S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常 作:フォルカー・シュッツェン
今回で一応終わりであり、それになるべく簡素にしたので見ていただければ幸いです
では、どうぞ!
「さぁ、今日は具体的に貴方達へ格闘を叩き込んでいくわよ」
「それぞれ違う内容になるから部屋も違うよ。FN49はわーちゃんに「わーちゃん言うな」、モッシーはボクに付いて来て」
S09H基地、FN49とモシン・ナガンはWA2000とM200にそれぞれ違う部屋へと連れて行かれた
WA2000に付いて行ったFN49はとある部屋へと入るとそこにはかなり太い巻き藁があった
「これは…?」
「格闘用の巻き藁よ。一〇〇式の使ってる巻き藁が有名だけど、こういうものもあるのよ。これを使って今から貴女にサバットを教えるわ」
「サバット……と言うのは何でしょう?」
「サバットって言うのはフランスの足技専門の武術のことよ。色んな武術を元に構成されたものでね、中には船の上で戦うことを前提としたものまであるわ」
「船の上って……そんな状況あるでしょうか?」
「まぁ今だとあまりないわね。でもこれは言い換えれば『足場の悪い場所でも十分に戦える』ということでもあるわ」
「なるほど……船の上じゃなくても使える場面はあるんですね」
「そういうこと。じゃあ軽くやってみせるから見てて頂戴」
WA2000はそう言うと巻き藁に向かい、呼吸を整える
するとFN49がギリギリ目で追える速度で蹴りを放ちまくった
右脚だけで立って左脚で連続蹴りを放ったり空中に跳んで地面に着くまでの間に幾つもの蹴りを巻き藁に叩き込んだり、挙句の果てには脚だけで床に固定された巻き藁を強引に引き抜いて自身も空中で舞いながら床へ向けて叩きつける……‘脚だけの投げ技’を行ったりした
それを見ていたFN49は余りの光景に呆気に取られていた
恐ろしく高い技量が必要な技ばかりであるしそれをなんてことはないように放つWA2000、しかも今やっているのは『FN49にも見えるように加減された』もの……それだけの技を受けて尚崩れていない巻き藁の耐久力にも目を見張るものがあるだろう
するとWA2000がFN49に振り返り、声を掛ける
「呆けてる場合じゃないわ、貴女もこれを出来るようにならなきゃいけないんだから。さ、まずは基本的なことから練習していくわよ」
「は、はい!よろしくお願いします!」
FN49はWA2000に習いながら基本的な動作から学んでいく
簡単な蹴り方から難しい蹴り方まで様々な蹴りの動作を学び、同時に腕の使い方も学んでいく
サバットにおいて腕は攻撃に使うことはないが、身体制御に於いて非常に重要となる
なにせ空中で体勢を変えるには腕も脚も両方複雑な動きをしなければ不可能なのだ、分かりやすいところで言うと『猫ひねり』を見ると良い
猫は空中で逆さに吊られてから落とされても落ちる迄の短い時間で体勢を変えて足から着地することが出来る
これを可能とするには慣性モーメントを利用して空中で体勢を変える必要があるのだが、それと似たようなことを人間の身体で行うのだ
勿論人間と人形とでは質量や筋力(発することの出来る力)等様々な条件が違う為全く同じようには出来ないが、そこはスカーレットを始めとした様々な者の努力によって人形の身体に於ける身体操作の理論を作り上げている
そうして基本的な動作を学び終えたFN49はそれらを何度も何度も繰り返し練習して身体に覚えさせていく
こうしたことを学ぶのが早く、すぐものに出来るのは流石戦術人形といったところであろうか
FN49もその例に漏れず、すぐさま習得していく
そして基本を修めた後は……WA2000との立ち合いだ
とは言え今回の目的はあくまでもFN49にサバットの動作を実際に人や人形に向けて放つ為の練習だ、WA2000も自身の実力を抑えに抑えて彼女の技にしっかりと当たる
ちゃんと当てる感覚を覚えさせる為にわざと当たるのだ、いくらFN49が武術を学び始めた素人同然の身と言えどやはり戦術人形のパワーから放たれる技の威力は恐ろしいものがある
WA2000はそれを覚悟している上に人工筋肉を締めることで衝撃を防いでいるが、それでも正直キツイ
だが彼女にしっかりと感覚を覚えてもらうためには仕方がない、WA2000は先日とは逆にFN49の蹴りを全身に受けながらも時折反撃を繰り出して防御についても教えていく
途中で休憩を挟みながらもそれを延々と続けていき、次第に難しい技等も次々と教えていく
そうすることでFN49は一日でほぼ全ての技を覚えて実戦レベルにまで引き上げてもらうのであった
「さ、ボク達はこっちだよ。付いて来て」
時間を遡ってM200とモシン・ナガンの様子を見て行こう
M200はモシン・ナガンを自分達が訓練を行う部屋へと連れて行く
「分かったわ。ところで、私には何を教えてくれるのかしら?」
「劈掛拳と八極拳だよ。モッシーはボクと違って手足が長いから腕や脚を鞭のように使う劈掛拳との相性は良いし、劈掛拳が苦手な至近距離へ対応するために八極拳を学ぶのは基本的なんだ」
「へぇ……そんなのもあるのね。ってことはその劈掛拳とやらはお師匠が教えてくれるわけじゃないっぽいわね」
「鋭いね、その通りだよ。八極拳に関してはボクでも十分だけど劈掛拳は流石に出来ないからね。まぁ……出来ればボクの方が良かっただろうけどね」
「…?それはどういうこと?」
「その内分かるよ。ほら、着いたから入るよ~」
「分かったわ……」
モシン・ナガンは嫌な予感がするもM200の後に続いて部屋へと入る
そこには木人とスカーレットがいた
「お、やっと来たか。もう準備は終わってるぜ」
「ありがとうございます、指揮官。さぁモッシー、まずは指揮官と劈掛拳について学ぼうか」
「……そういうことね」
モシン・ナガンはM200の言葉の意味を理解した
劈掛拳を教えるのはスカーレット、つまりそれはM200の行うそれよりも激しく、容赦がないことを示していた
勿論M200も容赦しないのは先日の立ち合いで分かっているが、先程のM200の言葉を考えればそれ以上ということなのだろう
そのことに軽く絶望感を覚えながらもモシン・ナガンは気丈に振る舞い、スカーレットの訓練を受けることにした
とは言え今回はあくまでもモシン・ナガンに動きの基本や技を教えるのが目的、FN49と同様しっかりと見せてからゆっくりとした動作で細かく教えるところから始まる
それをする為にスカーレットは木人を相手に様々な技を放っていく
木製のそれは非常に硬く、普通殴ったりでもすれば拳の方が砕けるがスカーレットは何てことないように次々と技を繰り出す
腕を伸ばして振り回し、木人に叩きつけると大きな音と共に床に固定された木人が揺れる
その際木人を壊してしまわないようにしっかりと手加減が出来ている所に彼女の技量の高さが伺える
その後スカーレットはM200を相手により実戦的な動きを見せ、実際にモシン・ナガンへやらせることで覚えさせていく
1つ1つの動作をゆっくりと、確実に教えていく
そうすれば今度は……スカーレットとの模擬戦だ
これをM200が担当しないのは彼女が劈掛拳を習得していないからだ
身体の小さいM200では劈掛拳を上手く活かすことが出来ない、それでも模擬戦の相手を務めること自体は可能である
しかし模擬戦でも同じ武術を扱える者が同じものを使った方がよりその武術を深く学ぶことが出来る為、出来る限りその通りにする方が良い
その条件を満たす者がこの場にはスカーレットしかいない為にモシン・ナガンは容赦のない模擬戦を行うことになってしまったのだ
だがそこはやはりスカーレット、WA2000と同様モシン・ナガンにしっかりと技を放たせてそれをモロに受けることもする
人間である彼女にとって戦術人形の技を真面に喰らうのはWA2000以上に厳しいものがあるが、それでも学ばせる為に敢えて受ける
それでもモシン・ナガンに慢心を抱かせないようにするのも含めて相当に彼女へ攻撃を当てることもするのだが……モシン・ナガンは持ち前の根性でそれを耐え切ってみせた
勿論それが出来るように手加減はしているものの、それでも並外れた根性であることに変わりはない
自分で体験したことでより彼女の根性の凄まじさを感じたスカーレットは始終笑顔で模擬戦を行い続けるのであった
そうしてスカーレットとの模擬戦が終わると休憩を挟んでからM200との模擬戦に変わる
そこでM200は八極拳を使用し、見せることで今後行う八極拳の訓練の効率を上げる
当然M200もWA2000やスカーレットと同じようにわざと当たったりしながらどんどん訓練を行っていき、劈掛拳の習得を完成させる
次に行うのは八極拳だ、これも先程までと同様に行っていく
1日のほぼ全てを訓練時間に充てることでモシン・ナガンは見事2つの拳法を習得してみせた
終わる頃には死人のように疲れ果てていたが、こんなものはまだまだ序の口だ
訓練場を後にしたモシン・ナガンは同じように使て果てているFN49と合流して大浴場へ1日の疲れを癒しに向かうのであった
「あー……気持ち良いわねぇ………」
「おじさんっぽいですよ、モシンさん……まぁ気持ちは分かりますが」
「そうよねぇ~、昨日のあれに比べれば痛みとかは大分少ないけどそれでも相当にキッツイわよ……」
「でもワルサーさんは『こんなのまだ優しい方よ』って言ってました……」
「……マジ?ちょっと怖いわね、それ……」
「……ちょっと、といえる時点で何だかここに染まってしまっているような気がします……」
「言われてみれば、そうね……ってことは私達も思ってたより成長出来てるのかしらね」
「そうだと良いですね」
FN49とモシン・ナガンはゆっくりとお湯に浸かりながら和やかに話していく
彼女達の言う通り2人は既にその実力を高めており、下級鉄血兵くらいであれば2人で1個小隊を相手取ることも可能だろう
以前であれば考えられない程の成長速度である
彼女達の才能もそうだが、この基地の異常な教練技術の高さが伺える
特に武術なんてものは1日で習得するなど流石に戦術人形であっても不可能である
勿論、彼女達はそれを修めたとは言ってもまだまだ未熟ではある
彼女達が出来たのは基本的な動きと技のほぼ全てを習得しただけ、それでも異常ではあるのだが……これから数日程かけて実戦形式の、いや最早ただの実戦を行うことである程度のレベルにまで高める予定である
その後未だ教えていない難易度の高い技……所謂奥義を伝授することで格闘訓練は‘一旦’終わりである
勿論まだまだ鍛えたいところではあるが、そればかりするわけにもいかない
今行っているのはあくまでも『スナイパースクール』なのだ、そろそろスナイパーに必要な能力の習得をしなければならない
勿論格闘技術も必要と言えば必要ではあるが……そもそも使う必要がないようにするべきであることを考えると習得優先度は低い
スカーレットは『己の身体を思い通りに操るため』と言っているが、それでもここまでやるのはこの基地くらいであろう
兎にも角にも格闘訓練は近い内に終わりを迎える、その後は……地獄の空の旅の始まりである
そのことを知らない彼女達は嫌な予感がしながらものんびりと湯船に浸かり、疲れを癒すのであった
はい、という訳で格闘訓練編は以上となります
そして次は最後に示したように空挺ですね、彼女達には地獄を味わってもらいましょう(ニッコリ)
え、いつもと変わらない?そんな細かいことは良いんですよ('ω')
ではまた次回(@^^)/~~~
ゆかりさんが何処に配属されるか
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