S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常   作:フォルカー・シュッツェン

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本当は昨日に投稿する予定でしたがバイトで腰が死んだので一日休養してて投稿が遅れました
因みに腰はもう大丈夫です
そして今回も結構参考にしやすい項目だと思います、多分

では、どうぞ!


座学2日目 五時間目

「入るわよ」

 

 昼食を食べ終えて教室でゆっくりしているとWA2000が入って来た

因みに食べたのはカラスのシチューである、カラスの肉なんて美味しいとは思ってなかったが食べてみるととても美味しくて驚きである

それは兎も角授業をする為にやって来たと思われるが、その割には彼女の顔は険しい

何かあったのかとFN49が聞くとWA2000は頷き、口を開いた

 

「本当はこの授業も指揮官が連続でやる予定だったのだけれど…ちょっと街の方で事件があってね。ガリルから来て欲しいって言われて出掛けたのよ」

 

「事件?けどわざわざ指揮官が出張るようなことなのかしら…大規模なテロとか?」

 

「いえ、そういうわけではないのだけど…私も詳細は聞いてないから良く分からないわ。ガリルは殺人事件だって言ってたけどどうもあの様子は普通じゃないわね。少なくとも厄介な何かがあるのは確かよ」

 

「心配ですね…」

 

「心配するほどのことではないわ、あの指揮官だし。ま、それは置いといて授業を始めるわよ。今回教えるのは『監視のテクニック』と『敵狙撃兵の捜索テクニック』、それから『SALUTEリポート』の3点ね。さっそく監視のテクニックから行くわよ」

 

 WA2000はそう言うとホワイトボードへと書き込みながら話を進めていく

 

「まず何度も言っていることだけどスナイパーの第一の任務は『偵察』よ、多くの情報を本隊に上げることが何より重要になってくるわ。なんせ主力部隊の皆はスナイパーチームからの情報を待っていることが多いから、正確で迅速な情報収集と伝達が求められるのよ。ここら辺は今までの授業で理解してくれていると思うけど、今回はそれを可能にする為の細かいテクニックを教えていくわ」

 

「それはありがたいわね、丁度知りたいと思ってたところなの」

 

「あら、それは良いタイミングだったわね。じゃあ今から細かく教えるからしっかり聞いておきなさい。スナイパーチームはポジションに着いたらまず『ヘイスティ・サーチ』を行うわ。これは双眼鏡を用いて視界・射界全体を見回すようにして『SA(Situation Awareness)』を高める行為よ。SAってのは直訳すると『状況認識度』になるけど、この場合の意味としては『場の空気を理解する』と思ってくれて良いわ。不自然なもの、違和感を察知するためにはまず‘場の空気を読む’ことが大切になって来るわね。そして全体を見たら次にターゲットエリアに絞って観測を行うわ。比較的低倍率の双眼鏡を使って、同じように場の空気を掴みなさい。それとこの時狙撃銃に搭載したスコープは使わないでね、視界が狭くなって全体の雰囲気を掴むのが難しくなるわ。そうしてヘイスティ・サーチが出来たら今度は『ディティール・サーチ』に移行しなさい。これはより細かな状況を観測するもので、双眼鏡を用いて前方180°の範囲を距離50m毎に最低10往復してチェックしていくの。ヘイスティ・サーチからディティール・サーチの組み合わせは必要なら数回ほど繰り返しても良いわね」

 

「要するにざっくりとした観測とじっくりと見る観測を繰り返して戦場の様子を把握するということですね」

 

「その通りよ。次に『監視の四大要素』について教えていくわね。これは指揮官の持ってるアメリカ軍の教本を元にやっていくわよ。まず1つ目、『認識(Awareness)』。さっきも言った通りターゲットエリアのみじゃなくて自分の置かれた周囲の全体状況を認識して、把握しなきゃいけないわ。現場の空気感を読み取ることが変化に気付くための第一歩よ、それと自分の身を隠す意味でも重要になって来るわね。2つ目、『理解(Understanding)』。状況を把握したら‘自分に何が出来るのか、どこまでが限界なのか’を理解しなさい。例えば『敵部隊を視界に捉えた。だが現在位置では部隊標識などが判読出来ない、あと200m接近すれば判読可能だが被発見率は五分五分』というような状況になった時に無茶や無理、無謀な行動をせず自分に出来ることを冷静に把握して実行するの。その為の理解力をしっかりと鍛えなさい。3つ目、『記録(Recording)』。視認した事実はありのままに記録しなくちゃいけないわ。偵察用の特別な記録方法がないわけじゃないけど、記録の基本は『SULUTEリポート』よ。これについては後で詳しく教えてあげるわ。そして4つ目、『対応(Response)』。監視を通して得た情報にどのように対応するのか――記録だけに止めるのか、部隊に報告して支持を仰ぐのか、ただちに離脱するのか、火力支援を要請するのか、或いは狙撃を行うのかなどなど最も適した対応策を選択しなさい。こうした判断を行うには豊富な経験が必要となってくるわ」

 

「認識、理解、記録、対応…結構普通と言うか、言われてみれば当たり前のように感じるわね」

 

「でもちゃんと把握してなければ出来そうにないですね」

 

「そうね、戦場というハイストレスな状況では普段なら問題なく出来るようなことでも出来なくなることが多々あるわ。私達戦術人形は人間よりもそのストレスに耐えることが出来るけど、疑似感情モジュールがある以上そういう状態にならないとは言えないわね。だからしっかりと理解して身体に覚えさせるのよ、意識を失ってても勝手に身体が動いてしまう位にね」

 

「どんだけやるのよ…」

 

「でも実際それくらいやらなきゃ精鋭にはなれないわ。さて、まだまだあるからさっさと行くわよ。次に重要なのは集中力ね、人間の集中力は長く持っても15分程度しかないの。昼夜を問わず、10~15分のローテーションで監視を交代したり目を休ませたりしなきゃいけないわ。監視方法を複数組み合わせることで目の疲労や集中力の低下を緩和することも出来るわね。指揮官の体験談になるけど、アフガニスタンのLP/OPで夜間の監視任務に就いた時、『IS(白)→肉眼(双眼鏡)→NVG→肉眼(双眼鏡)→IS(黒)』と言ったように機器や表示モードを切り替えて監視を行って目を休ませたりしてたそうよ。それに機器によって見え方が違うから監視方法を複数併用することはより詳細な監視を行う上でも意味があるの。‘白サーマルじゃ気付かなかったけど、黒サーマルにしたら潜んでいる敵を発見出来た’なんてことも決して少なくないわ。私達は人間よりも長い集中力を発揮出来るけど、無限に続くわけではないわ」

 

「監視という点に於いてもメリットがあるならやらない理由はありませんよね」

 

「そうね。まぁそういった機器が故障してる場合は肉眼でやるしかないけどね。次に気を付けなきゃいけないのは『薄明時の監視』よ。日没・日出時…特に日没時ね、この時間帯での監視は被発見率が高くなるから注意しなさい。太陽が鋭角に位置するから対物レンズが反射したり、影が長くなって動きが目立ちやすくなるの。だからこの時間帯は動きを最小限に抑えたり、場合によっては監視を中断するとか臨機応変に対応する必要があるわね。予め太陽光の影響を受けにくい位置を把握してそこに移動するのも良いわね」

 

「そっか太陽の傾きによる影響も考えなきゃいけないのね…いったいどれほど考慮しなくちゃいけない項目があるのよ」

 

「細かいことまで言えば無限にあるわよ。勿論その全てをクリアするのは実質不可能だけれどね。だから状況に合わせてどれを考慮してクリアするのか、そこの判断能力も問われるわ。そしてそんな項目の内の1つが『夜間に於ける監視の注意点』ね。スナイパーは高度に訓練されてるとは言え生身の人間よ、夜行生物のような夜間視力があるわけじゃないの。勿論私達戦術人形は夜間視力を機能によってカバー出来るけど、一応知っておきなさい。指揮官と一緒に任務に出るなら彼女が人間だってことを理解しなくちゃいけないからね。それで、夜間の監視なんだけど事前に暗さに目を慣らしておく必要があるの。日中にサングラスをかけるとか日没後30分間暗闇に目を慣らす作業に徹したりね。指揮官がサングラスを着用してるのにはこうした理由もあったりするわ。こうしたものは『夜間適応(Night Adaptation)』と呼ばれるわね」

 

「そう言えば指揮官って人間だったわね…つい忘れそうになるわ」

 

「確かに…」

 

「その気持ちは分かるわよ、私も最初の頃はただの人間の指揮官にボコボコに…ってこれは今は関係ないわね。次は…『夜間照明』かしらね。とは言えこれはミリタリースナイパーにはあんまり関係ないわ。法執行機関のスナイパー、俗に言う『ポリススナイパー』は自身の位置を暴露しても問題ない場合に於いてハイパワーライトを使用することがあるわ。でも私達ミリタリースナイパーがこれを利用することはまずないわね、この基地で言えばPSG-1と訓練中の花梨しか使わないと思うわよ。IRフィルター(可視光を赤外線に変換するフィルター)を装着すれば目視ではこの光を目撃されたりはしないでしょうけど、敵がNVGやISを持ってる可能性を考慮すると自ら光を発するような機器の使用は使わない前提でいる必要があるわね。例外は夜間に手元を照らす小型ライトね、これも使うのは最低限にしておきなさい。街灯や建物から漏れる光、戦火による灯りなど利用出来るものは何でも利用しなさい。それとこれはかなーり限定的なんだけど、スナイパーチームはM301A2照明弾による支援を要請することも出来るわ。これは81㎜迫撃砲から発射される照明弾で5万キャンドルパワー(≒5万カンデラ)の光を60秒以上発してくれるものよ。因みに車のヘッドライトが凡そ15000カンデラね」

 

「かなり明るい光を発するのね…でもそれって」

 

「ええ、グリフィンのみならず正規軍からの認可を受けてるPMCでは厳しいわね。まぁバレなきゃ良いんだし、使用せず任務に失敗して多大な損害を出すくらいなら軍規を破る方が良いこともある…らしいわ。私にそんな経験はないけれど、指揮官にはあるらしいわね。戦友が目の前で軍に所属してた政治家の息子を撃ち殺すところを目撃したけど、それを証言せずにかばったことがあったそうよ。その息子がどうしようもない屑だったかららしいけど…今ではその時のことを後悔してるとも言ってたけどね」

 

「あの指揮官が後悔…?普段の様子からはちょっと想像しにくいですが…」

 

「確かにね…でも指揮官の人生はかなり劇的なものよ。私も1部しか聞いてないけど、そもそも軍属になった経緯からしてやるせないしね…さて、そんなことは置いといて授業の続きをやるわよ。今ので監視のテクニックについては粗方説明し終えたし、次は『敵狙撃兵の捜索』に関して教えるわ」

 

「所謂カウンタースナイプってやつね」

 

「そうよ。敵狙撃兵の捜索技術『スキャニング・テクニック』は裸眼でも各種光学機器を使っても基本は同じだけど、最初は視界の広い裸眼からやって次第により細かな判読が可能な光学機器という順番で行うわ。ここら辺はさっきの監視と同じね。まず裸眼で目に付く物体の動き、反射、影なんかを『左から右へ、そして‘右から左へ’』目を動かして捜索しなさい。この動きには神経生理学上の理由が存在するわ。現代人は本やPC等の画面を‘左から右へ’読み進めることが多いの(今の貴方のようにね)。この行動に脳が慣れてしまってるからもしも常に‘左から右へ’だけで捜索をしてしまうと、文字を読んでいる時のように流し見になって僅かな変化や異常を見逃してしまう可能性が高いわ。慣れていない‘右から左へ’にも目を動かすことでより丁寧なスキャンが可能となるわね。因みにこれに関しては私達も無関係ではいられないわよ。私達人形には『最適化』という機能があるけれど、これが人間でいう神経生理学上の『慣れ』と同じように作用して時として悪影響を及ぼすことがあるの。だから私達も人間と同じように『左から右へ、そして‘右から左へ’』という動きをすることを推奨するわ。それとスキャンをしてる時に一点へ集中しすぎて視野が狭まり、『トンネルビジョン』とならないよう注意しなさい。こうして裸眼での索敵が終わったら今度は光学機器を用いて同じように『左から右へ、そして‘右から左へ’』とスキャンしていくの」

 

「これは…ちょっと意外な注意点ですね。まさか最適化がそんなところで悪影響になるなんて…」

 

「そうね、これは教えてもらわないと気付きようがないわね…このことを指揮官は把握してるのかしら?」

 

「うちの指揮官は当然把握してるわ、そもそもこの欠点に気付いてIOPに報告したのが彼女なんだもの。スナイパーとしての経験が気付かせたみたいね。それからは一応IOPとしても注意点として挙げてはいるけれど、あんまり大々的に言うと敵に弱点を知らせることになるわ。だから細々と伝えるしかなくて、グリフィン内でこのことを知ってる指揮官は残念ながらそう多くはないわね」

 

「そうよね…ちょっとこれからは気を付けていこ」

 

「私も、気に留めておきます」

 

「そうして頂戴。次に教える、そして同時に注意しなくちゃいけないのは『光と影』ね。光は物体を照らしてその姿や色を明らかにするわ。最も代表的な光源は太陽ね。でも太陽は時間、季節、緯度、雲量等によって変化して物体の表面の色や見え方に影響を及ぼすからスナイパーは様々な環境を経験してこうした変化を理解する必要があるわよ。そして光が生み出す影はかなり重要よ、時として影は物体そのものよりも存在をハッキリと映し出すことがあるわ。特に高い位置から眺めた時に感じることが多いわね。捜索する際には敵狙撃兵そのものだけじゃなくて影にも注目してスキャンしなさい。そしてこれは同様に私達側にも言えることよ。自分の身を隠せたとしても影の隠蔽を忘れてしまうことは多くあるわ。敵の作る影を発見できれば有利な状況を得られるし、こっちの影を発見されれば不利になるわよ。そしてこうした影は太陽の移動や光源の有無によって変動することも決して忘れないで。ハイドを形成した時は大丈夫でも時間が経ってみれば影がハイドの外にクッキリ浮かび上がってた、なんてことは良くあるしね。ハイドの位置決定や構築には時間の経過による影の変化も考慮に入れなさい。特に練度の低い兵士は自身の影の存在に無頓着なことが大多数よ。身体の遮蔽と隠蔽のみに気を取られて影の存在を忘れちゃうのね。グリフィンでも基地によっては影に関する教育・訓練を受けてない子達もいるでしょうしね。民間からの採用で指揮官になった人が務める基地では多い傾向にあるわ、そうした基地の人達と作戦を共にする時には教えてあげなさい。それと鉄血だけど、この影に関しては狩人(ハンター)ですら無頓着ね。だから影を利用し、影を隠すこっち側からすれば大きなタクティカル・アドバンテージを得られるわ。敵が無意識に投影してる影を利用して有利な戦況を作ってあげるの、そうすればこっちの被害を小さくしてあっちの被害を大きくすることも容易よ。それに照明弾の存在も忘れてはいけないわ、敵狙撃兵の位置が判明していない時に照明弾を撃ち上げてその際に出来る影から位置を割り出すなんてことも出来るの。それに照明弾で照らせばちょっとした動きでも視認性が高まるわ、だから逆に敵が照明弾を使用した場合には絶対に動いちゃだめよ。遮蔽物がなくて突っ立った状態だったとしても、絶対に。当然、こっちが照明弾を使う際には自分の照明弾で自分の影を生み出さないよう細心の注意を払いなさい。あとこれは限定的ではあるけれど、敵がスコープを覗いてる時に強い光を照らすことで目を潰すような使い方も可能ね」

 

「影ね…これも言われてみれば当たり前のことだけどやっぱり気付きにくい事柄よね」

 

「意識しなければならない点が多すぎますが…逆に言えばそれだけ敵の捜索に役立つ項目が多いということですよね」

 

「正しくその通りよ。そういう点では『動き』にも着目するべきね。人間と同じく、私達の目は昼夜を問わず無意識的に『動く物体』を目で追って注視するように出来てるわ。これは利点でもあって欠点にもなるわね。スナイパーは必要な物体のみに視線を向けられるように日頃から訓練する必要があるの、そうしないと葉の揺れなんかに気を取られてその一瞬で見失うこともあるわ。不自然な揺れならともかく、風に揺られているだけの動きに翻弄されないようにしなさい。敵狙撃兵捜索に於いて考えるべき物体の動きは『プライマリー・ムーブメント(主動体)』と『セカンダリー・ムーブメント(二次動体)』の2点ね。プライマリー・ムーブメントはずばり‘敵狙撃兵の動きそのもの’よ。セカンダリー・ムーブメントは‘ターゲット・インディケーター(目標の存在を示すもの)’で、例えば『茂みに隠れた敵狙撃兵の動作によって周囲の草木が揺れている』なんかの状況を指すわ。動く物体を見付けた際にはそれが自然なのか、敵性存在による動作なのかを見極めなさい。じゃないと敵狙撃兵が囮の物体を使用してこっちの気を逸らしてその隙に離脱するかもしれないわ。勿論、逆にこっちがそれを利用するのもありだけれどね。これらの可能性を考慮してスキャニングは慎重かつ正確に、そして迅速に行わなければならないわ」

 

「これは分かるけれど…実際に戦場で役立てるってなると難しそうね」

 

「そうね、日頃の訓練がものを言うわ。そこら辺はこれからやるとして…次は監視して得た情報を本隊に伝える時に重要なもの、S・A・L・U・T・Eの6項目からなる『SALUTEリポート』についてよ。これは情報を整理して送り忘れを無くすためのもので、敵の状態を6項目に分けてその頭文字を組み合わせたものね。因みにSaluteってのは敬礼って意味よ、語呂合わせになってるわ。SALUTEリポートは歩兵の基礎技術を試されるEIBの必修科目の1つで、歩兵全員が取得するべきものよ。歩兵の精鋭たるスナイパーともなれば寝起きだろうと泥酔状態だろうと6項目を暗唱出来る位に訓練されるわ。指揮官曰く『最もシンプルで分かり易い方法だ、今後も不動不変だろうぜ』とのことよ」

 

「…声真似、似てないわね」

 

「う、うるさいわね!良いから6項目を見ていくわよ!!」

 

(ワルサーさん可愛い…)

 

「と、とにかく!1つ目のSは『Size』よ、これは敵部隊の規模と人数のことね。監視をして敵を見付けたらまずは発見した敵集団の人数を記録するわ。そのまま人数を記入しても良いけれど、軍隊の単位で報告するのがベターね。例えば『PLT size,twenty plus.』とかね、これは小隊規模・20名以上って意味よ。次に車両や野営設備の数なんかも報告する為に記録するわ。視界に見えてるのが20人だったとしても車両やテントの中に人がいる可能性があるからね。2つ目のAは『Activity』、活動状況という意味ね。これは敵部隊が何をしているのかを読み取る物ね。こうした行動を読み取るには歩兵としての経験が求められるわ。徒歩で移動中なのか、陣地を構築中なのか、休憩中で20%セキュリティ(5人に1人が警戒態勢)なのか、撤退準備中なのか…敵が今何をしているのかをしっかりと報告する必要があるの」

 

「ふむふむ…確かに分かりやすいですね」

 

「敵の規模と人数を把握して何をしてる最中なのかを記録する…これなら最初から出来そうだわ」

 

「まぁ出来ることは出来るわね、どれだけ精密に迅速に出来るかは別として。さて3つ目のLは『Location』、これは位置ね。軍隊では位置を必ず座標(緯度、経度)で示すわ。以前は地図とプロトラクターで8桁の数字を割り出してたけど今はGPS機器によって10桁の数字を割り出すわね、ここら辺は以前に説明した通りよ。8桁なら10m四方の範囲を示し、10桁なら1m四方の範囲を示すわね。敵集団の座標だけじゃなくて滑走路や軍事施設、橋やトンネルの入り口とか目印となる構造物や地形があるなら合わせて書き込んでも良いわね。因みにうちではちょっと特殊な座標の示し方をする時もあるけれど…それは実践の方で教えるとするわ。話に聞くところだとあの時の任務で指揮官とM200が使ったそうね。4つ目のUは『Unit/Uniform』ね、意味は部隊・制服よ。敵兵が着用してる征服、付属する階級章や部隊章、更に旗や車両の番号から敵が所属する組織や部隊(連隊・大隊・中隊etc)を可能な限り識別するわ。それと化学防護服のような特殊装備を備えている場合も合わせて報告しなさい。この項目や後で説明するEの項目から分かるけど、スナイパーは敵部隊に関する情報も持ち合わせていなきゃダメよ。情報部隊に属する将兵…うちで言えばMDRや57なんかね、彼女達は『WEO(Weapons Equipment and Organization)(敵の武器・装備・組織)課程』を学んでいるけれど、スナイパーは同様の知識を短期間で習得しなきゃいけないわね。MDR曰く『プラモデルとか作ってると結構分かって来るからお勧め』らしいわね」

 

「あら今度は声真似なしなのね、残念」

 

「ぶっ飛ばすわよ?」

 

「ヒェッ…」

 

「ま、まあまあ…これに関してはしっかり勉強しないと出来そうにないですね」

 

「そ、そうね。取り敢えず続きいくわよ。5つ目のTは『Time』よ、読んで字の如く日時ね。目撃した時間と日付を記入するわ。簡単に聞こえるかもしれないけど、そう単純なことじゃないわよ。というかSALUTEの中で最もミスの多い項目かもしれないわ。私も昔はこの項目は繰り返し確認したものよ…全国が1つのタイムゾーンに存在していて時差のない国、例えば日本ね。そういった国に住む人には馴染みがないでしょうけどアメリカやロシア、ヨーロッパ圏では異なるタイムゾーンが存在していて時差があるわ。アメリカで言えば本土だけでも4つのタイムゾーンがあるし、アラスカやハワイを加えると更に広がるわね。ハワイとワシントンでは6時間も差があるし、サマータイムが適用されればその都度1時間ズレるわね。加えて様々な国や地域へ派遣されることを考えれば地球上全てのタイムゾーンを把握する必要があるわ。こうしたタイムゾーンの混乱を避けるため、日時の報告には『スールータイム』を使用するのよ。ズールータイムに関しては指揮官のレンジカードの授業でやったわね?所謂グリニッジ標準時のことよ。それと午前とか午後で分けずに必ず24時間単位を用いなさい。例を挙げるわ、例えば『2062年12月20日午後6時45分』だったら無線越しに報告する場合『1845 Hours Zulu,December twentieth,twenty sixty two』よ。そのまま訳せば『18時45分ズールー時間、12月20日、2062年』となるわ。記入する際には『201845DEC2062(Z)』ね、これは『20日18時45分12月2062年(ズールータイム)』よ。この基地の試験でもここを間違えたことで落とされる子達を何人も見てきたわ、私も『こんな下らないミスで落ちて堪るもんですか!』って自分に言い聞かせたものよ…懐かしいわね。訓練課程でミスするくらいなら良いんだけど、実戦で間違えれば甚大な被害が出るわ。十分に注意しなさい。最後に6つ目のEは『Equipment』ね、そのまま装備って意味よ。装備は‘武器・車両・航空機・装備’の4点を基本として報告するわ。武器は歩兵小銃の他にも携行対戦車兵器(RPG-7とか)、携行対空兵器(SA-7ストレラとか)などを確認しなさい。特に対戦車兵器と対空兵器の有無は非常に重要だから正確に報告するのよ。車両は戦車や装甲車、自走対空機関砲なんかね。航空機は攻撃・輸送ヘリコプターや固定翼機などよ。航空戦力の有無は陸上部隊にとって最重要項目ね、特にMi-24とかSu-25みたいな地上攻撃機は味方にとって死活問題になるわ。機種と機数、出来れば翼下の搭載兵装まで識別するように努めなさい。装備は例えばパラシュートの有無とかね。空挺能力が有るか無いか分かるだけじゃなくて、その敵集団が精鋭かどうかまで把握出来るのよ。何処の国でも空挺部隊はエリートだし、最精鋭部隊であることも多いから特に注意しなさい。それとボートなんかを持ってれば渡河能力を持ってることも分かるわね。補給物資や補給関連装備の状況からはその部隊の戦闘継続能力が推測出来るし、高度な通信システムを持ってるなら敵のC2能力(指揮通信能力)が強固であることを示すわね。ここら辺は鉄血よりも他PMCや色んな団体の過激派、強力な力を持つ麻薬カルテルやその他犯罪組織と相対する時に注目するポイントね。それと考えたくはないけれど…正規軍と戦う際にも考慮しなきゃいけないわ」

 

「正規軍って…彼らと戦うなんてあり得るのかしら?それにもし万が一戦うとしても勝てるの?」

 

「可能性がないとは言えないわ。この荒廃した世界を統括してるような軍隊よ、一枚岩なわけがないし状況によってはグリフィンを躊躇いなく切り捨てても不思議はない。それと勝てるかどうかだけど…なんとも言えないわね。正規軍の一般部隊はこの基地の試験突破組と同等の戦闘力を持ってるし、規模もうちより大きいわ。正面からぶつかれば間違いなく負けるわね。でも指揮官は隠密部隊で精鋭中の精鋭、馬鹿正直な戦い方はまずしないでしょうし私ですら知らない切り札を持ってるっぽいのよね…クレアとイーサンだって同じ部隊の精鋭だし、クレアは指揮官同様何か持っててイーサンはアメリカ空軍の出身よ。裏で戦闘機の開発とかしてるかもしれないし、やってみるまで分からないってところかしら。それに指揮官はその『万が一の事態』に備えて準備もしてるから一方的にやられる結果にはならないと思うわよ。それでも勝てる見込みは少ないけどね…」

 

「正規軍との戦闘を考えてる基地って…かなりやばい基地に来たのでしょうか……」

 

「やばいんじゃなくて思慮深いと言って頂戴、世の中何が起こるか分からないんだから常に最悪の事態を想定して準備しておくのは普通のことよ」

 

「それは、そうかもしれないけど…はぁ、つまり私達も正規軍と戦えるレベルにまで鍛えられるってことね」

 

「そういうことよ。SALUTEリポートに関しては以上ね、勿論これらはあくまでも単純な例であることを忘れないで。実戦ではより複雑な状況を報告しなきゃいけない場合も多いわ、これら6項目の内容について視認したものから正確な意味を読み取って報告することが出来るのもスナイパーの強みよ。これを上手く利用することで少ない力でより大きな打撃を与えることが出来るし、こっちの被害を最小限に抑えられるわ。つまりスナイパーの監視は味方部隊の命を握っている、そのつもりで訓練に臨みなさい」

 

「りょ、りょうかい!」

 

「わ、分かりました!」

 

 WA2000の凄味を帯びた視線で貫かれたFN49とモシン・ナガンは背筋を伸ばして返事をする

ともあれ今回、というより今日の授業はこれにて終了である

残った授業時間でWA2000は今日1日の振り返りを行い、その都度2人の質問に答えて理解を深めさせるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつは…ひでえな」

 

「せやろ?せやけど重要なんはそこやないんや、これを見てくれんか」

 

「これは…なるほど、そういうことか。お前が私を呼んだのはこいつが理由だな?」

 

「せや…悔しいけどウチらにはこれの意味が分からん。犯人に繋がるもんってことは分かるけどそれ以上は無理や」

 

「だろうな。しっかしこいつは…厄介な事件だぜ、ったく……」

 

 S09H基地の担当する街の古書店にてスカーレットとガリルは血塗れになった書物庫に転がる死体を見ながら何やら話し込んでいた

 

「そう言うってことはアンタには分かるんやな?」

 

「ああ、分かるぜ…分かりたくなかったがな」

 

「ほな聞かせてくれんか、この事件はいったい何なんや」

 

「こいつはな…『悪魔の詩殺人事件』だ」

 




最後の方が不穏だぜ…悪魔の詩の諸々に関しては事前に調べておくとお話が理解し易いかもしれません
明日か、明々後日か…その辺に投稿出来ると思います
宗教絡みなので正直あまり触れたくはないのですが…今後スカーレット達が行う任務のことを考えるとここら辺で宗教関係に慣れておく必要があると思ったので出すことにしました
なのでちょっと表現がグロくなったり逆に控えめになったりするかもしれません

ではまた次回(@^^)/~~~

ゆかりさんが何処に配属されるか

  • 諜報部隊
  • LSP
  • その他(例:音楽隊のサブボーカルなど)
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