S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常   作:フォルカー・シュッツェン

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さぁ連続投稿じゃい!
ここら辺のお話は以前から考えてたからまだ少し筆の進みは早かったですね
あとこれ今更ではあるんですが他作品のキャラには少々独自に設定を付与することになります、苦手な方はご注意下さい
そして今回超有名なハンドガンの超マイナーなモデルを出すという変態の所業もやらかしてます、気になった方は調べてみて下さい
そしてガンマニアの沼に嵌るんだよぉ…


民間人救出ミッションpart2

 

 S08地区草原地帯

そこには紫色の女性が緑色の女性に肩を貸して歩いていた

 

「ごめんなさい、ゆかりさん…足手まといになっちゃって」

 

「謝辞は逃げ切ってから幾らでも聞きます、だから今は逃げることに集中しましょう!」

 

 ゆかりと呼ばれた女性は左手で緑色の女性の左手首を持って抱え、右手にはサプレッサーの装着されたグロック30を持っていた

緑色の女性は右手に強弓を持っていたが弦が切れていて役には立たないだろう

それ以前に左脚に巻かれた包帯が赤く染まっている、銃弾が掠ったのだ

踏ん張りが効かない状態では壊れていなくとも強弓を扱うのは無理だろう

 

「もう少し…もう少しで廃市街地に着く筈…あと少しだけ頑張ってください、ずん子さん」

 

「分かりました…もうひと踏ん張りですね!」

 

「そうです、もう、ひと…」

 

 何かを言いかけたゆかりだったが何かの気配を察してグロック30をハイグリップで握り、CARポジションに置く

そんな様子を見て状況を理解したのかずん子も顔を険しくさせて小声で尋ねる

 

「さっきの敵…ですか?」

 

「ええ…気配からして数は多くありません、5人といったところでしょうか…それでも今の状況では危機ですが」

 

「やっぱり私のせいですよね…」

 

「今それを気にしても仕方がありませんよ。少しここで待っていて下さい、私が敵を排除してきます」

 

「分かりました…気を付けて下さいね?」

 

「言われるまでもありませんよ」

 

 ゆかりはずん子を土の盛り上がった箇所に隠すようにして降ろすとグロック30のプレスチェックをする

キチンと薬室に弾が入っていることを確認したゆかりは気配を探る

やはり数は5、土壁から少しだけ顔を覗かせて確認するとリッパーとヴェスピドが二体ずつとガードが一体いた

彼女はその名前を知る由はないが何度か行った戦闘からその特徴を把握していた

奴らはガードがポイント、リッパーがサイド、その後方にヴェスピドがライフルを構えて追従している

基本的で良い陣形だ…これをハンドガンで、しかもサブコンパクトで崩すのは骨が折れるだろう

だが奴らは簡素なAIしか積まれてはいない、攪乱してやれば混乱して簡単に撃破出来る

ゆかりは腰のポーチからスモークグレネードを取り出すとピンを抜く

そのまま奴らがすぐ近くまで来るのを待つ…草を踏み締める音がハッキリと聞こえてくる

あと3歩…2歩…1歩…

 

(ここです!)

 

 タイミングを計ってスモークグレネードを転がす

転がったグレネードは丁度奴らの中心に到達し、周辺を煙で満たす

視界が遮られたころで困惑している内にゆかりは音を立てずに土壁から飛び出してまずは近くにいるリッパーの脳天に45ACP弾をダブルタップで叩き込む

予め薬室に弾を送ってからマガジンを差しているため総装弾数は10発、今2発撃った為現在は8発だ

如何にサブコンパクトとは言え45口径を頭に2発喰らったリッパーは機能を停止して沈む

銃声に気付いたのか他の奴らがゆかりの方を向くが問題ない、寧ろそれを利用して屈み込んで一気に接近する

銃弾が頭を掠めていくが怯むことなく近付くとヴェスピドの足が見えた

すぐさま膝に2発叩き込むと体勢の崩れたヴェスピドの頭を両手で200°ほど回して折る

電脳とコアの接続が絶たれてヴェスピドは生きながらに動けなくなる、残弾数は6

そのまま外周を回ってリッパーの後頭部からダブルタップで電脳を破壊、流れるように身をかがめてヴェスピドに残弾全てを使ってコアを撃ち抜いて撃破

ここでスライドストップが掛かるがマガジンリリースボタンを押しながら手元にグロック30を引き戻すと予め左手に持っておいたマガジンを差してスライドリリースレバーを下げる

そろそろ煙も晴れてガードがこちらを視認して盾を構えて拳銃を撃ってくるが、銃口の方向から弾道を予測してステップで回避

そのままガードの右側面に回り込むと頭と胸に2発ずつ撃つ…所謂コロラド撃ちを行って様子を窺う

ガードはその場に倒れて機能を停止、首を折って無力化したヴェスピドはまだ起動しているため眉間に銃口を突き付けて1発撃って停止させる

周囲を警戒して敵性存在がいないことを確認するとゆかりはずん子の元へと戻った

 

「ただいま戻りましたよ、ずん子さん」

 

「お帰りなさいゆかりさん…お怪我はありませんか?」

 

「ええなんとか…さぁ、行きましょうか」

 

「ああ、行こうか…地獄へな」

 

「「っ!?」」

 

 唐突に聞こえてきた声にゆかりは慌ててグロック30を構えるが、それよりも早く相手の銃撃で弾き飛ばされる

 

「あぐぅっ!!」

 

「ゆかりさん!?」

 

 銃を弾かれた衝撃で人差し指が折れて手首を脱臼したゆかりは左手で右手首を抑え、苦しみに悶える

 

「さっきのは中々に良い動きだったぞ。ゆかりと言ったか、お前が人間でなければこちら側に誘うのも吝かではないんだがな…」

 

「そ、れは…どうも。……グウゥ!!」

 

 2人の前に現れたのは狩人(ハンター)

その両手には大型のハンドガンが握られている、先程ゆかりのグロック30を弾き飛ばしたのはこの銃によるものだろう

ゆかりは激痛を無視して左手で無理矢理右手首を嵌め直すと脚のナイフホルスターからカーボンナイフを取り出して握る

右の手首と人差し指がズキズキと痛むが四の五の言ってはいられない

その様子に狩人(ハンター)は感心したようにつぶやく

 

「ほう…益々殺すには惜しいな。そうだ、お前を殺したら脳を取り出して持ち帰るか…上手くすれば夢想家(ドリーマー)辺りが新しいハイエンドでも作るだろう」

 

「随分と恐ろしいことを言ってくれますね…ですがよろしいのですか、そんなに私達ばかり見てて」

 

 ゆかりはチラリと狩人(ハンター)の後ろを見やって誰かがいることを示唆するが、それに対して狩人は鼻で笑うだけであった

 

「ふん、隙を作るための(ブラフ)か?私には通用しないぞ。なんせ…もう既に包囲網は完成しているからな」

 

「っ!?…ここまで、ですかね」

 

 狩人(ハンター)が指を鳴らすとどこにいたのかぞろぞろと鉄血兵が出て来て周りを取り囲んでいた

全員が銃をこちらに向けているし数も多い、何よりグロック30もなければあったとしても流石にこの状況をサブコンパクトだけで突破するのは無理だろう

ここまで必死に逃げてきたが最早詰みである…妹分達は逃がせたし遠くの方でヘリの音も聞こえた、きっと救助されたのだろう

これだけやれれば十分だ、心残りがあるとすれば隣にいるずん子を逃がせなかったことだろうか

ゆかりは目を閉じて頭を垂れた

 

「諦めたか、良い判断だ。人間相手にここまでやられたのは久しぶりだし私も鬼ではない…最後に何か言い残すことはないか?」

 

「そうですね、私は殺しても構いませんからずん子さん…この方は見逃してくれませんか?」

 

「ゆかりさん、そんな…!」

 

「悪いがそいつは聞けないな。人間を殺すのが私達の至上目的だからな…では、さようなら」

 

「っ!!」

 

 来る衝撃に備えるかのようにゆかりは歯を食いしばって瞑っていた目に力を籠める

身体も強張り後は頭を大口径弾が破壊して辺りに血と骨と脳漿が飛び散るだけ…なのだが何の衝撃も感じない

一瞬で脳幹が破損して痛みを感じる間もなく死んだのか…そう思ったがどうにも違う

手にはナイフと草の感触があるしそもそも銃声は聞こえない、代わりに聞こえたのは銃弾が飛翔する際の衝撃波の音

何かが可笑しいと目を開けて見上げたゆかりの見たものは…頭のなくなった狩人(ハンター)の姿だった

頭を失った狩人(ハンター)はそのままその場に崩れ去り、直後閃光と爆音が襲い掛かって来て何も認知出来なくなる

 

(閃光手榴弾(スタングレネード)!?いったい誰が……)

 

 10数秒後、少しばかり回復してきた耳に微かな銃声が聞こえてくる

音の高さからしてサプレッサーを装着しており、連射速度からフルオートで撃っているのが分かる

目は未だ開くことが出来ない為詳しくは分からないが自分の身体に銃弾が撃ち込まれたりはしていない、恐らく何処かの部隊が助けに来てくれたのだ

それから5秒ほど経つ頃には耳は正常に近付き、目も僅かながらに開けるようになってくる

まだまだ視界は白くてハッキリとはしないがあと10秒もすれば少しはマシになるだろう

聞こえてくる銃声は少なくなっていてもう終わりが近いことを察したゆかりは自分の身体から力が抜けるのを感じた

 

だ……ぶ?…と……しよ

 

「う、ぁ…」

 

 疲労と怪我の激痛と閃光と爆音による頭痛でまだしっかりと話すことが出来ないゆかりは誰かに担がれるのを朧気な意識の中感じる

視界と音がクリアになる頃、ゆかりは輸送ヘリに乗っていて右手が固定されて怪我の処置が施されているのに気付く

周囲を見るとずん子が簡易ベッドに寝かされて脚の怪我の手当てが行われていた

 

「ここは…私達は助かった?」

 

「あら、気付いたのね。大丈夫?意識はハッキリしてるかしら」

 

 言葉を発するとそれに気付いたのか青い服でAR15系のライフルを持った少女が近付いて話しかけてきた

 

「ええ、漸く回復してきました。先程の戦闘は貴女達が?」

 

「ええ、ついでに言うとあの閃光手榴弾を投げたのは私よ。ごめんなさいね…ああするのが確実だったから」

 

「いえ、結果として助かったのであれば感謝こそすれ恨みなんてしませんよ。ありがとうございます」

 

 その言葉に目の前の少女は何処か安心したように微笑む

 

「そう言ってくれると助かるわ。私はHK416、S09地区にある総隊指令基地の所属よ。貴女は?」

 

「私は結月ゆかりです。そこで手当てしていただいているのは東北ずん子、共に日本から逃れてきました」

 

「日本って、ELIDで崩壊した国じゃないの…良くここまで来れたわね」

 

「ええ、運が良かったんです…それにELIDは思考能力がありませんしね、本能で動くので陽動とかに綺麗に引っ掛かってくれますからまだやりやすかったんですよ」

 

「なるほどね…今後ELIDと戦闘する際の参考にさせてもらうわ。出来ればもう少し詳しく聞きたいけれど、今はとにかく休みなさい。基地に着いたら起こしてあげるから」

 

「そうですね…では、そうさせてもらいます」

 

「ええ、そうなさい…っとそうそう、貴女達が身体を張って逃がそうとした子達も救助したわよ。帰ったら会わせてあげるわ」

 

「そうですか…そ、れは……良かっ、た………」

 

 ゆかりはこれまでの疲労が限界を迎えたのか船を漕ぎ始め、やがて耐えられずに身体が倒れる

その身体をHK416は優しく引き寄せると膝枕の体勢に持っていく

 

「本当によく頑張ったわね…安心なさい、もう大丈夫よ」

 

 HK416はゆかりの頭を撫でて少しでも安らげようとする

スカーレットとWA2000への通信は既にLWMMGが行っている

G11は早速惰眠を貪ろうとしたので空マガジンを眉間に投げつけておく

恨みがましい目で見てきたが知ったことではない、寝るならせめて帰ってからにしろといつも言っているのに寝ようとするのが悪い

いざ戦闘になればHK416ですら目を見張るほど容赦なく敵を狩り尽くすのにスイッチがオフだとどうしてこうなのか

ともかく今は無事に基地に帰るだけである

次第に近付いてくる愛しの我が家に彼女は漸くホッと一息吐く

到着した彼女達はヘリポートで待機していたマガルと共に2人をストレッチャーに乗せて医務室へと走ってDP28へと託す

後は医療班に任せて自身は報告書の作成の為に自室へと戻る

翌日に救助した彼女らに聴取が行われ、その後はこの基地にて雇用されるのだがそれはまた後日語るとしよう

 




これにてゆかりさん達を救出するミッションは完了です、この後は彼女等への事情聴取や後日譚を書きますがその前にスカーレット達スナイパーチームが何をしていたのかを時間を遡って書きます
この間やらかしたばかりですがまたまた狙撃厨の本気顕現です('ω')

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