S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常 作:フォルカー・シュッツェン
しっかしほんと…言うことを聞かねえなこの指揮官は
「皆の者、準備は良いか?」
『聞かれるまでもないわね』
『同じく、ばっちりだぜ』
『私達も大丈夫よ。早くやっちゃいましょ?』
会議を終えた彼女達はそれぞれ持ち場となる拠点へと着いていた
頭のいる本拠地にはM1895、KS-23、MDRの3名が来ていた
とは言え今彼女達は同じ場所にいるわけではなく各々別の場所から侵入する手筈のため分かれて行動している
他の拠点でも同様だ
「よろしい。では時計合わせを行うぞ、各員用意せよ」
通信を聞いて問題がないことを聞いたM1895は時計合わせ…作戦を遂行する際の経過時間等を確実に認識するため全員の時計を同じ時間に合わせて同時に動かす作業へと入る
「皆0:00に合わせたな?ではゆくぞ。カウント、3…2…1…セット」
ナガンの言葉に合わせて全員が時計を作動させ、問題なく作動したことを報告する
その報告を聞いたM1895は軽く頷く
「最終確認じゃ、各々装備品の確認をせよ。もし問題がある者がおれば報告するのじゃ」
更に最後の確認として銃やアタッチメント、弾薬やデバイス等の最終チェックに入る
それを終えた者が順番に報告をしていき、最後にMDRから問題なしの報告が入った
それを確認したM1895が作戦開始を告げる言葉を言う
「よろしい。ではこれより作戦を開始する…念のため言っておくがこれから作戦が終わる迄の間通信を入れることは例外を除いて許さぬ。帰投地点にて合流するまで一言も発するな」
『『『了解』』』
「よし…では行くぞ、状況開始」
M1895の一言で全員が行動を開始する
M1895もサプレッサーを装着した自身の銃を手に警備の立っていない扉に近付きまずは気配を探る
そして扉の向こうに誰もいないことを確認すると扉に手をかけて中へ入る
ここの外へと通じる扉は全て電子ロックが掛かっていたがそれは作戦開始直前にMDRによって解除されている
難なく侵入を果たしたM1895はそのまま一切の音を立てることなく廊下を進んで光の漏れている部屋の前へ着いた
扉に耳を当てて気配を探ると中には1人しかいないようだ
しかも扉には背を向けていて窓の外を見ていることが分かった
M1895は扉を開いて確認すると想定通りの光景であった
彼女は気配を完全に消してその男に近付いて行き、あと一歩というところまで迫ると男の後頭部に銃口を向けてトリガーを引く
減音された銃声が僅かに漏れるが他の部屋にいる者達に気付かれることはない
M1895が使用しているサプレッサーも、いやこの基地に属する実働部隊には全員改良が施されたこの基地オリジナルモデルの銃本体と弾薬、アタッチメントを所持している
その恩恵もあって強化された弾が男の脳幹を破壊し、即死させた
この時用いた弾丸はJHP弾の為貫通することなく頭蓋内に留まる
力が抜けて倒れこむ男の身体を支えてゆっくり下ろすと懐からボトルを取り出して中に入っている溶液を少量振り掛ける
これで血とガンスモーク、それに脳漿の匂いを消臭して敵に気付かれないようにする
一連の作業を手早く終えるとM1895は部屋を後にして更なる敵の排除に向かった
一方その頃MDRは別の侵入口から侵入するとメインホールに来ていた
柱の陰に同化して気配を消して様子を窺うと用心棒と思しき黒服が15人程いた
(流石一流の犯罪組織だね~。ここまで固めてるとは思わなかったよ)
う~んと音を出さずに唸るMDR
自分の侵入経路から考えてここを通らなければならないしどの道全員殺さなければならないのだから後に回しても結局やらなければならないことに変わりはない
さてさてどうしますかねぇと考えていたMDRだが最終的に最も単純な行動に出ることにした
(悩んでても仕方ないよね、声を発する前に全員の喉を撃ち抜けば良いだけだしそうしちゃおっと)
割ととんでもないことを軽く決めるとMDRはセレクターを切り替えてセミオートにする
そして気配を探ると同時にほんの少しだけ顔を出して男達の位置を確認する
(ふむふむ…これならなんとかなるかな。よし、やっちゃうぞ♪)
MDRはまず1人だけ離れた位置にいる男に向けて発砲、弾丸はMDRの狙い通りに喉を抉って突き抜けるがこちらもJHP弾のため貫通こそしたものの急速に速度を失って突き抜けた直後に落ちる
その弾頭が落ちる音に気付いた者が何人かそちらを見るがその時には既に3人の首が同じように撃ち抜かれていた
それを見て瞬時に対応する男達だが彼らが行動するよりも先にMDRの放つ弾丸が次々と首を正確に撃ち抜いていき3秒後には15人全員が床に倒れ込んでいた
息が出来なくなっただけなので即死こそしないもののもう彼らには何かをするだけの力は残っていない
MDRはM1895と同様溶液を振りまいた後携帯を取り出すとそこで1枚自撮りをしてから暫くメインホール内で待機する
男達が倒れる音を聞いて誰かが来るかと思ったがどうやら杞憂のようで誰も来ることはなかった
それを確認したMDRはそこを後にして廊下を進んでいく…
同じくKS-23も侵入を果たしており、既に5人程殺していた
しかし未だ銃を撃ってはいない
彼女が使うのはショットガンだ、幾らこの基地の技術力で改良が施されたSalvoサプレッサーとは言え減少させられる音には限度がある
ここのように閉塞空間では音が響きやすいため余り安易に撃つと銃声が聞かれてしまう恐れがあるのだ
その為彼女は今のところ銃をスリングで背中に背負っており両手にナイフを持ってビル内を歩いていた
(愛銃を撃てねえのはちょいと不満があるが、ナイフで直接刺し殺すのも趣があって良いな…特に感触が伝わってくるのが堪らねぇ…っと)
気配を感じたKS-23は廊下の角に身を隠す
するとその直後彼女が通ろうとしていた廊下に面する部屋の扉が開きMP5Kを持った男が出てくる
都合の良いことに男はKS-23のいる方に歩いてきているし気配を探った感じでは男の出てきた部屋に数人いるだけで他に人はいない
KS-23は男が来るのを今か今かと待ち、男が角に差し掛かった瞬間飛び出してまずは左手に持ったナイフを喉に突き刺して声を出せなくする
血管を避けて刃を通したために出血量は少ないがそれでも声帯を貫かれた男は苦しそうに藻掻く
続け様に右手のナイフを横に倒して肋骨の間を通して心臓に突き刺すKS-23
男は抵抗しようとしてなのか手をKS-23に伸ばそうとするが力が入らずに身体と共に床に崩れ落ちていく
その動きに合わせてKS-23も身体を落として左手のナイフに力を入れて男の身体が倒れないように保持する
男の目から生気が抜け落ちていくのをしっかりと見届けてからゆっくりとナイフを引き抜く
男の身体は少々の音を立てて床に倒れ、部屋の中に居た男達に僅かに聞き取られるがこれはKS-23の策略であった
彼女はナイフを腰のホルスターにしまうと自身の愛銃を構えて部屋の正面に回る
このビル内部の部屋の扉は全て内開きであることは確認済みなので堂々と真正面に陣取っている
「おい、なんのお―」
扉を開けて男が出てくるがその言葉が最後まで語られることはなく、バックショットによって体内をぐちゃぐちゃにされて心臓と肺を潰された男は部屋を出る格好のまま前に倒れ込む
当然部屋の中にいた男達も気付くが声を出す前にKS-23の銃撃によって脳を破壊される
4人を一気に片付けたKS-23は素早くクリアリングをして他に敵性存在がいないことを確認すると他と同じように溶液を撒いていく
他に銃声に気付いた敵もいないようなので彼女はまた銃を背中に背負い直すとナイフを抜いて素早く移動する
(さあて、今日はあと何人殺せるかな!)
その顔に獰猛な肉食獣の笑みを浮かべながら
(さて、これで粗方片付いたであろう。そろそろ頭のいる部屋に行くとするか)
あれから20人程射殺して最上階の1階下に来ていたM1895はリロードを行うと階段を登って最上階へ向かう
最新の注意を払って索敵するが気配が微塵も感じられない
不審に思ったM1895が廊下を覗くと10人程の男達が持っている銃を抜くことも叶わずに床に倒れ伏している光景が映った
(既に誰かが来た?いや、そんなはずはない…頭はワシが殺ると事前に決めておるし奴らはそれを破るほど愚かではない。であれば何故?…なんだか猛烈に嫌な予感がするのぉ)
自分のチームはここへ来てはいないはずだがかといって誰も来ていないという状況でないのは明らかである
その事実にいやーな予感を感じつつも頭のいるはずの部屋へと歩を進めてノブに手を掛ける
回す前に耳を付けて気配を探ると一人分の気配だけ感じ取れる
その事実に更に嫌な予感を感じながらノブを回して扉を開けると1度廊下へと身を引く
なんの反応も起きないのを確認して自身の予感が当たっていることを確信したM1895は部屋へと入る
そこには思った通りの光景が広がっていた
「よお、遅かったじゃねえか。あんまりにも遅いもんだから一杯やって待ってたぜ」
「…なにを、しておるんじゃお主は………」
心底呆れたという声を出すM1895
作戦終了まで一言も発するなと指示はしたがこればかりは仕方がないだろう、何故ならそこには頭が使っていたであろう椅子に座るスカーレットがいたのだから
しかも組織の頭は気絶させられ全身を縛られた上で机に寝転がされ、その上にスカーレットの伸ばした脚がドカッと置かれている
更には余裕そうに脚を組んでこの部屋の棚に置いてあったウィスキーをそのままラッパ飲みしているではないか
周囲を見渡すと護衛であろう男達が倒れていて大半の者の頭が潰れている
頭が潰れていない者も身体がべコリと折れて胸から肋骨が突き出ていたり腕が千切れている者すらいる始末
それでいてあまり死臭がしないのはスカーレットもあの溶液を使ったのだろう
しかしいくら匂いがしないとはいえこの部屋は地獄絵図だ、こんな所で酒を飲んで気持ち良くなっているその精神に呆れを通り越して感心すら抱きそうになる
しかもスカーレットはそもそも医務室にて絶対安静の身のはず…帰ったらぶちギレたDP28に極太注射(Not意味深)をぶっ刺されることだろう
それを分かっているのかいないのか…
それはともかく最重要目標であった組織の頭は捕らえることに成功している
ならば取り敢えずこれを持ち帰って尋問にかけるべきだろう
「…はぁ、まぁ良い。取り敢えずそれを持って帰るぞ」
「ン…プハァッ!元よりそのつもりだ。さて、行くか」
スカーレットは脚を下ろして頭の身体を担ぐとM1895と共にビルを出て合流ポイントに向かう
そこには既に皆の姿があり、自分達が1番最後であったようだ
M1895と共に現れたスカーレットの姿に驚く者もいればやっぱりそうなったかと呆れる者と反応は様々であったが誰1人として怪我もなく任務を達成出来たようだ
「皆揃っておるな?ちょいとしたアクシデントはあったが任務完了じゃ、帰投するぞ」
M1895の号令で全員が基地へ向かうため車に乗り込んで走らせる
こうして今回の事件は1つの幕を降ろすのであった
帰投後、スカーレットがぶちギレたDP28によって注射針を全身に撃ち込まれたのは余談であろう