S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常   作:フォルカー・シュッツェン

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先週投稿は出来ませんでしたが私は元気です!
2週間空けたけど内容が濃いとかではありません、単にブランクがあった所為で書くのに時間が掛かりまくっただけです……もう暫くはいつもより時間かかるかもしれません(-_-;)

では、どうぞ!


幕間:スカーレットの訓練方針

 闇

そう表現するしかない謎の空間、何処を見渡せども何も見ること能わず

そんな空間を1人の少女が走っていた

息が切れ、脚が縺れそうになっても必死に走る……何かから逃げているような容貌であるが、実際彼女は逃げていた

脚を止めれば追いつかれ、殺される……そう確信しているが故にもう限界を迎えているであろう身体に鞭打って少女は走る

少しでも速く、少しでも遠くへ――その一心で動く彼女の脚は、しかし突然にその動きを止めた

何かが少女の脚に絡まり、それでも走ろうとした彼女はこけたのだ

一体何が……そう思った少女は足元を見やり――短く悲鳴を上げる

そこには生気の感じられない目をした人形が居て彼女の脚を掴んでいた

その人形は頭が半壊しており目も片方が潰れている……非常に不気味なことこの上ない

少女は必死になってその手を放そうと脚をバタつかせるもびくともせず、放れることはなかった

このままじゃ‘アイツ’に追いつかれて殺される――死を予感した少女は更に必死になり身体を起こして手も使おうとして……更なる異常に気付く

身体が、少ししか起き上がらない

嫌な予感が背筋を走る、少女は見たくない気持ちを必死に抑えながら恐る恐る自身の右腕の方を見やると……右腕を人形が掴んでいるのが見えた

しかもこの人形は頭の上半分が吹き飛んでいる、こんな状態では最早動くことは不可能なはず……にも関わらず口元に弧を描きながらその人形はこちらの腕を掴んで放さない

何がどうなっているのか分からず完全にパニックになった少女は、ジタバタと暴れることしか出来なくなる

しかしその少女の動きは左腕に纏わりついた人形の発した言葉によってピタリと止まる

 

――ねぇ、私達を殺して楽しかった?――

 

 その言葉を聞いた少女はゆっくりとした動きで改めて自身の身体を拘束している人形達を見る

そしてようやく気付いた、その人形達は皆鉄血工造の人形達だったのだ

今まで見ることすらしていなかった左腕には建設家(アーキテクト)……ハイエンドモデルの人形すら居た

確かに少女はグリフィンの戦術人形として鉄血の人形達を狩って来た、時にはハイエンドとの戦闘もあった

快勝とは言えずとも勝利をもぎ取り、それを仲間と共に喜んでいた

その行為はなるほど、確かにただの殺害でしかない

いくら人類の為、護る為と言えどやっていることは意思ある存在へ銃を向け……殺すだけ

しかしそれは鉄血工造の戦術人形達が‘何故か’人類へ反旗を翻したのが原因であり、それがなければこんなことにはならなかった……それでも殺しは殺し

最早少女の頭の中はパニックになり過ぎて同じ考えがずっとグルグルと回っていた

そうこうしている内に少女が忘れ、そして恐れていた‘アイツ’がやって来る

 

――これが君が今までしてきたことだよ。そしてこれからも続けていくこと――

 

 その声に少女は自分がこの存在から逃げていたことを思い出すが、もう遅い

見上げた先にはもう‘アイツ’が……返り血で染まった不気味な仮面を付けた‘彼女’がすぐそこまで迫っていた

その事実に少女は――身体から力を抜いた

パニックを通り越して諦観に支配されてしまったのだ

自分が今までそうして来たように、自分もまたこうして無残に殺される……抵抗能わず、残酷に

 

――ふぅん、諦めるんだ。思ってたより骨がないね……ガッカリだよ――

 

少女はそれを受け入れた、少女自身はそれを潔い覚悟から来るものだと思っていたが……‘彼女’はそれがお気に召さなかったらしい

その声には明らかな落胆の色が見て取れたのだ

だがもう少女には何もかもがどうでも良かった、もう全て投げ出して楽になってしまいたい――その一心しかありはしない

 

――そういう選択をするんだね。じゃあ終わらせてあげる……バイバイ――

 

 ‘彼女’はその言葉と共に徐に銃を持ち上げて銃口を少女の胸へ向ける

そしてトリガーに指を掛けて……次の瞬間、銃口より飛び出した銃弾が少女の胸を引き裂いて身体へと侵入し――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――っ!!!!!!!」

 

 S09H基地の整備室、そこに存在する複数のベッドの1つで少女――モシン・ナガンは勢い良く身体を起こした

前身に嫌な汗が流れていて呼吸が乱れに乱れているのを自覚する……いやそれよりも、今のはまさか――

 

「……起きたね。気分はどうだい――なんて、聞くまでもないか」

 

 声が聞こえる

そちらを見やればこの基地の整備部門部長、イーサン・ウィリアムズがいつも通り微笑みを湛えながら彼女の方を見ていた

最早訳が分からない……仲間だと思っていた相手に殺されかけ、人形が見ない筈の夢を見て、そこから覚めてみればこの基地どころかこの世界でも指折りの優しさを持つイーサンがこちらを見て笑っている

モシン・ナガンは思考回路がグチャグチャになり過ぎて言葉を紡ぐことすら出来ないでいた

それを察してなのか彼の方から話しかけてくる

 

「まぁ、そりゃ訳が分からないよね……やるだけやっといて説明を僕に投げるんだから、スカーレットも人遣いが荒いよね?」

 

「―――っ」

 

「まだ話せはしないかな?それじゃあ勝手に説明しちゃうよ。まずね……」

 

 その後の彼の話を要約するとこうだ

現在彼女が疑問に思っているのは何故仲間なのに彼処まで残忍な攻撃を加えるのか、そしてそこまでしておいて何故殺さないのかという点とさっきまで見ていたあれは何だったのかという点の2つ

 

 1つ目に関してはスカーレットの訓練方針である

彼女は「死ぬ一歩手前まで追い込む」という方針を持っており、また彼女自身もそうやって鍛えられてきた

モシン・ナガンに加えられた過剰な攻撃はまさにそれ、死にはしないが死んでも可笑しくはない……そんな目に遭わせる為に敢えてああしたのだ

勿論酷いことであるし文句も出るだろうがそれらをスカーレットは全て退けて来た

曰く「軍の訓練じゃ死人が出ることも珍しくはねぇ。実際私も訓練に耐えられずに死んでいった奴を何人も見て来てらぁ……それに比べりゃ死なないという一線を決して超えない私の訓練方針は優しいまであるぞ?」とのこと

付け加えておくと普通の訓練であれば死人が出ることはあまりない、しかし特殊部隊に入るとなれば話は別だ

選抜試験の段階で死ぬことも珍しい事態ではない……それに比べてスカーレットは決して死人を出さないのだから確かに優しいのかもしれない

だからこそこの基地での本当の訓練は殺し合い一歩手前のものとなり、実弾を仲間へ向けて撃つことすらする

そしてそれを乗り越えた者がスカーレットの試験へと挑み……そこでは実際に殺される

この基地で行われるロビン・セイジはスカーレットが本当の敵として対峙し、‘実戦’を経験させる為に行われる性質を持っているが故である

 

 2つ目の疑問、夢を見ない筈の人形が何故夢のようなものを見ていたのか――これはイーサンの仕業だ

人形の整備士としてメンタルモデルにすらアクセス出来る彼がそこを弄って疑似的な夢を見せていたのだ

何故こんなことをするのか、それは「殺す」ということがどんな意味を持つのか……それを自覚させる為である

モシン・ナガンが見ていた夢、あれは過去に彼女が関わって来た作戦にて殺してきた鉄血の人形達が殺した彼女へ向けて恨みを向けて無慈悲に殺してくる――それを思い知らせるものだ

人形とは言え疑似感情プログラムが組み込まれている、故に殺された彼女達にも意思があり‘生きている’ことを自覚させる必要があった

それを為すのがイーサンが見せる夢の目的である

この経験を通して殺す、いや……「殺される」ことの意味を否が応でも理解させ、その上で兵士として歩む覚悟があるのか否かを問うもの

もしもここで覚悟が潰えたのならば兵士ではなく別の道へ進むことも出来る

実際そうした道を歩んだ者もこの基地には多く存在する

 

 話を聞いたモシン・ナガンは少し放心していた

それもそうだろう、PMCとして現在最も成功しているグリフィンとてここまでやる基地が何処にあると言うのか……少なくとも彼女は話にも聞いたことはない

改めて自分がかなりヤバい基地に来てしまったのだと自覚する

それでもここを去ろうという気にはなれなかった

こんなにも狂っている基地など普通は見捨てて然るべきだというのに、何故だろうか……分からない

 

――お師匠やFN49に対する想い?それもあるだろう――

 

――ここに居れば間違いなく強くなれるから?それもある――

 

 だが本当の理由は恐らく……モシン・ナガンは納得してしまっているのだ

スカーレットの掲げる理想、その理想を体現する為の方針に対して

知らず知らずの内に彼女もまたこの基地に染まり、スカーレットの影響を多分に受けているということなのだろう

その証拠に――今彼女の顔には笑みが浮かんでいる

それを自覚した彼女の答えなどもう決まっている

モシン・ナガンはしっかりとイーサンの方を向き、獰猛な笑みを以て答えを示す

 

「良いじゃない、やってやるわよ。こんな程度のプレッシャーでどうにかなるなんて思わないで頂戴」

 

「……スカーレットが好みそうな眼の色をしているね。良いだろう、君も覚悟を新たにしたことをスカーレットに伝えておくよ」

 

 少しだけ寂しそうな表情をしたイーサンの返答に引っ掛かりを覚えたモシン・ナガンはそう言えばと思い出す

FN49はどうであったのだろうか――イーサンの言葉通りに受け取るのであれば彼女もまた覚悟を決めたのだろうが

その予想に対してイーサンは肯定の意を示した

どうやらFN49は実戦経験がなかったことからより簡易的な夢をイーサンが作成して見せたらしく、モシン・ナガンよりも目覚めが早かったらしい

彼女の行方を聞けば既にスカーレットの下へと向かっているとのこと、こうしちゃいられないわとモシン・ナガンも身支度を整えだす

そんな彼女の背中へ向けてイーサンは顔を向けることなく最後の質問をする

 

「――本当に、良いんだね?」

 

「ええ、構わないわ。私は戦術人形……人間に仇為す者を狩る殺戮兵器よ。その為には手段なんて選ばない――この基地のあり方の方が正しいって、それを思い出せたもの」

 

「そうか……少し、残念だけど良い兵士だね。それじゃあ、励むんだよ」

 

「言われるまでもないわ。そうそう、これから何度もお世話になるだろうし改めて挨拶させて頂戴……私はモシン・ナガン、鉄血を屠る者よ」

 

「……僕はイーサン・ウィリアムズ、しがない整備士だよ。これからもよろしくね」

 

「ええ、よろしくお願いするわ!それじゃあ、またね」

 

「ああ、またね」

 

 その言葉を最後にモシン・ナガンは整備室を後にする

その様子を見ていたイーサンは回転椅子を回してモニターへ向き直り、溜息を1つ吐く

 

「彼女は‘そっち方面’に覚醒したか……FN49とは違う方向性だけど良い兵士になるのは間違いないねあれは。にしても――」

 

 背凭れに身体を預けながら彼は独り言ちる

その呟きを聞く者は誰もいないが、誰かが聞いていればそれに全行程の意を示したでだろう

 

「あそこまでスカーレットに似た覚醒を迎えた子なんて初めて見たな」

 

 




何やら不穏だなぁ……なんかモシンさんが勝手にスカーレット方面に覚醒してしまいました、何故だ
これから彼女がどうなるのか、私にも分かりません!
皆さんと一緒に楽しんでいこうと思います('ω')
次回どうするかなぁ……小話を挟むか指揮官好き勝手話という体を取ったミレニアム8の過去話か……何が良いとかあれば感想でお願いします!

勿論普通の感想も是非下さい、モチベ爆上がりします!!

ではまた次回(@^^)/~~~

ゆかりさんが何処に配属されるか

  • 諜報部隊
  • LSP
  • その他(例:音楽隊のサブボーカルなど)
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