モテる為に異世界転生してヒーロー目指すわ‼ 作:自己顕示欲MAXマン
アニメや漫画のシーンで入学式に桜並木を歩いていくシーンを見ることがあるが、実際の桜のシーズンは三月の中頃の為、入学式の四月には散り始めている事の方が多いかもしれない。
あるあるな出会いの演出で、桜並木を歩いていると唐突に強風が吹き、桜が舞い上がり、そこに立つメインヒロインに一目ぼれするなんて展開は誰しもが聞いたことあるのではないだろうか。
……何、シチュが古いって?こちとら転生してからの年数も合わせれば四十代になるんだから知識も古くて当たり前だ。
そもそもなんでこんなことを考えてるのかというと、かろうじて二十代(当時)にして異世界転生を果たした俺が再び高校生活を送り、さらには転生先のヒロアカ世界でもエリートコースど真ん中の雄英高校に入学したなんていう奇跡からくる興奮が作用している可能性も否めなくはない。が、それ以上に大きな原因として……。
「みてよリード、雄英高校が見えてきたよ。何回見ても大きいよね!」
「凌空君と同じ学校に通えるだけでもシアワセです!」
右手にトガちゃん、左手に緑谷。と、語呂がとあるカード名に似た感じになってしまっているが、桜以上に嬉しい両手に花を地でいっている状態にあるからだと思う。
花より団子とはよく言ったものだと思う。……何がとは言わないが、団子よりは明らかに大きい。
「雄英高校の大きさや、俺と学校に通える喜びを全身全霊、有頂天外、喜色満面で表してくれるのはありがたいが……毎度の事ながら俺を捕獲するかの如く腕をとるのはやめていただけないんでしょうか?」
俺の諦めにも似た訴えに対し、二人は声をそろえて答える。
「無理だね」
「無理です」
知ってた。
そんな様子を摩花は一歩後方の定位置から眺めている。自身の顔面偏差値をブーストするイケメン笑顔を貼付け、しかし、心底楽しんでいるように喉をくつくつと鳴らしながら見守っている。
「いい加減に観念したらどうだい?」
「何をいい加減にするのか、何を観念するのかについて俺は心当たりが無くてな」
マジで言ってるわけでは無いが、始まった学校生活が一日目にして終了しかねないので俺は何も言わない。
これが一番、正しいと思います。
「二人とも、まだまだ先は長そうだね」
「摩花うるさいです」
トガちゃんの振り向き様の蹴りが摩花の脛にヒットする。
笑顔のまま顔を青くし、声にならないうめき声を出しながらその場に蹲る。
お前はそろそろ口は災いの元という言葉を覚えた方がいい。
教員や在校生から奇異の目で見られながらも何とか1-Aの教室へ到着することができた。
初日から遅刻するのは前世で経験済みの為、時間に余裕をもって出発したのは完全に正解だといえよう。ちなみに初日遅刻は学生時代ではなく、社会人での話だ。バチくそ怒られたのを覚えている。
バリアフリーにしてもデカすぎな教室の扉を開け、目に入ってくるのは漫画で見たキャラクター達だ。
刺さりそうな髪型の切島や「高校生の破壊力じゃねーぞ!」と叫びたくなるようなモノをお持ちの八百万。そして、机の上に両足を乗せたどう見ても素行不良ですありがとうございます!な爆豪もいた。
この様子だと飯田君の説教はまだ始まっていないようだ。
俺は拘束されていた両腕をやんわりと解き、自分の席に鞄を置こうと爆豪の横を通り過ぎる。そして椅子に座ったと同時に爆豪が俺の前に立っていた。
おっ、喧嘩か?言わせてもらうが俺はかーなーりー弱いぞ?
「お前はデクの何なんだ?」
両手をポケットへつっこみ、見下すような姿勢で話しかけてくる。
なんなんだって言われてもなぁ……。
「まずは自己紹介だろ?俺は導凌空。緑谷とは……まぁ友達以上親友未満みたいな感じだ」
「えっ!恋人以上兄妹未満じゃないの!?」
いつの間にか鞄を自分の席に置き終わった緑谷が俺の右後ろに立っていた。と言うか、どんな関係だよそれ。そもそも恋人でもないのに以上をつけるな。
「緑谷さんには荷が重いのでワタシが凌空君の恋人以上奥様以上になります!」
緑谷をけん制するように俺の左後ろへとトガちゃんが移動する。
奥様以上って何になるつもりだ。まさか二人で一つの超人バ○ム1か?今の子、絶対わかんねえよ。
「あー!何かで見た事があると思ったら、動画サイトで人気になってた飛び降りを助けた男の子!?」
両耳たぶからイヤホンジャックを垂らした女子、耳郎響香が声を上げる。それと同時に教室のいたるところから声が上がる。
切島鋭児郎や上鳴電気が席まで来て「あれお前だったのかよ!」と興奮気味に話せば、トガちゃんや緑谷には「ねぇねぇ、二人は導君とどういう関係なの?」と芦戸三奈と葉隠透に詰め寄られている。
それとは少し離れた所からは「アイツ入学早々で女を二人はべらせてるとか○ね」と頭ポンデリングの峰田実が血の涙を流しながら俺を睨んでいた。すまんて。
「……そうか、お前がデク言ってた奴って事か」
ぽつりと一言呟くと、爆豪は自分の席へと戻り、再び足を机の上に乗せた。
そういえば摩花は何してるんだ?どうせ後方オタクの様に笑顔でこの状況を楽しんでいるんだろう。周りを見渡してみると、摩花は八百万と話をしている所だった。
「摩花さんも雄英高校に入学でしたのね」
「そういう百ちゃんは特待生枠だよね。流石の一言だよ」
どうやら二人は面識があるらしい。まぁ、摩花はあんなんでも大企業の息子。八百万さんは会社は分からないけど金持ちって事は何かしらの社長の娘って事だろうし可笑しくもないだろう。
「君は机の上に足をのせて、雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳が無いとは思わないのか!?」
おぉ!この流れは爆豪と飯田の初コンタクトか。やっと原作の流れをこの目で見る事が出来るんだな!
「ンだとコラ!偉そうに!」
爆豪が椅子を倒しながら勢いよく立ち上がり、飯田へと詰め寄っていく。
まってまって!原作そんなにエキサイトしてなかったよね!なんで教卓辺りでガンの飛ばし合いが勃発してるの!?ってか、飯田君も普通にそういうの受けて立ててしまうタイプなのね。
「まぁまぁ、学校生活初日からそんなにカリカリするなってぇ。カリカリするのは駄菓子の梅干しとベーコンって相場が決まってるわけだし」
こんな状況をGTA(グレートティーチャー相澤)に見られでもしたらガチの初日除名があり得るので体を張って止めに行く。
「…すまない、初日と言う事で僕……俺も緊張していたようだ。私立聡明中学出身の飯田天哉だ」
「俺は導凌空。進行形で俺もこの状況に死ぬほど緊張してるけどな」
何せ爆豪の息が届く距離でガンつけてきてるからな。角度によってはほっぺにチュウと思われても仕方ないぞ。
まて、猛烈に嫌な予感が……ッ!
「かっちゃん!リードに何してるのおおおお!!!」
今までキャイキャイと女の子で集まって話していた輪から、緑谷が抜け出したと思った瞬間には俺と爆豪を引き離すように肩を掴み、左右へと別ける。が、力が強すぎる!
爆豪はぶっ飛ばされて壁へ、俺はそのまま教室の出入り口へ。その時、扉がガラリと開いた。
「お友達ごっブジュリュリュリュリュリュリュリュ!!」
「あっ」
俺が尻もちを着いた瞬間、誰かの話声を遮る様に半固形物の何かが勢いよく押し出される的な音が聞こえた。
隣に誰かが立ってる気配がするので見てみると、可愛らしい丸顔の女の子が口元を押さえて、この世の終わりのような表情で立っていた。視線は俺のお尻の後ろ位に固定されてる。
あぁ、見たくない。絶対にろくでもない事になってる。俺は恐る恐る麗日が見ている先へと視線を向けた。
見るも無残に顔面三秒メシ塗れになった寝袋ミノムシマンが横たわっていた。顔中ゼリー塗れに加え、口や鼻からも噴出されるほどの勢いだったようだ。
しかし、ゼリーに越しでもわかる鋭い視線と目が合った瞬間、俺は天を仰いだ。
「導凌空の次回作にこうご期待ください……」