S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常 作:フォルカー・シュッツェン
いずれ東北姉妹と一〇〇式とのほのぼのしたお話も書きたいと思います
では、どうぞ!
「んっん~!はぁ…」
布団から少女が身体を起こし、伸びをする
彼女は一〇〇式機関短銃…とは言えこの基地の彼女は銃を使わないので機関短銃と言うのは可笑しいかもしれない
そんな刀に傾倒する彼女は目を覚まし、布団を片付けて着替えていく
着替えを済ませた彼女は部屋を出て食堂へと向かった
「今日は何を食べましょうか…ん?これは…お餅!?」
この基地の食堂は基本的にビュッフェ形式のため毎日何を食べるか悩むのだが、今日は違った
彼女の目に緑色の餡が乗った餅…ずんだ餅なるものが入って来た
今までは極稀にお米が食堂にて振舞われることはあったが餅が出てきたことはない、そもそも作り方を知ってる者がいないからだ
しかし今一〇〇式の目の前には神々しく輝くずんだ餅がある、これはどういうことだと固まっていると声を掛けられた
「あら、もしかしてずんだ餅が気になるのですか?」
「貴女は…ずん子さん、でしたか?」
「はい、東北ずん子です。貴女は一〇〇式さんですよね?お礼が遅れましたが、きりたん達…妹と友人を助けて下さってありがとうございます」
「いえいえ、私は自分の信じる正義を実行しただけですよ!」
「それでも助けていただいたことに変わりはありませんから…本当に、ありがとうございます」
尚もお礼を言ってくるずん子に少し戸惑いながらもその気持ちを受け取ることにした一〇〇式はさっきから目の前にあるずんだ餅について聞くことにした
「ところでこのお餅は…もしかして」
「ん?あぁそうですよ、私が作りました!」
「なんと!神がこんな所にいたとは…!」
「神だなんてそんな…私はずんだが大好きでして、それで聞いてみたら材料があったので折角ならと思いまして」
「まさかお餅を食べることが出来るとは…今度私にも作り方を教えてくれませんか!」
「ええ、喜んで!」
一瞬の内に意気投合した2人はその後一緒に朝食を摂ることにし、沢山のずんだ餅を皿に取ると席に着いた
それから彼女達は様々な会話をする
東北家は日本古来より続く名家であり伝統を受け継いできたこともあって、日本の血を引く戦術人形である一〇〇式は彼女との会話をとても楽しんでいた
その中で特に盛り上がるのは、やはり
「強弓を!?日本古来の弓術を継承するばかりかそんな物凄い弓を扱えるだなんて…尊敬です!」
「そういう一〇〇式さんこそ古流剣術の流れを汲んだ新たな流派を自分で作るなんて凄いじゃないですか。そのお師匠さんにも会ってみたいですね」
この話題である
ずん子は強弓を扱う弓術の継承者であり一〇〇式は一〇〇式流の開祖
お互いに自分の理解の及ばない領域に到達した存在であり、尊敬し合う関係となった
「妹のきりたんさんも何か受け継いでいたりするんですか?」
「彼女はちょっと…運動が苦手でしてそういうのは、残念ながら。でも和歌や茶道、華道に関しては私よりもずっと得意ですよ」
「おお!それは是非一度拝見してみたいですね」
「それを聞いたらきっと喜びますね…っと話をすれば」
「ん?お…きりたんさーん!」
「おおう!?…って一〇〇式さんですか、そんな大声で呼ばないで下さいよ。皆見てて恥ずかしいじゃないですか」
朝食を摂りに来たのであろうきりたんの姿が見えたので呼んでみると、文句を言いつつもこちらへと来てくれた
そして席に近付いた彼女は僅かに顔を顰める
「ってやっぱりあのずんだ餅はずん姉さまが作ったんですね…朝ごはんにそんなにいっぱいずんだ餅食べたら胃もたれしません?」
「何言ってるのきりたん、ずんだは生命の源よ?」
「私はずっと食べてみたいと思ってたお餅があったので、つい沢山取ってしまいました」
「はぁ…まぁ好きにすれば良いと思いますけどね」
きりたんは呆れつつも2人と同席し、食事を摂り始める
それから3人は会話に花を咲かせた
きりたんは最初こそ仏頂面であったが一〇〇式が彼女の趣味である和歌等に興味を示していることを知ると途端に顔色を変えて話を膨らませてくる
その代わりように少し驚きつつも一〇〇式は彼女達との会話を楽しむ
そして今度時間のある時に彼女達の継承してきたものを教えてもらい、一〇〇式はずん子へと剣術を教えることを約束するのであった
因みにきりたんは剣術を教わるのを嫌がったのでなしである、一〇〇式は悲しんでいた
そんなこんなで朝食を終え、東北姉妹と別れた一〇〇式は己の愛刀を納めている訓練室…一〇〇式道場へと赴く
そして愛刀『桜花丸』を手に取ると日課となっている整備と基礎訓練を行う
今日は東北姉妹との会話でテンションが上がっているのかいつもより技の勢いが強く、更には『百花繚乱』をぶっ続けで放ち続けていた
一〇〇式が訓練で百花繚乱を放つ際には常に誰かとの戦闘を意識しており、その目にはそこには存在しない相手が見えている
これは百花繚乱に限った話ではないがこの技の訓練時には他の技よりも綿密に相手の存在を意識している
今日の一〇〇式の目に映っているのは己の師匠の姿だ
この基地で唯一スカーレットとクレアの教えをほぼ受けず、別の人物を絶対的な師匠と捉えている彼女と同じ人物から教えを受けたスカーレットとクレアにしか出来ない芸当だ
紫色の長髪を持ち、スカーレットほどではないが長身の女性…素手であるというのにどれ程激しく刀を振るえど全てを完璧に捌いてくる化け物
その上一〇〇式はおろかスカーレットでさえも目視出来ない程の速度で貫手や蹴りが飛んで来て一撃で戦闘不能に追い込まれる
こちらが必死になって殺そうとしても息1つ切らすことなく余裕で撃破される…そんな師匠を越えようと一〇〇式は努めて冷静に刀を振るう
しかし…
「ぐぅ…!また、ダメでしたか……」
彼女の目に見える幻影の師匠が一〇〇式の刀を片手で掴み、止めてきた上に一瞬で接近して来て膝蹴りを鳩尾に叩き込まれる
幻影なので実際にダメージを受けることはないが、それでも一〇〇式はその場に膝をついた
己の想像でしかないというのに一度も勝てない、勝ち筋が見えない
それ程までに彼女の師匠は強く、どう足掻いても勝てないと無意識の内に思い込んでしまっているのだ
まずはこの思い込みを乗り越えないと師匠に刃を掠らせることすら不可能だろう、一〇〇式の当面の目標である
少しの間落ち込んでいたいた一〇〇式だが、気を取り直すと桜花丸を握り直し、正眼に構えて意識を集中させる
その時、一〇〇式道場の扉を叩く音が聞こえた
「…?どうぞ」
低く冷たい声で一〇〇式が応答すると扉を開けて入って来たのはFive-seveNであった
「相変わらず刀を握ってる時は怖いわね」
「要件はなんですか?」
「せっかちになるのも相変わらずね…まぁ良いわ。要件は…これよ」
「…っ!なるほど、分かりました」
Five-seveNが黒い封筒を手に持って掲げると一〇〇式から殺気が漏れ出す
それを意に介することもなくFive-seveNは接近して一〇〇式へ封筒を差し出した
一〇〇式は桜花丸を納刀すると彼女の手から封筒を受け取り、懐へ忍ばせる
「期限は1週間よ。ま、貴女なら1日で終わらせるでしょうけど」
「当たり前です。望ましくないと言えど、己が役目を先延ばしになど出来ません」
「真面目過ぎるのも考えものよ?まぁそれが貴女の良いところではあるけど…取り敢えず、頼んだわよ」
「承知」
Five-seveNはそれだけ言うとさっさと部屋を後にした
この基地の情報部に所属し、足で情報を稼ぐのが得意な彼女は忙しい
一〇〇式道場を後にしたFive-seveNはすぐに基地から出掛けて更なる情報収集を行う
一方一〇〇式は道場の奥に存在する隠し部屋へと赴いた
そこには一〇〇式が通常使う戦場着とは別に濃い藍色の着物と袴がある
その部屋で一〇〇式は懐から先程の封筒を取り出して中身を確認する
「…いつの世も愚か者は絶えませんね」
呟きと共に一〇〇式は封筒を再び懐へと仕舞うと情報部隊長のMDRへと通信を繋げ、幾つか質問をする
それが終わると彼女は通信を切り、道場を出ると普段と何一つ変わらない様子で過ごすのであった
宵闇に覆われて草木も眠る時間、IOP本社のエレベーター内に2つの人影があった
「今日の仕事も疲れたな…ったく、あの猫耳人をこき使いやがって」
「全くだね…でも」
「ああ…おかげで必要なもんは揃った、後は実行するだけだ」
2つの人影は男と女であるようだ
彼らはIOP本社の主任研究員ペルシカリアの助手という中々の立場であるが、それ故彼女に振り回されているらしい
夜遅くまで仕事に追われて不満そうだが、その割にはしたり顔である
そんな彼らがエレベーターから降りて地下駐車場に停めてある車へ向かっている途中、柱の陰から誰かがぬっと現れた
「誰!?」
「落ち着け、あれはうちで造ってる人形だ。何故和服なのかは分からんが…確か一〇〇式機関短銃とか言ったか。こんなところで何をしている?」
現れたのはS09H基地の一〇〇式である
彼女は暗い殺気を放っており、2人はそんな彼女に警戒心を抱く
一〇〇式は腰に差した桜花丸へと手を掛けながら口を開いた
「IOP本社所属主任研究員ペルシカリア付き研究助手のエリック・トーマン及びソウ・ルォシーとお見受け致す、相違ないか」
「……確かにそうだが、それがどうかしたのか」
「貴方達がスパイであることは割れている。私怨はないが…死んでいただきます」
そう言うと一〇〇式は走り出す
それを受けてエリックとソウはP320を取り出して一〇〇式へと乱射した
しかしその弾丸は一〇〇式の身体へ触れることはなく、全て桜花丸で弾かれていく
「クソ、なんなんだこいつは!!」
「御免」
「ア、ガ……」
「ちょ、ちょっと待って!なんでもする、なんでもするから見逃し」
「問答無用」
「い、いy――」
一〇〇式はエリックの腹を斬り裂いてから喉を斬り払い、命乞いをするソウへ向かって桜花丸を横薙ぎに振るう
その瞬間ソウの首から上がなくなり、桜花丸の刃の上に彼女の頭が乗っていた
一〇〇式は桜花丸を傾けて頭を落としてから血を振り払い、懐から数枚の紙を取り出して刀身を拭うと鞘へ桜花丸を納める
すると何処からか拍手が響いた
音の聞こえる方を見るとペルシカとその背後に10人程の人間がいるのが見える
「いやはやお見事だね。バグが出た時はどうしたものかと思ったけど、彼女に託して正解だったよ」
「ペルシカリア博士、危ないので研究室にいるよう言われていたはずでは」
「なに、あの基地で鍛えられた君の戦いぶりを見てみたくってね。研究者の血が騒いでしまったのさ。それに私がいることには気付いていたんだろう?1発くらい私の方に弾が飛んで来るかと思ったけど一切なかった、あれは君がこちらへ飛ばないよう気を遣ってくれたんじゃないかい」
「…意外ですね」
「私がそこに気付くことがかい?確かに私に戦術眼はないし戦闘行為なんて分からない、でも多少は数学の心得があるからね。跳弾の理論を知っておいて、後はこの目で見て計算してやれば良いだけだよ」
「相変わらず巫戯けた程ズバ抜けた頭脳ですね。それに動体視力も良い…本当にただの研究員か怪しいところです」
「誉め言葉として受け取っておくよ。さ、後の処理は私達に任せて君は帰っていいよ。なに、心配しなくても危害を加えたりなんてしないさ。あの基地を敵に回したくないからね」
「分かりました、ではこれにて失礼します」
「ああ、ご苦労だったね」
その言葉を皮切りとして一〇〇式は背を向けて歩き出す
数歩程普通に歩いていたかと思えば次の瞬間にはその姿は消えており、地下駐車場の何処にもいなかった
その様子を見ていたペルシカは恐ろしさを感じながらも笑みを浮かべていた
あの基地へ行った人形達はほぼ全員が科学者であるペルシカの想定を遥かに越えた領域へと実力を高めていく
ある意味自分よりも戦術人形のことを理解しているのではないのか、そんなあり得ない仮定すら浮かんできて彼女の好奇心を刺激するのだ
今回のスパイの処理を依頼したのはペルシカであり、その依頼を受けてFive-seveNが調査を行って黒であると判明した
そしてペルシカは彼らへ1週間の激務を言い渡して夜遅い時間に殺害しやすい状況を整えた
そこまでしたのは重大なバグを抱えながら最前線で活躍出来る一〇〇式をこの目で見たいが為である
烙印やマインドマップにバグが出たりしたら解体するしかない、そんな常識をぶち壊してみせた一〇〇式を見たペルシカは更なる研究欲が湧き出てくるのを自覚する
早くこの欲求を満たしたい、そう思った彼女は処理班の人間にこの場を任せて研究室へと戻って徹夜で研究に没頭するのであった
そして翌日目の隈を更に深くしてデータとにらめっこをしているペルシカを発見した同僚達は、呆れながらも慣れた様子で彼女を無理矢理ベッドへと押し込むのであった
「んっん~!はぁ…うん、今日もいい天気ですね!」
翌朝、起床した一〇〇式は窓の外を見て笑顔になると朝の準備を始める
その顔は何処にでもいる快活な女の子であり、昨晩情け容赦なく人斬りを行ったことを微塵も感じさせはしなかった
「あ、おはようございますタウルスさん!朝ごはんご一緒にどうですか?」
「おはよう、一〇〇式先輩!勿論良いよ!」
こうして今日も彼女は元気に1日の始まりを過ごしていく
次回からまた座学編に戻る…のですが少しご相談があります
実は三日目の座学が1時間目で終わるかもしれないんです、そこでスナイパーの知識以外にも毒物や銃創やヘッドショットのあれこれについての解説を行おうと思います
しかし銃創とヘッドショットに関しては兎も角、毒物に関しては関係性が低いので深くまで突っ込んだ解説を行うか否かで悩んでいまして…アンケートを置いておくので投票して頂けると幸いです
因みに毒物は関係性が低いとは言いましたが、テロや暗殺などの目線から使用されるであろうものに関しての解説を行うつもりです
スカーレットは人間ですし、市街地戦などを考えれば民間人のことを視野に入れなければならないので多分毒の知識も持っておくべきだろうなぁ…と
もし「これについて知りたい!」というものがあれば是非お聞かせ下さい、私に解説出来ることであれば座学編にて盛り込みたいと思います
ではまた次回(@^^)/~~~
ゆかりさんが何処に配属されるか
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その他(例:音楽隊のサブボーカルなど)