S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常 作:フォルカー・シュッツェン
後は全キャラ手に入れて専用装備手に入れて出来ればFive-seveNも手に入れるべくがんばるます
第五狙撃訓練場
そこはただっ広い円形のフィールドで、一階から六階まで吹き抜けにしている大規模すぎる訓練場である
フィールドの周囲を取り囲むように五階建てのビルが建っておりそれぞれが渡り廊下で繋がれているので移動が容易に行える
しかも各階にあるため何処から何処へ移動しているのかフィールドに居る方はほぼほぼ認識出来ない
狙撃訓練場ではあるが、どちらかと言うと狙撃する側よりもされる側にとっての訓練に向いた場所である
そこへ簡易治療を終えたスカーレットが現れる
そしてスカーレットは一度立ち止まると無言で中央まで歩を進める、すると…
「思った通り現れたわね、指揮官」
HK416の声が横から聞こえる
そちらを見るとビルの壁に背を預けている彼女がいた
「ああ、来てやったぜ。他にもいるんだろ?出てきな」
スカーレットの言葉にそれぞれのビルからWA2000以外の人形達が姿を現した
彼女も結局はMK.23に「今すぐにでも仕返ししたくない?」と唆されてこの場に来ているが狙撃するためビル内部に潜伏している
「やはり指揮官には分かるか…まぁ隠すつもりもなかったが」
「そうよね~。ねえ指揮官、何処で気付いたの?」
MG5とMK.23が口を開き、MK.23の疑問にスカーレットは鼻で笑って答える
「ここに来るまでの廊下で一〇〇式とサブリナに会ったところだ。AK-12達が固めてたのもあれだが、やっぱりあいつらが決め手だな」
「なるほどな…ボス相手には浅すぎる策だったか?」
「いや、これで正解だぜトンプソン。こうも見え透いた罠だと私は寧ろ飛び込みたくなっちまうからな」
『ええ、それを理解しているからこその今回の作戦です。さて指揮官…覚悟していただきますよ?』
この場にいないジェリコの声がマイクを通して聞こえる
上を見ると六階に設けられた観戦室にジェリコ、M200、FN49、モシン・ナガンがいる
ジェリコ以外の三人がいるのは意外だが、その他の展開は概ねスカーレットの予想通りだ
ジェリコはミレニアム8に数えられてはいないものの、この基地に於いて最も指揮能力に優れた人形、否存在だ
正直スカーレットは自分よりも彼女の方が指揮官に向いているとすら思っており、もしも長期間基地を開けることがあれば間違いなくジェリコに指揮官代理を任せるだろう
そんな彼女はミレニアム8の参謀を務めており、メンバー全員が作戦に当たる時には彼女が後方で指揮を執る
戦闘能力こそミレニアム8に劣るがその頭の回転の速さや機転は全員から全幅の信頼を置かれるほどだ
つまりスカーレットはこの基地の最高戦力ほぼ全員を相手に戦わなければならず、圧倒的に不利であることは明らか…だと言うのに彼女の顔にはこれ以上ないほどに笑みが広がっていた
スカーレットは楽しくて楽しくて仕方がないのだ、自分の鍛えた最高の兵士達が自分に挑もうとしているというこの状況が
限界まで吊り上げた口角から歯を覗かせてスカーレットは嗤い、宣言する
「例えお前らが纏めてかかってきてもそう簡単に倒れちゃやらねえぜ?さぁ…始めようじゃねえか!!!」
瞬間、スカーレットからミレニアム8の面々ですら感じたことのないレベルの覇気が迸りその場にいる面々を突き抜ける
その覇気に全員が構えてMK.23とトンプソンとKSGが突撃、HK416とMG5が少し距離を開けたところから銃撃を開始する
彼女らの放つゴム弾は人形を避けてスカーレットのみに当たる軌道で迫って来る
スカーレットはそれを一切避けることなく同時に格闘を仕掛けてきた三人の攻撃に対応する
MK.23の掌底を左手の推手で逸らし、トンプソンの拳を右手で受け止める
この時点で両腕をクロスさせた状態となり、そこへKSGの飛び蹴りが頭へ向かってくる
スカーレットはそれを上体を後ろに倒して避けるが、その後頭部へMK.23の膝蹴りが迫る
その膝蹴りの動きに合わせて上体を起こしていくと丁度KSGの畳んでいる膝に頭突きを当てた
「おっ…と」
KSGは空中で体勢を崩すが驚異的な身体能力で猫のように体をくねらせ、床に静かに着地する
その間にもMK.23とトンプソンが恐ろしい速度で攻撃を仕掛け続けているがスカーレットはその全てを捌いていく
HK416とMG5のゴム弾をその身に受けながら、だ
当たり所が悪ければ死ぬ危険性すらあるその弾を全身に浴びているというのにスカーレットは怯む気配すらない
これにはミレニアム8の面々も不思議に思うがだからと言って戦闘の手を緩めればそれだけで彼女に一瞬で状況をひっくり返されることを理解しているために余計な思考を放棄して戦う
唯一思考に時間を割くことが出来るのは身を隠しているWA2000とジェリコのみだ
(指揮官は常人とは比べ物にならないほど鍛えているとは言え、ゴム弾の斉射を受けて平気でいられるわけはないはず…何か絡繰りがありますね)
(いくら何でもあり得ないわ…何か隠してるとは思ってたけど、思ったよりも厄介なものが指揮官にはあるようね。そしてゴム弾が効かないってことは普通の打撃もまず効かない、まぁ彼女達もそれを分かってるからかさっきから容赦なく人体を破壊する攻撃を放つようになったけど)
接近戦を挑んだ三人の最初の一撃は一応スカーレットが万が一にも死んでしまわないよう心掛けた攻撃であったが、今はもうそんな遠慮は捨てている
トンプソンとKSGがスカーレットの真正面に陣取って視界を塞ぎながら一撃必殺の技を連発し、MK.23が死角から関節を狙っていく
しかし興奮して戦闘力を最大限まで高めている今のスカーレットはそれすらをも凌ぐ
トンプソンとKSGの拳や肘、膝は逸らしたり受け止めたり或いはそれに合わせて拳や蹴りを叩きつけて弾いていく
MK.23の関節技には彼女が身体に触れた瞬間全身に一気に力を入れて外に発勁を放ち弾き飛ばす
勿論その間にもゴム弾を全身に受けているが、全てスカーレットの身体に当たる瞬間に弾かれている
まずはこのゴム弾を防いでいる‘何か’を破らない限りはダメージを与えられないだろう
しかしそれが何なのかが分からない、このままでは状況が動くのに時間がかかるしどっちに傾くか分かったものではない
(ゴム弾を防いでいる‘何か’ですが…あれで防いでいるのであれば何故彼女らの攻撃は避けているのでしょうか?あれが何でも完全に防御出来るものであるならば彼女達の攻撃に当たるのも無視して強引に自分の攻撃をねじ込めば良いでしょうに。それをしないということは恐らくは不可能ということ…それは何故?パッと思いつくのは威力と遠距離か近距離かの違い。遠距離か近距離かで分かれる説はその違いを感知する仕組みが意味不明、よって可能性は低い。となれば威力の方でしょうか…これにかけてみる価値はありそうですね)
ジェリコは割かし長考した後、彼女なりに答えを出してそこからどうしていくかを考える
そして出した結論は
『ワルサー、指揮官が彼女らの攻撃を防ごうとした時にその腕を狙い撃ち出来ますか?』
『澄ました顔してとんでもない注文付けてくるわね。まぁ出来なくはないけど、その意図は?』
『指揮官のゴム弾を防いでいる‘何か’なのですが、彼女達の攻撃をそれで防いでいないことから恐らく防ぐことの出来る威力に制限があるのでしょう』
『要するに指揮官の防御行動を妨害することでそれを破ろうって魂胆ね』
『ええ、そうです。タイミング等はそちらに一任します、お願いできますか?』
『分かったわ、任せておきなさい』
その秘匿通信を終えたWA2000は一切の音を立てずに窓から戦場を見渡し、自分が取るべき狙撃地点を決める
丁度スカーレットの真後ろに位置する場所への移動を開始した
因みに今のジェリコとWA2000の通信はトンプソン達すら聞いていない
聞いていたのは本人達とジェリコの近くにいたM200、FN49、モシン・ナガン達だけである
これはトンプソン達が聞くことで動きに僅かにでも違いが出てしまえばスカーレットに勘付かれると判断したためだ
それは兎も角として慎重に、しかし素早く移動しているWA2000は狙撃地点に着くとまずは観察を開始した
自分の狙った通りスカーレットの完全に背後取っており、それでいて彼女の腕の動きが良く見える
そこから暫く観察して戦いの中で確立していく僅かな動きの偏りを見抜くとライフルを構えた
常人には動きを追うことすら不可能な速度で動く彼女達をしっかりと捉え、好機を待つ
微動だにせずただ只管に待つ、待ち続ける
そして待ち続けていると、チャンスが訪れた
スカーレットがKSGの攻撃を防ぐ為に拳で迎撃しようとしたのだが、KSGはそれを躱して肘を顔面に叩き込もうとする
当然スカーレットもそれを避けようとするのだが、そのタイミングでMK.23が脚を捕らえようとするので仕方なく発勁を放つ
MK.23の関節技は外したがKSGの肘は顔を打ち抜かんと迫って来ている
それを躱すために顔を逸らそうとするのだが、そこにWA2000の狙撃が飛んできた
それを察したスカーレットだが回避は間に合わない、しかし今まで通り防げるはずだと思っていた
事実、防げはした
だがWA2000が放ったのはゴム弾ではなく鉛のつづみ弾であった為に衝撃を完全に消すことは叶わず、スカーレットの頭はKSGの肘の向かう先へと押されてしまう
そしてKSGの肘がクリーンヒットし、スカーレットの頭は大きく後ろに飛ばされてよろけた
その隙を見逃すほど甘い訓練を彼女らは受けていない、すぐさま全員がスカーレットへ攻撃を開始する
それらを捌こうとするのだが、よろめいたと同時に放たれたMK.23の蹴りが一〇〇式に斬られた傷を抉って激痛が走ると更に体勢は崩れる
そこへトンプソンが拳の連打をスカーレットの胴体に打ち付け、留めにアッパーを放つとこれまたクリーンヒット
だがトンプソンはそこで違和感を感じた
(なんだ、この感じ…イマイチ手応えがねえ上になんか薄い氷に罅が入ったみてえな感触……この氷というか膜みたいなもんがボスの身体への攻撃を防いでたのか)
トンプソンの読み通り、スカーレットの身体には薄い膜状の防御壁が張られており、それがゴム弾を防いでいたものの正体である
それがなんであるのかは…また後日語ろう
兎も角それに気づいたトンプソンは罅の入ったそれを壊すべく更に激しく攻撃を仕掛ける
「チィッ…!クッソがぁ!!!!」
しかしそこは流石スカーレットと言うべきか、傷口を抉って来る激痛に耐えながら体勢を立て直して彼女らの攻撃に先程と同じように対応し始める
これにはトンプソン達も驚くが最早スカーレットは詰みの状態に近い、なんせ先程まで完全に防いでいたはずのゴム弾にすらダメージを負い始めているのだ
更に不規則に狙撃地点を変えてつづみ弾を撃ってくるWA2000の存在も厄介極まりなく、それでもここまで消耗して怪我もしてそこを抉られて基地の最高戦力6人相手の攻撃に未だに耐えているスカーレットの根性は凄まじいの一言である
そして遂にその時は来た
「やっと捕らえた!2人とも、今!!!」
「「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
「グァッ!ちっくしょうが…!」
スカーレットの背後を取り続けたMK.23がやっとこさ関節を取ることに成功した
残念ながら本命の膝関節ではなく背中に飛びついて肩関節を取ることにはなったが、今はそれで充分だ
関節を極められて腕を動かせなくなったスカーレットはそれでも無理矢理動かそうとするが、それよりも早くトンプソンとKSGの拳が彼女の顔面を打ち抜いた
すると薄い水色の膜が氷のように割れ、空中に消えていく
『今がチャンスです、一気に行け!!!』
ジェリコのその言葉に言われるまでもないとばかりに全員がスカーレットに銃を乱射する
「がああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
無数のゴム弾とビーンバック弾に全身を打たれ、更には後頭部につづみ弾がぶつかれば流石のスカーレットも叫び声を上げる
しかしそれでも銃撃は止むことなく撃ち込まれ続ける
普通ならあり得ない光景だが、こうでもしないとスカーレットが止まらないことをこの場に居る全員が理解しているのだ
そして数分間に及んでたっぷりとゴム弾とビーンバック弾とつづみ弾を撃ち込まれたスカーレットはそれでも倒れず、しかし最早虫の息のようでなんとか立っているという状態だ
身体は大きく前傾し、肩で息をしている
正直ここまで追い込まれたスカーレットの姿を見るのは初めてだなとその場の全員の心が一つになった時
「ク、クククク…ハハハハハ」
「…流石に壊れたのかしら?」
「まぁ…正直やりすぎた感はあるな。大丈夫か、しきか」
いきなり笑い出したスカーレットにHK416が呆れたように言うとMG5が少し心配そうに近寄る
勿論何があっても対応出来るように一定以上の距離には近付かないつもりであったし、そもそも今のスカーレットの姿勢からではこの距離を詰めるのは不可能であると全員が思っていた
しかしその予想を裏切りスカーレットは一瞬でMG5との距離を詰めるとその首を右手で掴んで締め上げる
「ぐ、ぅ…ガァ……」
「っ!?何処にんな力が残ってんだ!!」
そのたった一瞬のことで意識を飛びそうになるMG5、しかしトンプソンの叫び声に銃声を隠すかのように放たれたつづみ弾がスカーレットの肘関節を内側から打って曲げる
それによって多少とは言え余裕が出来たMG5は息を吸う間もなく同じ所に肘を上から叩き落して更に体勢を崩させるとスカーレットの顔面へ前蹴りを放つ
避けるかと思われたそれを意外なことに真面に喰らったスカーレットは後ろに仰け反って数歩後退って…倒れた
「ゲホッゲホッ…今度こそやったか?」
「手痛い反撃を喰らったわね…まさか彼処から動けるとは流石に予想外よ」
「全くだ…やっぱりボスは人間じゃねえな」
「実際1人でも欠けてたら負けた可能性もあるものね…」
やっと倒れたスカーレットにその場にいる面々は少しだけ安堵の息を吐くが、警戒は怠らない
まだこれがブラフである可能性も否定は出来ないからだ
それを確かめる為にMK.23が慎重に近付き…そしてスカーレットの眉間を撃つ
軽く震えて被弾箇所から出血するが反射以外の反応は一切検知出来ない
これによって完全にスカーレットを倒せたことを確認、接近戦を挑んでいた3人とMG5はその場に座り込んで休憩する
「それで…これ、どうするの?」
「どうするというのは?」
「医務室に運ぶのは勿論として、その後指揮官を確保した褒美を誰が受け取るのかよ」
『それに関しては皆さんそれぞれに権利を与えます。好きな時に1日指揮官を好きにして下さい』
「…容赦ないですね、ジェリコ」
『書類仕事から逃げた上にこんな大騒動にまでしたんです、妥当なところでしょう』
「ま、それもそうですね…」
その後トンプソンが肩に抱えて医務室へと運び、DP28とマガルによる麻酔を使わない治療が行われたことでスカーレットは目を覚ました
そしてその激痛に文句を言うがこれも罰だとジェリコに言われて致し方なくそれを受け入れる
こうして基地全体を巻き込んだスカーレットの逃亡事件は幕を閉じ、これは後に『指揮官大脱走事件』と呼称され半ば伝説のように語られることになるのだった
これは余談だが、後々今回のこれは意外と良い訓練になるということで稀に訓練の一環として似たようなことが行われるようになったという
前話のアンケートですが、意外と見たいって人が多くてびっくり( ゚Д゚)
書く予定はしておきますがいつになるか不明なのともしかしたら番外編って扱いにするかもしれません
『スカーレット指揮官による狙撃のお勉強!』とか名前付けて…いや、狙撃に関わらず色々お勉強するか?