S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常 作:フォルカー・シュッツェン
リアルの忙しさとYouTubeでの活動のダブルパンチで中々執筆時間が取れておりませんでした
少々短めですが、良ければお付き合いくださいm(__)m
では、どうぞ!
「ねぇあれって……」
「うん……多分そうだと思う」
「マジ?まさかあの子が……?」
S09H基地の廊下、いつも賑やかではあるが今日は少し様子が違っていた
皆が1人の人形を見ながらヒソヒソと小声で話している、普通であればまず見受けられない光景だ
人形のみならず基地に雇用されている人間も話の渦中にいる少女を見て、その変わりように驚いている
その中には勿論彼女達の姿もあった
「ねぇ、ゆかりん……あの子ってあんな感じだったっけ?」
「いえ、違ったはずです……一体何があったのでしょうか………?」
「モシンさん、でしたよね?カフェで見た時とは雰囲気が違いますね」
「せやな……何があったらここまで変わるんや」
「変わり過ぎてて言葉が出ないんだけど……」
「……若干怖いんですけど」
ゆかり達も変わり果てた彼女の姿を見て驚愕を隠せないでいる
そんな彼女達の元へ2人の人形が近付いて来た
「やっほ~、驚いてるねぇ」
「まぁ無理もないわね、私も正直驚いてるし」
UMP45とUMP9だ
2人は日本組へ近付くと気さくに話しかける
「UMPさん。何だかあまり驚いているようには見えないんですけど……」
「そうね、私達は何があったのか知ってるしね」
「え、ホンマか!せやったら教えてくれんか?モシンはんに何があったんや」
「良いよ~!えっとねぇ……」
それから2人は彼女達へ何があったのかを簡潔に教えた
噂されている少女、モシン・ナガンはスカーレットによる訓練を受け、その最終段階にて篩いに掛けられたのだと
スカーレットによるこの篩いは孤島にて行われたあの残虐な戦闘とその後の悪夢のことである
この篩いに掛けられた者はその後の展開が3種類に分かれることになる
意気消沈して恐怖に震える者、気丈に振る舞って前を見据えるようになる者、そして……覚醒する者
殆どは前者の2つに収まるが、極稀に覚醒する者が現れる……それがモシン・ナガンなのだと
覚醒を経た者は身に纏うオーラが変化し、実力を二段階も三段階も飛躍させる
この基地の試験突破組でも覚醒をした者は少なく、今まで覚醒したのは一〇〇式機関短銃とPPKのみである
そう、ミレニアム8の面々ですら覚醒を経た者はいないのだ
この基地で3人目の覚醒者、それはもう基地がざわざわとするのも仕方がないものだろう
しかもその覚醒の仕方がスカーレットと同じ方向性ともなれば話題にするなと言う方が無理な話だ
それを聞いたことで事情を理解したゆかり達は改めて彼女の背中を見る
もう遠くに行ってしまって小さくなっていたが、それでも感じるその圧倒的なオーラにゆかりですら怯みそうになる
(これがスカーレットさんの篩いを生き残って覚醒した人……格が違いますね)
日本組の中でも最も戦闘力に秀でているゆかりが絶対に敵わないと感じる程に今のモシン・ナガンは強くなっている
以前の彼女であればやりようはあった、苦戦はするかもしれないが十分勝機はあったのだ
しかし今はもう勝機を見出せそうにない、短い時間でここまで成長した彼女を見てゆかりは身震いする
そしてゆかりは同時に気付いた、この篩いの真の意味を
このスカーレットによる篩いは優秀な者を見出す為のものではない、寧ろ戦いに向かない者を炙り出して戦火から遠ざける為のものであると
この基地にも少なくない人形達がこの篩いに掛けられ、恐怖に落ちてしまっている
そしてマガルやPPSh-41を初めとして落ちてしまった者が他の所で活躍しているのもこの基地の特徴だ
要は戦いに向かない者を戦場には出したくないというスカーレットの非常に不器用な優しさ故の篩いなのである
そんな篩いにかけられその上で覚醒を果たしたモシン・ナガンは真っすぐ司令室へ向かっていた
その道中で様々な人形から好機の目線とヒソヒソ話をされるがそれも気にならない
そんな些細なことに心を乱される程今の彼女は薄くはない、特に今は目覚めたばかりなのもあって気炎を吐く程に気合いに満ち満ちている
覇気を隠すこともなく正しく威風堂々といった様子で廊下を突き進み、司令室の前まで辿り着く
モシン・ナガンは帽子の位置を直すとドアを開けた
中にはスカーレット、WA2000、M200、FN49が居て全員が彼女の方を見てその顔を驚愕に染めている
「これは……驚いたわね」
「そうだね、イーサンさんから連絡は受けたけど……」
「モシンさん……その、変わりましたね」
スカーレット以外の3人が三者三様の言葉でモシンへ声を掛ける
そんな中でスカーレットだけは未だ声を出していなかった
その事にちょっとした疑問は感じつつもモシン・ナガンは宣言する
「モシン・ナガン、鉄血を屠る者。これからも全力でいかせてもらうわよ」
獰猛な笑みを顔に浮かべ、マントを翻しながら犬歯を見せて高らかに宣言した彼女に一同はそれぞれの反応を返した
WA2000は不敵な笑みを、M200は微笑みを、FN49は気おくれした様に不安げな表情を、そして……
「……ク、クククッ」
「指揮官?どうしたの、気でも狂ったかしら?」
「容赦ないですね、ワルサーさん……」
スカーレットは何かを堪えるように俯きながら笑い声を零している
暫くそうしていたが堪え切れなくなったのか、ダムが決壊したかのように笑い出した
「クククハハハハハハハハッ!!!おいおい、こいつは夢か!?おいおいおいおいおいおいおいおい、クハッハハハハハハハハハハハ!!!!!」
そんなスカーレットの様子にWA2000ですら怪訝な表情を浮かべていた
なんせこんな彼女は見たことがないのだ、テンションの高い人物ではあるがここまで笑うことは今までなかった
しかし当のスカーレットはそんなことを気にしてはいないしモシン・ナガンもそんなスカーレットを見て獰猛な笑みを見せるのみだ
「まさか私と同じオーラを纏うやつが現れるなんざ夢にも思ってなかったぞ!!!おいモシン、今すぐ私と手合え!てめぇがどこまで成長したか確かめてやらぁ!!!!!」
「ええ、良いわよ。張っ倒してあげるわ!」
「言うじゃねえか、えぇ?おら行くぞ!」
周りが付いて行けずに困惑する中スカーレットとモシン・ナガンは連れ立って司令室を飛び出して行った
その後格闘訓練場でスカーレットに喰らい付くモシン・ナガンの姿が多数の人形に目撃されたことで暫くの間この基地は騒然となる
それもその筈、まだまだ新人と言って差し支えない彼女があのスカーレットを相手に拮抗しているのだ
当然スカーレットはまだ全力を出してはいない、だがそれでも到底新人に至れる限界を遥か後方に置き去りにしていることは確かである
最終的にはスカーレットの膝蹴りを鳩尾に叩き込まれて沈んだが、そんなスカーレットは額から血を流している
モシン・ナガンの崩拳を躱し損ねて額の皮膚を切ったのだ、その事実にスカーレットは心の底から嬉しそうに嗤う
期待していた新人が自分の予想を遥かに超える成長を遂げ、これからも更なる成長をしていく……そんな未来を思うと嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ
その後簡易的な治療を受けたスカーレットは再び司令室でモシン・ナガンとFN49へ話をすることにした
「さて、モシンの奴が覚醒したとあって思わずテンションが上がり過ぎちまったが話がある。まずお前達へ課す訓練の第一段階は終了だ、2人共合格といったところだな」
「ま、当然よね」
「あ、ありがとうございます!」
「とは言えそれはあくまでも第一段階だ。ここを乗り越えられたのは喜ばしいことだが、ここからが辛いぞ。これからお前達は自分の力で実力を高めていってもらう。当然WA2000を初めとした他の人形に訓練を見てもらうのは自由だ、だが頼り過ぎることはするなよ。しっかり自主性を持った上で行動しろ、私も手が空いてる時は相手してやるから励むんだな」
「はい!」
「せいぜい吠え面かかせられるよう頑張るわ」
「ハッ!良い啖呵切るじゃねえか、そういうのは好みだぜ。だが時期が時期だ、そろそろ私は世界種子貯蔵庫の件で動かにゃならん。暫くはお前達の様子は見てやれねえし突発的な任務も入るだろう、一刻も早くお前達に仕事を任せられるようになってくれよ」
「「了解!」」
「良い返事だ。そんじゃ、今日は解散だ!この後は自由にしな」
その言葉を皮切りにモシン・ナガンとFN49は司令室を後にし、WA2000とM200の元へと向かう
そのまま2人に隠密行動の訓練を乞うが、WA2000は世界種子貯蔵庫の件で仕事がある為M200が1人で行うことになった
そしてWA2000は司令室へと向かい、そこでスカーレットと共にクルーガーとヘリアントスと通信を行う
「確認するが、今日から3日後なんだな?」
『そうだ。こちらでも色々と準備が整い、後は集合するのみだ』
「それなりに時間がかかったわね、でもまぁ仕方ないか……」
『そうだな、それに関しては済まない。急な変更だったのだ』
「まさか腰の重い正規軍がここまで積極的に動くとは思わなかったぜ。私の古巣もやるときゃやるじゃねえか」
そう、元々正規軍は各地のELIDへの対処で手を貸すことは出来ないことになっていたのだが事情が変わったらしい
なんでも対処する筈だったELIDが何者かの手によって粗方討滅されたらしく、手が空いたのだとか
正規軍の索敵すらも掻い潜ってELIDのみを狩り取る謎の存在に危機は感じるものの、都合が良いことに変わりはないし世界種子貯蔵庫の件も重要案件だ
それらを鑑みた結果予定を変更してこの基地と協力して作戦に当たることとなった
それから幾度か言葉を交わして会議は終了となり、スカーレットはWA2000と共に作戦に加える人員の最終決定に向けて話をする
とは言え元より殆ど固めていた為にそれもすんなりと終わり、個々へ連絡を回すと後は決行の日を待つだけとなった
スカーレットは椅子に凭れ掛かり、今も北極で粘っている仲間達のことを想う
(本当にありがとうな……もうすぐ、迎えに行ってやるから待っててくれよ)
この時のスカーレットは予想だにしていなかった、北極で死力を尽くした上で窮地に陥れられることを
というわけでコラボの話はなかったこととします!
遅くなり過ぎましたし希望者もいなかったので……次は来るように頑張るしかありませんね(´・ω・`)
さて、今後の展開なのですが3日後に大きな作戦が始まりますので2話程日常回を挟みたいと思っております
それが日本組の話なのかミレニアム8の過去話なのかは……それぞれ入れれば良いか('ω')
出来る限り早く仕上げようと思いますのでゆっくりとお待ち頂ければ幸いです!
ついでに私のTwitterのURLを貼っておきますので興味のある方はフォローして下さい!
では、また次回(@^^)/~~~
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