S09地区のとある指揮官と戦術人形達の和やかな日常と殺伐とした日常 作:フォルカー・シュッツェン
本気で細かいことを言うともっとあるんですけどそんなこと言ってるとキリがないので…
あとこれはどうでもいいんですけど銃器に関して解説系の方でも割と勘違いしてたりそもそもウィキにすら間違ったこと書かれてることとかあるのですが、これってちゃんと説明した方がいいのでしょうか?
FN49が屋内訓練所でひぃこら言っているその頃、モシン・ナガンは屋外射撃場…というより基地の屋上に居た
プローン姿勢を取り、自身のライフルを構えてスコープを覗く
従来のT字レティクルの3.5倍スコープではなく、十字レティクルで目盛りの沢山ついた高級スコープだ
倍率も4~22倍率迄の無段階調整タイプ
接眼レンズにしっかりと右目を合わせたモシン・ナガンは銃口をやや下に向けると倍率を18倍まで上げた
レンズには今から撃つ訓練用のダミーが映っている
そのダミーをレティクルの真ん中に置いてからスコープ左側面にあるボタンを押す
するとモシン・ナガンの視界の上部に対象との距離が表示される…1392m
その表示を見つつスコープの右側にある射角調整機能を使って距離に応じてスコープを前に倒していく
やがて射角も一致し、次に風を読む
西に微風だ
感じ取った情報を元に銃口をズラしていく
これで全て整った、最後にもう一度確認をして間違いがないことを確認したモシン・ナガンはトリガーに指を掛けて引き絞った
「…あら?」
轟音と共に飛翔した弾頭はダミーから数メートルほど横を通っていってしまった
「惜しかったね、モッシー」
傍で様子を見ていたM200が双眼鏡片手にそう言った
「ちゃんとズレも想定して狙ったと思うのだけれど…何処を間違えたのかしら?」
「何も間違ってないよ。僕から見てもモッシーのやった調整は完璧だった。今までやったことない距離だろうに良く初見で調整出来たね」
M200の少し低くてゆったりとした喋り方がなんとも心地好い
その心地好さに安心してしまいそうになるがそこはグッと堪えてモシン・ナガンは疑問を投げかける
「調整が上手くいってたのならどうして当たらなかったのかしら?ライフルやスコープに不備はないし、だとしたら調整に問題があったとしか…」
「さっきも言ったようにモッシーのやった調整はしっかりしてたよ。失敗したのは単にやらなきゃいけない調整をそもそもやってなかったからだね」
「へ?」
モシン・ナガンは間の抜けた声を出した
距離も風も考慮したのにあと何が足りないというのか
「何が抜けてたんだろうって顔してるね。意地悪する気もないし、先に言っちゃうとコリオリだよ」
「コリオリ…それは何かしら」
「今僕達が居るのは地球だよね」
「…そうね」
「そして地球は自転してる、ここまでok?」
「okよ…ってもしかして!」
「お、気付いたかな?」
「まさか自転してる影響で発射時と着弾時におけるターゲットの位置が変わってる…?」
「いくざくとりー、正解だよ」
「なるほどね、だから…って、それだとちょっとおかしいわね」
「とうかしたの?」
「だって私今までも狙撃は何回かしてきたけれどそんなコリオリ?だとかを考えて撃ったことはないわ。それなのに当たってたのはどういうことかしら?」
「それはきっと今まで800m以上の狙撃をして来なかったからだろうね。いくら自転の速度が速いと言ってもそれ以上に地球が大きいから角速度はそんなに速くないんだ。だから発射と着弾にタイムラグが殆どない距離での狙撃では考慮する必要はないよ」
「なるほど、そういうことなのね…今回は私が今までやってきた狙撃の中でも最長距離、っていうか…」
そこで言葉を区切ったモシン・ナガンは改めてダミーのある方角へ視線を向けた
だが視界に広がるのはだだっ広い荒地のみ
戦術人形の視力を以てしてもその姿を確認することは出来なかった
「いくら何でもいきなり1400mはないんじゃないの?遠すぎるわよ…最初は届くかどうかも半信半疑だったし」
「まぁかなりの長距離であることは認めるよ。でも意味もなくやらせてるわけじゃないし、君と同じ弾を使うSVDも成功させた距離だからね。物理的に無理なことはやらせないから安心して」
「それはなんとなく分かるのだけれど…具体的にどういう意味があるのかしら?」
「今回で言えばまず君が何処まで狙撃を理解しているのか、だね。後は適応力とか姿勢とかを見るのも目的かな…それで言うと今回は惜しかったよ、あともうちょっとで及第点を出せた」
「あら、それは名誉なことだと思っていいのかしら、同志?」
「うん、勿論。だって君は今日初めて見る光学機器をしっかりと使いこなして今までやってきた距離の2倍以上にも及ぶ距離での狙撃でターゲットの近くに着弾させた。これは人形だからといってそう簡単に出来る事じゃないからね…君には狙撃の才がある、誇っていいよ」
「あらら…そこまで言われると流石に照れちゃうわね」
M200の言葉を聞いて嬉しそうに微笑むモシン・ナガン
更にM200がモシン・ナガンの頭をその小さな手でヨシヨシと撫で始めた
それに気持ち良さそうに目を細めるモシン・ナガン、彼女の姿はまるで母に褒められて喜ぶ少女そのものだ
…体格的に逆ではないのかと言う声も聞こえてきそうだがそんなものは関係ない
この基地のM200はママ属性なのだ
誰がなんと言おうとママである
ロリママM200ちゃんカワイイヤッター!
「ところで1つ気になってたんだけど…」
「ん、なに?」
「…モッシー、って?」
「モシン・ナガンだからモッシー、ナガンだと他にいるからややこしいしね。…嫌だった?」
「いえ、そんなことはないわ…ただ渾名で呼ばれるのに慣れてなくてね。ちょっとこそばゆいのよ」
「…そっか」
「でも…」
モシン・ナガンはM200の顔を真っ直ぐに見つめ、ニッコリと微笑む
「悪くないわ…良ければこれからもそう呼んで欲しいくらいにはね」
「それなら良かった。これからも宜しくね、モッシー」
「ええ、こちらこそよ同志」
2人は笑い合い、良い雰囲気が周囲に流れ始める
「全く…いつの間にそんなに仲良くなったんだ、お前ら?」
「…っ!?って指揮官ね、びっくりさせないでちょうだい」
死角から急に聞こえてきた声にモシン・ナガンの体がビクッと跳ねる
M200は特に驚いた様子を見せていない辺り冷静なのか気付いていたのか…恐らくは両方だろう
「びっくりしたのはこっちだ。M200がここまで気に入るなんて初めてのことだからな」
「あら、そうなの?」
「あぁ、まぁ普段から他のやつを癒したりはしてるが…あんな満面の笑みは見たことがないな」
「…指揮官、もうその辺で」
M200は僅かに頬を赤くしてそっぽを向く
その様子にモシン・ナガンは少し驚いたようなそれでいて微笑ましいような表情をし、スカーレットはニヤリと笑った
「おっと、こりゃちっとばかし野暮だったか?まぁいい…取り敢えず今は長距離狙撃の訓練中だったんだろ、丁度いいから私も見てやるよ」
「あら、それは願ってもないことだけど…人形ですら厳しいこの距離を人間の貴方がそう易々と抜けるものなの?」
「ほう…私の狙撃にケチをつけるつもりか?良いだろう、見せてやるよ」
そう言ってスカーレットは手にしていたL115A3のバイポッドを展開し、床に置くとそのままプローン姿勢へと入る
そしてその身に纏う空気が一変した
普段は何もしていなくとも圧倒されるような威圧感を感じるが、今この時はまるで周囲の温度が下がったのかと錯覚するほどに鋭いものへとなっている
スカーレットの変わりようにモシン・ナガンは驚くが、よくよく考えれば狙撃をする時に雰囲気が変わるのは当たり前のことだと思い直す
「モッシーも中々挑戦的だね、指揮官にあんなこと言えるなんて」
「でも事実じゃないかしら?1kmオーバーなんてかなり難しい狙撃でしょ、機械である私達人形ですら失敗するのにいくら優秀でも人間の指揮官には…」
「その心配は無用だよ。指揮官は狙撃に関して…いや他の事に関してもそうだけど、特に狙撃に関してはもう人間じゃないから」
「それってどういう…」
「おい、モシン・ナガン」
M200に詳しく聞こうとしたモシン・ナガンであったが、指揮官に呼ばれたのでそちらを見やる
するとスコープから目を離さずに左手でこちらに双眼鏡を突き出していた
「ここから距離2100mの位置にあるダミー5番を見ておけ、今から1発で撃ち抜いてやる」
「え、ちょっと待って、2kmオーバーよ!?そんなもの1発でやれるわけないじゃない!」
「それが指揮官には出来るんだよ。ほら、双眼鏡を覗いて」
「わ、分かったわ…」
言われるがままに双眼鏡を覗き、指定のダミー人形を視界に収める
「捉えたわよ、同志。でも本当に抜けるの?」
「私を甘く見るんじゃねえよ、この程度簡単、とまでは言わねえが出来ない距離じゃねぇ…M200、カウント」
「了解。それじゃあカウントー。3、2、1……ファイア」
M200のカウントに合わせてスカーレットのL115A3が火を吹く
それから数秒後、弾頭がダミー人形の頭に命中したのをモシン・ナガンの視界は捉えた
「…嘘でしょう?」
「言ったろ?私は狙撃の天才だからな」
ニカッと笑う指揮官をモシン・ナガンは信じられないという顔で見つめる
実際に今目の前で起こったことが信じられなかった
そもそもこんな超長距離での狙撃にはかなりの時間をかけなければならない
距離の測定…はスコープの機能で省けるにしても風速や角度、銃弾の種類に撃ち出す銃本体の種類とコンディション、その日の自分自身の状態などもかなり影響を及ぼす
更に弾道は水平に撃つのか撃ち上げるのか撃ち下ろすのかでも変わってくる
2kmを超えるとなると角度のほんのちょっとしたズレも致命的なものとなろう
たった1度でもズレれば着弾点が4m近く変わるのだ
そのため許容誤差範囲は0.001度とかそんなレベルとなる
それら全てを考慮に入れなければならないため観測手と共に「スナイパーモジュラーブック」と呼ばれる狙撃のためのデータ帳の様なものに色々と記入し、何度も何度も微調整を繰り返した後にやっと試射を行う
この試射によって得られたデータと体感のズレを元にした上で本命の狙撃を行うのが定石だ
それにそこまでしても外れることは多い
戦術人形はこの諸々を射撃管制システムによって行い、素早い狙撃を可能としている
しかし当然ながら人間にはそのようなシステムはないため普通はその全てを行わなければならないのだ
それなのにそれらを全部すっ飛ばしてただ見ただけで命中させる…人間業ではなかった
更に338ラプアであればこの距離でも戦術人形、それが例えハイエンドモデルだとしても一撃で葬れる可能性は高い
遠距離から有無を言わさず、バレることも無くたった1発の銃弾で仕留める…これは戦場においてとてつもないアドバンテージとなる
何せ2kmも離れていれば狙撃地点がバレても離脱は容易に行えるし、序に罠でも仕掛けておけばそれに引っかかって更に敵を減らせるかもしれない
狙撃手はたった1人で戦場を左右するとも言われるが、それも納得だろう
実際過去には伝説のスナイパーとして名高い「シモ・ヘイヘ」や死の貴婦人と言われた「リュドミラ・パブリチェンコ」などがいる
他にもクリス・カイルやカルロス・ハスコックなど枚挙に暇がないが、スカーレットも表舞台に立っていれば伝説として語られていたであろう
裏の超隠密特殊部隊に属していたためにそういう事がなかったのが何処か悔やまれる
しかし真に恐ろしいのはこの化け物みたいな指揮官に認められなければ戦地へ出ることは許されず、そして多くはないものの認められている人形達がいるということである
「…もしかしてここの基地って相当ヤバい?」
「うん、やばいよ。でも大丈夫、その内慣れるから」
「あまり慣れたくはないわね…」
「んな事言ってる暇があるなら特訓するんだよ。ほれ、構えてみな。今日は私が直々に見てやるから」
「…嫌な予感しかしないわね。助けてくれないかしら、同志?」
「ごめん、指揮官がやる気になったら止められるのはクレアさんだけなんだ」
「…今日は厄日ね」
その後屋上からモシン・ナガンの悲鳴が聞こえて来るのだが、基地の面々は「あぁ、いつものあれか」と特に気にする様子もなくその日の業務や訓練をこなしていくのであった
因みにうちの指揮官は2km以内なら必中、2kmオーバーでも9割以上当てられる化け物です
普通ならこんな人間いないけどこれはSSだから良いよね('ω')?
戦術人形達の名前を会話文と地の文で変えようと思いますがどうでしょうか?例:WA2000→ワルサー、MK.23→ソーコム
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賛成
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反対