横島友人帳。   作:ちょりあん

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今話は始めだけキコ視点。途中からはレイコさん視点になってます。


レイコと鳴き声

 姿は様々なれど、決まって力は弱い。言葉も碌に話せず、知能も低い。あまり年月を生きていない低級の妖とは多くがそういった存在で、また私もそういう存在でした。

 

 と言っても私は今も低級の妖である事には変わりません。

 通常より早く言葉を覚え、知恵をつけはしましたが、それだけです。力はあまり強くなっていません。

 あ、それから姿も。タダオと出会った頃は今よりも少し幼い姿をしていました。

 知り合いの妖が言うにはこの僅かな時間で成長するのは珍しいらしく……ふふ、少しだけ自慢にも思ってたりします。

 

 話がそれましたね。つまり、私は人でいう赤子や童子のように、自己が曖昧でフワフワとした日々を過ごしていました。

 

 だからこそタダオと出会った時の感情をよく覚えています。

 話は私には難しく何を言っているか理解できませんでしたが、初めて触れたタダオの手の暖かさに感動していました。

 

 三人で人の町に向かい歩く途中もタダオとは手を繋いで歩きました。

 人とも、妖とも手を繋いで歩いたことなんてなかった私は嬉しさに包まれて、何度も何度もタダオの手を、顔を見上げます。

 

 その度にタダオは笑顔で私を見て、たまに頭を撫でてくれました。

 その時の感情をなんと言えばいいのか……。ポカポカとして、ポワポワとして……暖かな何かが私の心を満に染み込んできたのです。

 

 そんな浮ついた気分でいたからか別れはいつの間にかきていて。日は沈み、夜が世界を包んでいました。

 

 タダオはレイコと何か話をしていて、暫くして一人で去って行きました。だけど去り際に……

 

「またな二人共」

 

 そう言って見えなくなりました。

 

 それから程なくレイコとも別れ、私は住処に戻り眠ります。

 二人と別れて寂しい気持ちがありましたが、それ以上に喜びの気持ちが勝っていました。

 

 だってタダオは「またな」と、言ったのです。

 つまりまた遊んでくれることだということ。喜んだ私は、次の日になると足早に人の町へと駆け出しました。タダオを探し、遊ぶために。

 

 まぁ、探すまでもなくタダオは見つかったのですがね。

 

「川魚、とったどー!!」

 

 私の住処である木がある場所から近い所にある小川。そこで裸んぼで元気に魚をとってましたから。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小さな頃から時々、変なものを見た。

 それはおそらく妖怪といわれているものの類。

 

 物心が付き始めた頃は、人と妖の違いがよく分からなくて、周りの人たちを気味悪がらせていた。

 それでもはじめは優しくしてくれようとした人も、仲良くなろうとしてくれた人も……うん、いた気がする。

 

 だけど私の奇妙な行動に少しづつ皆離れていった。親でさえそう。

 その内嫌味を言われ、陰口を叩かれ、石を投げられるようになり。その頃には私は立派な人嫌い。

 暫くして、私には妖力という望んでもない力があるらしく、これ幸いと妖怪たちに喧嘩をふっかけては憂さ晴らしを始めた。

 喧嘩で負かし名前を紙に書かせて手下にする。

 友人帳なんて皮肉った名前もつけた。

 

 息苦しい毎日に負けないように、常に笑って過ごした。

 アンタたちのことなんか気にもしてないわ。なんて自分に言い聞かせてたのかもね。

 

 そんな日々の中、不思議な男の子に出会った。

 出会い頭、私に飛び掛かってきたその男の子はなんと未来から来たという。

 それも妖怪たちが一般的に認識されている世界から。

 

 そう、彼は私と同じ妖怪が見える人間だったのだ。

 

 昨日、その彼横島くんと出会った翌日。

 私はなんの気はなしに町を歩いていた。もちろん横島くんを探す為。

 昨日、行く宛もない筈の横島くんは「またな」なんて笑いながらどっかへ行ってしまった。

 まぁ、親にさえ避けられている私が何とか出来る問題でもなかったのだが気にはなる。

 ……なんだろう。昨日会ったばかりの男の子を次の日に探して町中を歩く……。言葉にすると横島くんに恋でもしてるみたいね。

 

 いや、違うんだけど。

 単純に同じ妖怪が見える人間なんだし、気にもなるってものよ。

 

 なんて事を考えながら歩いていたら、意外とすぐに横島くんは見つかった。

 

 見つかったんだけど……。

 

「……横島くん?」

 

「おっ!夏目ちゃん!昨日ぶり」

 

 フリフリ!

 

 見れば傍に昨日の妖の女の子もいた。元気そうに私に手を振ってるけど何してるのよアナタも。

 

 横島くんは町にある河原沿いの道の途中にいた。そこで何をするでもなく立っていた。

 

 今日もかなり暑く、羽織っていた上着を腰に巻き、シャツだけになっている。トレードマークなのか、頭の赤いバンダナはそのままだ。

 

 まぁ、問題はそこでなく。

 

「じー……」

 

「どうしたんだ、そんなに俺の事を見て……?ハッ!これは夏目ちゃんが俺の溢れんばかりの男の魅力に気づいた証!こうなったら俺の愛で夏目ちゃんを包み込んであげねばー「結構よ」フグリッ!!」

 

「昨日からそうだけど、いい加減にしないと殴るわよ?」

 

「もう殴っとるやないか……」

 

 顔に手を当てて恨めしそうに言ってくる。

 あらごめんなさい。妖怪たちに、喧嘩をふっかけるようになってからどうやら暴力的になってしまったみたいね。気をつけないと。

 

「それより横島くん。顔、赤くなってるけどどうしたのよ?」

 

「たった今夏目ちゃんが殴ったんやないか!」

 

「違う。そっちじゃなくて頬よ頬。キレイな手形がついてるわよ」

 

「……ふっ、男の勲章だぜ夏目ちゃん」

 

「いや意味がわからないわよ」

 

 にゃ〜。

 

「……?」

 

 あれ?今猫の鳴き声がしたような?

 周りを見ても猫の影はない。居るのは横島くんと妖の女の子だけ。

 あ、この子私の真似して横島くんの足を叩いてる。楽しそうに笑ってるし、ポカポカって音が聞こえそうなくらい可愛らしい殴りかただ。私達が遊んでるって勘違いしたのかしら?可愛いものね。

 

 と、向こうから誰か歩いて来る。二人組の女の子で……あ、あの子たち私の学校の子たちだ。しかも、私に堂々と嫌味を言ってくる連中。

 

 別にあんな連中気にする必要なんてないけど、気分はいいものじゃない。それに横島くんは……。

 ちらりと横島くんを見る。だけど……。

 

 横島くんは既にそこにはいなかった。

 

「え?」

 

「僕、横島忠夫!ねぇねぇ二人共、今暇?よかったら近くの喫茶店で三人のこれからの愛について語りあわない?」

 

 いつの間に移動したのか、あの二人の所に居て声をかけていた。

 え?というか結構距離離れてたわよね?あの一瞬で移動したの?

 

 横島くんはやっぱり妖怪じゃないかと思い直していた私を他所に、二人をデートに誘っている。

 いや、二人同時にデートに誘うってどうなの?もし顔が良ければいけたのかもしれないけど、横島くんの顔は普通の男の子だ。予想通り二人が拒否の態度をとる。距離があるから声はハッキリ聞こえないけどそれは分かった。

 それでも粘る横島くん。あれ完全に拒否されてるわよ。なのによくめげないわね……。あ、片方が痺れを切らして横島くんの左頬にビンタした!気持ちいいくらいいい音したわね。

 

 倒れる横島くん。そんな彼に唾を吐き捨て二人共、もと来た道を戻っていった。

 

 それから暫くして起き上がった横島くんが戻ってくる。両頬に見事な手形を残して。

 

「横島くん……アナタ……」

 

「か、かんにんやーー!!仕方なかったんやーーー!!過去とはいえど女子高生は女子高生!!溢れんばかりのリビドーが抑えられんかったんやー!!」

 

 何も言っていないのに泣きながら土下座する横島くん。

 こんなに綺麗に土下座する人初めて見たわね……。

 

「……男の勲章が増えて良かったわね」

 

「ええやんか!過去でならモテるかもしれんと思っても!ワイは自分の可能性を信じただけやーー!!」

 

 妖の女の子はよくわかってないが故に楽しそうにはしゃいでいるが、私は引きに引き倒している。

 

 人の事を言えないのかもしれないけど、ここまで奇抜な人ははじめてだ。

 

 ……にゃ〜。

 

「え?」

 

 すると、また何処からか猫の鳴き声が聞こえた。

 素早く辺りを確認したけれど、猫の影は見えない。けど……気のせいじゃない……わよね?

 

「よっと」

 

 と、さっきまで泣きはらしていた横島くんが起き上がり、ついた膝の砂を払う。

 

「横島くん?」

 

「夏目ちゃん、もっかい行ってくるぜ」

 

「はぁ?」

 

 ニカッと良い笑顔で横島くんはまた歩きだす。

 その向こう。確かに新たに人影が見えた。でも、それは……

 

 

 

 

 腰は曲がり顔は皺が目立つ、どうみてもいい歳のお婆ちゃんだった。

 

 

 

 




今回の話はオリキャラ回です。
その次から原作妖怪出して行く予定です。

夏目、BOOKOFFに預けておいた原作を十巻くらいまで返してもらい読み直しました。
そして投稿前に読んでおけばと後悔。

ちょくちょくとこれまでの話、手直ししていくかもしれません。

それではまた次回も見てくれると嬉しいです。

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