アライさんマンション・二次創作   作:たつおか

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【 大討伐隊・2 】

 

 

【 2 】

 

 

5月〇日 19:30──────

 

 

 地上より地下25メートル──敷地面積:東西約22メートル×南北約45メートル、天井高は約7メートル、最大貯留量は約4000トン。

 もしかしたら地上から見上げるこのマンション以上にこの空間は広いのではないのだろうか? ──ふとそんなことをグンソーは考えたりもするが、そこはマンションの七不思議だ。

 

 そんなことよりも今考えるべきことは今日のこの大討伐のことである。

 

 今さらではあるが始まりは数か月前に発生した無脊椎型巨大ワームの登場に端を発する。

 発生当初こそはその体長も4~5メートルほどであったそれも、駆除にあたったオオカワウソ達を捕食するにつれ、現段階で胴回り直径3メートル、全長は6メートル、体重300キロ超の大怪へと変貌してしまっていた。

 

 この大きさに成長するまでに都合16人のオオカワウソを食べたことから件の怪異は『16号』と呼称され、以降は監視と陽動の末この地下下水道の一角まで追いやられていたのであった。

 

 そして今日、ついにそれの完全なる駆除を目的として編成されたのがこの大討伐隊であり、前線における実働隊32名がこの雨水貯留施設へと集められたのであった。

 

「あー、あー……それでは、今回の大討伐隊における作戦会議を開きたいと思います」

 

 参加者の全員が場に集まるのを見計らい攻略勢と思しきヒトの男が一人、拡声器で一堂に語り掛けた。

 

 歳の頃は30~40代と思しき顎髭の男。

 人数を前にしてもまったく臆することなく声を出しているところを見るに、常日頃から人前でこうした語り掛けをする仕事を生業にしているのかもしれない。

 以前に所属していた部隊の隊長はたかだかが20名程度の前であっても声を緊張させていたことを思い出し、ふとグンソーは思い出し笑いなどをした。

 

 聞くにあの男は件の16号が発生した際に初めてそれとコンタクトを果たした人物であるらしかった。

 16号と遭遇した者はそのこと如くが捕食、あるいはマンションの設備であっても再生出来ないほどに肉体を破壊されており、生き残りであるところの男の意見は今回の16号をその場所まで追い詰めることに大いに寄与したのであったという。

 

 そしてそんな彼の提唱する作戦は、狭所にて16号を駆除するというものであった。

 その作戦が提案されるや、

 

「どうしてわざわざ狭い場所でやる必要があるのでしょう? ここまで引きずり出して戦った方が動きやすいとは思うのですが」

 

 参加の一人がそんな疑問を尋ねる。

 その質問者の顔を確認してグンソーは思わず表情を明るくさせた。

 それを問うた人物は誰でもない知った顔であったからだ。

 250cm超の身長はこの密集地帯においてもだいぶ目立つが、それでも今までその存在を気にも留めさせずにいた彼の周囲に溶け込む擬態たるやフレンズのグンソーが感心するほどだ。……もっとも本人にはまったくその気は無いのであろうが。

 一方で、

 

「この場所では16号に有利です」

 

 その質問に対し男もまた応えていく。

 かの16号は尻尾打ちや体当たりといった巨躯を駆使した攻撃を主とする。その際に広大な場所で戦えばそれは、16号のポテンシャルを最大限に発揮させてしまうこととなってしまうからだ。

 出来得る限り16号の攻撃手段を封じるとなるとすればそれは、身動きのとれぬ場所にそれを閉じ込めることに他ならない。

 

 しかしこの時のグンソーは、男の提唱するそれとは全くの別物となる作戦を思い描いていた。

 そしてその作戦の大まかな絵図を思い描くや、

 

『……よし、決まった。なら相棒はアイツで決まりだ』

 

 グンソーは人混みを縫って動き出していた。

 いずれにせよあれだけの大物を相手にするにあたり単独行動は愚行だ。信頼のおけるチームメイトがいる。

 そう考えた時、グンソーがパートナーに選ぶべき相手は独りしかいなかった。

 

 そしてその人物はこの大衆の中においても探すには苦労をしない特徴を持っている。

 それこそは今しがた作戦提案の男に対して質問を投げかけた人物だ──その彼に交渉するため進んでいると、目視で確認できる前方の相手もまた右往左往に頭を巡らせ誰かを探すような仕草をとっていた。

 やがてその足元に辿り着くや、

 

『アタシと組もう! 上手く立ち回れれば大金星取れるよ──デビィ』

 

 グンソーはその人物──狂介へと共闘を持ちかけていた。

 一方でそんなグンソーの登場と提案に狂介もまた、

 

「僕もあなたを探していました」

 

 提案に応えるよりも先に身を屈めては改めて狂介もグンソーへ向き直る。

 

「僕にも考えがあります。そのためにはあなたの助けが必要なのです。……こちらこそよろしいですか、グンソー」

 

 差し出される狂介の掌へ、大きく音を鳴らせてはグンソーもまた自分の掌を打ち付ける。

 機動力と怪力──即席ではあるが現状で考え得る限り最強のタッグが成立した。

 そしてそんな二人へと近づく人影がもうひとつ……

 

『ハハハ、アタシも混ぜてくれ』

 

 突如として掛けられる声に二人振りむけば──そこにはオオカワウソが一人。

 

『オオカワウソ? 見たところ……キミは「マスク」かい?』

 

 改めて目の前のオオカワウソに向き直るグンソー。

 コートと背に担いだバールの装いこそ、よく知るオオカワウソチームの斬り込み隊・マスクを思わせたが、その雰囲気はどこか違った印象を覚えさせた。

 斯様な突然の申し出に当惑を隠せない二人を前に一方のオオカワウソはといえばマイペースに続ける。

 

『アタシはあの16号とやった奴の生き残りだ。名前がある。ソワカって言うんだ。アタシもお前達の中に入れてくれ』

 

 自称16号との生き残りにして、呼称持ち(ネームド)のフレンズ・ソワカは──そう自己紹介をすると両の口角を上げ歯牙を剥きだした。

 狂介に負けず劣らずの凶悪な笑顔であった。

 

 

 

 

【 3 】

 

 

 幾度か握り直すと、柄は指の付け根に吸い付くようにして落ち着いた。

 そのまま縦横に払ってなどをしてみると、握りしめた斧はさながら右手と一体化したかの如き感触で心地良い重みを伝えてくれる。

 

「素晴らしい……こんなしっくりくるなんて初めてですよ」

 

 呟く様に感嘆の声を漏らしながら、今度は刃を水平にしてそこへ目を凝らす。

 鏡面の如くに磨き上げられた刃先は均一に研がれたことで表裏の境界が分からぬほどに鋭く仕上がっている。もはや斧とは言わず、日本刀の如き様相を帯びた得物の再生に改めて狂介はため息を漏らす。

 

『そんなに褒めたって負けないよ? 刃の研ぎと柄の巻き直し代は作戦後に払ってもらうからね』

 

 一方で今はソワカのバールの柄にバンテージを巻き付けるグンソーもまんざらでない様子で鼻を鳴らす。

 今回の討伐にあたり新たな得物の購入を検討していた狂介であったが、今日に至るまで納得のいく武器に出会うことは叶わなかった。

 結局は今日までに使い古した馴染みの斧で挑もうとしていたところ、グンソーがそれを見止めて手入れを申し出てくれたのだ。

 

 狂介自身せいぜいが研ぎ直し程度のメンテナンスと高をくくっていたものの、数種類の砥石とクレンザーを用いた研磨に加え、さらには狂介には未知の化学繊維によるバンテージを柄に巻き直すことで、今日まで使い古した斧は新たな得物として復活を──否、より強力な武器へと再誕を果たしていた。

 

『──よし、こっちも完成だ。ほら、ソワカ』

『ハハハ、カッコいい! ん~……ハハ、軽い! 同じバールなのに!』

 

 狂介の時同様、手にしたバールの馴染み具合に喜んではソワカもまた舞うようにバールを振りましてその感触を満喫した。

 

『さて、アタシも準備するかな』

 

 ソワカと狂介のメンテナンスが終わると、グンソーもまた己の義手を取り外し、そこへ新たなアタッチメントを取り付け始める。

 見たところ先の義手と色違い程度の差異しか狂介には分からなかったが、わざわざ付け替えるのだから、今回の大討伐に対応したギミックが仕込まれているのだろう。

 いちいち聞いていてはグンソーの邪魔になると察した狂介もまた、己のもう一つの武器である火炎瓶の作成に取り掛かった。

 

『ハハ、何してんだキョースケ?』

「火炎瓶を作っています。今回の作戦に使えるかと思って」

『火炎瓶? そんなの使うんだっけ?』

『大丈夫かいソワカ? さっき説明したろうに』

 

 狂介とソワカのやり取りにグンソーもまた依然として義手の換装を続けながら会話に加わる。

 

『作戦ってあれだろ? ここで待ち伏せてアイツがきたら3人でブチのめすんだろ?』

『やれやれ……本質しか伝わってない』

 

 嘆息まじりに再びグンソーは今回の作戦について反復をする。実際のところ、口には出さぬがこれは狂介にとっても有り難かった。

 

 今3人がいる場所は下水区画の中でも比較的広い空間を有する下水道の一角であった。

 件の16号が潜伏している場所からは2ブロック程離れたところに位置した区画であり、今回討伐隊本体の作戦からは距離を置いた場所となる。

 

 討伐隊の作戦では狭所にて16号を対処する事となっていたから、ある程度の広さを持ったこの区画はそんな思惑からは外れた場所となる。

 しかし、

 

『だからこその『大穴』でもあるんだ。文字通りにね』

 

 グンソーは此処にチームの拠点を置いた。

 

『今現在16号が潜む場所から一番近くてそして広い通路がここだ。もしアイツが討伐隊の包囲網を抜けたのだとしたら必ずここに逃げ込む』

「でも、どうしてそんなことが分かるのですか?」

『作戦会議の時にも言われてたけど16号は狭い場所を嫌う。ならばその本能として必ず広い場所へ出ようとするはずだ。……もっともこれは勘だけどね』

『ハハ、でもその勘が当たればアタシらだけでアイツを倒せるチャンスだ』

「そういう考え方も出来ますが、そんなにうまく行きますでしょうか……」

『どうだろうねぇ……やっぱり今回はダメかな?』

 

 義手に落としていた視線を上げて二人を見遣るとグンソーもそう言って笑った。

 笑ってはいたがしかし、そんな自身の『勘』には絶対の自信と信頼を置いていた。

 隊に身を置いていた頃、こんな自分の直感は数々の窮地や選択その悉くで常に戦況を正しい道へと導いてきた。

 

 理屈ではなく本能がそれを告げるのだ。ならばグンソーはそれに従うまで。

 一方でそんなグンソーのことなど知らぬ狂介とソワカが互いの顔を困惑に見合わせるばかり。

 そんな時に──場に変化が現れた。

 

『────ッ?』

 

 つま先立ちに屈んでいたソワカがつと鼻先を上げ耳をそばだてた。

 首をひねって背後の通路その先に視軸を定めると、瞳孔を丸く肥大化させては突当りの闇を凝視する。

 

「どうしましたソワカさん?」

 

 尋ねる狂介にもソワカは応えない。先の姿勢のまま微動だにせぬその様子に、狂介もまた事態の急変を察したようであった。

 

『ふふ……人間さんにはまだ遠いかな?』

「ま、まさか本当にッ!?」

 

 両膝に手を置いて立ち上がるグンソーの傍らで、狂介もまた片膝に身を起こし通路の先へと傾注する。

 最初の変化は石が地を跳ねる長く乾いた音ひとつであった。

 それに続き、さながら防風を思わせるようなくぐもった摩擦音が場にこだまし始める。

 やがては徐々に大きくなりつつあるそれが砂利を磨り潰す不快な音を、突き当りのすぐ向こうに響き渡らせるや否や──

 

 

[ Arghhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!!!! ]

 

 

 見守る突き当りから鎌首を這いださせた16号が一同の前にその半身をさらけ出した。

 そして彼方から狂介達一行を見止めるや、蛇腹の体躯を蠕動させては怒りと痛みを滲ませた咆哮を上げる16号──グンソーが予想した通りに、その時は突如として訪れてしまった。

 

『ハハハァ、来た来たァッ!』

『さぁ、当たったんなら働いてもらうよ。──狂介、準備は?』

 

 立ち上がりバールを右手に掲げては両腕を広げるソワカと、義手を前方に差し出すよう構えては中腰に体位を落として両足に力を漲らせるグンソー。

 斯様にして臨戦態勢の二人を前にした狂介もまた──

 

「愚問ですよ……覚悟なんて、とうに完了してます!」

 

 さらに二人の前に進み出るや、右手にした斧の刃先を16号へ向け、その斧頭に左手を沿えた。

 

 一瞬にして最前線と化したこの場に狩人と凶獣とが集った。

 全てが思惑通りに進んだ状況に安堵するもしかし、この戦いの行く末だけは……

 

──さて……どうなることか!

 

 グンソーの勘を以てしてもまだ分からなかった。

 

 

 

 

 

【 4 】

 

 

 此処、7メートル四方の通路において16号は腹ばいに尾を引きずりながら鎌首を持ち上げた。

 その状態であるならば16号の頭頂はまだ天井部まで1メートルほどの余裕がある。

 つまりは──

 

[ Arghhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!! ]

 

 この場所であるならば、16号は存分に戦えるのだ。

 此処へ追いやられるまでさんざんに狭所で他の討伐隊に虐げられたストレスから、16号の凶暴性はいつにも増して猛々しかった。

 

 そんな16号を前にした狂介もしかし微動だにせず退こうとはしなかった。

 斧を握りしめた右腕を掲げると、両腕を開いて真っ向から16号を受け入れる姿勢を示す。

 

 そんな狂介の態度が16号の癇に障った。

 2m55cmの体躯はなるほどヒトとしては大柄ではあろうが、今の自分にしてみればまだ見下ろすほどの小人だ。

 ならば蹂躙してやろうと、なおさらに鎌首を高く持ち上げて体位を伸ばすと──16号は高高度から飛び込むかのごとくに狂介へと躍りかかった。

 

 牙の並んだ顎を目一杯に開き、このまま飲み込んでは噛み砕いてやろうと体当たりを敢行したその時である。

 その身が狂介へ触れたその瞬間、思いもかけぬことが起こった。

 

 激しい衝撃と共に突進が止められる。

 その感触をはじめ16号は地に突き出た不動の障害物に当たってしまったのかと錯覚した。

 しかしそれが間違いであることをすぐに悟る……なぜなら押し止められているその先には、狂介がいたからだ。

 

 広げた両腕の体全体を以て、狂介は真っ向から16号の喉輪を抱き留める形で突進を受け止めていた。

 しかも驚愕はそれだけにとどまらない。

 身動きが取れないのだ──けっして知能指数は高くない16号であっても、現状を判断するだけの能はある。ならば今自分が身動きを封じられている理由が、目の前の狂介に重機のごとく怪力で首根を締め上げられていることにも気付いていた。

 

 その瞬間、背筋が凍る思いがした。

 生物が危機の予感に対し感じる悪寒というものは、人も無脊椎動物も共通だ。

 刹那16号の頭をよぎった次なる判断は『逃げろ』の一手──しかし即時にそれは『無理』へと変わる。

 

 考えている間に16号の首は力強く捩じられ、そして激しく地へと叩きつけられたからである。

 そのあまりの衝撃に地表は椀状に陥没し、衝撃に砕けたコンクリの砕片が舞うその光景の中で見る次なる狂介の行動は、ひどく緩慢なものとして16号の目には映っていた。

 

 叩きつけ、両手が解放された両腕には一振りの斧が握られている。

 それが高々と振り上げられ、己の喉笛へと振り落とされ──……そこまでで、16号の意識は暗転した。

 

 狂介の斧が仰向けになる16号の喉笛を打ち付けるや、場には地響きと同時に鈍く乾いた音もまたひとつ鳴った。

 規格外のサイズと筋繊維に覆われた体躯ゆえ、切断するまでは叶わないにも、狂介の一撃が強打箇所の骨組織、あるいは外殻の類を完全に破壊したことだけはその鈍い音だけでも容易に想像できた。

 

 仰向けの状態で喉を打ち据えられた16号の体は、その衝撃が波となって帯状の巨躯を波打たせる。

 やがてはその衝撃も完全に駆け抜け、尻尾の先を数度激しく左右にぶらせたかと思うと──やがてはそれも地に落ちて微動だにしなくなった。

 

 そんな一連の攻撃を終え、

 

「……ふう」

 

 背を正して足元の16号を見下ろした狂介は、ため息ひとつをついてスーツの襟元を直した。

 

『ハハ……終わり?』

『ありゃ……出番、なかったかな?』

 

 見守っていたソワカとグンソーも依然として狂介に視線を留めたまま独り言ちる。

 やがては二人も狂介の元へと駆け寄り改めて16号を見下ろす。

 半ばに開いた口角の端から脱力しきった舌根を吐きだして微動だにしないその姿は色青く、血の気の失せた様相と相成ってもはや、死亡と判断してしまっても良さそうである。

 

『なんだお前強いな! 見た目の通りだな! ハハ!』

「いや……真正面から当たっていけたのが良かったんです。この獣の突進力も利用できましたし」

 

 もはや討伐終了に沸くソワカと狂介をすぐに隣にしながらもしかし……グンソーだけは依然として16号の亡骸から目が離せずにいた。

 

 腑に落ちぬのだ。

 

 今日に至るまで、オオカワウソチームと数多の死闘を繰り広げ、さらにはつい先ほどまでは別動隊の猛攻に晒されていたにしては、いま横たわる16号の表皮があまりにも綺麗過ぎる。

 目立つ傷などは目を凝らしても見当たらぬその理由をグンソーが考えたその時であった。

 

 突如として、16号が再動した。

 

 横たえていた体躯を痙攣に一打ちさせるや、地に背をこすりつけるかの如くその場で身を捩じらせ始めた。

 

『やはりまだ死んでない! デビィ! ソワカ!』

「了解です!」

『ハハー、往生際が悪い奴だ‼』

 

 グンソーが声を掛けるまでもなく、ソワカと狂介の攻撃は再びそれぞれの得物を16号へ撃ち落としていた。

 しかしそれらがヒットするや──16号の体は粉々に砕け散る。

 その光景に全員が目を見張った。そして同時にグンソーだけが即座に視線を走らせては自分達の背後へと振り向き視線を走らせる。

 そして新たに通路の暗がりを凝視したまま……

 

『なんてこった………』

 

 毒づく──なぜならば視線の先には、再び地に這いずりゆっくりと鎌首を持ち上げ始めた16号の姿が見えていたからだ。今しがた狂介とソワカが破壊したものは、すでに脱皮が為された後の空蝉であった。

 

 しかもその動きは起き上がるだけに留まらない。

 僅かに頭を垂れ、背をいからせるや──粘着質な破裂音と共に皮膚を突き破り、16号の背からは羽虫のそれを思わせる黒い翅が花弁の如くに弾け出ては宙空に広がった。

 そして再戦の狼煙とばかりに──

 

[ Arghhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!!!! ]

 

 怒りに滲んだ咆哮を上げる16号。

 大討伐は新たな局面を迎えた。

 

 

 

 

 

 

『大討伐隊・3』へ続く……

 

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