S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常   作:フォルカー・シュッツェン

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ここから戦術人形が指揮官に容赦なく銃を撃ちますが、それは非致死性のゴム弾です
本編に書くの忘れてたのでここに入れておきます、ではどうぞ!


緊急任務!指揮官を確保せよ!! part2

「こちらトンプソン、こっちには見当たらないぞ。そっちはどうだ?」

 

『ソーコムよ、こっちでも発見出来ないわ…やっぱりいざ敵に回すと厄介な相手ね、指揮官は』

 

『こちらナガンじゃ、あやつの痕跡を発見した。これからこの痕跡を追う』

 

「そいつは朗報だな。んでどっち方面にいると予測出来る?」

 

『さてな…あやつのことじゃ、攪乱の為にわざと残したことも考えられるしな。取り敢えずは第三格闘訓練場の方へ続いておる』

 

「うげ、あそこかよ…あんな所に逃げ込まれちゃ指揮官の独壇場じゃねえか」

 

 今現在この基地では書類仕事から逃亡したスカーレットを捕まえるため基地に所属する戦術人形ほぼ全員で指揮官確保作戦を遂行している

ほぼ全員というのはWA2000が副官であるために逃亡しているスカーレットの分まで書類を処理していたりDP28やマガルが医務室で治療の準備をしていたりなどの関係で作戦には加わっていないからだ

まぁWA2000に関しては例えそうでなかったとしても下らないと一蹴して勝手に訓練に励んでいただろうが…因みに現在WA2000はある意味仕事を押し付けていったスカーレットに対してキレており「戻ってきたら覚悟してなさい…!」と言っていたとかなんとか

 

 一方痕跡を発見したM1895は途中で合流したUMP姉妹と共にそれを辿って第三格闘訓練場に侵入していた

ここはジャングルや崩壊した市街地など複雑怪奇な地形での戦闘を想定して作られた訓練場で、視界は悪く隠れるところは満載、上下にも気を張らなければならない場所でスカーレットが良く試験に挑む人形達を蹴落としている場所だ

そういった地形もそうなのだが、何よりも厄介なのは…

 

「ゆくぞ、2人とも…上と後ろには十二分に気をつけよ」

 

「ええ、分かってるわ…私もここで何度落とされたか分からないもの、このフィールドでの指揮官の恐ろしさは良く理解してるわ」

 

「本当だよね…シラット、だっけ?あの武術は強すぎるよ」

 

 スカーレットが格闘において人形を圧倒する強さを持っているのは周知の事実だが、それは何も単純な力強さや反応速度といったものだけではない

とある人物によって世界中の武術の中から合うものを徹底的に仕込まれたスカーレットは数多の武術を使いこなし、その場で最も有効とされるものを選択して戦うことが出来る強さを持っている

その中でも凶悪なのがインドネシアで開発されたシラットと呼ばれる武術、これはジャングルファイトに特化した武術で木々や茂みを利用して上下左右に動き回って一撃で敵の命を奪い取ることを得意としている

スカーレットはこれを応用してジャングルだけではなく市街での戦闘でシラットを用い、敵を素手で一網打尽にすることすら出来るのだ

その複雑怪奇な動きは人形のみならず格闘をしっかり学んだ人間でも捉えるのが難しく、何とか抵抗して目が慣れてきたと思ったら今度は古式ムエタイ…所謂ムエボーランでいきなり素直な動きをしてきて混乱した所を一撃で粉砕するという戦法をスカーレットは得意としており、この基地にいる試験を受けた人形は全員これに泣かされている

そんなスカーレットにとっての得意フィールドに逃げ込まれたとなれば最大限警戒するのは当たり前であり、しかも未だ見たことのない隠し玉を持っていてもなんら可笑しくはないのだ

彼女達はダミーもフルで動員しており1対15という数の上では圧倒的に有利ではあるが、ここは入り組んでいるので数の利は活かしにくい

その上相手は規格外の化け物…はてどうしたものかとM1895が考えていると

 

「っ!?早速来た、上方12時の方角!!」

 

 UMP9の報告によってスカーレットがここにいることと攻撃が来ることを知ることが出来たがそれに反応しようとした時には既にUMP9のダミー2体が上から圧し潰されて破壊されており、スカーレットは回し蹴りで固まっていた彼女達の態勢を崩したり吹き飛ばしてから跳躍で建物の2階の窓へと跳んでいく

 

「ええい、少しは加減せんかド阿呆!!」

 

「言ってる場合じゃないわ!あの窓は私が制圧しておくから警戒よろしく!!」

 

 スカーレットが消えた窓から狙撃されないようUMP45が銃撃で牽制している間に2人は態勢を整えて周囲の警戒に当たっていた

 

「UMP9よ、警戒はワシがするからお主は通信で他の者にスカーレット発見の報告を入れてくれぬか」

 

「りょ、了解!」

 

 UMP9に指示を出したナガンは銃撃をやめたUMP45と共に周囲の気配を探る

無駄にリアリティを追求したこの訓練場は建造物もそうだが雑草や樹木などもあってかなり気配を察しづらい

視界は勿論匂いすらやりようによっては誤魔化せてしまうし、スカーレットなら間違いなくそうして来るだろうという謎の信頼すらあった

その後、通信の終わったUMP9と共に入り口付近で警戒をしていたが、あれ以来動きは見えない

そのまま暫く待機していると通信を聞いた79式、AK74-U、G17が駆け付けた

集まった面々を見てM1895は少し考えると

 

「UMP9とAK74-Uは入り口の死守を、ワシとUMP45、79式とG17のチームでそれぞれ捜索と確保へ動くぞ」

 

「あの指揮官様を相手に2人のチームアップで大丈夫なのでしょうか…いえ、ここでは狭くてあまり固まっていると逆に良い的にしかならないということですね」

 

「そういうことじゃ。皆異論はないな?…よし、では行くぞ!」

 

 即席でチームを作るとM1895とUMP45が建造物の内部を、79式とG17が外を中心に捜索を開始していく

建物内部を担当するM1895達はまず最初にスカーレットが消えていった建物に入ることにした

ダミーをフル活用して全方位を警戒しながら歩くUMP45に銃をCARポジションに構えてこれまた全方位を警戒しながら歩くM1895

まるで中世のパイク兵のように円になったまま慎重に進んでいく彼女らの姿は端から見れば奇妙に映るだろう

しかし彼女達は一切の御巫戯けなしだ

例え一方向、否…例え1度の角度であってもカバー出来ていない隙間があればスカーレットはそこを突いてくる

その為各方向の守りが薄くなることを承知でこうしているのだ

そのまま進んでいると曲がり角が見えた

そこで2人の警戒心は跳ね上がる…こういう曲がり角でのアンブッシュは基本中の基本な上にスカーレットなら何か予想出来ない手法で仕掛けてくるのではないか、と

しかし進まない訳にはいかないので仕方なく進み、角へ到達するとUMP45のダミーがチェストリグから閃光手榴弾を外してピンを抜く

そのまま角に背を付けて向こう側へ投げる

すると0.5秒後に今しがた投げた筈の手榴弾がこちらへポーンと戻ってきた

それを見た2人は即座に背を向けて目を腕で覆い、ダミーの手を使って耳を塞ぐ

直後、手榴弾が炸裂し辺りを爆音と閃光で満たす

2人は1秒で視覚と聴覚を強引に正常に戻して角の方を見るが…そこに居たのはUMP45のダミーの一体を顔を掴んで壁に叩きつけているスカーレットの姿だった

見れば他のダミーは全て破壊されている

 

「相っ変わらず容赦のよの字も知らん奴じゃな…」

 

「戦いの場にんなもんはねえからな。私を敵に回す以上、その程度の覚悟してるだろ?」

 

「まあね…それにしてもここまで一方的にやられるとはね、屈辱よ」

 

 良く見ればスカーレットは左脇にデザートイーグルを1挺持っているのみであり、それすら使った形跡はない

つまり今のところ素手でここまで良いようにやられているということだ

その事実に戦術人形としてのプライドが傷つけられるのを感じるのも無理はないだろう

 

「いくらお前らが元から戦いの為に作られ、更に私の試験をクリアしたとは言っても私とは経験に圧倒的な差がある。なんせ私が軍事訓練を受け始めたのが26年前だからな、その差を埋めるのはそう簡単なことじゃないさ」

 

「ということはお主は8歳の頃から訓練を受けておったということか…何があったかは知らぬがそれならその強さにも納得出来よう」

 

「本当におっそろしいわね。敵なのが今だけで、それも殺しの関係じゃないのに心底安心するわ」

 

少し会話をしてみるがスカーレットは話は終わりだと言うかのようにクラッシュハンズをすると2人へ向き直り、首をゴキッと鳴らす

 

「んで、どうするんだ?お前達にもうダミーはいねぇ、降参でもしてみるか?」

 

「呵々、冗談きついぞ指揮官よ」

 

「そうよ、私達にそんな柔な訓練しなかったのは貴女でしょ?」

 

 ここまで追い込まれても2人は諦めるどころか寧ろ闘志を燃やしているようにすら感じる

その様子にスカーレットは満足そうに頷き、顔を上げると

 

「良い闘志だ、それでこそ私が認めた兵士…やり甲斐があって大変結構だぜぇ!!!」

 

 犬歯を剥き出しにし、野性味溢れる闘争心の塊な笑顔を浮かべて2人に向けて突進する

M1895はそれを横への跳躍で躱し、UMP45はローリングで避けた

 

「甘えんだよ、ダボが!」

 

「っ!!」

 

 スカーレットはブレーキをかけると一瞬で突進の推進力を弱めてUMP45の方へと一足飛びで向かってきたかと思うと上から拳を叩き落す

UMP45はそれを化勁でなんとか逸らして顔の横に落とさせた

するとスカーレットの拳は床を抉り飛ばし、飛散した瓦礫がUMP45の頬に刺さって負傷する

だがそれでも顔を歪めることも視線をそっちに逸らすこともなく、即座にスカーレットの腹部へ向けて蹴りを放つ

同時に回避していたM1895による銃撃がスカーレットの脇へと放たれるが、それを予知していたかのようにスカーレットは勢い良く身体を落として銃弾を回避すると同時にUMP45の蹴りがまだ勢いに乗っていない時点で受け止める

そこでUMP45は頭突きを放ってスカーレットを怯ませようとするが同じことを考えていたのかスカーレットも同様の行動に出て来てUMP45の方が負けて怯んでしまう

 

「このっ石頭め…!」

 

「お褒めに預かりこうえ…っと!」

 

 そのまま首を噛み千切ろうとしてくるスカーレットにM1895の蹴りが襲い掛かるが直前で察知したスカーレットに避けられてしまう

だがこれでUMP45の上からスカーレットを退かすことに成功した

ここで態勢を立て直して…と思っているとさっきまで視線の先にいたスカーレットの姿がない

 

「しまっ…ア、ガ……!」

 

 特殊な体裁きで移動したことを悟らせずに接近する手法、縮地法を使われたことに気付いた時にはM1895の腹にスカーレットの膝がめり込んでいた

そのまま勢い良く後ろに吹き飛ぶM1895、そこへ丁度戦闘音を聞いて駆け付けた79式が到着するも飛んできたM1895と共に壁に叩きつけられる

余りにも都合の良すぎるタイミング、これがスカーレットの狙いだったと気付いた時にはもう既に遅かった

UMP45はダミーも失い頬にコンクリートの欠片が刺さり、更に頭突きを喰らっている、M1895もダミーはなく先程の蹴りでダウン、79式も飛んできたM1895との衝突や壁に後頭部を打ち付けた衝撃で本体の意識が飛びかけている

唯一無事なのはG17のみ、これまでも戦闘を見て分かる通り、ダミーがフルに居るからといって何も安心は出来ない

当然全力で立ち向かうのだが味方の身体が転がり足場は良くなく、更にスカーレットがそれを利用して常に足元に誰かがいる状態を強要するような立ち回りをしてくる

その上時折破壊されたダミーや戦闘不能に陥った本体を投げたり蹴り飛ばしたりして攻撃と目晦ましを行ってくる

その戦い方に苦戦を強いられ、遂に4人全員が意識を手放すこととなった

最初M1895とUMP45は会話によって多少時間を稼いで戦闘中に79式達が来るように仕向けたが、それを完全にスカーレットに逆利用された形となり敗北した

 

 一方で入り口組は

 

「…戦闘音が止んだ、どうやら決着が着いたみたいだね」

 

「うん、そうだね。ナガン達が勝ってればいいんだけど…」

 

「…正直、その望みは薄いよね。もしそうならあたし達の方に通信を入れるだろうし」

 

「そっかぁ…じゃあ」

 

「あぁ…」

 

 2人はアイコンタクトを交わすとそれぞれ銃を構え直して周囲の警戒に当たる

建物の窓、木の上、屋上、木の後ろや建物の角の向こうetc...とにかくあらゆる箇所を見ていく

しかしスカーレットの姿は見えない

暫く隠れて回復してから突貫してくるつもりだろうか…そう考えたその時、2人は真上から聞こえる音にハッとして見上げると

 

「……うそでしょ」

 

「これは、流石に予想外過ぎるよ…」

 

 2人が見たもの、それは‘真上から壁を垂直に駆け下りて来るスカーレットの姿’だ

流石に虚を突かれた2人はどうすることも出来ず、そのまま頭を掴まれて地面へと叩きつけられる

本体が意識を失ったことでダミー達の動きも大きく鈍り、こうなると最早スカーレットの敵ではない

程なくして全てのダミーは機能停止し、スカーレットは悠々と第三格闘訓練場から去るのであった

 

 

 




はい、まさかの続くというね
本当は今回でこれ終えるつもりだったんですよ?
でもなんか書いてたら熱が入っちゃって…というかスカーレットが勝手に暴れ回りやがりました
というわけで暫くはこの騒動が続きます
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