真・恋姫†夢想-革命- 世界の破壊者   作:サラザール

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予告通り、今回は華侖・柳琳編です。


拠点フェイズ3

<司>「あの店の(しょう)(ろん)(ぽう)は美味いな華侖(かろん)

 

<華侖>「そうっすね、司っち」

 

 俺と華侖は街の警備と言う名の食べ歩きをしていた。何故華侖も一緒かと言うと、彼女や春蘭の手を借りないといけない程、警備隊が人手不足だからだ。

 

 華琳に出した企画は通ったものの、募集を掛けたのは昨日だから集まるのは少し先になる。

 

 規定の人数になるまではこうして華侖たちの手を借りて仕事しなければならない。

 

 食べ歩きはしているものの、巡回は怠っていない。警備を始めてから店で小籠包を買うまで盗人やゴロツキを何度も逮捕している。今も食べながらではあるが、周りを見渡しながら怪しい人がいないか監視している。

 

<司>「さっきの店とはまた違った味だったな」

 

<華侖>「うん、アツアツの肉汁が口の中に広がってて美味いっす」

 

 ここに来る前にも小籠包は買って食べたが、さっきの店と味を比べている最中だ。華侖は天にも昇るような表情を浮かべて食べ終わる。

 

<司>「もうそろそろ休憩だし、店に入って食うか?」

 

<華侖>「それいいっすね! それじゃあ、あのすっごく美味しそうな匂いがする店に入っていいっすか?」

 

<司>「あそこだな。いいぞ」

 

<華侖>「やったーっす!」

 

 それにしてもよく食べる子だ。警備を始める前、朝食も一緒に食事したが麻婆豆腐の大盛りを食べてもなお、街に警備中に買い食いする始末。

 

 それでも太らないのは、常に体中からエネルギーを発散しているせいなんだろう。

 

<華侖>「こんにちはっすー!」

 

 そう言って華侖は店に入っていき、俺も後を追う。

 

<店主>「いらっしゃい……えっ! そそ、曹仁(そうじん)様!?」

 

 そりゃあ驚くはずだ。朝食を食べに店に入ったときも店員から驚いてたからな。

 

<華侖>「華侖でいいっすよ」

 

<店主>「いいぃ、いえ! そ、そんな滅相もない!」

 

 会ったばかりの店主に、真名で呼ばすほどフレンドリーだよな華侖って。

 

<華侖>「このお店、とっても良い匂いがするっす! これって何の匂いっすか?」

 

<店主>「は、はい、これは豚骨と魚、野菜から出汁を取った汁の匂いでして……」

 

<華侖>「ほー」

 

<店主>「我ら下賤の食するものですから、曹仁様のようなお方の口に合うかどうかは……」

 

 店主はかしこまった口調で説明する。華侖は興味津々で今すぐにでも食べたい様子だ。

 

<華侖>「こんないい匂いなんだから、美味しいに決まってるっす! 司っちも食べるっすか?」

 

<司>「そうだな。店主、それを二つ頼む」

 

<華侖>「へ、へえ! かしこまりました!」

 

 美味しそうなスープを二人分注文して空いている席に座る。それからしばらくして料理は運ばれてきた。

 

<店主>「ど、どうぞ……」

 

<華侖>「おー」

 

<店主>「それではどうか、ごゆっくりと……」

 

 華侖の反応が不安なのか、店主はスープを置いてそそくさと厨房に引っ込んだ。

 

<華侖>「美味しそうっすね!」

 

<司>「ああ、食欲をそそる匂いだな」

 

 見た目はこの世界に来てから食べている中華スープと変わらない。豚肉と野菜がたっぷり入って、とろみが効いている感じだ。唐辛子も入っていることから刺激のある味付けなのだろう。

 

<華侖>「いただきまーすっ!」

 

<司>「いただきます……ん?」

 

<華侖>「んん……ごくっ……」

 

<司>「ほう、辛いが美味いな……」

 

 味わって食べていると、華侖は勢い良く立ち上がる。

 

<華侖>「おおおおおおおおおおおーーー!!」

 

<司>「うぐっ!」

 

 華侖の声に驚いてスープを口から噴きそうになる。

 

<華侖>「おじさん! 店のおじさん!」

 

 偉く気に入ったのか、華侖は目をキラキラと輝かせて、厨房に向かって呼びかけた。

 

<店主>「はは、はい!? な、何か問題でも……」

 

<華侖>「美味しいっす! 最高っす! ほっぺが顔から落ちるっす! おじさんは天才っす!!」

 

<店主>「っっっ!!」

 

<華侖>「どうしたらこんなに美味しくなるっすか!?」

 

<店主>「い、いや、え、えっと……」

 

 今朝もこの調子で入った店の料理を口にしてはしゃぐ華侖。まあ、彼女からすればそれほど美味しく感じるのだろう。

 

<客A>「おい……あの人、曹仁様だよな?」

 

<客B>「曹仁様が絶賛してるぞ。あの汁、俺も飲んでみようかな……」

 

 他の客も華侖を注目して、次々と俺たちが食べているスープに興味を持った。

 

<華侖>「ほんと美味しいっす! あたしこの店、また絶対に来るっすよ!」

 

<店主>「あ、ありがとうごぜぇやす!!」

 

 華侖の褒めっぷりに店主は感謝感激だ。これは最高の宣伝にはなるな。

 

<司>「華侖……早く食べないと冷めちゃうぞ」

 

<華侖>「ああ、それもそうっすね」

 

 華侖に座るように(うなが)し、改めてスープを堪能する。

 

 出汁も効いてるし、唐辛子などの香辛料もいろいろ入ってるようだ。

 

<司>「美味い……辛いが美味いなぁ」

 

<華侖>「この辛さがたまらないっす。あははっ、司っちの顔、汗だくになってるっす」

 

<司>「華侖の方こそ。ふー、それにしても暑いな」

 

 俺はたまらず、ジャケットを脱ぐ。すると……。

 

<華侖>「うん、もう体が熱すぎっす。こんなの着てられないっすね!」

 

<司>「あっ!?」

 

 言うが早く華侖は服を脱ぎ始めた。

 

<司>「ちょっ!? それは駄目だろ!?」

 

<華侖>「え? なんでっすか? 司っちだって、脱いでるっすよ?」

 

<司>「いや、そうだが……それ以上脱いだら、裸になってしまうだろ!」

 

<華侖>「はい、裸になるっす!」

 

<司>「それが駄目なんだよ!」

 

<華侖>「えええぇ?」

 

 どんどん脱ごうとする華侖に俺は身を乗り出して、慌てて衣服を整えてさせた。幸い客は、こっちの様子に気付いていない。

 

 普段着からして、華侖の服は露出度が非常に高い。正直人からすれば彼女の姿はいろんな意味で注目を浴びやすい。

 

 本当にビックリした。すぐに脱ぐ子とは知っているが、どうして脱ぎたがりなのだろう……。

 

<華侖>「なんで駄目なんすか? 柳琳(るーりん)もいつもそう言って、裸になるのを止めるっす」

 

<司>「華侖は女の子だろ? 女の子が人前で、裸になるのは良くないぞ」

 

<華侖>「えー、いいじゃないっすか」

 

<司>「いや、その格好もどうかと思うけど……隠すべきところは隠さなきゃ」

 

<華侖>「おっぱいとか、あそこのことっすか?」

 

<司>「声が大きいぞ……!」

 

 この調子で今までどうやって生きてきたのか疑問を抱いてしまう。

 

<華侖>「んー、でも、別にあたしは隠したくって服を着ているわけじゃないっす。みんなと一緒に可愛い服を着たいだけっすから」

 

<司>「うーん」

 

 難しい。どう言えば華侖は納得してくれるのだろう……。

 

<司>「まあ、とにかく。人前で裸になったら、皆にも迷惑が掛かるから……脱いだら駄目だ、分かった?」

 

<華侖>「うーん、そこまで言うなら仕方ないっす」

 

 理解してもらえなかったが、なんとか脱ぐのをやめてくれて良かった。本当に良い子なんだけど、妹の柳琳が苦労しているわけだな。

 

 店から出た後も、俺と華侖は街を巡回して回った。

 

 何かにつけて裸になろうとするが、なんとか説得して阻止した。その後は特に問題はなく、日が暮れ始めたので仕事を切り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<柳琳>「もう、姉さんったら」

 

<華侖>「どうしたっすか?」

 

 城から戻った、俺たち二人を出迎えた柳琳(るーりん)溜息(ためいき)を吐いた。

 

 声こそ荒げないが、表情はかなり怒っている。

 

<柳琳>「どうしたじゃないの。姉さんの部隊の人員表、今日のお昼までにだしてくれるはずだったでしょ?」

 

<華侖>「あ……」

 

 柳琳に指摘されて華侖(かろん)は口を開く。自分の仕事をそっちのけで警備の方を手伝っていたのか。

 

<柳琳>「忘れて街へ遊びに行っていたのね?」

 

<華侖>「あはは……司っちの手伝いで警備に参加してたっすけど、全くこれっぽっちも覚えてなかったっす……」

 

<柳琳>「えっ!」

 

 どうやら遊んでいたと勘違いしてたようで、俺の仕事に加わってたと知ると驚いていた。

 

<柳琳>「ごめんなさい司さん。姉さんが……」

 

<司>「いやいや、俺の方こそ知らないとはいえ悪かったな。まだ人手不足だったから定期的に華侖と春蘭が手伝ってくれてたから……」

 

<柳琳>「本当にすいません……姉さん、人員表は?」

 

<華侖>「柳琳、そんなことよりっす! 辛いけど、ものすごく美味しい店を見つけたっすよ!」

 

<柳琳>「そんなことよりって……」

 

<司>「いや華侖。手伝ってくれたのは嬉しいけど、流石に自分の仕事を優先しなきゃ……」

 

 そう言って俺も華侖を諭すが、彼女は何かと後回しにしようとする。すると栄華がやって来た。

 

<栄華>「柳琳」

 

<柳琳>「あっ……栄華ちゃん」

 

<栄華>「人員表はそろいまして? ちょうど今から、貴女の執務室へ取りに行こうと思ったのですけど……」

 

<柳琳>「それがまだ……」

 

 一人の仕事が遅れると全体にも影響が出てしまうからな。困るのは自分だけでなく、相手にも迷惑を掛けるからな。柳琳は申し訳ない表情を浮かべて栄華に言う。

 

<栄華>「困りますわ。わたくし今日中に、出陣に必要な戦費を纏めて、お姉様にお渡しするつもりでしたのに」

 

<柳琳>「ごめんね? 明日には必ず……」

 

<栄華>「頼みましたわよ?」

 

<柳琳>「うん……」

 

<華侖>「あっ、司っち! 見て見てっす! 綺麗な蝶々が飛んでるっすよ?」

 

 そう言って二人の会話に全く耳に届いてない華侖はその辺にいた蝶々を近づいていく。その間にも、通りがかりの将軍たちがつぎつと柳琳に仕事のことで声を掛けてくる。

 

<春蘭>「なるほど……うむ、分かった。それでは柳琳の言うように、部隊の編制を見直すことにしよう」

 

<柳琳>「はい、その方向でお願いします」

 

<秋蘭>「では、新たな槍の調達は、先ほど聞いた商人に話を通せばいいのだな?」

 

<柳琳>「はい、既にある程度、話は進めてありますので……」

 

<秋蘭>「承知した」

 

 部隊の編成から武具の手配まで、将軍たちへ的確なアドバイスや指示を繰り返してくい。中にはそれは柳琳の仕事なのかと疑うようなことまで聞いてくる人もいた。こうして見ると彼女はしっかりしているようだ。

 

 華侖は未だ蝶々を追いかけている。このままじゃいけないと思い、俺は華侖に近づく。

 

<司>「華侖」

 

<華侖>「なんすか? 司っち」

 

<司>「柳琳に言われた人員表、今すぐやったほうがいいぞ」

 

<華侖>「ええー。まだ大丈夫っすよ」

 

 やっぱり栄華とのやり取りを聞いてなかったようだ。

 

<司>「さっきの見てなかったか。柳琳の困った顔を」

 

<華侖>「えっ? 柳琳の?」

 

 そう言うと華侖は俺の方をやっと向いてくれた。

 

<司>「そうだぞ。華侖の仕事が遅れただけで柳琳にも栄華にも迷惑が掛かってるんだぞ?」

 

<華侖>「栄華にもっすか?」

 

<司>「ああ、人員表を出すだけで済むんだから。姉が妹に迷惑を掛けることをして良いと思ってるのか?」

 

<華侖>「そ、それは……駄目っすね」

 

 柳琳が困っていると言えば結構聞いた。やっぱり妹のことは大事にしているようだ。

 

<華侖>「わ、分かったっす。それじゃあ行ってくるっす」

 

 華侖は駆け足で自分の部屋へと戻っていく。

 

<柳琳>「はい、分かりました。こちらで対処しておきます」

 

<兵士>「お願いします。(そう)(じゅん)様」

 

<柳琳>「はー」

 

 最後の一人がその場を後にすると柳琳は再び溜息(ためいき)を吐く。

 

<柳琳>「あれ? 姉さんは?」

 

<司>「華侖なら人員表を取りに行ってるよ」

 

<柳琳>「えっ!?」

 

 そりゃあ驚くだろう。短い時間でいなくなったと思えば自分から仕事をしに行ったのだから。

 

<司>「お疲れ様。大変だな、柳琳のお役目って」

 

<柳琳>「い、いえ、大したことは」

 

 皆困ってることは、なんでも彼女に相談しているみたいだったな。

 

<司>「今のが、柳琳の仕事なのか?」

 

<柳琳>「はい……お姉様がご対応なさるほどの件ではなくても、将軍それぞれの判断では決めかねることの相談に乗ったり……他にもお姉様の代わりに、会合などへ出席したり……」

 

<司>「大体分かった。要するに華琳の名代みたいな感じか」

 

<柳琳>「は、はい。大それた言い方ななりますけれど」

 

<司>「なるほどな。まあ、そうなるか……」

 

 柳琳がしっかりしているからこそ華琳から任されているのだろう。本当は華侖の仕事になるのかもしれないけど……。

 

<柳琳>「司さん、ありがとうございます」

 

<司>「ん? 何がだ?」

 

<柳琳>「先ほど私が春蘭様たちと話している最中に、姉さんに言ってくれて」

 

<司>「ああ、あれか。気にせんでいいよ」

 

 しっかり聞いてたのか。

 

<司>「華侖ももう少し、柳琳の仕事を手伝ってくれたらいいのにな」

 

<柳琳>「いえ、それはいいのですが……ただ、曹家の一員としての自覚が、あまりにも希薄なのがちょっと……」

 

<司>「自由人だもんな。その辺り、俺からも話してみようか?」

 

<柳琳>「そ、そんな。姉のことで、司さんのお手をわずらわせるだなんて」

 

<司>「そうか? でも柳琳、本当に大変そうだから俺でよかったらなんでも手伝うぞ。いつでも声を掛けてくれ」

 

<柳琳>「司さんに手伝っていただくなんて、ますますとんでもないことです。司さんはお客様ですから」

 

 恐縮した表情で首を振る。そっか……華琳は怪人のことは皆に言っても俺がこの世界に来た目的や仮面ライダーのことは言ってなかったな。

 

 だから華琳や夏侯姉妹以外は盗賊の件にだけ協力してくれている客人ということになっているようだ。

 

 まあ、それを今言う必要はないが。

 

<司>「それにしても……柳琳って華侖に似てるよな」

 

<柳琳>「そうですか? 自分ではあまり似ていないようと思うのですが」

 

<司>「そういうの、自分じゃ分からないもんだ。でも本当よく似てるよ。性格はまるっきり逆なのに」

 

<柳琳>「そうですよね」

 

 それから華侖が戻ってくるまで軽く雑談をしながら待っていた。暇な時があれば手伝う約束をして、その夜彼女の執務室で書類整理を一緒にすることになった。

 




次回は栄華編です。お楽しみに。
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