S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常 作:フォルカー・シュッツェン
しかもマキさんを出すの忘れてたから出すためにこんなことに…でも次回は蹂躙劇だからね、各々好きに暴れてもらいましょう!
「うーん、なんだかなぁ…」
「…どうしたのよ、急に唸りだして」
民間人を救い出した翌日、S09H基地の執務室にはHK416とトンプソンが作成した作戦報告書に目を通すスカーレットとWA2000が居た
そして報告書を読み終わったところでスカーレットがなにやらぼやいたのだ
「いやな、昨日救出した民間人の内の1人なんだが…な~んか見覚えがある気がすんだよ」
「なに、知り合いなの?」
「…わっかんねぇ。どっかで見た気はするんだがそれが何時何処でなのかさっぱり思い出せねえんだ」
「じゃあただの勘違いなんじゃないの」
「かもな。取り敢えず今はあいつらの容態が安定するのを待つしかねえ」
今現在救出した民間人は医務室にてDP28とマガルの治療を受けており、精密検査等も行われて安全が確認されるまでは指揮官であるスカーレットですら面会は出来ない状況下にある
とは言え一〇〇式達から聞く話やスカーレット自身もスコープ越しに見た限りではすぐにでも面会が許される状況にはなるだろう
「それじゃ、私はあの子に訓練をつけに行くわ」
「おう、頼んだぞ。私は…暫くここで待機しとくか、本社から連絡が来るかもしれねえしな」
「種子貯蔵庫のことね、分かったわ」
ここでWA2000がFN49への訓練の為に執務室を出て行った
スカーレットも顔を出そうかとも思ったが民間人のことと種子貯蔵庫のことを考えれば下手に出歩くべきではないだろう
こういう時指揮官と言う肩書を煩わしく思う、というか正直に言うと常々思っている
彼女としては教官兼現役スナイパーとしてもっと人形達の訓練に顔を出し、戦場に出たいのだが曲がりなりにも指揮官である以上は最低限執務室にいなければならないのだ
それもS地区総隊司令官であることを考えればこれでもかなり自由奔放にやれているだろう
やれやれと思いながら基地の収支に関する書類に目を通していると通信が入った
『こちら医務室です。民間人全員の精密検査が終了しました』
「お、てことはもう会いに行っても良いのか?」
『構いません、寧ろお願いします』
「お願いしますって…なんかあったのか?」
『民間人の内の1人が貴女に会いたがっています。紫色の髪が特徴的な結月ゆかりという女性ですね』
「…そうか、私も話をしたいと思ってたんだ。丁度いい、今から向かうぜ」
『畏まりました。お待ちしています』
マガルから入った通信を切るとスカーレットは書類を机に置くと立ち上がり、医務室へと歩みを進める
万が一本社等から通信が入った時の為に外部通信用の端末を持って行くことを忘れない
やがて目的地に辿り着いた彼女は医務室の入り口に設置してある情報読み取り用の端末にIDカードを示す
するとすぐに電子音が鳴って扉が開き、中へ入る
「お待ちしていました。こちらです」
「どれどれ…おお、元気そうだな」
出迎えてくれたマガルの案内で民間人等のいる病室に入るとそこには治療を施された5人の少女達がいた
皆あの作戦の時よりも顔色は良くなっており、多少ながらに笑みも浮かべていた
そのことにスカーレットは安心すると共に気前良く声を掛ける
「ど、どうも…」
「こ、この人が…?うぅっ」
「大丈夫よ、きりちゃん。優しい人だって聞いたでしょ?それに助けてくれた人にその態度は失礼よ」
「…やっぱ、怖いのか………」
「ま、まぁまぁ。何はともあれお礼せなな、ホンマにありがとう。うちらが今こうしてられるんわあんさんのおかげや」
圧倒的な存在感を持つスカーレットに対して水色の少女は戸惑いながらも挨拶をし、小豆色の少女は怖いのか緑色の女性に抱き着く
抱き着かれた女性はそんな彼女の頭を撫でながらも諫め、スカーレットはその事実に凹んでいる
赤色の少女は物怖じしない性格なのかスカーレットを相手に笑顔でお礼を言ってきた
そんな少女の対応に少しばかり心を持ち直したスカーレットが改めて何かを言おうとしたその時
「やはりスカーレットさんでしたか…お久しぶりです」
「…私のことを知ってるのか?」
「ええ、忘れる筈がありませんよ。貴女は…」
「すまん。何処かで会った気はするんだが、思い出せねえんだ」
「まぁ仕方ありませんよ、あの時は私もまだバックアップメンバーで貴女とは一度しか会ってませんから」
「バックアップメンバー?どっかの所属か?」
「ええ…この襟章、見覚えありませんか?」
「んー…?ってお前それは!!」
紫色の女性がサイドテーブルに置かれたポーチから逆三角形の襟章を取り出して見せると、スカーレットはその顔を驚愕に染めた
「そのバッヂ…Village Shrineに所属してる、いやしてたってことか」
「そういうことです。今は日本そのものが壊滅してしまったのでV.S.も最早存在しませんけど…」
「てことは…お前と会ったのはFREEDOM壊滅作戦の時か。随分と懐かしいじゃねえか」
「もう随分と前のことですからね」
「…なぁ、2人して何の話しとるんや?うちにも分かるように言って欲しいんやけど」
「あー…なぁ、これ言っちまっても良いのか?」
「うーん…まぁ良いのではないでしょうか?もう組織は存在していませんし」
「そいつもそうだな…んじゃ説明すっぞ、V.S.ってのはな…」
それからスカーレットは彼女達に説明をし始めた
Village Shrine、通称V.S.は日本政府直属の犯罪対策組織だ
国家組織であり秘密組織でもあるためその存在は一般には完全に秘匿されている
組織としては主に国際犯罪組織への対抗と情報収集を目的としており、数々の犯罪組織がV.S.によって壊滅してきた
メンバーにはV.S.の証として特別な襟章が与えられていて、それを付けていればいつでも総理大臣にすら会えるという代物だ
当然、任務時以外では外す必要がある
スカーレットがゆかりと会ったのは世界規模の犯罪組織であるFREEDOMを壊滅させる為の作戦の時だ
当時既にUSSOCOMのスナイパーだったスカーレットはV.S.がFREEDOM壊滅の切り札となる証拠が入ったチップを入手し、そのチップに掛けられたプロテクトを解除するための時間を稼ぐ作戦に投入された
その時にスナイパーであるスカーレットに必要な弾薬等の物資を届けたりするバックアップメンバーの中にゆかりはいたのだ
アメリカの特殊部隊から来た凄腕のスナイパーということは知っていたしかなり存在感がありながらいざ狙撃となると一気に気配が希薄になるスカーレットのことをゆかりは覚えていた
またV.S.のメンバーはカモフラージュの為に一般社会へと溶け込んでいる場合が多く、結月ゆかりも普通の学生として生活する傍らV.S.の任務に参加していた
そしてこの場にV.S.に所属していたのはゆかりだけ、つまり他の面々はそんな組織のことなど知らなかったために何の話をしているのか理解出来なかったのだ
「ゆ、ゆかりさん秘密組織の人間やったんか!?」
「そ、そんな…全然知らなかったよ……」
「仕方ないのよ、性質を考えれば貴女達にも知られるわけにはいかなかったもの」
「ずん姉さま…?もしかしてずん姉さまも」
「ううん、私は違うよ。でもゆかりさんがそこに所属してるのは知ってたし、ひそかにサポートもしていたわ」
「…てぇことは2人ともうちらに隠れて危険なことしとったってことか?」
「…ごめんなさい、皆を支える為にはああするしかなかったから…」
ゆかりの秘密を聞いた皆の反応は様々だ
だが赤色の少女の言葉に他の3人もハッとした顔になる
そんな面々にゆかりは気まずそうに頭を下げていた
「部外者の私が言うのもなんだが、あんまり責めてやるな。そういう仕事をする人間もいなきゃこの世界は回らねえんだよ」
「それはなんとなく分かる…せやけど……」
「ま、すぐに納得しろとは言わねえよ。急なことで混乱もしてるだろうしな…取り敢えずその件は後回しだ、先に自己紹介を済ませちまおうぜ。お前らの今後も決めなくちゃいけねえしな」
「それもそうですね…では、必要ないかもしれませんが私から。私は結月ゆかり、元Village Shrineのメンバーで実働部隊として潜入と工作活動を主に行っていました。拳銃の心得なら多少はあるつもりです」
「うちは琴葉茜。うちに出来るんは料理くらいか?んでこっちは妹の葵や」
「よ、よろしくお願いします」
「次は私ですね、東北じゅん子です。でも皆からはずん子って言われてますし是非そちらで呼んでくださいな♪特技としては一応弓を扱えますわ。で、こっちが…」
「挨拶くらい自分で出来ます、ずん姉さま。東北きりたんです、ずん姉さまの妹でPCが得意です」
「ゆかり、茜、葵、ずん子、きりたんだな……よし、覚えたぜ。私はスカーレット・ミッチェル、ここS地区総隊指令基地の指揮官だ」
「総隊指令基地…回収される時も聞きましたが大層な名前ですよね」
「まあな。ま、今は難しいことは分からなくてもいい。取り敢えずそこそこ偉い奴なんだ程度の認識で良いぜ」
「あ、結構偉いんや…なら敬語とか使うた方がええんかいな」
「た、確かに…」
「あーやめろやめろ!そんなかたっ苦しいのは苦手なんだ、気楽に行こうぜ?」
「そうは言うてもゆかりさんとずん子さんは常に敬語やで?」
「それはまぁ…元からそうだってんなら気にしねえさ」
「それじゃあ、私も普段通りに話させてもらいますね」
「ああ、そうしろ。取り敢えずお前らの処遇については今後考えていくことになる…私個人としちゃゆかりを工作員として雇用したいがな」
「…ゆかりさんに危険なことさせる気か?」
「あくまで可能性の話だよ、そうカッカすんな。取り敢えず今は傷を治すことに専念しろ、特にずん子はな」
「そうですわね…今のままだと真面に歩くことも出来ませんし」
「ずん姉さま…」
「大丈夫よ、きりちゃん。命に別状はないし脚だって少しすれば治るってDP28さんも言ってたでしょ?」
不安がるきりたんをずん子は頭を撫でて落ち着かせる
彼女の傷は銃弾が掠ったもの、左脚の脛の肉が一部抉れてはいたが骨や血管に損傷はなかったしゆかりによる応急処置が良かったために完治するのも時間の問題だろう
一通り自己紹介も終えて暫く雑談をしたスカーレットは医務班に今後のことを任せて医務室を後にする
まだ色々と聞きたいことはあったがそれは後程聞くことにした
「しっかしV.S.か…あの日和ったスナイパーも元気にしてると良いんだが。後でゆかりに聞いてみるか」
スカーレットはあの日出会った甘すぎる考えを持ちながらも確かな実力を付けていったスナイパーのことを思い出す
彼女は絶対に誰も傷付けないと言い放ち、人体には決して撃たなかった
敵の持つ銃や通信機などを撃ち抜いて無力化するのだ
そんな甘い考えにスカーレットは呆れたが、それでもその信念を曲げることなく作戦を成功に導いた彼女のことを評価していた
彼女とも再会したいと思うが希望は持たない方が良いだろう、ともかく今は執務室に戻るべきだ
そんなことを思いながらスカーレットは歩みを進める
数日後、ずん子はまだ車椅子だが彼女等の傷も癒えた為改めて彼女等の処遇について通信越しではあるがヘリアントスも交えて話し合いが行われる
その結果彼女等は全員この基地で雇用する運びとなった
結月ゆかりは表向きはスカーレットの秘書として雇用し、身辺警護に関する訓練も課すことになった
だがその実態は諜報員としての訓練であり人知れずこの基地の諜報部隊に加えるつもりだ
琴葉姉妹と東北ずん子はスプリングフィールドのカフェで従業員として雇用し、彼女の元で働くこととなる
東北きりたんはG&Kの規約的にまだ労働をさせられる年齢ではないとのことで雇用は見送られたが、ずん子の家族としてこの基地で生活をする許可を取った
労働は出来ないがお手伝いなら良いだろうとのことで基地の掃除など雑用をすることになる
こうして彼女達はこの基地の一員として迎え入れられ、日常を過ごすことになっていく
そうした日々が始まった翌日、ゆかりはスカーレットに相談を持ち掛けていた
「なに、逸れた仲間がもう1人いるだぁ?なんでもっと早く言わなかったんだ?」
「ごめんなさい、あの時は私達もいっぱいいっぱいだったのとまだ助けに来てくれたのが貴女であると分かっていませんでしたし…信用出来ない人に話したくもなかったので」
「気持ちは分かるけど、それでも1日の遅れは救助作戦に於いては致命的よ。今はとやかく言わないけれど救助が終わったらたっぷり説教してあげるから覚悟してなさい」
「まぁまぁ…取り敢えず今は情報だ。出来る限り詳細に話せ、出来るな?」
「ええ、勿論です。まずその仲間の名前は弦巻マキと言いまして……」
こうして情報を聞いたスカーレットはMDRに通信をして該当する人物に関する目撃情報等がないか電子媒体上で調べさせる
M1895とPPK、そしてFiveseveNにフィールドワークによる調査をさせて情報を集めていく
すると翌日の夜にはある程度纏まった情報が入ったのだが問題があった
どうやら該当する人物は人身売買を主に行う犯罪組織に囚われているようだ
もう囚われてから何日か経っているのだ、もうそろそろ買い手が付いても可笑しくはないだろう
その為今回は特に迅速な作戦の遂行が求められる…その結果取り敢えずその民間人の囚われている施設に突撃を掛けてそこからはその場で臨機応変に対応することとなった
そんな無茶な作戦であることからメンバーは特に能力の高い者達で固められることとなる
具体的にはスカーレット、WA2000、HK416、トンプソン、MK.23、MG5、KSG…そう、ミレニアム8の出撃だ
クレアこそ基地で待機となるが、この基地きっての戦力の投入だ
執務室はクレアが預かり、特殊作戦時にのみ使う指揮室にはジェリコが入って指揮を行う
そして今回スカーレットはスナイパーとしてではなく直接殴り込みを掛けに行くスタイルだ
これはターゲットの安全を何よりも優先した結果である
しかし何故か銃器を一切使わないという…どういうことかは次回語ろう
ともかく突撃を掛ける準備は整った、あとどれくらいの猶予があるかは分からないため、作戦区域に入り次第すぐさま作戦は決行された
ここからスカーレット率いるミレニアム8による蹂躙劇が始まるのだった…