モテる為に異世界転生してヒーロー目指すわ‼ 作:自己顕示欲MAXマン
前回は日刊ランキング6位ありがとうございました。
スクショしてます。
次回から雄英高校編です。
話を読み返すついでに、過去のSSの中身を今の間の取り方に編集予定です。
お楽しみください。
『導 凌空様、第2診察室までお越しください』
広々とした総合病院の椅子に腰かけている俺の名前を女性看護師が呼んだ。
長時間座っていた為に軋む臀部と、腰の痛みを誤魔化すように一伸びして、言われた診察室へと向かう。
なんてことはない、個性の定期検査だ。
一般の人達なら個性の検査なんて定期的に行う必要が無い。しかし、俺の個性は今も変化しているイレギュラーな個性である。その為、一定の期間が来るとメールが届き、診察に来なければならないのだ。
「失礼します」
「はいはい、そこにかけてね~」
専門医である眼鏡をかけた男性に促されるまま丸椅子へ腰を掛ける。
検査内容は個性に関連する装置から、血液検査、レントゲンと様々である。現在の専門医になる前は検査をしても―――
『よくわからんけど変化してるね。体に異常はないからヨシ!』
といった具合に適当に匙を投げられていた。
個性の検査にも勿論お金がかかるし、それが特殊な個性検査になってしまうと莫大な金額がかかってしまう。
当たり前の話だ。その人専用の装置を一から開発する可能性だって出てくるわけだからな。流石にそんなお金を両親に出させるわけにはいかないので、一般の検査を今もなお受けているわけだ。
現状は何の成果も得られてない。
「まず、前回のレントゲンと今回のレントゲンを見てほしい」
どうやら今回も何かしらの変化はあったようだ。
医者が見せるレントゲンは、俺が個性を使用した状態の全身レントゲンである。
「まず骨密度が変わっている、これは昔から見られた変化だね。しかし今回は腕が生えて……ココと、ココ。形が変わっている事に気が付かないかい?」
芯を出していないボールペンで円を描くように腹部から胸部辺りまでと、喉から顎部分を指す。
言われてみれば骨格と言うか、骨を映している白い部分が変わっている気がする。
これは細顔になったって事ですか?
「そんな美容整形みたいなことは起こってないよ。僕は変身型個性専門医だから、動物の姿になる個性は多く見てきた。今回の骨格の変化は、より大きく声を響かせるような骨に作り替わっているんだよ。だけど、私が注目しているのはそこではなく、変身した際の『骨の作りが変わっている』事なんだ」
大きな黒縁メガネのズレを直すように人差し指で弾きながら話を進めていく。
「君の個性は変身型ではなく『複合型』と言う事だ」
……つまりどういうことだってばよ?
「脳たりんの君にも分かりやすいようにかみ砕いて説明しよう。今までの検査では、君の個性はよくわからない生物へ『変身』する個性と認識されていた。その過程の成長で体が大きくなったと思われていた。しかし、実際には違った。骨格の作りが変わったことにより、君の個性は『変身』する能力と『自分の体を作り替える』能力の二つが備わっていることが判明した。」
マジ?それってつおい?
俺のいまいちピンと来てない曖昧な返事に対し、正面に座っている専門医はメガネがずれるのもお構いなしに顔を近づけてくる。
「つおい?だと。強いに決まっているだろう!?個性というものは使えば使うほど強力になるものだ。ではその『進化という個性』はどうなる?進化という個性で自分のスタイルに合わせて最適化された体を作りながらも、作り替えれば変えていくほど君の個性はさらに強力になっていくんだぞ。まだまだ進化条件などに謎は残るが、どれだけの選択肢を備えた個性なのか理解できてるのか!?」
ぺぺぺっぺー!唾飛び過ぎだって!落ち着けって!
俺の言葉を聞くと「すまない、熱くなりすぎたようだ」と、あまりの興奮で額に浮かんでしまった汗を拭いながら、メガネのズレを丁寧に直す。
ついでに、アンタの口から降った雨でしっとりした俺の顔も拭いてくれよ。
「とにかく、これからは何か個性に変化が出るたびに診断を受けに来るように!なんだったら今すぐに大学病院で事細かに、尻の皴の一本に至るまで観察させてもらっても……」
おいバカやめろ、俺はそういうプレイは望んでない。なにより男に見られて興奮する性癖もない。
「もちろん、若い女性もいるぞ」
「マジぃ~?……っは!行きませんからね!?」
危ない危ない、危うく篭絡されるところだった。なんて高度な駆け引きをしてくるんだ。
「全くもって高度ではなかったと思うけどね。なんにせよ、その個性は一過性の進化なのか、複数の姿へ枝分かれして変身できるようになるのかが今後の注目すべきところだね」
専門医はカルテに何かを綴りながら言う。
それって戦隊ヒーローで言うと、様々なフォームに変身できるって理解でいいですか?
「あくまでも可能性の話だよ?まだまだ個性には謎が多いからね。とりあえず、個性変更届はいったん保留だね。謎が多すぎるから報告書も作れそうにないし。また次の検査日を楽しみにしているよ」
看護婦さんが退出しやすい様に扉を開けてくれる。
「個性変更届かぁ。ちなみに現状で俺の個性の名称に候補はあるんですか?」
振り返りながら聞いた俺の質問に対し、黒縁メガネの担当医『
「多くの可能性と多様性を持った個性だからね。潜在する能力(ポテンシャル)でどうだい?ひねりがなくていまいちだろうけど本決まりじゃないからね。軽く院内の人たちにアンケートでも取っておくよ」
軽いノリで手をひらひらと揺らす。もう話すことはないから帰れってことだろう。
潜在する能力……ねぇ。脳裏に海浜公園での出来事が思い浮かぶ。
『今、貴方の歪みを断ち切る力を―――』
ま、何とかなるだろ。闇落ちとかしなければなんでもいいよ。
俺は藪さんに一礼すると、今頃仲良くタコパの準備を行っているであろう皆へ診察が終わったとメールを送った。
「ワタシの切ったタコの方が断面が絶対に奇麗です!」
「僕の切ったタコは定規で測ったかのように均等に切れてるもんね!」
「「んぎぎぎぎぎぎぎ!!」」
帰宅してから目に入ってきたのは、キッチンでピンク色のフリルのついたエプロンをつけてるトガちゃんと、シンプルな緑色のエプロンをつけた緑谷が……仲良さそうではない感じでエキサイトしている。
一方、摩花と愛美さんはタコ焼き機を出したり、食器やコップを並べたりと和やかに動いている。いや、摩花は横目で二人のやり取りを笑いを堪えながら見てるな。
「あっ!凌空君お帰りなさい!!」
俺が帰宅した事に皆が気付くと、一番先にトガちゃんが両手を広げて向かってくる。……包丁を持ったままで。
信頼してるけど包丁は置いてから来なさい!ホント危ないから!
しかし、ビビりながらも受け入れる態勢に入った俺の元までトガちゃんがたどり着く事はなかった。
「普通に考えて包丁持ったままで向かっていくとか危ないよね。何考えてるの?」
「……ワタシを止める時には包丁は持ったままでいいんですね」
「あぁ、僕としたことが。うっかりしてたよ」
緑谷が左手で包丁を持ったままのトガちゃんの右手を掴んで制止する。しかし、その緑谷の右手には包丁が握られている。昼ドラかな?
「二人とも包丁は置きなさい。今日は雄英高校合格のお祝いなんだから仲良くしなきゃダメよ」
愛美さんが俺のコートと鞄を自然な流れで受け取り、そのまま壁にかける。
その様子を見た摩花が「まるで夫婦のような自然なやり取りだね」と茶化すと、愛美さんは顔を赤らめながら「もう!そんなこと言っても何も出ないわよ!」と両手で頬を押さえながら体をくねらせる。
その様子を緑谷とトガちゃんは「うぐぐ」と声を出しながら見ている。その間も包丁は握ったまま。
う~ん、平常運転ですね。……感覚がマヒしてきてるって?
感覚マヒの一つや二つも仕方ないやろ(白目)
「それじゃあ、雄英高校合格を祝して……カンパーイ!!」
「「「かんぱーい!」」」
俺の乾杯の音頭に合わせて全員のコップが触れ合い、心地よい音を鳴らす。
今回は全員でタコ焼き機を囲めるように丸型のテーブルを用意した。ちゃんと座布団も用意してある。俺の右隣に座ってハフハフとたこ焼きを食べてる摩花のように、地べたに座らせるような事を俺はしないのだ。
左隣に座っている愛美さんがたこ焼きをお皿に盛って渡してくれる。紅ショウガ付きで。
俺は紅ショウガが好きだから大盛なのはありがたい。
「ふふっ、凌空さんが紅ショウガを好きなのは知ってるわ。たこ焼きのマヨネーズがからしマヨのほうが好みなことも……ね」
そういいながらお手製であろうからしマヨの入った小鉢も一緒に渡してくれる。……俺が紅ショウガを好きな事も、からしマヨが好きな事も話した事がないのに何で知っているのだろうか。
「凌空君、食べさせてあげるのであ~んしてください」
いつの間にやら隣の摩花を押しのけ、肩が触れ合う距離までトガちゃんが移動してきていた。え?摩花はどうしたって?
あいつは弾き飛ばされて床に転がっている。ヤムチャしやがって……。あいつは何も悪くないんだが、しいて言うなら二人の視線を気にせず、俺の隣に座ってしまった不幸を呪うしかない。
そんな余計な事を考えている間にも、グイグイと体を押し付けるようにトガちゃんの侵略が止まらない。とりあえず、一つたこ焼きを食べれば収まるかと思ったが……。
「ふふっ、素直に口を開けてくれる凌空君……カアイイです」
どこかうっとりとした表情を見せながらも次のたこ焼きを準備している。どうやら俺が満腹になるまで続けるつもりらしい。しかし、こんな状況であいつが黙ってるわけもなく……。
「り、リード!ぼぼぼぼ僕もあ~んしてあげるよよよよよ!」
顔を真っ赤にしながらもトガちゃんに負けないように体を押し付けてくる緑谷。手元プルップルですけど大丈夫?
愛美さんは鼻歌を歌いながら元々緑谷の座っていた位置でたこ焼きをクルクルと回している。
な、なんで譲ったんです!?
「雄英高校の合格祝い、主役は私じゃなくて貴方達よ?」
大人の余裕を見せるように、出来上がったたこ焼きを大皿に移していき、型に生地を流し込んでいく。気づけば摩花も復活しており、正面に座りつつも「僕も主役なのに……なんで扱いが変わらないのさ」と膝を抱えながらもたこ焼きを食べていた。
お前……落ち込んでるフリしてるけど、抱えてる膝の間からスマホのカメラで俺の困る様を録画してるの見えてるぞ。お前は本当にブレないな。
「ねぇ、無視しないでよ……」
緑谷が俺の視界に入るために顔を寄せ、耳元で囁く。あー、これ知ってる知ってる。お前が小学校の時にマスターした技だよね。おかげで心拍数が爆上がりだよ。さらに自ずと体が密着するからどこがとは……ど・こ・が・とは言わないけど当たってるよね!もう、わりかしたわわな二つの膨らみが僕の腕を包み込まん勢いで形を変えるよね!うれしいね!(困っちゃうね!)
一瞬、本音と建前が逆転した気もするが気にせず緑谷のたこ焼きも食べる。
パアァと効果音が聞こえそうなくらいの明るい笑顔を見せたかと思うと、次の瞬間には見下ろすように斜めの角度で俺の隣を見る。まぁ、トガちゃんを見てるよね。
俺、物凄い威圧感を感じて固まる事しかできないんだけど。
「あえて聞きませんでしたケド、
「僕とリードは幼稚園から小学校卒業まで仲良くしてきてたからね。そういうトガささやかさんはリードとどういう関係なのかな?」
「……どこ見てささやかって言いました?」
緑谷の目線が明らかにトガちゃんの胸部辺りで止まり「ハンッ」と鼻で笑う。
見なくてもトガちゃんの怒りのボルテージが上がっていくのがわかる。その証拠に俺の腕を握る力が段々強くな……らないでぇ!!これいつものパターンだから!もうお約束みたいなやつだから!!
「ワタシは凌空君に抱きしめられて『これから先も一緒にいるからな』って告白されたことあります」
「は?」
ギョエエエエェェェ!腕を雑巾絞りのようにネジるのやめえぇぇ!
「僕だってリードに告白したし、股に顔を埋めたことあるし!!」
「「ええええええええええええ!!?」」
「あっはっはっはっは!!!」
トガちゃんと愛美さんの驚愕の叫びが二重奏を奏でる。珍獣の時だから!珍獣の時だから!!
ってか摩花てめぇ爆笑してんじゃねぇよ!!
「アッタマきました!元々仲良くできないと思っていたんです!」
「それはこっちの台詞だよ!隙があればリードにベタベタして、この泥棒猫!」
「そっちが途中からしゃしゃり出てきたんです!」
「残念でしたー!出会ったのは僕の方が先だから本妻は僕です~」
右も左もデッドヒート。諦めてたこ焼きを食べようとしても体が左右に揺さぶられるから口に入らない。何なら箸で鼻の穴突いたし。
ってかやめて、左右に揺らさ……ゆら……ゆ……。
「はいはい、そこまでにしなさい。凌空さんの顔色真っ青よ」
俺の背中に緑谷にも負けない二つの感触。後ろから俺を抱きしめるように愛美さんが仲裁に入ってくれる。
「「ご……ごめんなさい(です)」」
さすがに俺の顔色を見て反省したのか、二人とも離れてくれる。ただし、目線での牽制は続いているので怒りの炎が鎮火したわけではなさそうだ。
「いやいや、凌空君と一緒にいると本当に楽しいよ。ムードメーカーでありながらトラブルメーカーでもある。退屈しないよ」
今まで映像を録画する為に空気になっていた摩花がクックッと喉を鳴らす。
まぁ、そうだな。俺自身も緑谷と幼稚園で出会って、ヴィランじゃないトガちゃんと中学生で仲良くなって、ラブラバである相場愛美さんを飛び降りから助けるなんて思ってもみなかったよ。あと、原作には出てこないオリキャラ扱いのお前が雄英高校に入学するのも驚きだ。
「雄英高校にも三人で……失礼、緑谷さんも含めると四人だね。なんにせよ全員が合格できたことだし、ここでヒーローになろうと思ったきっかけと、目指すヒーロー像を話すなんてどうだい?」
えー、俺そういうの苦手なんですけど。
しかし、緑谷とトガちゃんは乗り気のようだ。これが若さか。年取ったら顔から火が出るほど恥ずかしい思い出になってたり、一生それで弄られることもあるんだぞ。
「では、言い出しっぺの僕からだね!トガちゃんと凌空君には話したけれど、自宅で読んだ絵本の魔法使いがきっかけだったね。それを真似て個性を使って、姉にドレスを着せた姿を見せた。その時の姉さんの笑顔が僕のルーツさ」
演説するかのように手を広げて話す姿はいつもと変わらない、どこかふざけている様な掴みどころのない摩花だ。
「僕の目指すヒーロー像は『人を笑顔にさせるヒーロー』。その為なら、どんな自分にだってなるし、どんな夢でも見せよう。泡沫の夢であってもね」
こいつ普段はニコニコしすぎてて胡散臭いんだが、真面目な雰囲気出すだけで元々の素材の良さで空気作れるのずるくない?顔面偏差値で殴ってくるのやめーや。
「じゃ、次はトガさんね」
「えぇ、ワタシですか。摩花の次ってだけで嫌なんですけど……」
「いつもながら辛辣すぎやしないかい!?」
コホン、と一つ咳払いをすると、目を瞑ったままゆっくりとトガちゃんが話し始める。
「正直、何がきっかけで憧れる出来事があったのかは詳しくは覚えてません。気付けば憧れてて、ワタシがワタシである為に絶対になるんだって思ってました。両親からは反対されてて、将来をどうしたいのか不安になる事もありました。でも、そんな時に一人の男の子が励ましてくれました」
目を開けると、いつもの愛嬌のある笑顔で俺を見る。
「その人の隣でずっとい続ける為に、ワタシがワタシである為にヒーローを目指します」
もう俺しか見てないじゃん。視界の端で緑谷がブスッとしながら「リードが浮気した」って言ってるけど、別にお前と付き合ってたわけじゃないからな?浮気ではないぞ。
しかし、トガちゃんって憧れてるヒーローがいるみたいなこと言ってなかったか?
「それなら、よく考えたらそんなに好きじゃなかったです。でも、将来ヒーローになるだろうな~って人のファンですよ?」
「ヒーローに詳しくないけれど、私も同じかも」
「そうなってくると僕も同じだね!同じヒーローに憧れる……すばら―――」
「摩花は駄目です」
「なんでさ!!?」
トガちゃんと愛美さんが熱視線を俺に送り、摩花も便乗しようとするがあっさりと弾かれる。
和やかムードの中「じゃあ、次は緑谷さんです」とトガちゃんからバトンを渡される。
さっきまでは恨めしそうと羨ましそうが半分半分のような表情だった緑谷がしどろもどろに狼狽える。ある程度はっきりとモノを言うようにはなったけど、人前に立つのは苦手なままなんだな。
「えっと、僕はオールマイトに憧れてて……小さい時からずっとヒーローになるのが夢だったんだ。あんな風に人を笑顔で助けれるヒーローになるんだって」
愛美さんも摩花も微笑ましい表情で見守っている。かくいう俺も保護者参観を見に来ている父親のような気持ちを感じている。(何処がとは言わないが)大きくなって……と言った心境だ。
「でも個性診断の時に僕は無個性って言われたんだ。それから数日は本当に何もする気が起きなくて、オールマイトの動画を見ても胸が熱くならなくて……それとは別に目元が熱くなっちゃう始末で……。歳を重ねていったら、きっとヒーローになるって夢も忘れてたと思う。……忘れたつもりだろうけどね」
昔のショックを思い出してか、声が震え、鼻頭がほんのり赤く染まっていく。
しかし、俯き気味だった顔を上げ、真っ直ぐに俺を見据えると、涙目でありながらも笑顔で続きを話していく。
「そんな僕の所に珍獣の見た目をしたヒーローが舞い降りた。……いや、舞い降りたというよりも落ちてきた、かな?その珍獣は無個性だって打ち明けた僕に言った『無個性でヒーロー?無理だな』って」
緑谷以外からの刺さるような視線が俺に向けられる。
そんな言い方してないです!……いや、無理だなって言ったのは確かですけど!
「でも、続けて言ってくれた『諦めて何もしないのか?笑って前を向け』って」
自分の胸に手を置く。色々な感情が溢れてしまいそうな胸の内を確かめるように、ゆっくりと手を握りこんでいく。
「僕はずっと彼の言葉に助けられてきた。これからも助けられるんだと思う。でも、僕が目指すのはオールマイトのような『笑顔で人を救えるヒーロー』だ!そして、名実ともに有名になって、その人が逃げれないように大々的に結婚の宣言をするんだ!」
う~ん、最後に何か変なのが混じらなかったか?そんなに鼻息荒く俺の方を見られても俺は了承しないよ?国外まで逃げる事も視野に入れるからね?
「絶対に逃がさないからね」
「ヒェ」
いい話だと思って聞いていたら壮大な計画の一端を聞いてしまった。
トガちゃんも「なるほどその手が……」って思案してるみたいだけどやめようね!お互いの気持ちを尊重しましょう!主に俺の気持ちにも重点をおいてもらって……。
「じゃ、次はリードの番ね」
「この流れで言いたくねーんだけど」
しかも俺の番になった瞬間に摩花が「ほらほら、もっと広い所に立って!」とか言いながらわざわざ立たせてきた。
俺の前には緑谷、摩花、トガちゃん、愛美さんが一列になって座っている。
何とも言えない沈黙が辺りを包み、俺自身も心なしか緊張してきた。
改めて皆の顔を見て思い出した事は、ここが僕のヒーローアカデミアの世界だという事。
ここには俺を叱る口うるさい上司も、仕事を押し付ける同僚も、陰口を言う後輩も、俺を虐めていた同級生も、見て見ぬふりをした教師も、全員いない。新しい世界だ。
その新しい世界で俺はこんなにも大切な人達を得る事が出来た。
「あ~、何と言うか……別に何かに憧れてるとかはなくてだな。むしろヒーローには疎い俺がヒーロー目指すなんて、人によったら馬鹿にされるかもしれないんだけど……」
こんなはっきりしない俺の話も茶々を入れず、真剣に聞いている。
最初は原作に関わる気なんてなかった。でも、緑谷と出会って、摩花やトガちゃんと会って、みんなが雄英を目指すって聞いて、これから起こる未来を知ってる俺だけが逃げるなんてしたくなかった。
「こんな俺でも誰かの力になれたり、成り行きで人を助けて……そのまま家事手伝いさんとして雇ってたり、本当によくわかんない出来事が起こってるとは思う。でも、これだけははっきりしてて、俺は皆と一緒に居たいって事で……」
前世には居なかった、大切な人達を守りたいんだ。
「……まぁ、そういうことよ」
「凌空君テレてます!」
「リード、顔真っ赤だよ!」
「うるせえええぇぇぇぇ!!」
恥ずかしさを隠すように摩花へフライングボディプレスをかますと「なんで僕ばっかり!!」と悲痛の叫び声をあげた。
その上に覆いかぶさるようにトガちゃんと緑谷が続き、愛美さんがクスクスと笑っていた。
雄英高校入学と言う、本当の原作のスタートラインが目前に迫っていた。