>「いえ、自分で取りますので、手を止めず作業を続けて下さい」

 

 立ち上がろうとした文官を制して、栄華は自分で棚に仕舞われた竹簡を取り出した。

 

<栄華>「ふむ……ちょっとよろしいですか? 今戦利品の管理をしているのはどなたです?」

 

<文官B>「わ、私ですが……」

 

<栄華>「こちらの報告書にあるものを、全て換金して下さい。上手く交渉すれば、追加した兵の分はまかなえるはずです」

 

<文官B>「か、かしこまりました」

 

 そう言って先程開いた竹簡を、戦利品の管理をしている文官に渡す。

 

<栄華>「とはいえ、これはただの応急処置……根本的な解決にはならない。今後のことを考えれば、やはり安定した税収がなければ、いずれは破綻してしまう……」

 

 先のことを見据えているのだろう。

 

<栄華>「各地の税収報告は(まと)まりましたか?」

 

<文官C>「はい、こちらになります」

 

<栄華>「やっぱり……どこも芳しいとは言い難いですわね……。源となる税の徴収方法から見直すべきか…… 各所から要請書の見積もりはどうなりましたか?」

 

<文官C>「こちらにご用意しております」

 

<栄華>「いただきます。こちらへ」

 

 指示に従い、文官の一人がたくさんの竹簡を栄華の机に運んできた。見積書の山が机の上に置かれるのを見て、栄華は渋面になる。

 

<栄華>「はぁ……必要なこととはいえ、これだけの予算申請があると思うと、頭が痛くなってきますわね……。まずは緊急性の高いものから当たります。次いで街道整備に賊対策と、用途と重要度を分けて下さい。今日中にこの山を片づけてしまいますわよ」

 

 栄華の言葉に、文官たちは真剣な表情で返事をする。熱を上げるあの空気はまるで戦場へ向かう兵士たちのようだ。

 

<司>「この世界でも大変なんだな……」

 

 政治家も国会でこんな仕事をしているのだろうと俺は思う。

 

 汚職事件や不倫など不祥事を起こす人もいるが、この世界で国や州に仕える役人は比較的真面目なのだろう。

 

<司>「入りにくいな……」

 

 あの雰囲気で警備隊の予算書を出すのに、相当な覚悟が必要だ。特に急ぎではないため、明日にでも回しておくか。

 

<栄華>「……さっきから何をしていますの」

 

<司>「ん? ああ、栄華……」

 

 急に背後から声がして振り向くと、そこには扉を少し開いて中から栄華が顔を出していた。

 

<司>「よく俺がいることが分かったな?」

 

<栄華>「あんなにも気持ちの悪い妖気を漂わせていれば、誰だって気がつきますわ」

 

<司>「おいおい……仮面ライダーの力でもそんなものないぞ?」

 

<栄華>「何を言っていますの! 扉の隙間からねっとりと嫌らしい視線を向けていたくせに! これだから男という生き物は……どうせわたくしの首筋や胸元にばかり視線を向けていたのでしょう!」

 

 言い掛かりにも程がある。どんだけ男嫌いなんだよ。

 

<司>「自意識過剰だな……鏡見た方がいいぞ?」

 

<栄華>「な、何ですってっ!?」

 

<司>「冗談だ、本気にするなよ」

 

 まあ半分は本気だ。栄華は男をケダモノだと思っているが、俺はそういうのに興味はない。

 

 というより、今まで普通に生きていくことに意識してきたから考えたことすらない。

 

<栄華>「……ところで、その手に持っている竹簡は何ですの?」

 

<司>「ああ、警備隊の予算について纏めたものだ」

 

 栄華は俺が手にしている(ちく)(かん)に視線を向ける。

 

<司>「こっちは急ぎじゃないから、忙しいなら日を改めるよ」

 

<栄華>「いえ、構いませんわ。先程の件も急な仕事ではありませんので、預かりますわ」

 

<司>「そっか……なら、ほい」

 

 そう言って俺は手に持った予算書を栄華に渡す。

 

<栄華>「言っておきますが、もし一つでも不備があれば何度でも書き直しさせますので、そのおつもりで」

 

<司>「手厳しいな。まあ、それは仕方ないか」

 

<栄華>「当たり前です。曹家の金庫番を舐めないでいただけるかしら?」

 

<司>「別に舐めてないさ。それじゃあ頼む」

 

 そう言って俺はその場を後にする。

 

<司>「今回も成果が何も無かったな」

 

 いつになったら彼女が心を開いてくれるのだろう。けど、前よりは良くなったと感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<栄華>「…………何を考えているのかは分かりませんが、仕事はできますわね」

 

 

 




最後は季衣編です。お楽しみください。
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