横島友人帳。   作:ちょりあん

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一話で纏まらなかった……。


夏目と名前

「よこしま……ただお。で、いいのかな?」

 

「ふむ、確かに人間の名前っぽいの」

 

「そもそもこれだけ漢字で書かれてるし、どうみても人の名前だよ」

 

 夏目の部屋にて、部屋の主である夏目と自称、夏目の護衛であるニャンコ先生が友人帳を前に唸っていた。

 

 ふとしたきっかけで見つけた友人帳に記された名前。それはどこをどう見ても人の名前であり。

 そもそも通常、妖怪の名前は人が見た所で何かの落書きのようにしか見えない。

 それが夏目の言う通り漢字で書かれていたのだ。それだけで異様と言える。

 

「何で友人帳に人の名前が……」

 

 字の少し崩れた感じが余計に人間っぽさが出ていて不気味だ。

 何も起こらないと理解しつつも夏目はゆっくりと名前を上からなぞる。

 

「先生は何か知らないか?」

 

「知らん」

 

「ちょっとは考えようとしてくれよ……」

 

 夏目の愚痴を聞き流し、ニャンコ先生こと(まだら)はジッとその名前を見る。

 何をよく考えているかわからない瞳で暫く凝視したあと、興味を無くしたように脇に置いてある座布団の上に丸まった。

 

「おい、先生!」

 

「知らんもんは知らんと言っとるだろう!それに何か害があるわけでもないのだ、ほうっておけばいい」

 

「そうは言ってもさ……」

 

「ま、どうしてもその名前の正体が気になるのなら、知る方法が無いわけではない」

 

「方法!?どんな?」

 

 前のめりで聞いてくる夏目に、斑はあっけらかんと答える。

 

「何、簡単なことだ。友人帳を使えばいい」

 

「え……?」

 

 どっこいしょと丸まった状態から体を起こし、夏目を見る。

 

「その名前が妖か人間かこの際どちらでもいい。友人帳に載っているのだ。呼び出してみればその者の正体もわかるというもの」

 

「そんな……それは、そうかもだけど。で、でも人相手でも友人帳の力は働くのか?」

 

「やってみんことには分からんが……おそらく大丈夫だろう。それ程の力が友人帳にはある」

 

「それこそ駄目じゃないか!人だったら急にこっちまで移動させられるってことだろ?大問題になる!」

 

 友人帳には名前を書かれた妖怪は名を縛られ命令下に置かれることになる。それだけでなく呼び出しの陣と言い、友人帳に書かれた妖怪を呼び出すことも出来るのだ。

 実際に一度、夏目はその術を使っている。

 

「だったら諦めるのだな。何が出てくるのか分からんのだ。無理に確かめる必要もないだろ」

 

「……先生は気にならないの?」

 

「特にはな」

 

 なんだか取り付く暇もない感じの斑にため息を吐き、今は諦めたほうが良さそうだと悟る。

 確かに言う通り、無理に確かめる必要はないのかもしれない。だけど。

 

「横島……忠夫……」

 

 妙に気になって仕方がなかった。

 

「夏目、私は少し出てくるぞ」

 

「どこいくんだよ?」

 

「散歩だ散歩。私のご飯はとっておけよ」

 

 そう言って、そそくさと斑は窓から外へ出て行ってしまう。

 相変わらず自由奔放な斑に呆れながらも、開いていた友人帳をたたみ仕舞う。

 

『貴志くーん。夕飯の準備が出来たわよー』

 

「あ、はーい!今行きます!」

 

 と、下の階から夏目を呼ぶ声。

 夏目を引き取ってくれて、一緒に暮らしている藤原夫妻、塔子の声だ。

 

 心にモヤモヤはまだあるが待たせる訳にも行かないので、斑によって開けられた窓を閉め、夏目は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 ――ガラッ

 

 

 

 

 

「塔子さん。この唐揚げ、美味しいです」

 

「あら本当。ふふ、よかった貴志くんに喜んでもらえて」

 

 ふわり。と、柔らかい表情で笑みを浮かべる塔子。

 意外と味にうるさい斑も認める料理上手で、それだけでなく夏目に対する確かな愛情が籠もっており、夏目は塔子の料理が好きだった。

 

「今日、学校はどうだったんだ?貴志」

 

 そう聞くのは塔子の夫である藤原滋。眼鏡と顎髭が特徴で少し無口な所もある。が、夏目を本当の息子のように思っており、夏目もその愛情を深く感じている。

 

「楽しかったです。そうだ、休憩時間の時に――」

 

 笑顔で学校の話をする夏目を優しげな瞳で笑みを浮かべる滋。

 楽しそうに相槌をうつ塔子。

 

 二人は夏目にとって、とても大切な人である。

 

 

 

「ニャンコ先生?まだ帰ってないのか……」

 

 楽しい夕食を終え、斑の分の(しょくじ)を持って部屋に戻った夏目は、まだ斑が帰ってないことに気付く。

 

「またお酒でも飲んでるのかな先生?」

 

 ため息一つ、餌を傍らに置き机の前に胡座をかいて座る。手にとるのは友人帳だ。

 

「考えても仕方ないこと……か」

 

 害はない、放っておけ。斑はそう言っていた。

 ……そうした方がいいのだろう。

 

 あまり深入りしても良い事はない。これまでの経験がそう言っている。

 

 それでも……。

 

 

 

 サァ――

 

 

 

「ん?」

 

 夜風が頬を撫でた。

 

 見ると開いた窓から少し冷たい風が吹いている。

 閉めるか。と、立とうとして動きを止めた。

 

「あれ?俺……確か窓は閉めていった筈……っ!」

 

 不意に気配に気付き、後を振り返る。

 

「――イコ」

 

 そこには白い着物を来た少女が夏目の前に立っていた。

 

「レイコ」

 

 黒髪のおかっぱ頭の少女で、花の模様のような布面をしており表情は見えない。背丈は小学生高学年くらいだろうか。

 妖と理解した夏目は逃げようとしたが、それより妖の方が早かった。

 ゆるりと動き、懐に入る。そして……

 

「レイコ」

 

 夏目に抱きついた。 

 

「え?」

 

「ああ、レイコ。久しぶりに会えましたね」

 

 ペタペタと両手で確かめるように夏目の顔を触る。

 

「おや?髪を切ったのですか?もったいないですね。綺麗だったのに」

 

 妖怪に襲われそうになると、夏目はゲンコツをくらわせて怯ませていたりした。

 だか、この妖にはそんな気になれなかった。

 

「ですがそれよりも。アナタに会えたことが嬉しい……」

 

 祖母であるレイコに対しての愛情が、その妖にはあったからだ。

 夏目は優しく顔を触る妖の手を握った。

 

「ごめん。僕はお前が誰か知らない。僕はレイコさんじゃないんだ」

 

「レイコじゃない?……ですが、こんなにも」

 

「僕は夏目貴志。レイコさんの孫なんだ」

 

「レイコの……孫。では、レイコは何処に?」

 

「何処にも……。レイコさんはもう亡くなっている」

 

「レイコが……そう……ですか」

 

 レイコが死んでいた事実に妖の少女はピクリと動きを止め、ゆっくりと夏目から離れた。

 

 顔が見えない布面の奥。その瞳が揺れたような気がした。

 

 

 

 

 




一話にて、妖怪の女の子の名前を奪ったとしてましたが、色々(ウィキ)調べると低級だと名前なかったりするらしいので、名前を奪ったと思ったがそんなことはなかったぜにしました。

まだまだ勉強不足でした。すいません。
また間違ったとこあったら教えてくれると嬉しいです。

これからもちょくちょく、手直しあるかもしれません。
とりあえず原作もっかい読まないと……。

ではまた次回に。
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