S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常   作:フォルカー・シュッツェン

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基地の案内

「まぁなんだ…改めて、指揮官のスカーレットだ。よろしくな!」

 

「えぇ、よろしくお願いするわ同志」

 

「よ、よろしくお願いします…あの、さっきはすいませんでした」

 

 FN49が幾分か落ち着いた頃、WA2000の必死な説明により指揮官は怖い人じゃないと一応は理解したFN49

その後WA2000にいい加減元気になりなさいと言って尻を蹴りあげられたスカーレットは体裁を整えて仕切り直しと言わんばかりに改めて挨拶をした

 

「さて、取り敢えず最初はお前達にこの基地の案内をする…と言いたいところなんだが実はちょいと雑務が残っててな…悪いんだがワルサー、こいつらの案内を頼めないか?」

 

「そう言うと思ったわよ。それで、どんな雑務が残ってるの?」

 

「ん?まぁ…各施設の支出や備品の過不足報告書のチェックとかそんなもんだな」

 

「それなら私が代わりにやっといてあげるわ。見やすいように纏めておくから後でアンタに見せれば良いでしょ?」

 

「…良いのか?なんか面倒なことを押し付けるみたいで申し訳ないんだが…」

 

「良いわよ、どうせアンタのことだから本当は自分でこの子達の案内したかったんでしょ?今後の事も考えればまずはアンタとの信頼関係を築くのが先決だし、そういうの抜きにしても仲良くしたいって思ってそうだし」

 

「…よく分かったな」

 

「伊達にアンタの副官やってないわよ。さ、どうするの?」

 

「分かった、悪いけどこの書類を頼む。目を通したらこっちに纏めておいてくれ」

 

「了解よ。ほら、さっさと行ってきなさい」

 

「恩に着る。トンプソンはどうする?」

 

「あたしもボスに着いて行くさ。ここに残ってたらワルサーの気を散らしちまいそうだしな」

 

「そうね、私はこういう仕事は1人でしたいし…そうしてもらえるかしら?」

 

「おう、ボスに着いてった方が面白そうだしな」

 

「じゃ、行くか。待たせてすまないな、2人とも」

 

「いいえ、気にしてないわ。私としても貴女のことを知っておきたいからそっちの方が有難いしね」

 

「そう言って貰えると助かる。さ、行くぞ!」

 

 こうしてスカーレットはFN49、モシン・ナガン、そしてついでにトンプソンを連れて基地の案内へと向かった

 

「まったく、指揮官ってばガサツそうに見えて繊細なんだから…さて、さっさと書類を片付けちゃいましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 スカーレットはまずデータルームへと2人を案内した

ここ自体はあまり足を運ぶ機会はないのだが、ここにいる人物には何かと世話になることも多いので、その人物を紹介するためだ

 

「ここはデータルームだ。正直ここは私と副官のワルサーくらいしか来る用事はないんだが…お、いたいた。おーい、クレア!」

 

「そんなに大声出さなくても聞こえてるよ。それで、一体何の用って…あら」

 

 呼ばれてこちらに近づいてきたのは一見大人しそうな女性だった

金色の長髪を結ぶことなく下ろしていて、目は綺麗な翠色

アンダーリムの黒縁メガネを掛けており耳にはシンプルなリング型のピアスとよく見る普通のOLのようだ

物腰も柔らかく、ホンワカとした印象を受ける

気になるところと言えば女性物のスーツの下にタートルネックのインナーを着ていて首が完全に隠されていることくらいである

 

「こいつは20年以上共にいた仲間のクレアだ。今はここで後方幕僚件ガンスミスとして働いてくれている。んでクレア、こっちが今日この基地に来たFN49とモシン・ナガンだ。仲良くしてやってくれ」

 

「クレア・ウィリアムズよ。よろしくね、2人とも」

 

 

「FN49です、よろしくお願いします」

 

「モシン・ナガンよ。お近づきの印に一杯どうかしら、同志?」

 

「お、いいねぇ。あたしにも1口くれるかい?」

 

「ついでに私にもくれ」

 

「こらこら、ダメよ。そういうのは業務が終わってからになさいな」

 

「ちぇっ…まぁ良いか」

 

 挨拶もそこそこにウォッカを取り出して酒を勧めるモシン・ナガンにそこへ便乗して飲もうとするトンプソンとスカーレット、そしてそれをやんわりと止めるクレア

これだけ見ると何とも平和な光景で、ここが鉄血との最前線の基地の1つであることを忘れそうになる

 

「ともかく、クレアは普段後方幕僚としてこのデータルームにいるがガンスミスとして私達の愛銃の整備もしてくれる。当然普段から自分達で基本的なことはしてもらうが、定期的に彼女に見てもらうことになるから覚えておいてくれ」

 

「わ、分かりました!」

 

「う〜ん、何だかそういう油臭い仕事は似合わなさそうな人ね」

 

「モ、モシンさん!失礼ですよ!」

 

 確かにクレアは穏やかでおっとりしたOLにしか見えない

しかしこれでもスカーレットと共に数多の戦場を駆け巡り、隠密特殊部隊「ゴースト」の一員として数々の功績を挙げてきたのだ

スカーレットは彼女を完全に信頼しきっており、自身のスポッターを任せていたほどである

 

「まぁ言いたいことは分かる。だがクレアの腕は確かだ、それは私やこの基地にいる全員が保証する。なぁ、トンプソン」

 

「おうよ、作戦から帰ってぼろぼろになった銃を彼女に見せたら30分で新品同然に綺麗になって返ってきた時は正直目を疑ったぜ」

 

「あら、それなら心配は無さそうね。疑ってごめんなさいね」

 

「ううん、気にしなくて良いよ。ただ、整備を適当にしてたりしたらその時は容赦なく怒るからね?」

 

「おおう、トラウマが…」

 

 クレアの言葉にトンプソンが身を震わせる

過去のトンプソンは銃は弾が出りゃそれで良いと言って整備をあまりしていなかったのだが、それは銃を見たクレアに1発でバレてしまいしこたま叱られたのだ

戦術人形であるはずのトンプソンを容易く投げ飛ばして説教する彼女の姿に周りの人形達は怯え、その後全員の整備レベルが上がった程である

しかもその説教をする時ですら穏やかな笑顔を崩すことなくしてくるため恐怖は倍増する

流石にトンプソンもそれに懲りてかなり丁寧に整備をするようになった

 

「それでクレア、今日の仕事はあとどれ位だ?」

 

「そうね…あと3時間ってところかしら」

 

「したら今日の業務終了後、彼処に来てくれないか?」

 

「ん?…あぁなるほどね、分かったわ。それじゃあ後でね」

 

「あぁ、またな」

 

そう言ってスカーレットは3人を連れてデータルームを出ていった

 

 

 

 

 彼女達が次にやってきたのは食堂だ

ここはスカーレットの意向によりかなり大規模なものとなっている

基地の全職員が同時に食事をしても大丈夫なほど広く、それにともない厨房には様々な調理器具が並んでいる

最早ここにない調理器具は存在しないと言っても過言ではないほどだ

 

「あら、こんな規模の食堂は初めて見るわね。正直壮観だわ」

 

「本当ですね…料理をしているのは民間用の自立人形でしょうか?」

 

「あぁ、そうだ。基本的に私達人間もお前達人形も朝昼晩ここで食事を摂ることになる。無論緊急事態等で出来ないこともあるが…その時に備えて携帯食も常備してあるから腹を空かせることはまずないと思ってくれて良いぜ」

 

「あら、それはありがたいわね」

 

「全くだ。あたしら人形を人間と同じように扱ってくれる指揮官は少ないからな…あたしはボスと出会えた事が1番の幸せだと断言出来るぜ」

 

「照れること言うんじゃねえよ、トンプソン!」

 

「いってぇ!」

 

 臆面もなく好意を伝えるトンプソンの背中をバシンと叩くスカーレットだが、その顔は嬉しそうで満更でもない様子だ

その事からスカーレットがどれだけ人形を大切に扱っているかが伝わって来て、FN49も最初のような緊張や恐怖がかなり和らぐのを感じた

それだけにあのような態度を取ってしまったことを申し訳なく思うが、それは今後の作戦等で返していこうと気持ちを固める

 

「…っと大事なことを言い忘れてた。食堂は基本的に7時~23時まで利用可能だ。それ以外の時間に来ても調理場に誰も居ないから何も食えないぜ。ただ解放はしてあるから食材を自分で持ち込んで料理する分には自由にしてくれていいし、水と珈琲はいつでも飲めるようにしてある。そこの所留意しといてくれ」

 

「あら、かなり自由なのね」

 

「規則で縛るのは好きじゃないからな。正直時間制限に関しちゃ調理担当の自立人形達に休みを与える為に設けてるみたいなもんだ。当然、勤務中にも休憩時間はある。こうでもしないとあいつら延々と働こうとしやがるからな…当然お前達戦術人形の皆にも交代で休みを取らせるぞ」

 

「…本当に私達を気遣ってくれてるんですね」

 

「んなの仲間として当然のことだろうが」

 

 FN49は感激を受けた

決して前の職場がブラックであった訳ではないが、あくまでも人形として扱われていた

基本的に休みなんてものはなく、街の警邏に行っていない時でも常に気を張って待機していなくてはいけなかった

大抵の基地はそんなものであるし、それが当然だと思っていたがここでは違う

そしてそんなスカーレットに報いようと皆が訓練に励むことで各々の実力が他の個体を大きく上回るのが、この基地が最前線で戦えている理由の1つだ

 

 その後、食事の受け取り方や飲み物の用意の仕方等を一通り説明してから食堂を後にした

それからも基地の案内は続き、救護室や銃器の本格的な整備等が可能な簡易工廠を見て回った

モシン・ナガンとFN49がその中で驚いたのがどちらにも人間以外に戦術人形がおり、業務に就いていたことだ

なんでもスカーレット曰く、本人が望むのなら作戦行動や訓練以外にも仕事をすることが可能らしく医療部にはDP28が、簡易工廠にはPPSHー41が居た

更にはそうやって他の業務にも就く人形達にはその分の給与も支払われているのだという

この基地には娯楽施設やちょっとしたお店もあり、そこで思い思いにお金を使うことが可能とのこと

そうして驚きながらもスカーレットの人となりを知りつつ必要なことを覚えていくモシン・ナガンとFN49だった

 

「と、まぁ一先ずはこんな所だな。勿論他にもさっき言った娯楽施設や射撃場、近接格闘訓練用の部屋なんかもあるが…それは追々だな。今日は次に行くところで最後になる」

 

「色々と驚きの連続だったわ…それで、次はどんな驚きをくれるのかしら?」

 

「いや、次は他の基地にも割とあるからそんなに驚きはしないんじゃないか?」

 

「おいおい、ネタばらしは感心しないぞトンプソン」

 

「おっと、すまねぇボス」

 

「他の基地にも…?あ、もしかして『あれ』ですか?」

 

「そう、『あれ』だ。まぁ、とにかく着いてきな」

 

 他の基地にも割とある『あれ』…聡明な読者諸君にはもうお分かりであろう『あれ』である

スカーレットは3人を連れてどんどんと歩き、ある扉の前に立った

上には大きく『Springfield’sCafe』と書かれている

 

「まぁ見ての通りスプリングフィールドのカフェだ。多分お前たちも知ってるだろうからあんまり説明はいらないかもな」

 

「ええ、前にいた基地にもありました!」

 

「私もよ。お酒は飲めるのかしら?」

 

「18時以降限定だがあるな。ただ飲みすぎるなよ?」

 

「それは保証出来ないわね。大好きだもの」

 

「ならせめて他の奴に迷惑をかけないようにしないとな。ま、これはあたしも気をつけなきゃいけないんだが…」

 

 そんな会話をしながら一行はカフェへと入っていく

 

「いらっしゃいませ〜。あら、指揮官でしたか。お待ちしておりましたよ」

 

「おう、邪魔するぜ!…んで準備は整ってるか?」

 

「ええ、勿論です。抜かりはありませんよ」

 

 皆を出迎えてくれたのは言わずと知れたスプリングフィールドだ

そんなスプリングフィールドにスカーレットが近付き耳打ちすると、自信のある答えが返ってきた

その答えに満足気に頷くと、スカーレットは6人がけのテーブルに着いて3人を呼ぶ

それに応えて3人が席に着いた所で新たな客が来た

 

「お邪魔するわね、スカーレットは来てるかしら?」

 

「クレアさん、いらっしゃいませ。指揮官なら彼処にいますよ」

 

「おうクレア、こっちだ!」

 

「だからあんまり大きな声出さないの、スカーレット。ありがとね、スプリングフィールド」

 

「いえいえ、ごゆっくり」

 

 スカーレットを窘めつつスプリングフィールドに礼を言い、席に着くクレア

そこにスプリングフィールドがカクテルと料理を運んできた

 

「あら?まだ頼んでないわよ。これはサービスかしら?」

 

「いいえ、これは貴女達の着任祝いです。だから今日は代金も結構ですよ」

 

「え、そんな…ありがたいですけど申し訳ないですよ。せめて代金だけでも…」

 

「気にするな、FN49。金は既に私が払ってあるからな。これはお前達と出会えたことを祝うささやかな祝賀会みたいなもんだ、だから主役が遠慮なんてするな」

 

「そうそう、うちのボスがこういう奴だってのはもう分かってるだろ?遠慮するだけ無駄ってもんだ」

 

「…そのようね。ならありがたくご馳走になるわ。ほら、FN49も」

 

「は、はい…このようなことまでして頂いて、本当にありがとうございます!」

 

「おう、業務とか小難しいことは明日に回して今日は飲んで食いな!」

 

「勿論ほどほどに、ね?倒れちゃダメよ」

 

 こうしてFN49とモシン・ナガンのささやかな着任祝いが始まった

最初こそ鉄血との最前線でやって行けるかどうか不安だったFN49もその不安は消え、寧ろここでやってやるというやる気が漲っていた

 

 そしてこの時はまだ知らなかった…それだけの決意がなければこれから始まる過酷な訓練に着いていけないからこそここまでのことをしているという面もあることを……

戦術人形達の名前を会話文と地の文で変えようと思いますがどうでしょうか?例:WA2000→ワルサー、MK.23→ソーコム

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