真・恋姫†夢想-革命- 世界の破壊者   作:サラザール

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第4話 天使と無邪気

<司>「ここが華琳の城か……」

 

 城下の街を抜けて、やがてたどり着いたのは華琳の居城。ここも城門の偉容から続くのに相応しい、立派な場所だ。

 

<華琳>「街を歩いている間もそればかりだったわね。他の言葉は無いのかしら?」

 

<司>「……見慣れてる華琳と一緒にしないでくれるか? 城の中なんて初めて見るんだからびっくりするよ」

 

  "マシンディケイダー" を引かせて城内を見渡す。

 

<司>「それはそうと、街を見てたけど警備兵らしき人は少なかったな」

 

<華琳>「ええ。人手が足りなくてね。たまに盗みを働く者が現れる始末よ」

 

<司>「そうか……」

 

 そんな話をすることになったのは、俺の配属先についてだ。街の大通りを通ってきたが、住民は多けれど見回りの兵は少ないように感じた。

 

<華琳>「なら、司には警備隊に入ってもらえるかしら?」

 

<司>「そんな簡単に決めていいのか?」

 

<華琳>「街を少し歩いただけであなたは今の状況を見抜いたのよ。その観察力を生かして頂戴」

 

<司>「ああ、分かった」

 

 初めて来たとはいえ、俺もそこまで気付けるようになったのは意外に思える。普段はそんなに周りを見ようとしないが、何故か気になってしょうがなかった。

 

<???>「あ、お姉様、秋蘭様! お帰りなさいませ!」

 

 華琳と会話しながら歩いてると、庭の向こうから別の女の子が声を掛けて来た。その子は清楚で(そう)(こう)と同じ髪の長さだ。

 

<華琳>「ええ、柳琳(るーりん)。いま戻ったわ」

 

<柳琳>「申し訳ありません、お姉様。栄華ちゃんと一緒にお迎えに出ようと思ったんですが……()(ろん)姉さんがどこかに行っていて」

 

 柳琳と呼ばれた彼女も、華琳や曹洪に負けないくらい可愛いらしい女の子だ。

 

<司>「……秋蘭。この子も華琳の親戚か?」

 

<秋蘭>「うむ。(そう)(じゅん)といって、栄華と同じく曹家一門に属するお方だ。華侖は実の姉だな」

 

 なるほど、そういう関係か。親戚同士で一緒に住んでいれば、年の近い女の子ならお姉ちゃんと呼ぶこともあるからな。

 

<司>「曹洪の時みたいな注意点はあるのか?」

 

<秋蘭>「いや、特にないな」

 

<司>「そうか……」

 

 特にはない。まあ、さっきの例もあるから、最初は様子見だな……。

 

<柳琳>「姉さん、城下で見ませんでしたか?」

 

<華琳>「大通りを抜けてきたけれど、見た限りの場所にはいなかったわね」

 

 曹洪は意志の強さが第一印象に来たけど、彼女はそれよりも優しいというか穏やかな雰囲気が先に来ていた。探してる華侖という姉のことも、素直に心配してる感じだ。

 

 ここまでの会話を聞いていると、几帳面(きちょうめん)で細やかな性格なんだろう。丁寧に整えられた髪も、曹洪や華琳のそれよりもどこか柔らかい感じがする。

 

 しかし何故だろう。曹洪とは違う何かを感じる。クセの強い子には見えないが、俺の勘ではそう言っている。

 

<華琳>「それと……司」

 

<司>「ああ」

 

 華琳に呼ばれて "マシンディケイダー" を引きながら、俺は精一杯のアピールとして、曹純に向けてぺこりと頭を下げる。

 

<柳琳>「はい、お話は聞いています。盗賊の情報提供者のかたですよね? 私は姓は曹、名は純……字は子和(しわ)と申します。以後、お見知りおきを」

 

<司>「ご丁寧にどうも。俺は檜山(ひやま)(つかさ)です」

 

 まあ、初対面の挨拶としてはこんな感じだろう。

 

<司>「俺のことは司で構わない。よろしく」

 

<柳琳>「はい。こちらこそよろしくお願いします、司さま」

 

<司>「え!? いや、さまとか付かなくていいから。名前だけで十分だから……」

 

<柳琳>「そうですか? では、司さんとお呼びさせていただきますね?」

 

<司>「あ、ああ……」

 

 そう言って柔和な笑みを向けてくれる曹純からは、一切邪気が感じなかった。少なくとも、ごく一般的に俺を歓迎してくれているのが分かる。

 

<華琳>「それと柳琳。部屋の件なのだけれども……」

 

<柳琳>「あ、そうそう。栄華ちゃんは最初、(うまや)の隅でも使わせておけって言ってましたけど、お客さまをそんな所にお通し出来ませんから……一番手前の客間を掃除しておきました」

 

<司>「厩っ!?」

 

 曹洪の奴、そんなことを言ってたのか……。いくら男嫌いでも限度があるだろ。

 

<柳琳>「もしかして、お姉様か秋蘭さまのご指示でしたか?」

 

<華琳>「……いいえ。それで構わなくてよ」

 

<柳琳>「ふふっ。なら良かったです」

 

 曹洪のことは少しイラッとしたが、それにしてもこの子……。なんて子だろう……。

 

<柳琳>「あの、司さん……」

 

<司>「ん? どうした?」

 

<柳琳>「栄華ちゃん、男の方がすごく苦手で……。もし城門の所で会っていたら、きっとお気に障ることがあったと思いますけど……どうか、許してあげてください。本当は、すごく心配りがあって、優しい子なんです」

 

<司>「ああ、気にしてないから大丈夫だ」

 

<柳琳>「そうですか。よかったです!」

 

 そんな顔で許してあげてなんて言われたら、誰だってはいとしか答えようがない。不意打ちするのもほどがあるよ、この子。

 

<柳琳>「それじゃあお姉様。私、華侖姉さんを探してきますね」

 

<華琳>「ええ。私たちも見付けたら声を掛けておくわ」

 

<柳琳>「よろしくお願いします! それでは秋蘭さま、司さん、失礼します」

 

 曹純は俺達にもう一度可憐な花のような微笑みを見せて、足早に城の奥へと去って行った。

 

<司>「…………」

 

<秋蘭>「……な? 特に注意するところはなかったろう?」

 

<司>「あ、ああ……そうだな」

 

 注意するところはなかった……のだが。

 

<華琳>「司。先に行くわよ」

 

<司>「なあ、華琳……」

 

<華琳>「何?」

 

<司>「あの子、本当に華琳の親戚か? 俺には天から舞い降りた天使に見えたけど……」

 

<華琳>「天の遣いはあなたでしょう。馬鹿なこと言っていないで、先に行っているわよ」

 

 絶対に信じない……いや、信じたくなかった。どうしてあんな子が華琳の親戚なのかが不思議でしょうがなかった。それともう一つ、何故かあの子には普段から苦労してそうな感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<秋蘭>「向こうが食堂で、その先にあるのが謁見(えっけん)の間だ。朝儀やそれ以外に集まるときは、だいたいあそこを使う」

 

 客間に案内されるついでに、俺は秋蘭に通り道にある施設を軽く教えてもらっていた。

 

<秋蘭>「この辺りは倉庫だから、中に入ることはそれほどないだろうな」

 

<司>「なるほど……」

 

  "マシンディケイダー" を一旦工房の近くに置いてきた俺はふと曹純の姉のことを思い出す。

 

<司>「なあ、秋蘭。一ついいか?」

 

<秋蘭>「何だ?」

 

<司>「華琳の曹一門って、あともう一人いるんだよな? 曹純の姉の……真名しか知らないから言えないが」

 

<秋蘭>「華侖……(そう)(じん)のことだな」

 

 なるほど、曹仁というのか……。

 

<司>「ああ、その曹仁という人は、曹洪の時みたいに注意することってあるか? それとも、さっきの曹純と同じ?」

 

<秋蘭>「ふむ、華侖か……」

 

 何故か秋蘭は戸惑った表情を浮かべる。曹洪や曹純にはアドバイスをすぐにしてくれたが、この子は出てこないのか。秋蘭ならそういうのは慣れていると思ったのに。

 

<秋蘭>「まあ……会えば分かるだろう」

 

<司>「不安しか感じないんだけど……」

 

 今のところ変わり者が一人、天使一人で、三人目がどっちに転ぶか予想が付かない。

 

 曹家全体から見れば前者っぽいし、姉妹と考えれば後者の可能性もある。しかしさっきから俺の勘がどっちでもないと言っている。何故だろう……。

 

 確か聞いたことがある。曹洪や曹純、曹仁だけでなく、春蘭と秋蘭も華琳の親戚であると。夏侯と姓は違っても、親が兄弟ということも。

 

 そうなると、変わり者が二人、常識人が二人となる。

 

<司>「分からなくなったぞ。曹仁」

 

<???>「あたしのこと、呼んだっすかー?」

 

<司>「ああ。曹仁という人がどんななのかって話を……え?」

 

 周りを見回すも、辺りにはどこにもそれらしき姿がない。

 

<秋蘭>「……上だ、檜山(ひやま)

 

<司>「上?」

 

 秋蘭の言葉に、屋根の上に目を向けると……!

 

<???>「うっすっすー♪」

 

<司>「…………」

 

<???>「秋姉ぇ、お帰りっすー!」

 

 屋根の上に座った女の子は、ニコニコと人懐っこい笑顔を見せながら、こっちに元気よく手を振っていた。

 

<秋蘭>「うむ。華侖も久しいな」

 

 髪の長さと色はぱっと見て華琳に近くて、親戚だと理解できるが……口を開いた瞬間、今まで会った曹家の三人とは全く違う子だと分かる。

 

<華侖>「ねえねえ、秋姉ぇ。そっちの人は誰っすか?」

 

<秋蘭>「華琳さまの連絡にあったろう。今回の件の参考人でな……」

 

<司>「檜山(ひやま)(つかさ)だ。よろしく」

 

<華侖>「ひやまつかさ、ひやまつかさ……。なんだか長くて言いにくいっすね」

 

<司>「呼びにくいなら、好きに呼んでいいぞ」

 

<華侖>「なら、んー」

 

 俺がそう言うと、曹仁は少し考える素振りを見せる。

 

<華侖>「……司っちっすねぇ」

 

<司>「……司っち」

 

<華侖>「ダメっすか?」

 

<司>「いや、それでいいよ」

 

<華侖>「じゃあそうするっす!」

 

 秋蘭が口を濁すのも理解した。確かにこれは、会ってみないと分からない子だ。悪い意味で、じゃないのは良かったが。

 

 しかし彼女の服装を見ると、露出度が高い。この世界のファッションなのだろうか。あるいは……。

 

<司>「それで、曹仁はどうしてそんな所にいるんだ?」

 

<華侖>「あはは、華侖でいいっすよ」

 

<司>「ん? いいのか? それって真名だろ?」

 

<華侖>「んー、そういうのは気にしないから大丈夫っす。司っち、さっき華琳姉ぇや秋姉ぇのことも真名で呼んでたし、それならいいかなーって」

 

 彼女なりにちゃんと見てたのか。もしくは直感だけで言ってる可能性もあるが、華侖は無邪気で良い子そうだ。

 

<司>「まあ、華侖が良いって言うなら、俺も気にはしないけど……話を戻すが、華侖はなにやってんだ?」

 

<華侖>「ひなたぼっこしてたっす!」

 

<司>「ひなたぼっこねえ……」

 

<華侖>「でも、屋根の上は思ったほどあったかくなかったす……」

 

 今日は日は出てるけど、そこまで日差しは強くはない、確かにひなたぼっこに向いてる日じゃないな。

 

<華侖>「お日さまに近い方が、あったかいって思ったんすけど」

 

<司>「なら、部屋にある布団を持ってきて、日の当たるところに置いておけば? そしたら太陽の熱で温かくなるからそこで寝転がるのもいいかもしれんぞ?」

 

 そう言うと華侖は目を輝かせる。

 

<華侖>「おお! それ、いいっすね。司っち、すごいっす! ……あ、でもこれ、いつ服を脱げばいいっすか?」

 

<司>「脱ぐ?」

 

 何故そこで服を脱ぐ話になったのだろう。

 

<華侖>「だって、裸になったほうが、体に温かくなった布団に寝転がる時気持ち良くなるっすよ?」

 

 なるほど、この子は脱ぎ癖があるのか。だから露出度の高い服を着ているのだとしる。というか、それもう痴女だぞ。

 

<司>「……おい、秋蘭」

 

<秋蘭>「……私に振らないでくれ」

 

 ああ、これはもう諦めてるやつだな。

 

<司>「服は脱ぐ必要ないだろ。まあ、自分の部屋でなら良いかもしれないけど……」

 

<華侖>「なるほど……だったら、やってみるっす!」

 

 華侖はそう言ってひょいと立ち上がると、そのままこっちに向かって駆け出そうとした。

 

<司>「お、おい! 危ないぞ!」

 

 一階の屋根でも、約三メートルある。ここから飛び降りれば怪我するのは間違いない。

 

<華侖>「このくらい大丈夫っすよー。ね、秋姉ぇ」

 

<秋蘭>「……いや、私もやめた方が良いと思うぞ」

 

<華侖>「えー。そんなことないっすー! 試してみればわかるっすー!」

 

<司>「だからそれが危ないんだって……」

 

<柳琳>「姉さん、そこで何をしているの!!」

 

 その時だった。華侖の反論を遮った直後に、曹純の声が響いたのは。

 

<華侖>「あ、柳琳! 司っちから、ひなたぼっこの良い方法を教えてもらってたんす。司っち、すごいんすよー!」

 

<司>「そんなんですごいと言われても……」

 

 曹純の声がした方を振り向くと、彼女の横には華琳もいた。

 

<華琳>「……いつまでも来ないと思ったら、何をしているの、司。秋蘭もいて」

 

<司>「いや……秋蘭と話してたら、ちょうどあの子と会ってさ」

 

<華琳>「そう……」

 

<柳琳>「もう、屋根の上なんて危ないっていつも言ってるでしょ……。早く降りて……ううん、降りて来ないで!」

 

<華侖>「どっちっすか、柳琳?」

 

 手の掛かる姉を心配する妹。なるほど……曹純がどこか苦労人な気がしたのはこういうことだったか。

 

<秋蘭>「……少し奥に行けば二階の窓があるだろう。ひとまずそこから降りて来い、華侖」

 

<華琳>「そうなさい、華侖」

 

<華侖>「はーい……」

 

 流石の華侖も秋蘭や華琳には逆らえないらしい。どこか渋々といった様子で、屋根の奥へと去って行く。

 

<柳琳>「大丈夫よね……途中で落ちたらしないわよね……。あぅぅ、姉さん……心配だわ……」

 

<司>「…………」

 

 曹純も優しいから、あの姉ちゃん相手じゃ色々と苦労するのだろう……。

 

<香風>「あ、お兄ちゃん」

 

 ひとまず華侖が降りてくるのを皆で待っていると、建物の脇から香風と春蘭、曹洪が姿を見せた。

 

<司>「おお、香風。春蘭たちも一緒ってことは風呂は終わりか?」

 

<春蘭>「いや、(うまや)に馬を戻しに行っただけだ。先に香風を客間に案内することになってな」

 

<栄華>「…………」

 

 俺が春蘭達と話す間も曹洪は俺から明らかに距離を取って、自分から視界に入らないようにしている。

 

 男嫌いといっても、自分からもちゃんと距離を取るところを見ると、曹純の言ったように、根は悪い子じゃなさそうだ。

 

 まあ、向こうもこっちに接触する気はないみたいだし、距離を保ってればお互い不幸にはならないか。

 

<司>「でさ、少し話があるんだ。華琳」

 

<栄華>「!!! ちょっとあなた!!!」

 

<司>「ん? どうした曹洪?」

 

 俺が華琳の名を呼ぶと、声を荒げて近づいてきた。しかし視界に入ってる。

 

<栄華>「どうしたもこうしたもありませんわ! どうして貴方のような下賤(げせん)な輩がお姉様の真名を口にしていますの!!」

 

<司>「下賤なんて言う人、初めて見たよ」

 

 俺ってそんな風に思われてたのか。ちょっと傷付く。

 

<栄華>「ああ……お姉様の大切な真名が(けが)れてしまいますわ。いや、もう穢れてしまったに違いありません……この穢れは、その口を切り裂いて血で清めるしか……!」

 

<司>「怖いことを言うね〜」

 

 俺は他人事のように呟く。まあ、何かされそうになっても抵抗できるから焦る必要はないんだけど。

 

<栄華>「ああ……こちらから距離を置いていれば少しはマシだろうと思ったのに……放っておけば!」

 

<柳琳>「栄華ちゃん、落ち着いて」

 

<栄華>「これが落ち着いていられるものですか! 柳琳は何とも思いませんの、こんなどこの馬の骨とも分からぬ輩にお姉様の真名を穢されて……!」

 

<柳琳>「司さんだって、許されてもいないのに真名を呼んだりはしないと思うわよ。お姉様がお決めになった事じゃ……」

 

<栄華>「そ、そうですわ、お姉様! お姉様はこのような輩に大切な真名を……」

 

<華琳>「預けたけれど?」

 

<栄華>「…………つ!!!」

 

 曹洪は華琳の答えに絶句する。

 

<華琳>「当たり前でしょう。そうでなければ、最初にそれを口にした時点で私が首を()ねているわよ」

 

<司>「おいおい……」

 

 どんだけ恐ろしいんだこの世界は。大体首を刎ねるとか切り裂くとは曹家の面々はどうしてこんなに変わってるんだよ。

 

<華侖>「司っちー。なに騒いでるっすか?」

 

 すると建物の扉から華侖がやってきた。無事に降りてこられたみたいだ。

 

<司>「あ、華侖。ちょっとな……」

 

<栄華>「って、華侖さん、あなたまで……まさか……」

 

<華侖>「ほえ?」

 

<柳琳>「姉さん。司さんが姉さんの真名を呼んでいたけれど……許したの?」

 

<華侖>「うん。華琳姉ぇも秋姉ぇも呼ばれてたから、あたしもいいかなーって」

 

<栄華>「なん……ですって……。秋蘭さんまで……ということは! 春蘭さん!」

 

 曹洪はぱっと春蘭の方を振り向く。

 

<春蘭>「ああ、華琳さまが預けろとおっしゃったからな」

 

<華琳>「そうね、ちょうど良いわ。三人とは、司とこちらの香風に真名を預けておきなさい。例の件もあって、少し長い付き合いになりそうだから。香風もいいわね?」

 

<香風>「シャンはシャンだよ。よろしくおねがいします」

 

<華侖>「あたしは華侖っす! よろしくっす、香風!」

 

<柳琳>「でしたら司さん、香風。これからは、私の事は柳琳とお呼び下さいませ」

 

<司>「ああ、こちらこそよろしく、柳琳」

 

 柳琳は自然に俺に大切な真名を預けてくれたけど、約一名、まだ呆然(ぼうぜん)としている人がいる。

 

<栄華>「そんな……まさか……」

 

<司>「嫌なら、別に預けなくていいぞ」

 

<秋蘭>「だが、檜山(ひやま)は真名しか持っていないそうだぞ。お前達も檜山の名を呼ぶなら、自然と真名を呼ぶ事になるそうだ」

 

<栄華>「!!!」

 

 曹洪は秋蘭の言葉にさらに驚愕する。

 

<柳琳>「真名しか持ってないなんて……天の国というのは、不思議な所なんですね」

 

<司>「そういう風習が無いだけだ」

 

<華侖>「でも、そのほうが分かりやすいっす。司っちは司っちでいいってことっすよね?」

 

<司>「ああ、大丈夫だ」

 

 華侖はニコニコしながら普通に俺の名前を呼ぶが、曹洪は未だに理解できていないようだ。

 

<栄華>「な、なら……わたくしは、この先これを呼ぶ時はおいとか犬とか……」

 

<司>「春蘭と同じこと言ってるぞ」

 

<栄華>「そ、それもやむなしですわ……」

 

<華琳>「栄華」

 

 けど、曹洪の必死の抵抗も、華琳のひと言と共に力ない溜息(ためいき)に変わってしまう。

 

<栄華>「……はぁ。お姉様のご命令とあらば、仕方ありませんわね。お預けいたしますわ、真名」

 

<司>「ん? あ、ああ……よろしくな」

 

 栄華から真名を預けられたが、ここで呼んだらこの後何をされるか分かったものじゃない。まあ、落ち着いてきたら呼ぶことにしよう。

 

<栄華>「…………ええ。よろしくしたくありませんけれど、よろしくお願いしますわ」

 

<司>「あ、ああ……それで、華琳。紹介が必要な人って、これで全部?」

 

<華琳>「ええ。城に務める者達には、明日の朝儀で顔を見せるつもりよ。……それとも一人一人紹介して回りましょうか?」

 

<司>「いや、華琳が必要と思う人だけでいいよ」

 

 この先、オルフェノクやファンガイアのような怪人たちと戦うことになってくるだろう。盗賊から太平要術の書を取り戻すには苦労するに違いない。

 

 まずはここの生活に慣れる必要がある。

 

<華琳>「なら、話は終わりよ。栄華、私がいなかった間の報告を聞かせて頂戴。春蘭と秋蘭も同席するように」

 

<春蘭>「はっ!」

 

<秋蘭>「御意」

 

<栄華>「……かしこまりましたわ、お姉様。……はぁ」

 

 俺がそんな事を考えてるうちに、華琳たちは城の執務室のほうへ行ってしまった。

 

<柳琳>「司さん、香風。お二人はもうお部屋の場所はお分かりですか?」

 

<司>「いや、まだだ」

 

 秋蘭に案内してもらってる最中だったが、華琳の仕事の方が大事だから仕方ないか。

 

<柳琳>「でしたら、私がお部屋にご案内しましょうか?」

 

<司>「いいのか? そうしてくれると助かるよ」

 

<華侖>「柳琳、あたしも案内したいっす! 一緒に行くっすー!」

 

 こうして俺と香風は柳琳と華侖の案内で再び城内を回ることになった。ちなみに華侖はお風呂があることを知ると俺も一緒に四人で入ろうと言い出した。もちろん断ったが、何とかやっていけるか少し不安になった。

 




次回は第二章の前に拠点フェイズになると思います。最初は華琳と思います。
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