S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常   作:フォルカー・シュッツェン

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いやはやまだ三時間目ですよ…これどれくらいかかるんやろなぁ
もしも終わりが見えなくなった場合は全部説明するのを諦めて次に進めるかもしれませぬ
それはそうと遂にOCOKAの説明になります、これを読んだ後に民間人救出ミッションpart3を読んでみると意味が分かって「おおっ!」ってなるかもしれません(ならないかもしれませんが…)

では、どうぞ!


座学1日目 三時間目

「さぁ、三時間目を始めるよ。メモの用意をして」

 

「今回はお師匠なのね、よろしくお願いするわ」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 休憩時間が終わると同時にM200が教室に入って来て授業を始めると2人に声を掛ける

 

「うん、よろしくね~。それじゃあ今回の授業内容なんだけど、大分すると2つに分けられるよ。まず一つ目は『スナイパーとスポッターの役割について』、もう一つが『OCOKAについて』だね。もし時間が余ればレンジカードについても教えようかな」

 

「OCOKAって確か…」

 

「この前の任務でお師匠と指揮官がなにやら言ってたあれのことよね?」

 

 M200の言葉に2人は反応する

以前行われた任務の際にスカーレットとM200が話していた謎の言葉について知れるということで興味が湧いたのだろう

 

「そうだね。あの時は何を言ってるのか全く分からなかっただろうけど、今から教えるからしっかり聞いててね。それじゃあまずはスナイパーとスポッターの役割について教えていくよ」

 

 M200はそう言うとホワイトボードに書き込みながら話をしていく

 

「まず一時間目で指揮官が言ってたけど、スナイパーは基本的にスポッターと2人組で行動することになるよ。勿論例外もあるけれど、それは追々だね。それで、スナイパーとスポッターって言うくらいだし両者は役目が違うんだ。今から列挙していくからちゃんとメモしてね~、それじゃ行くよ」

 

 M200はホワイトボードに書きながらそれを口に出して言っていく

最終的には以下の要素が書かれることになった

 

〇スナイパーの役割

 

 ・OPORDの作成

 ・関連する他部隊とのコーディネイト

 ・移動時のリアセキュリティ

 ・ストーキング時のリード

 ・敵追跡時のリード

 ・LP/OPの場所選定

 ・LP/OPの構築

 ・標的の捜索、発見、報告

 ・スコープの調整

 ・スポッターによる距離目測の補助

 ・狙撃

 

〇スポッターの役割

 

 ・特殊装備の選択と調達

 ・移動時のリード

 ・自衛目的の発砲

 ・スナイパーの敵捜索時のカバー

 ・レンジカードの作成

 ・LP/OPの構築

 ・スポッティングスコープでのセクター監視

 ・標的の捜索

 ・標的の識別

 ・狙撃優先順位の選択

 ・風速測定

 ・スナイパーへの射撃号令

 ・援護狙撃(必要な場合のみ)

 ・着弾位置の把握とスナイパーへの報告

 ・原隊への通信

 ・収集した情報の記録

 ・ブービートラップの作成、クレイモア地雷などの操作

 ・LP/OPの後始末

 

「へぇ、スポッターの方が役割は多いのね」

 

「そうなんだ。でもこれはあくまでも基本にしか過ぎないからどんな状況でもこうなるとは限らないよ、寧ろ全部が全部一致することの方が少ないかな」

 

「それはつまり…スナイパーとしてもスポッターとしても動けるようにならないといけないということでしょうか?」

 

「そうだね、どちらか片方の役割しかこなせないようじゃ戦場には出れないよ。例えばあの時の作戦でボクはスポッターとして動いたけど、スナイパーとして動くように指示されれば即座に切り替えられるよう心構えしてたよ」

 

 2人は「なるほど…」と呟きながらもメモを取り、それが終わった辺りでM200がそれぞれの要素の詳しい説明を始めた

 

「じゃあまずは『作戦行動計画(Operation Order)』の作成だね。とは言ってもこれは読んで字の如くそのままで、言い渡された任務を遂行するにあたってどういう作戦でいくのか、及びその道中の細かい行動計画を作成すること。次に『関連する他部隊とのコーディネイト』なんだけど、これもまだ分かりやすいかな。要するに他の部隊と共同で作戦を遂行する際の通信係みたいな感じだよ。次の『移動時のリアセキュリティ』は通常の移動を行う際にスポッターの後ろを付いて行きながら後方の警戒をすること。『ストーキング時のリード』は隠密行動を行う際に先導すること。そして『敵追跡時のリード』って言うのがちょっとだけややこしくてね、これは敵の後を直接追いかけるわけじゃないんだ。足跡なんかに代表される痕跡を辿っていく際に先導することを指すよ。『LP/OPの場所選定』なんだけどこれは後で細かくやるね、同様に『LP/OPの構築』に関しても今は飛ばすよ。『標的の捜索、発見、報告』はもうそのまんまだよね、特に説明は要らないかな。『スコープの調整』に関しては後々の授業でかなり細かく教えるから今はパス。『スポッターによる距離目測の補助』もそのまんまに近いね。基本的にスポッターが目で直接凡その距離を測るんだけど、それの補助というか念の為に自分でもやっておくって感じかな。最後の『狙撃』に関しては説明不要だよね。これでスナイパーの役割に関する簡単な説明は以上かな、次にスポッターの役割を見ていくね」

 

 M200はそう言うと別のホワイトボードに書き始める

 

「まず一つ目の『特殊装備の選択と調達』なんだけど、ここで言う特殊装備って言うのは例えばHALO及びHAHO降下をする際に必要なパラシュートを含めた降下装備だったり暗視装置やIRF(レーザー測距計)なんかだね。『移動時のリード』はスナイパーと逆になるってだけ。『自衛目的の発砲』も文字の通りなんだけど、これはあくまでも最終手段だからね。隠密行動が大前提のスナイパーにとってそんな目的での発砲を行うこと自体あるべきじゃないから気を付けて。『スナイパーの敵捜索時のカバー』なんだけどあの時の作戦でボクは特殊なスコープを持ってたよね?あれを使ったりしてスナイパーよりも広範囲を索敵して敵補足の補助を行うよ。『レンジカード』の作成についてはまた時間があればかな。『LP/OPの構築』に関しては同じく後でやるよ。『スポッティングスコープでのセクター監視』はスナイパーの捜索カバーとそんなに変わりないね。敵を補足した後もスポッターは引き続き周囲の警戒を続けるんだって思ってくれていいよ。『標的の捜索』と『標的の識別』は読んで字の如く、識別に関しては誤射を防ぐためのダブルチェックの意味合いが強いね。『狙撃優先順位の選択』もそのまんまだね、その場の状況から柔軟にターゲットの優先順位を判断して決定するんだ。『風速の測定』は後々の授業にある狙撃のイロハについて学ぶ授業でやるよ。『スナイパーへの射撃号令』は説明不要だね、あの時のボクがしたことだよ。『援護狙撃』もそのままだから分かりやすいかな。2点への同時狙撃が必要だったり、万が一失敗した時のフォローになるね。まぁ指揮官クラスにもなるとほぼ必要ないんだけど…まぁいいや。『原隊への通信』はスナイパーの役割にあった『関連する他部隊とのコーディネイト』とは違って本部へ報告をしたり指示を仰いだりすることを指すよ。『収集した情報の記録』は現地での狙撃に影響を及ぼす環境条件の情報や敵地を偵察したことによって得た情報などを記録する役目だね。『ブービートラップの作成、クレイモア地雷などの操作』なんだけど、ミリタリースナイパーは条件次第では一回発砲するだけで位置がバレることもあるんだ。そういう時に寧ろそれを利用して狙撃地点にトラップを仕掛けて捜索に来た敵の数を減らしたりするのがブービートラップの作成だね。他にも少人数で動く上に狙撃する際には後ろとかに気を配るのが難しくなるから安全の為に周囲にクレイモア地雷なんかを設置することもあるんだけど、その設置や回収はスポッターの役目になるよ。『LP/OPの後始末』だけどこれも後々だね…一気に説明しちゃったけど何か質問はあるかな?」

 

「私は大丈夫よ」

 

「私も大丈夫です、そのままの意味で分かりやすいものも多かったので」

 

「そっか、良かった」

 

 2人の返答にM200は安心したように頷くと次の説明に入る為に暫く板書を移す時間を取った後に一度ホワイトボードに書いたものを消して新たに書き始める

 

「それじゃあ次は『OCOKA』についてなんだけど、その為にまずはさっきからちょくちょく出てる『LP/OP』についての説明をするね。LP/OPは『Listening Post/Observation Post』の略で歩兵やスナイパーの構築する監視拠点のことだよ。スナイパーの場合はこれに加えて『スナイパーズハイド』っていう隠れ場所なんかも作るよ、この前もボクと指揮官が作って入ってたあれだね。それでLP/OP地点のあれこれについてスナイパーとスポッターで違うことを言ってたけど、ぶっちゃけると両者で協力して設けることの方が多いからあんまり気にしなくていいかな。どっちにしろ全部出来なきゃいけなんだしね。でもスナイパーとスポッターとで役割が分かれている関係上何もかも同じじゃない、特に装備に於いては結構な違いがあるんだ。LP/OPの詳しい説明の前にそっちを説明するね」

 

「装備に差異?でもあの時お師匠と指揮官は同じものを持ってなかったかしら?」

 

「確かに…」

 

「そうだね、それに関しては部品の共有が出来ると緊急時に役立つからとかそういう理由が大半かな。それにあの時は周辺情報を事前に持ってたのが大きいね、だからあの時ボクは自分の銃を持って行けたんだ。もしもそうじゃなかったらボクは違う狙撃銃を持って行ってたよ」

 

「…マジ?」

 

「大マジ。そこら辺も含めて説明していくよ、まずはざっくりと両者の装備の違いを書いていくね~」

 

 M200がホワイトボードに次々と書き込んでいき、2人はそれをメモに取っていく

 

 

〇特にスナイパーが持つべき装備&携行品

 

 ・狙撃銃(サプレッサーを含む)

 ・アサルトライフル(移動時に使用)

 ・拳銃

 

〇特にスポッターが持つべき装備&携行品

 

 ・SPR/M14/M16A3などのセミオートで撃てるライフル(グレネードランチャー付きが望ましい)

 ・弾着観測用スコープ(スポッティングスコープ)

 ・IRF

 ・拳銃

 

〇両者が携行するべきもの

 

 1.ベストに入れて携行するもの(常に手元にあるべき物)

  ・弾薬/予備マガジン(ライフル、拳銃共に)

  ・無線機

  ・双眼鏡

  ・コンパス/DAGR(GPS受信機)

  ・地図(マップケースで保護)

  ・小型温度計/風速計

  ・小型フラッシュライト(夜などに小さく手元を照らすため)

  ・MS-2000IRストロボライト(緊急時に味方航空機へ発行信号を送ったり他部隊との交信に用いる)

  ・IFAK(外相応急処置キット)

  ・ケミカルライト

  ・ナイフ

  ・水筒

  ・腕時計

  

 2.バックパックに入れて携行するべきもの(スナイパー用にデザインされたものを使用する)

  ・クリーニングキット

  ・アルコール・パッド(レンズの清掃や傷口の消毒など使用用途は多岐に渡る)

  ・ギリースーツ及びその他偽装キット

  ・サバイバルキット

  ・キャンバス生地(土を盛ったりLP/OPのカバーやハイドの作成など使用用途は多岐に渡る)

  ・フラッシュライト

  ・ゴアテックスジャケット&パンツ(温度や天候の変化に備える)

  ・ポンチョ/ポンチョライナー(防雨及び隠蔽や就寝時のシェルターや寝具として利用)

  ・クレイモア対人地雷

  ・防虫剤

  ・ハイジンキット(歯ブラシなどの衛生用品)

  ・筆記用具

  ・予備弾薬(念のため)

  ・予備の水筒

  ・各種機器の予備バッテリー

  ・食料(レーションなど)

  ・ダクトテープ(船だろうが宇宙船だろうが修理出来る最強テープ)

  ・マクネット(マグネットではない、マクネットは迷彩柄のテープのこと)

 

「結構多いわね…ていうか1つ気になるんだけどいいかしら?」

 

「ん、どうしたのモッシー?」

 

 M200が書き終えると同時にモシン・ナガンが疑問を呈した

 

「スポッターが持つべき銃でSPRやM14なんかは分かるわ、両方今では狙撃銃として運用されてるしね。けどM16A3はどうなのかしら…狙撃カスタムしてるわけでもないでしょうしそれならA4でもいいんじゃないの?」

 

 そう、モシン・ナガンの疑問点はそこだ

スポッターと言えど狙撃することがあるのに変わりはなく、ミリタリースナイパーの性質上なるべく離れた地点からの狙撃を行うのが自然だ

となればM16A3では有効射程距離的に厳しいのではないか、というものである

SPRも使用弾薬はサイズこそM16系列と同じ5.56×51mmNATO弾ではあるがM16やM4などで使用するM855ではなく弾頭重量を増した狙撃用のMk.262弾を用いるためある程度の長距離(500~650m前後)であれば精度を保てなくもない

しかしM855を使うM16A3ではその精度は500m程なら保てるが(かなりギリギリ)それを越えるとかなり厳しい

その上M16A3よりもM16A4の方が新しいモデルなんだからまだそちらの方が良いのではないか、と言うのだ

彼女の言うことは尤もだが、1つの勘違いと1つの想定不足がある

M200がモシン・ナガンにそのことを教え始める

 

「まず1つ大きな勘違いをしているみたいだけど、M16A3とM16A4の違いはフルオートか三点バーストかだよ。A3がフルオートでA4が三点バーストだね、そして三点バーストなんて実用性が今のところ皆無なのに欠点がいっぱいあるっていうブルパップと似たようなものだから使う必要性はない…必然的にA3が選択されるんだ。それに狙撃って言うのはあの時みたいに長距離から撃ちこむとは限らない、特に市街地戦なんかになれば1kmを越えた狙撃なんて殆どあり得ないね。そういう状況ならM16A3の有効射程距離でも十分なんだよ。それにフルオートで撃てる分遭遇戦とかの咄嗟の戦闘行為でも有利だからね、他にもアサルトライフルな分狙撃銃と比べて頑丈だから過酷な環境にも持って行きやすい。そういう状況が想定される場合はM14は大きくて不便だしSPRじゃ接近戦に弱い、だからM16A3も候補として十分にありなんだ」

 

「なるほど、そういうことなのね…理解したわ、ありがとう」

 

「どういたしまして~」

 

 モシン・ナガンの疑問も晴れたところでM200は話を次に進める

 

「スナイパーが使用する狙撃銃って言うのは長距離を狙える半面連射速度が遅いし装弾数も少ないから火力に乏しいよね、それに取り回しもあんまり良くないから近距離の敵への対応が難しい。だからあの時指揮官もボクもHK416を持ってたんだ。それと同様にスポッターは近中距離をカバー出来て自動式で瞬間的に大火力を発揮出来るもの―それこそHK416やM16A3、HK417でもいいね。それにグレネードランチャーを装着したモデルを携行するのが理想になるよ。勿論グレネードランチャーは自衛の最終手段的なものだから余程のことがない限り撃つことはないけどね。それにサプレッサーは絶対に着けなきゃダメ、特に夜間の狙撃ともなればその重要度は上がるよ。それにここに書いたのはあくまでも基本的なものに過ぎない、任務内容や環境によって持って行くべき携行品は変わるんだ。季節によっても異なるし砂漠、森林、山岳、市街地ではそれぞれ持って行くべきものは変わるよね?例えば市街地に於けるMSR(主要補給路)の監視任務なんかの場合は基本的に自軍の勢力エリア内になるから食料なんかを持って行く必要はない。それと携行品はなるべく少なく、軽くするべきでもあるね。理由は勿論機動性を損なわない為、例えばスント社製COREのような腕時計はコンパス、温度計、湿度計、気圧計の機能を持ってるから重複する携行品を削ることが出来る。でも指揮官が言ってたように技術に頼るのはダメ、特に電池で動くものは常に故障のリスクがあるからそれを想定した上で携行品のリストを組む必要があるよ。弾薬に関しても1種類のものだけじゃなくて複数種類持って行くのもいいね、例えば.308口径の場合M118普通弾、AP弾などを任務・敵情・地形・部隊・時間・民情(METT-TC)によって使い分けたりするんだ。でもこれは必要があれば、に止めておこう。銃と弾薬はかなり細かい相性があって特に狙撃銃ともなればその調整は狂う程に細かくなされてるから違う弾薬を使うと動作不良を起こしたり、最悪の場合壊れたりするよ。特に異常腔圧での銃身破裂は滅茶苦茶に危険だから気を付けて」

 

 

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 異常腔圧が起こると上の画像のような状態になってしまい最早撃つ撃たないの話ではなくなってしまう

相性の悪い弾薬だけでなく、銃身内部に異物が混入することによっても起こる(寧ろこっちが主)のでそういう状況になりやすい環境では特に注意が必要である

2人も銃が見たこともない破損の仕方をしている写真を見て驚愕していた

 

「まぁここら辺の弾薬との相性とかは実践しながら教えていくね。じゃあこれからLP/OPの詳細な説明に入るよ、良く聞いててね。まず前々回の授業でも言ったようにスナイパーは歩兵の一種、だから歩兵が理解しなくちゃいけない要素をスナイパーも理解してなきゃいけないんだ。今からその要素を話すからしっかり聞いててね、行くよ」

 

・部隊の任務

・作戦の性格、目的

・報告する司令部のレベル(中隊/大隊/連隊)

・敵味方それぞれの関連する部隊

・遭遇する可能性のある敵の規模、装備、兵器

 

「ここら辺もまぁ読んで字の如くだよね。これらの要素を理解している前提で拠点を選択する際に注意する点・それが『OCOKA』だよ。スナイパーの拠点に限らず一般歩兵が守備陣地やLP/OPを築くときにも必ずこの要素を前提として決定されるね。つまりは歩兵全員が理解していなくちゃいけない基本中の基本になるんだ。じゃあ今からは具体的にOCOKAが一体なんなのかを説明するよ。まずOCOKAはO,C,O,K,Aに分けられてそれぞれがイニシャルになってるから、一つずついくね。一つ目のOはちょっと特殊でOとFを合わせて1つにしてるんだ。1つが『視界(Observation)』、これは一定のエリアを肉眼で直視出来て標的を補足出来る範囲のことだよ。当然だけど丘陵や建築物の反対側は視界には入らないから気を付けて。ベストな視界を得る場所はそのエリア内に於ける最高度な地点(制高点)になる、これは分かりやすいよね。それでFって言うのは『射界(Fields of Fire)』のことだよ。これは現在位置から手元にある銃器等で効果的な攻撃を加えられる範囲のことだよ。射界には大きく分けて二種類あって、狙撃銃なんかのダイレクトファイアウェポン(直射火器)みたいに標的まで直線で障害物がないことが前提となるものと迫撃砲なんかのインダイレクトファイアウェポン(非直射火器)みたいに直線状に障害物があっても問題ないものになるんだ。けどボク達からすればダイレクトファイアウェポンの方を使うことになるからそれ前提で考えててね。兵士1人が担当する射界及び監視範囲は広すぎると注意が散漫になるし、長期間連続した場合も同様だね。偵察チームの人数、偵察する期間などを考慮して範囲を分担するなり交代制で行うなりして散漫になることを防ぐことも考えんきゃいけないよ。そして分担する場合は隣り合う射界をクロスオーバーさせる必要があって、自分の射界の左右両端の目印として小枝を刺しておくと良いね。特に夜間は自分の射界の範囲を見失うことがあるから結構役に立つんだ。ここまで聞いて分かってるとは思うけど視界と射界は全くの別物だからそこをしっかりと理解してね。例えば砂漠なんかの開けた環境ならそれこそ25kmくらい先まで見通せたりするけど流石にそんな距離を撃ち抜ける狙撃銃なんてないからね。338ラプアや50BMGなんかでも有効射程距離は1500mであることが多いし、君達のだと大体800m~1000mと言ったところかな。つまり視界は25kmだけど射界は1.5kmや0.8kmになる、ってことだね」

 

「なるほどね、視界よりも射界を重視した方が良いのかしら」

 

「基本的にはそうだね。でも任務的に撃つ必要がないのならあんまり気にしなくて良いかな」

 

「確かにそうですね…」

 

「他に聞きたいことはないかな?じゃあ次々いくよ~。次のCは『遮蔽と隠蔽(Cover and Concealment)』の略で、遮蔽っていうのはダイレクト/インダイレクトファイア、空爆、その他の攻撃から身を保護してくれる天然物や人工物のことを言うよ。例えば岩陰に隠れた場合はその岩が遮蔽になるね。隠蔽は自身の存在を地上または空の敵から隠してくれる天然物や人工物のことを言うんだ。丘や谷、森林、ビルなんかの建造物とかがそうだね。因みに軍用の地図に於ける緑色の部分は森林を指しているから参考にしてね。一応細かく言っておくとこの緑色の部分は『周囲100m四方の地域に歩兵小隊27名を空からの視認に対して隠蔽出来る』っていう基準に沿って着色されてるんだ。遮蔽及び隠蔽は全ての兵士にとって重要事項になるけど、限られた火力で敵作戦区域(AO)内に潜入するスナイパーにとっては特に重要度が高くなるよ、個人的なカモフラージュ技術は今後教えていくけどそういったことも視野に入れて任務に臨むようにね。あと気を付けて欲しいのは遮蔽と隠蔽はイコールじゃないってこと、例えば深い茂み(ブッシュ)は姿は隠してくれるけど弾丸は止めないし防弾ガラスは弾丸を止めても姿は隠さないっていう具合にね。こういった点を把握して状況に応じて自信を遮蔽/隠蔽する物体には注意を払わなくっちゃダメだよ」

 

「それが『2つのC』と言っていたものなんですね」

 

「うん、そうだよ」

 

「こうしてみると本当に私達は何も知らなかったのね。その上これでまだ序の口なんてね……ってお師匠?」

 

 モシン・ナガンが軽くショックを受けつつこれから先の授業のことを思って気落ちしているとM200が近寄って頭を撫で始めた

 

「大丈夫だよ、ボクだって始めは君達と同じどころか敵を前に全部見捨てて逃げた弱虫だった。そんなボクでもここまで来れた、果てない努力に耐えることさえ出来れば君達だってきっと同じ領域まで来れるよ。だから頑張って」

 

「お師匠…ええ、やってみせるわ!だからもっともっと教えて頂戴」

 

「喜んで」

 

 M200の言葉にモシン・ナガンは気概を取り戻し、授業の続きを促すとM200は笑顔で頷いてホワイトボードの前まで戻って授業を再開する

 

「次はOだね。これは『障害物(Obstacles)』の略でそのままではあるんだけど、ちょっとだけイメージとは異なるのかな?ここでいう障害物っていうのは部隊の移動速度を遅らせる又は止める、もしくは回避を強いる物体や環境のことを指すよ。例を挙げるなら建造物、急勾配な坂、湖、河川、崖、沼地、森林やジャングル、鉄条網、地雷原なんかだね。天然の障害物に関してはあんまり説明する必要はないかな、河川なら流れの速さや水量、深さなんかで通行の可否が決まって来るとか沼地ならその度合いによって車両の通行が不可能になるとかそんな感じ。だけど人工障害物、特に軍事障害物だと話は変わって来るよ。例えば地雷原なんだけど、その設置目的が敵の進行阻止なのか遅延なのか回避なのか…それによって敵が受ける影響は大きくなるし分析も容易には出来ない。スナイパーの任務にはこうした軍事障害物の設置は含まれることはないけど敵の進路や進行速度を予測して正確な情報収集や自らのLP/OPの設置に反映させるために障害物について熟知しなきゃいけないんだ。前回の任務では全然なかったからまだ実感は難しいかな」

 

「確かに指揮官も『2つ目のOは見当たらないが問題はない』とか言ってたわね」

 

「存在していればそれを利用したり味方に注意を促したりする、ということですか?」

 

「その通りだよ、2人とも理解が早くて助かるね。どんどん吸収してくれるから教え甲斐があるよ」

 

 M200からの誉め言葉に嬉しそうにする2人

M200もまた2人を撫でてあげたい気分になるが残念ながらまだ授業は続いている、先程のような事態でもない限りは授業を優先しなければならなかった

後で思う存分撫でることにしよう、そう決めたM200は残る要素について説明していく

 

「さて、OCOKAの説明も終盤だね。次のKは『緊要地形(Key(Decisive) Terrain)』のことだよ。陸戦に於いては必ずと言って良い程に勝敗の鍵となる地形ポイントが存在するんだ。それが緊要地形(Key Terrain)って言われるもので、そこを奪取乃至(ないし)確保出来れば戦局を有利に展開出来るポイントのことだね。これにも天然物と人工物がそれぞれ存在するよ、代表的な人工物で言うと橋かな。第二次世界大戦末期の英米連合軍による攻勢作戦『マーケット・ガーデン』では進行ルート上の橋を巡る戦いがあったよ。機甲師団の進撃に橋の確保は絶対条件になるんだ、『遠すぎた橋』っていう名前で映画化もされてるから時間のある時に観てみるといいかもね。他には平らな盆地とかも緊要地形になるよ、LZ(ランディングゾーン)になり得るからね。似たような理由で空港も緊要地形だね、アフガニスタン紛争の開戦劈頭に陸軍レンジャー連隊がカンダハル近郊の飛行場に降下・占領した作戦はまさに緊要地形の奪取が目的の作戦だったよ。これ以外だと地形的な意味合いとしてはチョークポイント(地形的に補足狭くなって交通路が限られる場所のこと)や丘の頂上なんかがそうだね、あとは政治的な意味合いでモスクだったり放送局なんかの重要施設などが挙げられるかな。スナイパーは自身が活動するAO内の重要な地形を把握することは絶対条件だからしっかり理解してね」

 

「天然物や人工物は兎も角として、政治的ね…流石にそれは想定外だったわ」

 

「でも確かにそういうこともあり得ますよね…LP/OP地点はそういったものを見通せる場所にしなきゃいけないんですね」

 

「そうだね、ボクも目から鱗だったよ。でもすごく重要なことだから…って言っても今までもこれからも授業で言うことは殆ど全部重要なことだから聞いたことは全部覚えてもらわなきゃ困るんだけど、これに関してはスナイパーに限らず歩兵にとって大事なことだから特に理解しておいて。頭で考えることなく感覚で瞬時に判断出来るようにならないとレンジカードなんて書けないからさ。さぁ、その為にもOCOKA最後の要素であるAについて説明するよ。このAは『侵攻経路(Avenues of Approach)』の略だね。侵攻経路は敵勢力が進行してくる可能性が最も高いルートのこと、これは地上だけじゃなくて水上や航空機による侵攻経路も存在するんだけど…まぁ今の情勢じゃあんまり気にしなくていいね」

 

「それであの時お師匠は『水上は存在せず航空は無視出来る』って言ってたのね」

 

「そういうこと。AA(侵攻経路)を明確にすることで監視すべき範囲を集中出来て広くまばらに見張るよりも正確性が増すんだ。当然、LP/OPはこうしたAAも望める場所はなきゃダメだよ。ついでに説明するとLP/OPの位置座標は地図もしくはGPS機器を用いて確認するんだ。地図を使う場合は地図上の自分達の位置を専用の定規(プロトラクター)で計測して座標を割り出すよ。この方法なら緯度・経度それぞれ4桁、合計8桁の座標を割り出すことが可能なんだ。GPS機器ならより詳細な10桁の座標を求めることが可能だね、こうやって自分達の位置は正確に理解しておく必要があるよ」

 

「これまたややこしそうな計算が必要になってきそうね…」

 

「そうだね、正直クソややこしいよ。まぁそこら辺はまた後程だね。さてと…時間はまだあるけどレンジカードの説明が出来るほどじゃあないね。時間があったとしてもここまで説明を聞いた後だと理解が難しいだろうし…どうしようかな」

 

 説明を終えたM200が時計を見るも残り時間は少し微妙な感じであった

レンジカードの説明など出来る時間ではない(決して投稿者のメンタル的にこれ以上は厳しいとか文字数的にとんでもないことになりそうとかそういうメタい理由ではない)

なのでどうしたものかと悩むこと数十秒、どうやら何か思いついたM200はポンっと手を叩いて2人に向き直った

 

「時間も微妙な感じになったしここまでの授業でちょっと疲れてるだろうからちょっとした雑学的なもので小休止にしようか。きっとワルサーは性格的にあんまりこういうことしないだろうしね」

 

「そう言えばなかったですね」

 

「ちょっと真面目過ぎる嫌いがあるものね」

 

「そう言わないであげて、あれでも結構気にするし実際のところはそれなりにユーモアもあったりするから。さて、じゃあちょっとしたことなんだけど今から説明するのはサイレンサーとサプレッサーの呼び方の問題についてだよ」

 

「そう言えばさっきサプレッサーが正しい説は大間違いだとか言ってたわね」

 

「そうなんだ。指揮官も言ってたけど初歩的な英語力があれば理解出来る話だから気楽に聞いてね。そもそもなんだけどサイレンサーとサプレッサーの意味というか、訳すとどういう風に言うかってのは分かる?」

 

「サイレンサーが『消音器』、サプレッサーが『減音器』だと聞いていますが…」

 

「そうね、私もその認識でいたわ。それでサイレンサーと言う割には音を消せてないからサプレッサーの方が正しいって…」

 

「確かにその理論は良く聞くし軍人の中にもそういう風に認識してる人は多いね。でもね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その理論は合ってる部分が何一つなくて間違いしかない、最早理論とすら呼べないものなんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そ、そこまで言う必要あるのかしら」

 

「実際それくらいに間違ってるんだよ、今からそこら辺の解説をするね。まずサイレンサーとサプレッサーを英語のスペルで書くとsilencerとsuppressorになる、ここまでは良いよね」

 

「はい、大丈夫です」

 

「そしてここで大事になるのがこの2つの単語の品詞なんだ。一応2つとも名詞ではあるんだけど、ちょっと特殊な名詞でね。『動詞+erで名詞として扱える』っていうルールが英語にあるのは既に知ってると思うんだけど、サイレンサーもサプレッサーも両方これなんだ。まぁサプレッサーはerじゃないんだけどこれはちょっと特殊なパターンだね。それで2つとも動詞を名詞化したものってことは元となった動詞にちなんだ意味になる、これも良いよね?」

 

「大丈夫よ、お師匠」

 

「OK、それじゃあここからが重要なんだけどね…まずサプレッサーからいくんだけど元となった動詞のサプレス(suppress)の意味は『抑制する』だからサプレッサーの意味は『抑制器』になるんだ。別に音を抑制してるんだから間違いってわけじゃないんだけどちょっと意味が広義的過ぎて他の色んなものを指してサプレッサーって言えてしまう問題が生じんるんだ。例えばフラッシュハイダーだってマズルフラッシュを『抑制して』るからサプレッサーだしバイポッドも揺れを『抑制する』ものだからサプレッサーだね。同様にモノポッドもそうだしストックパッドやマズルブレーキ、コンペンセイターetcetc...色んなものをサプレッサーと呼べてしまうから厳密に言いたいならサウンドサプレッサーとかサプレッサーフォアサウンド(sound suppressor/suppressor for sound)とかって言わなきゃいけない。それに対してサイレンサーなんだけど、元になったサイレンス(silence)の意味は『静かにさせる』なんだよね」

 

「「…え?」」

 

「つまりサイレンサーの意味は『静かにさせるもの』、この場合だと『減音器』って言うのが正確かな」

 

「ちょっと待って、サイレンスの意味って『無音にする』とかじゃないの!?」

 

「残念ながら『動詞としてのサイレンス』にそんな意味はないよ。『無音』という意味を持つのは『不可算名詞』としてのサイレンスなんだ。あくまでも動詞のサイレンスは静かにさせるって意味を持ってる。まぁ黙らせるとかもあるからそこから無理矢理音を消すとかいう暴論も展開出来なくもないけど…そんなの明らかに頭悪いよね?それに発生している現象に準じた訳し方というか意味を持ってるんだからそっちで使うのが普通だしね。だからかなり厳密な話をするなら言語的にサイレンサーの方が正しくてサプレッサーは間違いではないけど広義的過ぎて何を指してるか分かんないからもっと厳密に言う必要がある、ってことでこの問題は片付くよ」

 

「…衝撃的よ」

 

「でも確かに初歩的な英語の知識さえあれば理解は出来ますね」

 

「そうなんだ、本当に基本中の基本の知識しか要らないんだけど何故か専門書にすら間違って書かれてたりするんだよね…それもアメリカで発行された専門書ですら、ね」

 

「「ええ…」」

 

 余りの事実に2人は驚けば良いのか呆れれば良いのか分からないといった表情をする

しかしモシン・ナガンが何かに気付いたように声を上げる

 

「ちょっと待って、指揮官も含めてここの皆もサプレッサーって言ってるわよね?それはどうしてなのかしら」

 

「あ、確かに」

 

「その答えは単純明快、サプレッサーだと『サプ』って略していうことが出来て便利だって言うのが1つ。それとぶっちゃけた話どっちでも良いしサプレッサーって言って減音器以外を思い浮かべる人なんていないからね、だったら省略して言えるサプレッサーの方が良いじゃん?」

 

「まぁ…そうね」

 

「もう疑問もないかな?それじゃあそろそろ時間だし今回の授業はこれで終わることにするよ。レンジカードについての説明は次に授業を行う指揮官にお願いしておくからしっかり聞いてね。正直今までで一番理解するのが難しいものになるから全力で取り組まないと置いて行かれるよ」

 

「そ、そんなにですか?」

 

「うん。ぶっちゃけ今までの授業が生易しく思えるレベルだね」

 

「…ホーリーシット」

 

「…なんで英語?まぁいいや、それじゃあまたね~」

 

 そう言いながら教室を後にするM200、次の授業のことを思って気が重くなる2人は溜息を吐きつつもお互いに復習を始めるのであった

そしてこの後彼女達はM200の言葉の意味を思い知ることになる…

 

 




いやぁレンジカードについても書くつもりだったんですけど無理でした、はい(白目)
だってあれ滅茶苦茶にややこしいのに1万字も読んだ後に出したって読む気失せるだけなんですもん…次回細かく書いていくのでお楽しみに(?)
M200の言葉通りぶっちゃけここまでの説明が生易しく感じるレベルなのでお覚悟を

あとサイレンサーとサプレッサーに関してなんですが、映像で説明が観たい!という方は私の投稿している動画で解説してたりするのでこちらをご覧いただければより分かりやすいかと思います(露骨な誘導)
https://youtu.be/YfaUdzbWHDI
28:35より解説しています
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