S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常 作:フォルカー・シュッツェン
弾道に関しては以前やったのでかなりざっくりにしました
それよりも今回注目すべきはゼロイングですね、お話の中でM16を扱いましたのでその系統の銃を持っているキャラのゼロイング風景の参考になればと思います
では、どうぞ!
S09H基地名物スナイパースクール、その座学2日目はなんと教室ではなく屋外で行うということでFN49とモシン・ナガンの2人はWA2000の案内で射場へと来ていた
射場に着くとそこにはスカーレットがM16らしき銃とM24らしき銃を台座にセットしており、他にも色々と何やら準備をしていた
「連れてきたわ、指揮官」
「おう、来たかお前ら。私の方ももう少しで準備が終わるから先に始めててくれ」
「分かったわ。それじゃあ貴女達、ここに座って頂戴」
「あ、はい…今日は2人で授業ですか?」
「そうよ。初めに言った通り特別に必要な時は2人でやるからね」
「今からするのがその『特別に必要な授業』ってわけね。どんな内容なのかしら?」
モシン・ナガンがそう聞くとWA2000は準備されていたホワイトボードに項目を書き込んでいく
「今日は弾道と命中精度としてのMOAについて軽く教えた後に『ゼロイング』についての授業を行うわよ」
「なるほどね…結構元から知ってることも多そうだし、ここまでする必要のある内容とは思えないわね」
「そうでもないわよ。だってアサルトライフルのアイアンサイトのゼロイングなんてしたことないでしょ?」
「え…ってそう言えばM200さんもアサルトライフル使ってましたね」
「そういうことね。口を挟んでごめんなさい」
「分かってくれればいいわ。じゃ、いくわよ」
そう言うとWA2000はまずは弾道に関するちょっとした説明を始める
「まず弾道なんだけれど、既に知っての通り弾丸は弧を描いて飛翔するわ。この時弾丸が描く放物線のラインを弾道と呼ぶわね。そして弾道には空気抵抗や重力、風といった要素が複雑に絡んでくるわ。それに弾丸の種類によっても大きくことなるし、例え同じ規格の弾でも細かな違い…そうね、メーカーや弾頭重量、弾頭形状、銃身長に装薬量なんかによっても全部変わってくるし、その組み合わせによる弾道の変化の種類は無数にあるの。弾薬製造メーカーは弾薬毎に弾道表を提供してるからそれも参考にしなさい、勿論うちで造ってる弾薬にもちゃんと記載されてるわ。スナイパーは自身が使う狙撃銃及び使用弾薬の弾道特性を120%理解していなきゃいけないわね、貴女達も細かいところまで全て理解しなさいよ」
「…なんか頭が痛くなりそうね」
「大丈夫よ、知恵熱が出る程度だから」
「全然大丈夫ではないのですが…」
「まぁ少しずつ覚えていけばいいわ、それよりも次に行くわよ。弾道は様々な環境・状態によって変化を受けるわ。細かいところは自分で撃ってみて頭に叩き込むしかないけれど、基本的には今からいうものになるわ。まず重要なのが『気圧』ね。気圧が下がれば空気抵抗が減って当然射程距離は伸びるし弾丸はよりフラット(真っすぐ)に跳ぶように見えるわ。気圧の変動に関係するのは主に気温、高度、天気よ。気温が高ければ高いほど気圧は下がって空気抵抗が減るし、高度も同様ね。あまり知られていないのは天気かしら、天気が雨だと低気圧になるからこれもまた空気抵抗の減少に繋がるわ。次にメジャーなのは『風』よ。追い風なら若干射程距離が伸びるし、逆に向かい風だと射程は短くなるわ。勿論射手から見た弾道は追い風はフラットに、向かい風はドロップが大きく見えるわね。それに横風の場合も弾道に大きな影響を与えるからしっかり身に着けておきなさい。細かいことを言えば『湿度』なんかも影響して来るわね。これらは環境によるファクターだけど、銃のファクター…つまりは『銃身長とバレルツイスト』の影響もしっかり考慮する必要があるわ。やや専門的な話になるけれど、アメリカ軍が使用していた5.56×45mmNATO弾…所謂SS109ってやつね、これは銃身長20インチ・バレルツイスト1:7で本来の性能を発揮するよう作られてるの。バレルツイストってのは銃身内部に彫られたライフリングの回転数のことよ。『バレルツイスト1:7』は『7インチで1回転』するようにライフリングが彫られているという意味よ。要するに『20インチ・バレルツイスト1:7』っていうのは銃身内で弾頭が約3回転して発射されるということね。他にも『1 in 7』とか『1/7』とかいう表記もあるけど、うちでは『1:7』で統一してるしこれを基準にしていくわよ。あとこれは因みにな情報なんだけれど、かなり厳密に言えばSS109は実のところ『20インチ・バレルツイスト1:9』が最適なんだけど、ほかの使用弾薬も考慮して最大公約数的な値として1:7とされていることが多いわね。M16A2なんかが正にそれよ。続けて因みになんだけれどM16A1はバレルツイスト1:12だから回転数が少なくて弾道の安定性は少し低いわね、それに最適使用弾薬も223レミントンだからどうしてもA2以降と比べると性能は落ちるわ。少し話が逸れたけど、これらの最適バレルツイストは火薬の燃焼効率と摩擦抵抗の関係から導き出された結果よ。使用弾薬と銃(バレル)の相性も狙撃にはすごく重要な要素ってことね、スナイパーはこれらの要素を完璧に理解して経験を通して学んでいく必要があるの。初日に阿保程撃たせたのも実はそういう意図があってのことだったりするわね」
「あの地獄には他にもそんな意味があったのね…癖見る以外にもあるなんて考えようともしなかったわ」
「…思っていたよりも考えてくれてたんですね」
「そうよ、無駄なことなんてさせないんだから。ああ、それとこれは当たり前だし理解してると思うけれど照準線は銃口より上に位置してるから照準線と弾道は2回交差することになるわ。正確に命中させるためには
「そうね、それは分かるわ」
「私も大丈夫です」
「そうよね、まぁ一応よ。さて次に説明するのは『MOA』に関してね。FN49、MOAに関してどの程度知ってるかしら?」
「え!?えっと…『MOAは命中精度の単位で1MOAは100ヤードで1インチ円に集弾する』でしょうか?」
「そう…モシンは?」
「私も同じ認識よ。それ以外にあったかしら」
「なるほど、やっぱりね…まぁ別に間違いではないんだけど、正解とは言えないわ」
「ど、どうして…」
「簡単な話よ、『そもそもMOAは命中精度の単位ではない』もの」
「ふぁ!?」
WA2000の言葉に2人は大いに驚いた
それもそうだろう、自分達の中での認識はそうであったしそれはつまるところそういう風に初期インストールされていたということなのだから
しかしWA2000の言うようにMOAとは命中精度の単位ではない、もっと別の単位なのだ
「その辺も含めて説明するわよ。まずMOAってのは『角度の単位』なの、そしてその角度の単位を命中精度を表すときに用いてるに過ぎないわ。もうちょっと詳しく言うと発射された弾丸の弾着がどのくらいバラけるのか、そのバラけ具合を角度で表しているの。1MOAの場合は100ヤードで1インチ、200ヤードで2インチって具合にね。でもこれはあくまでも理論値よ、遠距離にいけばいくほど命中精度は大きく崩れるわ。100ヤードで1MOAの銃が1000ヤードでも1MOA(10インチに集弾する)とは限らないわよ。逆に言えば1000ヤードで1MOAならそれは長射程でも優れた命中精度を誇る銃ってことね。因みにMOAは『ミニッツ・オブ・アングル』の略で1/60°を表しているわ。角度の単位には『度・分・秒』が用いられるのが一般的だけどその内の『分単位』ってことね。それと理論上の命中精度なら計算式を用いて求めることが出来るわ、その計算式はこうよ」
1MOA 底辺a
tan―――=―――――
2 距離H
底辺a=0.5238in
A≒1.05in
「MOA値が異なる場合はそこの数値を入れ替えることで計算することが可能よ。そしてこの式の通り厳密には1MOAは100ヤードで約1.05インチとなるわ、でもそこまで細かいことを言ってると素早い計算が出来なくなるから切り捨てて1インチとしているわね。これらを言葉で簡単に表すなら『銃口から同一の原点を持ち間隔が1MOAの2本の線を引いた際、その2線の間隔は100ヤードで1インチとなる』ってところよ。これが正しいMOAについての知識よ、理解したかしら?」
「や、ややこしいわね…」
「頭がこんがらがりそうです…」
「まぁぶっちゃければ今までの貴女達の認識でも特に問題はないわよ。ただ厳密に言えばこうなるんだな位には思っておきなさい。さ、ゼロイングの説明に移るわよ。ゼロイングは狙撃銃は勿論、全ての銃にとって最も基本的で必要不可欠な作業となるわ。一言で言えば『照準点と着弾点を一致させる作業』ってところね、因みにゼロってのはそのまま数字の0…起点を意味しているわ。分かりやすく言えば照準と着弾のズレが0って感じかしら。優れた射手が最高級の狙撃銃とスコープを用意したってゼロイングしてなきゃ絶対に当たらないわ、だからこのゼロイングについては絶対にやり方をマスターしておきなさい。そのやり方なんだけれど、まずはM16A2のアイアンサイトによるゼロイング方法を教えてから狙撃銃…要するにスコープね、これのゼロイングの仕方を教えてあげる。因みにM16A3でもM16A4でも基本は同じよ。指揮官、用意は出来てる?」
「ばっちりだぜ!いつでも良いぞ」
WA2000が後方にいるスカーレットに声を掛けると彼女は笑顔で返事を返す
今日スカーレットがここにいるのは2人にゼロイングのやり方を説明するのに実例を示しながらの方が理解し易いため、実演役が必要だったのが理由である
その後スカーレットはWA2000の説明に沿って動いていく
「まず初めにゼロイングの姿勢からね。当然銃を安定させる必要があるから立って行うのは言語道断よ。伏せるか、もしくはせめて座ってやりなさい。そして理想としてはガンレストっていう器具に銃を固定してするのが良いんだけれど、それがない場合は安定した台座に銃を乗せるわ。分かってるとは思うけど銃身を乗せるんじゃないわよ、絶対にハンドガードを乗せなさい。その後グラつきがないかを確認して大丈夫なようならグリップを握って人差し指をトリガーガードに添える。ストックを肩に当ててしっかりと保持したらチークパッドに頬を乗せる、この時鼻先がチャージングハンドルの先端に触れるように構えなさい。理由はゼロイングの際の頭の位置を完全に固定するためよ。サイトを覗く高さや距離がズレると照準点もズレるからね。そう、丁度今の指揮官のような姿勢よ。しっかり見て記憶領域に叩き込んでおいて。で、こっからがゼロイングの方法の説明ね。ここからは2つのステップに分かれるわ、まずステップ1は『メカニカル・ゼロ』ね。これは実射なしで行う機械的なゼロイングよ。射場で試射する前に兵舎とかで予めやっておきなさい」
ここでWA2000がホワイトボードに項目を書き足していく
それは以下のとおりである
1.アイアンサイトの準備
2.ボアサイターの装着
3.アイアンサイトのゼロイング
「最初にするのはアイアンサイトの準備ね。これは何もサイトを取り付けろってことじゃないわよ、勿論それも出来なきゃいけないけど今回は違うわ。アイアンサイトの準備ってのはまずフロントサイトとリアサイトを基準となる位置に合わせることから始まるの。ここからは指揮官の手元を見ながらの方が分かりやすいから前に移動しなさい。…移動したわね、説明を続けるわよ。M16の場合リアサイトの
「これは弾丸…?いえ、違うわね」
「弾丸の形をした…なんでしょう?」
2人はスカーレットが取り出したものをまじまじと見るが、それがなんであるのかは分からないようだ
その反応を予期していたスカーレットは笑みを浮かべながら弾丸の先端をモシン・ナガンの胸に向けてスイッチを入れる
すると赤い光線がモシン・ナガンの胸に刺さった
「うん?これは、レーザー?」
「そうだ、こいつは弾丸型のレーザー照射器だぜ。こいつをこうして薬室に装填してっと…ほれ、銃口からレーザーが出てるだろ?このレーザーの光点を参考にしながらアイアンサイトのメカニカルゼロを行うんだ。無論、この光点はあそこにあるターゲットの丁度中心に合わせろよ。そこがズレてたら話にならねえからな」
「因みにボアサイタ―専用のターゲットも存在するけれど、今回はそういう道具は使わないわ。何処ででも出来るやり方を教えるわよ」
WA2000のその言葉を聞いたスカーレットが笑みを引っ込めて真面目な顔で先程のようにM16A2を台座に置いて構えた
「ボアサイターを装着したら銃を台座に固定して構えなさい。そしたらだいたい7m~10mくらいの距離にセットしたターゲット用紙にレーザーを照射して。因みにこの時の距離はボアサイタ―の説明書に従いなさい、うちで使ってるのは主に10mのものが多いから今回も10m用のものを使うわ。アイアンサイトを通して光点を確認してサイトの照準が光点の‘やや上’になってればOKよ。もしも大幅にズレてるようならフロントサイトかリアサイトのどちらかが緩んでたりダメージを受けて曲がったりしてるから、状態をチェックしなさい」
「私の経験上だと訓練中にフロントサイトやリアサイト
「そうやってレーザーの光点とサイトとのズレを無くしたらメカニカル・ゼロは終わりよ。このメカニカル・ゼロを飛ばしてもちゃんとゼロイングは出来るけど、やった方が圧倒的に楽になるわ。ここを念入りにやっておけば実射のゼロイングで1発目からほぼ真ん中に集弾したりして、微調整するだけで済んだりするの。もしこれを飛ばしたら何度も何度も撃って確かめていかなきゃいけないから身体的にも精神的にもきついわよ。何より弾が無駄だわ、それにM16の場合内部メカも汚れやすいからメンテナンスの手間も増えて面倒ね」
「確かにそんなことになるくらいならこれをちゃんとやった方がいいわね」
「そんなに面倒でもないですしね」
「そうだな、私もこれはもう数え切れないくらいにやってきたが…やっぱりやった方が良いぜ。めっちゃ楽だしな。ああそうそう、アイアンサイトの他にもダットサイトやホロサイト…それにレーザー照射器なんかもこの方法でメカニカル・ゼロを行う。勿論細かいところに違いはあるが…ま、ほぼ一緒だ。ついでに覚えときな」
「じゃあちょっと一通りやってみましょうか。指揮官、サイトの調整を滅茶苦茶にして頂戴」
「あいよっと」
メカニカル・ゼロのやり方を教えたところで2人に実際にやらせてみる
スカーレットが合わせたサイトの調整を崩した後に交代で最初からやらせてより深く理解させるのだ
とは言えいくらASSTで繋がっていない銃とは言えここまでは非常に簡単なため2人ともすんなりと実行することが出来た、所要時間は5分といったところか
そしてそれが終わるとWA2000が手を叩いて次にいくことを宣言する
「さぁ、メカニカル・ゼロについて理解した所で次のステップにいくわよ。要するに実射によるゼロイングね、このままM16のゼロイング方法を教えていくわよ。まず見ての通りM16A2(及びA3、A4)の場合ゼロイングは25m射場で行うのが一般的ね。今指揮官が隣に移動したでしょ?ここは25m射場になってて、指揮官の前方にターゲット用紙があるのが見えるかしら。あれがM16用のゼロイングターゲットよ」
「これからあのターゲットに撃ち込んでいくんだけど、この時にメカニカル・ゼロで8/3に合わせたエレベーションノブを時計回りに1クリック(A3及びA4の場合は2クリック)回しておくのよ。理由は後で言うわ。じゃあ実射に移るわね、台座に固定した状態でターゲットにまず3発撃ち込みなさい…指揮官、お願い」
「あいよ」
返事を返したスカーレットがセミオートで3回トリガーを引いた
銃声とほぼ同時にターゲット用紙へ穴が空く
「ターゲット用紙に着弾して穴が空いたわね、細かく見るから貴女達もこの双眼鏡を使ってしっかり見なさい。この時ターゲットに着弾した3つの穴が描くトライアングルを確認するの。このトライアングルがターゲット中心のサークル内に収まるようにアイアンサイトを調整していくわ。今回は見ての通り左上にズレたわね」
「ズレは左に2マス、上に3マスね。このマスは1マス毎にフロントサイト/リアサイトの調整ノブの1クリック(A3&A4は2クリック)に対応しているわ。尚この時リアサイトのエレベーションノブは使わないから注意しなさい、使うのはリアサイトのウィンテージノブとフロントサイトの調整だけよ。修正する際に着弾が左右にズレている場合はリアサイトのウィンテージノブを、上下はフロントサイトを調整するわ。今回は左に2マスズレているからリアサイトのウィンテージノブを時計回しに2クリック、上に3マスのズレはフロントサイトを反時計回しに3クリックよ(A3とA4はそれぞれ倍)。ここら辺のサイトの調整はターゲット用紙にどう調整すれば良いかが書いてあるから迷うことはないわね。調整したらもう一度3発撃つわ、指揮官」
「おう、任せろ」
再びスカーレットが3発撃つ
すると今度はターゲット用紙の丁度真ん中のサークルにトライアングルが入った
「よし、全弾サークル内へ着弾したわね。この段階で調整を終えても良いんだけど、念の為にもう3発撃つわ。……うん、全部入ったわね。こうして6発全てが中心のサークル内に着弾すればOKよ。そしたら実射前に1クリック動かしたリアサイトのエレベーションノブを元に戻すの。この一連の作業によって射距離25mの射場でも300mゼロ(300mで照準線と着弾点が一致する)に設定されるわ。アサルトライフルはこの300mでのゼロイングを基本としていて、これはバトルサイト・ゼロとも呼ばれるわね。勿論最初にリアサイトのエレベーションノブを動かしたのは25mでの300mゼロを行う為に‘わざとズラす’必要があったからね。因みにこの状態でさっきと同じように撃つと……見ての通り、中心やや下に着弾するわ。あ、勿論この方法は『SS109を使用するフルサイズのM16A2』だからこそ出来る調整の仕方よ。カービンモデルのM4やその改修型のHK416なんかは弾道が変わるから全く同じ方法ではダメよ、当然他のクローンモデルにも同じことが言えるけど…その辺はまぁ今度ね。そこまで今やると収拾が付かなくなるから。流れは頭に入ったかしら?それじゃあそこにメカニカル・ゼロまで終えたM16A2が2つ用意してあるから貴女達もあそこにあるターゲットに撃ち込んでやってみましょうか」
「分かったわ」
「分かりました」
WA2000の言葉に従い2人はリアサイトのエレベーションノブを1クリック回してからスカーレットと同じように構えてサイトを覗く
この時点でスカーレットがモシン・ナガンに、WA2000がFN49のサポートへ入り間違ってる所があればそれを指摘して直させる
構えに可笑しなところがなくなったところで実射の許可を出し、それを聞いた2人が3発撃ち、着弾を確認する
事前に‘敢えてズラしておいた’為に2人とも中心にヒットすることはなく、しかもそれぞれが違う方向にズレていた
勿論2人はそのズレを見て先程のスカーレットと同じようにノブを回して調整していき、もう一度撃つ
流石に戦術人形であることとゼロイング用のターゲット用紙が非常に分かりやすい為に2人ともASSTで結ばれていない銃にも関わらず1回の調整で中心のサークルにトライアングルを入れていた
勿論メカニカル・ゼロをしっかりやっておいた恩恵もある
続けて3発撃ちこんで6発全てが中心に着弾したことを確認するとリアサイトのエレベーションノブを元に戻した
これで300mゼロの完了である
「うん、2人ともスムーズに出来たわね」
「思ってたよりも難しくなかったですね」
「まぁメカニカル・ゼロもやってあったし何よりあのターゲット用紙がすっごく分かりやすかったのが大きいわね」
「それでも初めてでこれだけすんなりいけるのは凄いことだぜ、私でも最初は何発も何発も撃って調整したもんだ…懐かしいな」
「なんか意外ですね…それってどれくらい前のことですか?」
「ん?ん~…大体20年前くらいか?」
「うわお…本当に子供の時からやってたのね」
「ほらほら、雑談はそのくらいにして次に行くわよ。今のはアサルトライフルでのゼロイングだから今から狙撃銃でのゼロイングの説明を始めるわ。とは言ってもこれに関しては知ってるとは思うけどね」
「ええ、勿論」
「私もある程度は」
「OK、ならここからはちょくちょく貴女達に答えてもらうよう質問をバシバシしていくわね。それで狙撃銃でのゼロイングなんだけれど、当然スコープを用いるわ。まず初めに大切なのは使用する高精度弾薬の弾道特性を理解することね。それがどうしてかは分かるかしら?」
「弾丸は放物線を描いて飛翔するからね、アサルトライフルより遠距離を狙う狙撃銃ではこの放物線軌道の中でも弾丸のドロップを考慮に入れてゼロイングしなきゃいけないわ」
「その通りよ。だからこそ弾道特性を120%理解しなくちゃいけないのね、任務の性格や自身の技量に合わせてゼロイングすべき距離を選択するのもまた大事よ。最も基本的な距離は100ヤードでのゼロイングになるわね。基本的なやり方はさっきとあまり大差はないけれど、細かいところで違うわ。まず1つ目の違いはターゲット用紙の違いね、狙撃銃でのゼロイングにはこの用紙を用いることが多いわ」
「この用紙はさっきのアサルトライフル用の物に比べてより細かい調整が可能になってるわね。さ、隣に見えるけれどあれが100ヤードの射場になってるわ。そっちに移動しましょうか」
WA2000の言葉通りここには先程アサルトライフルのゼロイン用に使った25m射場と狙撃銃のゼロイン用の100ヤード射場が隣り合っている
実際に調整するというよりはこうしてゼロイングについて教える際に用いることを考えて作られた射場である
4人は移動を開始するが、スカーレットはさっきのゼロイングで使ったM16A2をその場に置いてもう1つ用意していたM24SWSを手に持ち後を着いて来た
「ここが100ヤード(91.44m)射場よ。今から狙撃銃のゼロイング方法を説明していくわけだけど…その前にスコープの構造について見ていきましょうか。ある意味スナイパーにとって狙撃銃と同等かそれ以上に大切となるスコープだけれど、その基本構造は理解してるかしら?」
「当然よ」
「勿論です」
「そう。ならモシン、FN49、スコープの基本部位を5つ言いなさい」
「分かったわ。まず初めに対物レンズよね、外からの光はこの対物レンズを通して入って来るわ。目標を捉える対物レンズの性能でスコープの性能が決まると言っても過言ではない程に重要なものよ。だからこそこの対物レンズのケアには気を使わなくちゃいけないわ、まず基本的にフリップアップ式のカバーでレンズを保護するわね。これはホコリやゴミが付着しない為のものよ。傷やホコリは集光率を下げて視界を悪く(暗く)してしまう、そんな状態じゃ狙うことなんて現実的じゃないわ。出来なくはないけど問題が山積みよ。メンテナンスには専用のクリーナーキットを使うわね、普通の布で拭くと細かい傷がレンズに付く可能性があるからお勧めできないわ。また、クリーナーも指定の物以外を使うと腐食の原因になりかねないから注意が必要ね。映画なんかじゃ対物レンズに反射した光で敵に位置がバレる、なんてことがよくあるけど現代じゃそれを防ぐキルフラッシュというハニカム構造の反射防止カバーがあるから滅多に起きないわね。勿論完全に消せるわけじゃないけど、かなり軽減されるから遠距離でその僅かな反射を視認するのは至難の業よ」
「次は接眼レンズでしょうか。対物レンズの反対側、射手が目で覗くレンズですね。対物レンズと同様、メンテナンスは欠かせません。スナイパーに取って重要なのは使用するスコープのアイリリーフ、接眼レンズと瞳の距離を理解することですね。接眼レンズという名前ですが当然目をぴったりと付けるわけにはいきません、ある程度離す必要がありますがその際に適正距離があっていないと視界の外縁が暗く陰ってしまいます。スコープを狙撃銃にセットする際には自身の体格とストックの調整度合い、そして様々な射撃姿勢に於いてベストなアイリリーフを得られるかを再三確認する必要があります。また、殆どのスコープには視度調整リングが接眼レンズの付近に設けてあります、これを使って接眼のピントを調整して自分に合った視度にすることも忘れてはいけません」
「そしてエレベーションノブとウィンテージノブね。これはさっきアイアンサイトでやったのと同じように照準点の調整に用いるわ。また、実戦に於いてはゼロイング際と環境が変わるからそれに応じた調整をする時にも使うわね」
「それと倍率調整ノブですね、文字通り倍率を変動する際に用いるノブです。スコープには倍率固定型と変動型の2タイプ存在していますが、現代に於いてはスナイパーにとって固定型は全く使い物にならないと考えられているので変動型がオーソドックスです。低い倍率で索敵して高い倍率で標的の判別を行って中倍率で狙撃する、というのが一般的でしょうか。倍率は高ければ高い程良いというものではなく、銃や任務に合ったものを選ばなくてはなりません。私達のような銃だと最大で10~12倍程度のスコープを使うことが多いでしょうか、50口径ともなると最大25倍という高倍率スコープを使用することがあるみたいですが倍率が高ければ高い程視界が暗くなる点には注意が必要ですね。これは集光度が変わらないのに画像のみが拡大されることによっておこる現象です」
「最後にフォーカスノブね。スコープの焦点が合っていない場合、視点を移動させた時に照準点がズレることがあるわ。これを
「付け加えるとすればエレクターレンズくらいでしょうか?スコープ本体の中には複数のレンズが納められていて、この組み合わせによって画像を倍増させていますよね。私達射手がエレクターレンズに手を加えたりメンテナンスすることは基本的にありませんが、仕組みを理解していれば不具合があった際に原因を判断して修理などの対応が取りやすいので知ってはおくべきです」
「完璧ね、流石ライフル型の戦術人形といったところかしら」
「これくらい当然よ」
「初期インストールされてますしね」
2人の回答にWA2000は満足そうに頷きながら褒めた
それに対して2人は口では当然のことだと言うがその顔は嬉しそうである、普段褒められることが少ないFN49などは特に赤みがかった笑顔を浮かべていた
「さて、今の2人の説明で基本は十分すぎるわね。ここからは基本的な構造を持っていて現在でも最もオーソドックスな形状のスコープとして色んなところで使われているリューポルド社製の『Mark.4 M3』を使って実際に調整していくわよ。指揮官、準備は良いかしら?」
「とっくに終わってらあ、いつでもいけるぜ」
「了解よ、じゃあ2人ともさっきと同じように指揮官の近くにいきなさい。よし、良いわね。まずはさっきと同じようにメカニカル・ゼロを行うんだけど手順はほぼ一緒だから省かせてもらうわよ。じゃ、3発撃って頂戴……着弾が右上にズレたわね、双眼鏡でしっかり確認しましょうか。さっきのターゲット用紙よりマス目が細かいのが分かるかしら?基本的に実線を1マスとして数えて小数点以下の細かいところを破線で見ていく形になるわ。今回は…右2.5マスの上に3マスね。で、ここからノブを回して調整していくけれどさっきと少しだけ違うわね。殆どのスコープは1クリックの移動量が1/4MOAになっていて、4クリックて1マス移動するようになっているわ。だから今回の場合はまず左に2.5マス移動させるためにウィンテージノブを上に10クリック、下へ3マス移動させるためにエレベーションノブを左に12クリックすればOKよ。因みにいう必要はないでしょうけれど射手から見た時にエレベーションノブを右に回せば着弾は上になって左は下、ウィンテージノブを下に回すと着弾が右になって上に回すと左へ移動するようになってるわ。ここら辺はスコープに『→U』や『↓R』とか書いてあるから分からなくなったらそれを見れば良いけれど、勿論そんなの見なくても良いように完璧に覚えてなきゃダメよ。さて、修正も出来たところでもう1度3発撃ちましょうか……よし、中心のサークルにトライアングルが入ったわね。続けて3発撃って……うん、完璧ね。これで調整は完了、と言いたいところだけどまだ作業が残ってるわ」
「あら、これ以上やることあったかしら」
「あるのよ、それが。ゼロイング自体は完了したけどここからエレベーションノブとウィンテージノブの目盛りを‘この状態で0に合わせる’の。やり方は簡単、ノブのダイヤルを固定してるイモネジを緩めてからダイヤルの目盛りの0の部分をスコープ本体についてる中心を表す白い点に揃えたらネジを締めて再度固定する。これだけでいいわ、因みにこのスコープは白い点で示されてるけどここら辺はスコープによって様々よ。こうしてあげればスコープの調整を狂わせることなく目盛りを0にして実戦中の調整がしやすくなるのよ」
「なるほど、そんな技があるんですね…どうしてそこも初期インストールされてないんでしょう?」
「私に聞かれても知らないわ…ペルシカに言って頂戴。ともかくこれでゼロイングは完了ね、でももう1つちょっとしたチェックを行うことが出来るわ」
「まだ何かあるの?」
「ええ、とは言ってもこれは別にそこまでやる必要はないけれどね。今から教えるのは自分が今付けてるスコープがどれくらい高精度なものなのかをチェックする方法よ。丁度ダイヤルの調整も終わったみたいだし、続けてやってもらいましょうか。まずは調整が終わったスコープのエレベーションオブを右方向に10MOA分(40)クリックするわ。この状態で3発撃つと…当然10マス上に着弾するわね。そしたら元に戻して今度は左、それが終わればウィンテージノブの上下も同じことをするの。……………よし、終わったわね。それで最終的に元へ戻してもう1度3発撃つ、この時着弾点がゼロイング時と変わっていなければそのスコープは信頼性が高くて高性能ってことよ。粗悪なスコープはこの一連の動作で照準点がズレるのよね、これをボックステストと言うわ。ただ高性能なスコープでも多少の差異は生じるもの、これはその度合いを確認する意味もあるわね」
「…ねぇ、中心の着弾点が3つしかないんだけどこれって一切のズレがないってことなの?」
「もしそうだとしても射手の技量がずば抜けて高くないと無理な気がするんですが…」
「…まぁ、うちで造ってるスコープは高性能ってレベルを凌駕してるのはあるわね。あと綺麗にワンホールショット決めてるのは指揮官の遊びよ、敢えて3点でやる辺り余裕が滲み出てるわね」
「正しく化け物ね…」
「狙撃に関して私の右に出る奴ぁほぼいねぇってこった」
「ほぼいないって…少数はいるんですか?」
「まあな。そこにいるワルサーとか良い例だ、前にも言った通りあいつは私の持つ技の『全て』を継承してるからな。その気になりゃあいつも同じことが出来る」
「こっちにも化け物がいたとは…」
「誉め言葉として受け取っておくわ。さ、貴女達もやってみて頂戴。普通に出来るでしょうけれど一応確認しておきたいの。それとさっき言った目盛り合わせやボックステストの練習もしましょう、ついでにワンホールショットを決める難しさも体感してみると良いわ」
その後は授業時間中何度も調整を行い、その速度や精度を上げていった
因みに2人が1度もワンホールショット決められない中スカーレットが次々と決めていく様を見て2人は更に戦慄したようである
投降する段階までいってから気付いたんですけどこれ説明し忘れたことがありますね…まぁそんな重要なことでもないので良いんですけど、一応次回の冒頭にそれに関して説明を入れようと思います
それに伴て次回の教師役はスカーレットに決定ですね
何故説明を忘れていたのかの理由もこの基地ならではって感じのものを思いついたので不自然ではないはず…だと思いたい
あ、あと狙撃銃用のターゲットなんですけど実際に撃って穴が空いてる画像が見つからなかったので着弾位置は想像で補って下さいごめんなさいm(__)m
M16用のも写真を撮る角度が悪くて見辛いですけどあれしか見つからなかったんです…この本の電子書籍があれば解決するのに何故ないんだ
まぁ無いもの強請りしてもどうにもならないので何とか頑張っていきます
ではまた次回(@^^)/~~~
ゆかりさんが何処に配属されるか
-
諜報部隊
-
LSP
-
その他(例:音楽隊のサブボーカルなど)