S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常   作:フォルカー・シュッツェン

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こんなに…長くするつもりはなかったんや……書いてたら止まらんくなったんや……
あ、因みに最後の方で出てくる煙草の銘柄はポールモールです


地獄の特訓の始まり

 ささやかな歓迎会のあった翌日、FN49とモシン・ナガンはスカーレットに呼び出されていた

 

「何があるんでしょうか…」

 

「そんなに緊張してても仕方ないわよ、同志。多分私達の実力を見たいとかそんなのよ」

 

「わ、私自信ないですよ…?前の基地では実戦なんてあまりありませんでしたし……」

 

 FN49は不安になりながらもモシン・ナガンと共にスカーレットの執務室へと到着した

ノックをすると「入れ」と言われたのでモシン・ナガン、FN49の順番で入る

部屋の中にはスカーレットの他にWA2000がいた

 

「来たわよ、同志。何の用かしら?」

 

 その言葉に書類から顔を上げるスカーレット

 

「用、という程の事でもない。それにどちらかと言うと用があるのはワルサーの方になるしな」

 

「…どういうことでしょう?」

 

「お前達には今日からこの基地の訓練を受けてもらう。ここではその訓練で認められた者のみが出撃許可を得ることになるんだが、その訓練は戦術人形達の使う銃種毎に異なるものを行う。だが私1人で全員の訓練を見てやるのは物理的に不可能だ。そこでここでは私が直接鍛えた1部の戦術人形に各銃種の訓練を担当してもらっている。そしてお前達ライフル型戦術人形の訓練を担当するのが……」

 

「私ってことね。訓練だからって一切容赦しないから、そのつもりでいなさい」

 

 WA2000の鋭い視線にFN49は少し身震いする

 

「ワルサーには私達が持つ技術の全てを伝授している。こいつの訓練に耐えることが出来れば間違いなくお前達はそんじょそこらの戦術人形とは一線を画すほどの実力者になれるだろう」

 

 そこまで言うとスカーレットは椅子から立ち上がり、2人に近づくと

 

「励めよ、応援してるぞ」

 

 そう言って笑顔で2人の肩を軽く叩いて激励した

 

「ええ、精一杯やらせてもらうわ」

 

「は、はい…」

 

 FN49は不安だらけに、そしてモシン・ナガンは不安がありながらも強気な言葉で返す

そうしていると今度はWA2000が近付いて来た

 

「ま、そういう訳で今日から暫くは私が付きっきりで2人を見てあげるわ。ここで色々言うのも時間が勿体ないし、早速訓練に行きましょ。付いて来なさい」

 

 部屋を出て後ろを振り返ることなく歩いていくWA2000の後を着いて行くFN49とモシン・ナガン

その姿をスカーレットは見送りポツリと一言

 

「あいつら、死ななきゃいいけどな…」

 

 その言葉は誰の耳にも入ることは無かった

 

 

 

 

 

 訓練所への道中WA2000は2人に今までの配属と戦闘経験等を聞くが、それ以外に会話はなくFN49は少し気まずさを感じていた

と言うよりも正直怖い

これから行うという訓練に耐えられるのか不安で仕方ないのだ

ひょっとしたらここに来たのは自分にとって不幸なことだったのかもしれない…そう思わずにはいられなかった

そしてそれはある意味で的中することとなる

 

「ここがライフル型戦術人形達の訓練所の1つよ。他の人形の出入りを防ぐ為に暗証コードがあるからきっちり覚えて。コードは9-1-1-6-6-6-9-9-9よ」

 

 そう言いながらWA2000は扉の横にあるパネルを操作して扉を開ける

 

「あら、態々そんなの必要なのかしら?」

 

「必要、というよりあった方が色々と楽なのよ、管理とかそういう方面でね。この中には実弾や模擬弾といった多種多様な弾があるわ。だからここに入室出来る人形を制限することで余計なトラブルを未然に防いだり、万が一起こった時に対処しやすいようにしてるのよ」

 

「な、なるほど…でもそういう、その…悪いことをする方なんて居るのですか?」

 

「まぁほぼ居ないわね。でも時々スパイとかが入り込んでくることもあるし、緊急時には一時的な避難場所にもなるわ。その事も見越してここには緊急用の医療物資なんかもあるの」

 

「な、なるほど…」

 

「もういいかしら?そろそろ訓練を始めるわよ」

 

「ええ、いいわ。それで、どんな訓練をするのかしら同志?こんなにも広いってことは狙撃訓練かしら」

 

 一見するとこの訓練所は普通の屋内射撃場のように見えるが、すぐに普通ではないと気付くだろう

まず明らかに広い

普通のシューティングレンジでは800mなんて距離はまずない

 

「というか、広すぎませんか?」

 

「確かに私も最初は驚いたわ。でもこれでも狭い方なのよ。対物ライフル達はもっと広い射撃場を利用してるし」

 

「これで狭いのね…」

 

 WA2000の言葉に2人は引いた

だがライフルはほぼほぼ皆長射程を持っているし、対物ライフルは1.5kmを越えるのが当たり前だ

確かに30mや50mのレンジでは練習にならないだろう

 

「まず貴女達にやって貰う前に、1つ証明しておくわ」

 

「証明って、何を?」

 

「私が貴女達の腕にケチを付けられるほどの実力があるってことをよ」

 

 そう言うとWA2000はレンジの1つに入り、横のパネルを操作する

すると700m先に鉄血の人形を模したダミーがターゲットとして現れる

それを見たWA2000は自身のライフルを構えると

 

「まずは軽く行くわよ。頭部、右肩、左肩、右脚、左脚」

 

「ハラショー!」

 

「す、すごい…!」

 

 そう言いながら次々と銃を撃ち、宣言した場所へ正確に銃弾を当てていくWA2000にモシン・ナガンは賞賛の言葉と口笛を送りFN49はある種の感動すら覚えていた

それ程にWA2000のやってみせた狙撃は凄まじいものだったのだ

じっくりと狙いをつければそこそこは出来るかもしれないが、WA2000は速射と言えるレベルの速度で軽々とやってみせた

 

「まだまだこんなものじゃないわよ。右目、左目、眉間、気道、心臓、肝臓、股間、右膝、左膝」

 

「「………っ」」

 

 その正確無比過ぎる速射に今度は言葉が出なくなる2人

それもそうだろう、どう考えてもこんなの普通は出来るわけがない

そもそもリロードはどうしたんだと思ってWA2000の手を見るといつの間にやら真新しいマガジンが左手の親指と人差し指の間に挟まれていた

WA2000はリロード用のマガジンを予め用意しており、薬室に1発弾を残した状態で素早くリロードを済ませていたのだ

そして何より恐ろしいのは…このWA2000の実力は「人間であるスカーレット」によって鍛えられたものだと言うこと

もしやスカーレットにもこの芸当が出来るのか…そう思い聞いてみると

 

「出来るには出来るみたいだけど、流石にここまで早くは無理だそうよ。この速度はあくまでも私が戦術人形だからこそ可能らしいわ。そうね…大体私の90%くらいかしら」

 

「大して変わらないじゃないのよ…」

 

「ほら、何を惚けてるの。貴女達もやるのよ」

 

「「…え?」」

 

 その言葉に2人は固まった

今のをやれと?

言葉にこそ出さないが2人の表情がそう言っている

 

「言ったでしょ?容赦なんてしないって。さ、お昼の時間までぶっ続けでやるわよ。そしてお昼を食べたら晩御飯までまたずっとやるわ」

 

 2人の顔が死んだ瞬間である

その後訓練室からは2人の呪詛のようなうめき声が聞こえてきたという…

 

 

 

 時は変わって18時頃

食堂のテーブルに突っ伏してピクリとも動かない茶髪と金髪があった

言わずもがなFN49とモシン・ナガンである

先程まで行われていたWA2000の訓練によって心身共に疲れ果てた2人には最早顔を上げる気力すら残ってはいなかった

そこに比較的小柄な少女が近付いて来る

 

「…大丈夫?って聞くまでもないよね」

 

「うぅ〜ん…」

 

「あぁ、いいよそのままで。疲れ切ってるだろうしね」

 

「そう言ってもらえると助かるわ…」

 

 顔を伏せたまま話をするなど失礼にも程があるが、そうも言っていられないほど疲れているFN49とモシン・ナガン

そしてそれは話しかけてきた少女も分かっているので特に気にする事はなかった

 

「貴女は、誰です…か?」

 

「ボクの名前はM200、君達と同じライフル型の戦術人形だよ」

 

「M200…確かシャイタック社の大口径ボルトアクションライフルね」

 

「よく知ってるね。ボクは使う弾の都合で長距離射撃場を使うからあんまり一緒にはならないかもだけど、よろしく」

 

「よろしく、お願いします…あの、なにか?」

 

 ちょっとした言葉でさえ詰まってしまうFN49の頭をM200が撫でている

抵抗する元気もないのでそのままだし、なんだったら少し気持ちが良いのだが急なことに変わりはないので疑問を呈すと

 

「新しいライフルの子が来ると皆こうなるからね。ボクもそのしんどさは知ってるから、少しでも労わってあげたくて」

 

「あぁ…ありがとう、ございます……」

 

 少し低く、ゆっくり目に話すM200の言葉が今のこの状態には非常にありがたい

その気遣いも相まって疲れが癒されていくのを感じるFN49

 

「…私にも、お願いできるかしら、同志」

 

「ん、いいよ」

 

 その光景を見てはいないが想像したモシン・ナガンは羨ましく思い、自分の頭も撫でてくれとお願いすれば快諾してくれるM200

そしていざ撫でられてみるとこれがまた気持ちが良い

小さな手が優しく、包み込むように撫でてくれるのだ

疲れ切った今のモシン・ナガンはまるで子供になったかのように撫でられていた

そうして暫く頭なでなでを享受していると、ふと美味しそうな匂いが漂って来て2人のお腹が盛大に鳴る

思わず赤面するFN49だが、顔を伏せているお蔭で見られることはなかった

 

「ほら、料理が来たよ。2人とも顔上げて」

 

「うぅ…顔を上げるのがこんなにも億劫なのは生まれて初めてよ」

 

「そう、ですね…」

 

 深く深呼吸をしてから頑張って頭を上げると目の前には色とりどりの美味しそうな料理の数々

 

「我慢しなくて良いよ、沢山お食べ」

 

 思わず生唾を飲み込むFN49とモシン・ナガンにM200がそう言えば、2人は目の前に並んだ料理を猛スピードで食べ始めた

かなりがっついており、年頃の少女としてははしたないかもしれないがそんなことを言っている余裕はない

 

 数十分後、大量にあったはずの料理は殆ど2人の胃に消えた

 

「ハラショー!こんなにも料理が美味しいと感じたのも生まれて初めてだわ」

 

「本当ですねぇ…ご馳走様でした」

 

「いい食べっぷりだったよ、2人とも。どう、少しは元気出た?」

 

「ええ、御蔭様でね。貴女もありがとう」

 

「どういたしまして、じゃあボクは行くね。2人は少し休憩したらお風呂に行って、今日はもう寝た方が良いよ」

 

「そうですね、そうします。色々とありがとうございますね」

 

「ううん、それじゃあね」

 

 M200が去って行き、暫し休憩を挟んだ2人は彼女の言う通り早速お風呂に行くことにした

この基地では男風呂と女風呂が時間制とかではなく、場所がしっかりと別れている

戦術人形も使う都合上女風呂の方がかなり広く設備が充実しておりサウナや水風呂、ジャグジー等色々とある

まるで高級なホテルの大浴場かと言わんばかりの風呂場に2人とも初日に紹介された時は驚いたし、利用してみてその快適さに思わず頬が緩むほどだった

それを知っているため心做しかうきうきしながら脱衣所で服を脱ぎ、浴場に入ってみると

 

「おう、お前らも来たのか」

 

「え、し、指揮官!?」

 

「わお、奇遇ね」

 

 そこにはスカーレットがいて、先に湯船に浸かっていた

指揮官が入っているのに自分たちも入るのは失礼になるんじゃ…と思い出ていこうとするFN49だが、スカーレットはそれは止める

 

「別に気にするこったねえよ。ワルサーの訓練で疲れてんだろ?」

 

「そうよ、気を遣いすぎよFN49」

 

「で、ですが…」

 

「良いから良いから。なんだったら後でマッサージもしてやるぜ」

 

「あら、良いわね」

 

「さ、流石にそこまでして頂くのは…」

 

「私が良いって言ってんだ、遠慮するなって。ほれ来な!」

 

 あくまでも遠慮しようとするFN49だがスカーレットがそれを許さなかった

マッサージに関しては明日からの訓練の為にもやっておいた方が絶対にいいからだ

こうして多少強引だが一緒にお風呂に入ることになったFN49とモシン・ナガンとスカーレット

 

「んで、どうだ?訓練にはついていけそうか?」

 

「正直きっついわね、あれは…」

 

「幾ら何でもあんなの酷いですよ…無理に決まってますのに」

 

「…大体予想は付くが何をやらされたんだ?」

 

「最初にワルサーが物凄く正確な速射を披露してくれてね、それに感心してたら貴女達もやりなさいって。それからはもうひたすらに撃って撃って撃ちまくりよ」

 

「お蔭でクタクタですよ…あんなに撃ち続けても上達しないと思うんですが……」

 

「…なるほどな」

 

 2人の言葉にWA2000の狙いを理解したスカーレットは衝撃の言葉を放つ

 

「ま、ぶっちゃけ今日やらされた事はお前らの上達には全くもって繋がらねえな」

 

「えええ!?」

 

「…やっぱりそうなのね」

 

「なにそんなに驚いてんだ。お前も薄々こんなの意味がないって分かってたんだろ?」

 

「だとしても…こんなハッキリ言われたら!」

 

 FN49の言うことも尤もだろう

あれだけ何時間もひたすらに撃たされ続け、心身共にボロボロになろうともそれでも撃たされて…それに意味がないと指揮官にはっきり言われたのでは溜まったものでは無い

しかし

 

「まぁ落ち着け。確かに訓練としては意味はなかったさ、けどワルサーは完全に無意味なことをやらせた訳じゃねえぞ」

 

「…どういう、ことですか?」

 

「私も聞きたいわね」

 

「今日の所はお前達の技術の上達を目的にしてた訳じゃないってことだ。多分ワルサーの奴は疲弊し切ったお前達に尚撃たせることで本当の実力や癖、何よりも集中力と精神力の把握がしたかったんだろ。その上で明日から各々にあった訓練を課して上達させる腹積もりだ」

 

「なるほどね〜。つまり明日はあんな無闇に撃ちまくるような事はしないってことでいいのかしら?」

 

「まあな。結構な数を撃つことに変わりはねえが、今日よりは断然少ないだろ」

 

「よ、よかったぁ〜……」

 

 その言葉にFN49は心から安堵してため息をついた

明日以降も毎日あんなのでは身が持たない、そうならなくて良かったと

しかしその安堵は次のスカーレットの言葉で砕かれた

 

「…ま、だからと言って明日からの方が楽なわけじゃないけどな。寧ろ今日よりもきっついと思うぞ」

 

「…マジ?」

 

「…う、嘘ですよね?嘘だと言ってください!」

 

「まぁなんだ…身体的には楽だからそこだけは安心しとけ。明日からは頭と目が痛くなるけどな」

 

「…そんなぁ〜」

 

 FN49はがっくしと項垂れ、モシン・ナガンも静かに頭へと手をやって「マジか…」といった表情になる

そんな様子を見ながらスカーレットは

 

(やりすぎて潰すことだけはしてくれるなよ、ワルサー…まぁアイツのことだから大丈夫か。生かさず殺さず上手くやってくれるだろ)

 

 そう思い、明日に備える為だと2人をマッサージスペースへと連れて行って入念に身体を解してやるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜間警備の人形以外殆どがもう寝ている時間

そんな時間だと言うのに明かりの付いている部屋がある

中では1人の人形がモニターを眺めながら珈琲を飲んでいた

そこに映っているのはFN49とモシン・ナガンがひたすらに撃ちまくっている映像だ

 

(あの2人の癖は大体分かったわ…モシン・ナガンは精度が良いけどあの様子じゃ近距離へ即座に撃つような即応性に難があるわね。取り敢えずは遠距離狙撃に集中させるとしても場合によってはマークスマンとして動いてもらわなきゃいけない時もある…まぁほぼないでしょうけど、この短所は追々消していきましょ)

 

 そこまで考えたWA2000は一旦思考をリセットしてからもう1人の方へと…FN49の方をじっと見つめる

 

(この娘…オドオドしていたし、実戦経験もないって言うから正直不安だった。実際撃ってる所を見ても光るものが見えてこないわ。正しく素人に毛が生えたようなもの、人形としての最低限しか出来ない…のだけれど)

 

 新たに思考しながらWA2000は目を細めて映像を観る

FN49の射撃は平々凡々としたもので、可もなく不可もなく…いや、少し不可の方に偏っているだろうか

殆どの者が才能なしとして切り捨てるであろう

しかし…

 

(逆に言うとこの娘、癖らしい癖が一切ないのよね。今は全然駄目だけど上手く鍛えられれば…もしかすると私をも超えてくるかもしれないわ。2人を同時に見るつもりだったけどFN49を集中して鍛えたくなった、予定変更ね)

 

 不敵な笑みを浮かべたWA2000はモニターの電源を切り、椅子から立ち上がるとグッと伸びをして固まった背中を解す

それから机の上に置いてあった書類…明日からの訓練計画の書かれた紙を持ってドアへと向かう

 

(さてと、取り敢えずこれを指揮官に渡さなきゃね。新人が2人も来たんだからアイツも仕事が増えてまだ寝てないだろうし…今までのパターンから考えて多分今は屋上ね)

 

 部屋から出たWA2000は階段を登って屋上へと向かった

やがて屋上へ続くドアへと着いたWA2000はノブを捻り、ゆっくりと開けた

 

「…ん?おお、ワルサーか。どうしたこんな夜更けにこんな所まで」

 

「あんたにこれを渡そうと思ってね。はい、明日からの訓練計画書よ」

 

 予想通りそこに居たスカーレットにファイルに綴じた計画書をファイル毎渡す

 

「おぉ、悪いな態々。つーか私はお前を信頼してるし、こういうそこまで重要じゃない奴は省いても良いんだぞ?」

 

「あんたがそう言うのは何となく分かってたわ。でもまぁ、この基地の上に立つ者として示しがつかないことしてると下にいる娘達が着いてきてくれなくなるかもしれないしね。念の為よ」

 

「それもそうだな。じゃあこいつは後でチェックしておく」

 

「そうして頂戴。にしても…」

 

「んぁ、どした?」

 

「それ好きね、あんた…」

 

 WA2000が何処か呆れたような、それでも柔らかい笑顔でそう言うとスカーレットもなんの事かすぐに分かり

 

「まぁ、こいつはな…思い出の味ってやつだ」

 

 口に咥えていた煙草を手に持ち、煙を吐き出す

スカーレットは時折こうして煙草を吸うことがある

吸う場所は様々で、基地内に設けられた喫煙室で吸うことも多いのだが夜の場合は決まって屋上で吸っている

曰く、夜風が気持ち良くて煙草の風味がより旨く感じられるのだそうだ

 

「思い出の…って何かあったの?」

 

「まぁ私も30年以上生きてきたからな…それなりにあるさ」

 

「…聞いても?」

 

「構わねえよ。こいつはまだ私がアメリカにいた頃、軍で流行っててな。良く皆でこいつを吹かしてたのさ…軍は私にとって家であり、そこに居た奴らは家族も同然だった。つまりこいつは私にとって、家族の記憶なんだよ」

 

「軍が家族?産みの親は…」

 

「…殺されちまったよ。地元のギャング共の抗争に巻き込まれてな。その時私は殺されるか商品として売り飛ばされるか…生かされた所を見るに売るつもりだったんだろうな。だがそんな時にデルタフォースっつう特殊部隊がギャング共に強襲を掛けてな、私はそん時に保護された」

 

「…なんて言うか、結構壮絶な人生歩んで来たのね」

 

「確かにこう振り返って見ると普通じゃねえよな。でもまぁ、そのお蔭でこうして私は今ここにいる。核攻撃から生き延びることが出来た、だから悪いことばっかりでもなかったなって思うぜ」

 

「そう…それなら良いんだけど」

 

「…おい」

 

「…なによ」

 

「まだなんか聞きたいことあんだろ?顔に書いてあんぞ」

 

「…全く、ほんとガサツなのか繊細なのか分かんないわねアンタは」

 

「それは褒めてるのか?」

 

「呆れてるのよ」

 

「てめぇな…」

 

 顔を顰めるスカーレットを見てクスクスと笑うWA2000

それに釣られてかスカーレットも笑みを見せる

 

「それで、何を聞きたいんだ?」

 

「そうね…軍に保護されたからってそのまま軍に居着くなんて普通はしないわよね?アンタはどうしてその道を選んだの?」

 

「…その事か」

 

「聞いちゃいけないことだったかしら」

 

「いや、構わねえよ。そうだな…私は親がギャング共に殺されるのをこの目で見た、いや見せられたんだよ。クズ共によってな」

 

「…っ。それはまた随分と趣味が悪いわね」

 

「あぁ…その後もまぁ酷い目に会ってな。保護された時の私は復讐心しかなかった。だから私は施設へ預けるっつう説明をしに来た奴に頼み込んだんだよ。奴らが憎い、奴らを殺せるだけの力をくれってな…復讐の相手はもうこの世にいねえってのに」

 

「…え、軍はそれを了承したわけ?」

 

「あぁ、そうだ。とは言っても復讐させる為じゃあねえぞ。寧ろ逆だ、私からそんな考えを取っ払うために軍は私を引き取ってくれたんだ」

 

「あ、そういうことね…びっくりしたわ」

 

「その後ガキだった私は軍で厳しい訓練を受けて、勉学も仕込まれて強くなった。だが1番丁寧に教えられたのはそれらじゃない」

 

「じゃあなによ」

 

「…愛だよ」

 

「は?…あぁ、なるほど。それで復讐をやめさせたってことか」

 

「ま、そういうこった。んで20歳になる頃には復讐心は完全に消えてたってわけだ」

 

 そう言ってスカーレットは手に持った煙草を咥えて深く吸って…ゆっくりと吐く

 

「そしてこいつは私に大切なことを教えてくれた皆を思い出させてくれる…大切な味だ。今のご時世、こいつが買えるのは私にとって幸福なことだな…っとついつい話し込んじまったな。私はもう寝る、お前も早く寝ろよワルサー。肌が荒れちまうぜ?」

 

「…そうね、そうするわ。お休み…えっと、その……スカーレット

 

「……っ。あぁ、お休み、ワルサー」

 

 去って行くWA2000の背中を見つめていたスカーレットだったが、静かに就寝の挨拶をした後に自身も自室へと向けて歩いていく

だがその途中、1度だけ振り返り

 

(その名前で私のことを呼んでくれる奴がもう殆ど居ないってこと、気付きやがったな…ありがとな、ワルサー)

 

 心の中で感謝を告げたスカーレットはそれからは振り返ることなく、歩いていった

 




M200ちゃんがロリママ化しました()
それに伴ってM200ちゃんの口調が少し変化します
指揮官を含めた上官に対しては本来の敬語のままですが、後輩や同期に対しては敬語をとるように…いいよね(・ω・)?
そして少し暗い指揮官の過去
こいつのオリキャラ暗い過去持ちばっかやな!

戦術人形達の名前を会話文と地の文で変えようと思いますがどうでしょうか?例:WA2000→ワルサー、MK.23→ソーコム

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