遊☆戯☆王 Return of Legend   作:黒夢羊

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どうも皆様、黒夢羊です。

アニメのデュエル構成とか考えられてる方とか本当に凄いなぁ……と今回のデュエルを考えていてそう思いました。
本当に4~5回くらい書き直してあーでもないこーでもないと無い頭を必死に絞って書きました。


それでは本編へどうぞ。





フェイズ003 天駆ける騎士と芽生える種

 

「融合HEROを一気に3体も……」

 

 遊真は言い様のない恐怖を感じた……が、それと同時に今までにない高揚感が体の奥底から沸き上がってくるのを感じた。

 

(あの人はこのデュエルが始まって1度も【V・HERO】や【D・HERO】を使ってない……それでこの展開力)

 

 そう、先にも言ったと思うが一般的なHEROは【V・HEROヴァイオン】や【V・HEROファリス】からの展開が多い。

 しかし、目の前の青年──氷月はそれらを一切使うことなくここまでの盤面を作り上げたのだ。それは遊真がこれまで体験したデュエルの中で1度もなかった事であり、それが未知への恐怖と感動という名の興奮に繋がっていたのだ。

 

 しかし、そんな遊真の気持ちを知ってか知らずか氷月はその動きをまだ残していた。

 

「さて、僕は手札から装備魔法【フュージョン・ウェポン】を【ダーク・ブライトマン】に装備させる」

 

 ダークブライトマンの右手に赤と黒の禍々しい色に怪物の爪を模したような装飾が施された砲筒が装備され、その砲筒に侵食されたかのようにダークブライトマンの右腕が同様に赤黒く染まる。

 

「【フュージョン・ウェポン】はレベル6以下の融合モンスターにのみ装備可能な装備魔法……制限はちょっと重いけど、その代わりにその力は中々でね」

「【フュージョン・ウェポン】を装備したモンスターの攻撃力、守備力は1500ポイントアップする!」

 

 

【E・HERO ダーク・ブライトマン】

ATK2000 DEF1000 → ATK3500 DEF2500

 

 

「攻撃力3500!?」

「言っただろう?本気で行くよって……僕はメインフェイズを終了させてバトルフェイズに入る!」

 

 氷月の宣言と共に彼のHERO達の威圧感が更に増した。

その威圧感を前に遊真は思わずたじろぎそうにになる……まるでモンスターに魂が宿っているかのようなリアルさ、ソリッドヴィジョンの域を軽く越えている気がする。

 

 しかし、そんなことはいま考えるべきではない。この攻撃を凌がなければまず自分に勝機は無い。

どれか一撃でもダイレクトアタックを食らえばほぼゲームエンド。つまり無傷でこのバトルフェイズを乗り切らなければいけないのだ。

 

「僕は【ダーク・ブライトマン】で【輝神鳥ヴェーヌ】に攻撃!」

「わざわざ攻撃力3500のモンスターで守備表示のモンスターに攻撃!?」

「甘い!【ダーク・ブライトマン】は守備表示モンスターを攻撃した時に、攻撃力が上回っていればその分だけ相手に貫通ダメージをあたえる!」

「何だって!?」

 

 

【E・HERO ダーク・ブライトマン】

 ATK3500

VS

【輝神鳥ヴェーヌ】

 DEF1000

 

 

「撃ち砕け!【ダーク・ブライトマン】!」

 

『ハッハァー!』

 

 ダークブライトマンが自身に装備されたフュージョン・ウェポンから極太の光線を放つ。

それをヴェーヌは光のカーテンで守るが防戦空しく光線はカーテンを突き破りヴェーヌの胴体を貫通し、そのまま遊真に直撃する。

 

「くッ!!」

 

 

遊真:LP2800 → 300

 

 

「まだだ!俺のフィールドのモンスターが破壊された時、墓地の【妖醒龍ラルバウール】の効果を発動する!」

「【ラルバウール】?……そんなカードいったい何時の間に……まさかッ!?」

 

 氷月の脳内に前の自分のターンの光景が思い出される。その光景の中に1つ、今渦中の中にいるカードの出自を示す答えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

『まずは【ワンダー・ドライバー】でセットモンスターに攻撃!そしてこの時【サンライザー】の効果を発動!』

 

『何だって!?』

 

『【サンライザー】以外のHEROが攻撃をする時、フィールドのカードを1枚破壊する!()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 氷月のほんの少しだけ驚きが含まれた言葉を聞いて、得意気に遊真はその答え合わせをする。完璧な相手の隙を掻い潜った時のしてやったりといった表情で。

 

「そう、このカードは氷月さんの【サンライザー】の効果で破壊され、墓地に送られていたカード!!」

「そして【ラルバウール】は1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが破壊された時、自身を特殊召喚できる!来い!【ラルバウール】!!」

 

 ヴェーヌが光線に撃ち抜かれ爆散したフォールドに空いた時空の穴から、遊真の元へ灰色の小さな龍が現れる。

 

『ガウッ!』

 

 

【妖醒龍ラルバウール】

闇属性 ☆1 効果/ドラゴン族 ATK0 DEF0

 

 

 

「そして!手札の【混沌の使者】を捨て、特殊召喚に成功したラルバウールの効果を発動!互いのフィールドのモンスターから1体選び、そのモンスターと同じく属性と種族のモンスター1体をデッキから手札に加える!」

 

(……と言うことは遊真君のデッキで考えればここで持ってくるのは確実にラルバウールと同じ属性と種族の【混沌帝龍ー終焉の使者】か)

 

 しかし、氷月のその予想はまたしても良い意味で裏切られる事となる。

 

「俺が選ぶのは……氷月さんのフィールドの【ダーク・ブライトマン】!!」

「何っ!【ラルバウール】じゃない!?」

 

 氷月の言葉に苦笑いしながらも遊真は答える。

 

「ただ攻撃力を高いのを出すだけじゃ勝てやしないですからね!……俺は【ダークブライトマン】と同じ闇属性、戦士族のモンスターを手札に加えます……俺が手札に加えるのは【ジャンク・シンクロン】!!」

 

 デッキから1つだけ頭を除かせたカードを引き抜き、確認する。そのカードが確かに自身が望んだ【ジャンク・シンクロン】だということを確認すると、それを手札に加える。

 

 

 次々と予想外の事で混乱した氷月だったが、直ぐ様その頭は通常の思考を取り戻し先のカード達が自分の勝利に障害となるカードか確認する。

その上で彼が出した答えは、否。

 いくら相手が小細工をしたところで、結局はこのターンで決着を付ければいいのだ。

 

 

「【ダーク・ブライトマン】は攻撃したダメージステップ終了時に守備表示になる」

「流石だね……だけど幾ら壁を用意したって無駄だよ!【ヘル・デバイザー】で【ラルバウール】に攻撃!!」

 

 

【X・HERO ヘル・デバイザー】

ATK1700

 VS

【妖醒龍ラルバウール】

DEF0

 

 

 ヘル・デバイザーの機械的な鎌が光り赤いオーラ発すると、そのオーラが巨大な鎌へと形を変えて主人を守ろうとするラルバウールの体を真っ二つに切り裂く。

 

「くッ!!……自身の効果で特殊召喚したラルバウールはフィールドから離れると除外される……っ!」

 

 あまりの衝撃に後ろに吹き飛ばされそうになるが、何とかギリギリの所で堪える。しかし、そんな遊真に構うことなく非情な宣言が会場に響く。

 

「次!【アブソルートZero】でダイレクトアタック!」

 

 アブソルートZeroが再び右腕を氷の刃に変化させ、遊真を切りつけようと高く跳躍し上空から襲いかかる。

しかし、ただ黙って殺られるわけにも行かない。

 

「まだだ!俺は墓地の【ネクロ・ガードナー】の効果を発動!このカードを除外して【アブソルートZero】の攻撃を無効化する!」

 

 再度ネクロ・ガードナーの幻影が遊真とアブソルートZeroの間に立ち塞がり、主人である遊真をアブソルートZeroの一閃から守る。

 

「防がれたか……だけどこれでもう君を守る盾は無い!トドメだ!【Great TORNADO】でダイレクトアタック!!」

 

「【Great TORNADO】の攻撃宣言時!俺は罠カード【戦線復帰】を発動!」

 

「何ッ!?」

 

 遊真のフィールドに伏せられていたカードの内1枚が持ち上がりその姿を現す。

 

「自分の墓地に存在するモンスター1体を守備表示で特殊召喚する!戻ってこい!【聖戦士カオス・ソルジャー】!!」

 

 カードのイラストから聖戦士が飛び出し、再びその姿をフィールドに現す。

そして遊真は力強く吠える。

 

「特殊召喚に成功した【聖戦士カオス・ソルジャー】の効果を発動!除外されている【ラルバウール】を墓地に戻して【Great TORNADO】を除外する!!」

 

『ハアァァッ!』

 

 聖戦士が己の剣から放った剣閃がGreat TORNADOが纏う風ごと切り裂き、次元の彼方へと葬りさる。

 

「……僕はバトルフェイズを終了、そしてメインフェイズに移るよ」

 

 己の手札を改めて確認する氷月……その目はどこか惜しげな、確かな葛藤があることが見てとれた。

 暫くして氷月は1つ息を吐き、宣言を行う。

 

「……僕はカードを1枚伏せてターンエンドを宣言するよ」

「なら俺は、エンドフェイズ時に墓地の【混沌の使者】の効果を発動します」

 

 その言葉を聞いて先程までの威圧感はどこへ消えたのか、穏やかな笑みを浮かべた氷月はそれを許した。

 

「……何もないさ、好きにするといい」

「なら墓地の闇属性の【サクリボー】と光属性の【輝神鳥ヴェーヌ】を除外してこのカードを手札に加えます」

 

 

 

氷月:LP4600

手札 0枚

フィールド

 

モンスター

ヘル・デバイザー(EXB)

アブソルートZero(B)

ダーク・ブライトマン(C)

 

伏せ

フュージョン・ウェポン(C)

???(D)

 

 

 

●Turn5

 

 

(氷月さんのフィールドには伏せカードは無い。なら妨害はそこまで警戒しなくても良いとは思うが……ここで返さなきゃ確実に負ける……頼むぞ、俺のデッキ!)

 

「俺のターン、ドロー!」

「スタンバイからメインフェイズへ!」

 

 ドローしたカードを加えた4枚の手札を見る……今はまだ突破するのが難しい。なら次の可能性にかける。

 

「俺は手札から【アドバンス・ドロー】を発動!」

「自分フィールドの【聖戦士カオス・ソルジャー】をリリースして2枚ドローする!」

 

……この手札なら!

 

「俺は手札から【ジャンク・シンクロン】を通常召喚!」

 

 

【ジャンク・シンクロン】(C)

闇属性 ☆3 チューナー/戦士族 ATK1300 DEF500

 

 

「そして召喚に成功した【ジャンク・シンクロン】の効果で墓地の【ラルバウール】を効果を無効にして蘇生する!」

 

『ガウガウッ!』

 

 ジャンクシンクロンが胸に付いているツマミを回すと、フィールドに時空の穴が開き、そこからラルバウールが呼び出される。

 

「そして、墓地からモンスターを特殊召喚に成功した為、手札から【ドッペル・ウォリアー】を特殊召喚する!」

 

 

【ドッペル・ウォリアー】(B)

闇属性 ☆2 効果/戦士族 ATK800 DEF800

 

 

 黒い服に身を包み、ボウガンに似たような銃を持つエージェント風のモンスターがラルバウールに続き遊真のフィールドに参上する。

 

「チューナーとモンスターが……来るかい?」

 

 チューナーとモンスターが並ぶとデュエリストが行われる行動は総じて決まっている。

氷月の至極当たり前の質問に対して遊真は行動で返す。そう、自らの勝利を掴むために。

 

「ええ、勿論ですよ!俺はレベル1の【ラルバウール】とレベル2の【ドッペル・ウォリアー】にレベル3の【ジャンク・シンクロン】をチューニング!!」

 

 ジャンク・シンクロンが3つの光の輪へと変わり、上空へ跳躍したドッペル・ウォリアーと同じく飛翔したラルバウールを包み込み、一筋の光の道を作り出す。

 

「集いし仲間の魂が大地の鼓動を呼び覚ます!シンクロ召喚!」

「駆け抜けろ!【大地の騎士ガイアナイト】!」

 

 

【大地の騎士ガイアナイト】(C)

地属性 ☆6 シンクロ/戦士族 ATK2600 DEF800

 

 

 現れた光の道筋を導かれるようにして駆け抜けて現れたのは青と金の鎧に身を包んだ人馬一体の騎士。

 

「【ガイアナイト】……また珍しいのを出したね」

 

 そう、ガイアナイトは効果を持たない変わりに高い攻撃力を持つが、昨今では攻撃力よりも効果を優先することが増えてきており、その出番は少なくなっている。

そんなカードを呼び出した遊真の手はまだ止まることはなく、依然として動き続ける。

 

「そうかもしれません……だけど、コイツじゃなきゃ駄目なんですよ!」

「まずはシンクロ素材として墓地に送られた【ドッペル・ウォリアー】の効果を発動!フィールドに2体の《ドッペル・トークン》を特殊召喚します!」

 

 霧散した光の道筋の欠片が再度集まり、2体の小さな兵隊へと姿を変え、フィールドに現れる。

 

 

【ドッペル・トークン】(A)(E)

闇属性 ☆1 戦士族 ATK400 DEF400

 

 

「そして俺はライフを半分払い【大地の騎士ガイアナイト】を対象にして手札から【亡龍の旋律デストルドー】の効果を発動!」

 

遊真:LP300 → 150

 

「このカードを特殊召喚し、【ガイアナイト】のレベルだけこのカードのレベルを下げる」

 

 

【亡龍の旋律デストルドー】(D)

闇属性 ☆7→1 チューナー/ドラゴン族 ATK1000 DEF3000

 

「そして、レベル6の【ガイアナイト】にレベル1となった【デストルドー】をチューニング!」

 

 デストルドーがジャンク・シンクロンと同様に1つの光の輪へと変わりガイアナイトを包み込み、光の道筋へと変わる。

 

「亡き龍の旋律が大地の力を得て、亡骸を束ねる悪魔へと生まれ変わる!シンクロ召喚!」

「現れろ【スクラップ・デスデーモン】!!」

 

 

【スクラップ・デスデーモン】(C)

地属性 ☆7 シンクロ/悪魔族 ATK2700 DEF1800

 

 

 再度作られた光の道筋から現れたのは、鋼の肉体で出来た巨大な悪魔。その赤い眼光は主人に敵対する氷月とそのモンスターを捉えて離さない。

 

「自身の効果で特殊召喚した【デストルドー】はフィールドから離れた場合、デッキの1番下に戻る」

 

 墓地からデストルドーのカードが呼び出され、それを手にした遊真はディスクにセットされたデッキの一番下にデストルドーを入れる。

 スクラップ・デスデーモンを見た氷月は相も変わらず穏やかな表情で口を開く。

 

「【スクラップ・デスデーモン】。素材指定の無いレベル7シンクロモンスターの中で最高クラスの攻撃力を持つカード……だけど、それじゃあ僕のフィールドは突破できないよ」

「ええ……それは分かってますよ。ただ、越えれない壁があるならそれを越えていけば良い!!」

 

 遊真は最後の伏せていたカードを発動させる……それは彼がこのデュエルにおいて勝利をもぎ取るために必要なカード。

 

「俺は伏せていた通常魔法【ミラクルシンクロフュージョン】を発動!」

「ここに来て融合だと!?」

「融合素材となるモンスターをフィールドまたは墓地から除外して、シンクロモンスターを素材とする融合モンスターを融合召喚する……俺が除外するのは墓地の【大地の騎士ガイアナイト】とフィールドの【スクラップ・デスデーモン】!!」

 

 遊真が発動した魔法カードが産み出した赤と碧の渦にデスデーモンとガイアナイトが飲み込まれていき、渦はその密度を濃くし、目映い光を放つ。

 その光の中に眠る者を呼び起こす為に遊真は叫ぶ。

 

 

 

 

 

「大地の力が交わる時、地天の力が奇跡を呼ぶ!シンクロ融合召喚!

 

「天地を駆け抜け全てを越えろッ!【地天の騎士ガイアドレイク】!!」

 

『オオオオオッ!!』

 

 

【地天の騎士ガイアドレイク】

地属性 ☆10 融合/獣戦士族 ATK3500 DEF2800

 

 

 

 

 

 

 遊真の呼び掛けに答えるように光の中から白き翼を生やした人馬一体のモンスターが現れる。

 その人の体が持つ両腕には金の螺旋が入った2振りの黒槍が握られていた。

 

「【ガイアドレイク】…確かに強力なモンスターだ、だけどそれじゃあ僕のライフは削ることはできないよ!」

「いいえ!削りきって見せます!俺はフィールドの【ドッペル・トークン】をリリースして手札から通常魔法【ミニマム・ガッツ】を発動!」

「何ッ!?」

 

 リリースされたドッペル・トークンが2つに分裂し、発動した魔法カードのように赤と青の光弾へと変わる。

 

「相手フィールドのモンスターを1体選択し、そのモンスターの攻撃力をこのターンの終わりまで0にする!」

「俺が選択するのは【アブソルートZero】!!」

 

 アブソルートZeroへ向けて2色の光弾は迷うことなく一直線に向かい、見事命中する。命中したアブソルートZeroは膝をついて倒れこみ、動かなくなる。

 

「俺はメインフェイズを終了してバトルフェイズへ!」

「【地天の騎士ガイアドレイク】で【アブソルートZero】へ攻撃!!」

 

 

【地天の騎士ガイアドレイク】

ATK3500

 VS

【E・HEROアブソルートZero】

ATK0

 

 

 ガイアドレイクの黒槍が膝を付き、倒れるアブソルートZeroの体を貫き絶対零度の体を爆散させる。

 

氷月:LP4600 → 1100

 

「【アブソルートZero】の効果が発動するけど、【ガイアドレイク】はモンスター効果では破壊されない」

「そして……【ミニマム・ガッツ】の効果で攻撃力が0になっているモンスターを戦闘破壊した場合……」

 

淡々と効果を述べていく遊真。

その言葉の続きを話そうとした時、清々しい笑顔で氷月が口を開く。

 

「戦闘で破壊した場合、破壊したモンスターの『元々の攻撃力分のダメージを相手に与える』……だよね」

「……はい」

 

氷月:LP1100 → 0

 

「フッ……僕の敗けだよ」

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「有り難う、面白いデュエルだったよ」

 

 氷月さんとのデュエルに勝利した後、しっかりと握手を交わした時にそう彼から言われた。

 その言葉には嘘なんか混じっていない心からの称賛の言葉だったと俺は思っている……だから、普段言われることの無い言葉に頬が熱くなるのが分かる。

 

「い、いやぁ……そんなこと無いですよ!それを言うなら氷月さんのデッキだって充分凄かったですよ!」

「そうかい?それは嬉しいなぁ……」

 

 照れる俺とは違って氷月さんは嬉しそうにそう言いながら自分の頭をワシャワシャとかく。

 それから少しの間互いに「そっちのデッキの方が凄いだの」と誉め合っていたが、ふと思い出したかのように氷月さんが改まった表情で「そうだ」と口を開く。

 

「そろそろ次の人が入ってくるから、遊真は筆記試験を受けた部屋に戻ってくれるかな?」

「あ、はい!……それで試験の方は……」

「実技は試験官に勝ったんだから文句なしの合格。あとは筆記試験の点数次第だね」

 

 氷月さんのその言葉に先程まで上がっていた口角がヒクヒクと痙攣を始めた。

……正直、筆記試験の方は頑張りはしたが出来ている気がしないのだ。その事を氷月さんに伝えるとゲラゲラと笑いながら答えてくれた。

 

「大丈夫、試験官の僕がこんなことを言ってはいけないんだろうけど、君なら……遊真君ならきっと合格できるはずさ」

「絶対とは言わないんですね……」

「そりゃあ勿論さ、デュエルと同じで絶対なんてものは無いんだよ」

 

 そう言うと氷月さんは「もう時間が来るから」と退出を急かしてきたので、慌てて室内から外へ出た。

外へ出ると、そこには緊張した面持ちの龍風さんが居たのでエールを送っておく。

 

 そうして俺は筆記試験の試験会場へと戻り、試験官の人から帰っても良いと言われたので、船に乗って竜堂、桐久と共に自宅への帰路へと付いたのだった。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……流石に疲れたね」

 

 そう呟きながら誰も居なくなった試験会場で背伸びをする氷月。

 今日1日を通して色んな相手とデュエルをしたが、その中でも印象に残ったのはごく少数だ。

 

「遊真君か……」

 

 今自分が呟いた彼もそのうちの一人。最後まで諦めないその姿勢に、カードの効果を上手く使おうとする思考の柔軟さ……そして何よりも。

 

「まさか本気の攻めを防がれるとはね」

「……ご冗談を」

 

 氷月の言葉に続きながら試験会場に現れたのは、ここネオ・デュエルアカデミアの制服を来た青髪の女子生徒。

 その姿を視界に捉えた氷月はため息を付きながら、先の言葉の訂正を行う。

 

「冗談なんかじゃない、あれが正真正銘、僕の本気さ」

「それは『今の貴方』の本気でしょう?『本来の貴方』の本気ではないはず」

「そんなこと無いさ、買い被りすぎだよ」

 

 二人の間にしばらくの間沈黙が流れる。張り積めた空気、それを動かしたのはこの状況を作り出した女子生徒だった。

 

「……まぁそれでも今回の試験官として充分な強さを持っているので流石は『英雄使い』の弟子と言ったところでしょうか?」

「……やめてくれ、僕はもうあの人の弟子じゃない……弟子なんて名乗れる人間じゃないんだ」

 

 そう言うと氷月は「じゃあ僕は、試験官やめるから交代宜しく」と少女に告げ、何かから逃げるように試験会場から出ていく。

 再び静寂が訪れたそこに取り残された女子生徒は彼と同じようにため息を付きながら、手元の端末を起動させる。閲覧するのは今回の彼の戦績。

 

 通常試験官は同じ会場に複数人用意され、限界を迎える前に後続と交代し、休憩を挟むことができる。

 1人が連続で相手する平均は約10~20人とかなりバラけているが、それは受験生のデッキにも左右されるので仕方の無い事だ。

 まぁ、それは置いておくとして、今回の彼は自分の番が回ってから後続と交代するまでにデュエルをした人数は250人越え。

 

 詳細に戦績を見ると先のデュエルを含め『256戦237勝19敗』とかなりイカれていると分かるだろう。

 それもあのヴァイオンやファリスなどの初動カードのみならずディアボリックガイなどの展開に使用するカードを抜いた状態でだ。

 

「『絶対零度』……ランキングから堕ちたとしても、その強さは健在という訳ですか」

 

 彼が何の理由で抜けたのかは分からない……だが、彼が再び表舞台に舞い戻ればきっとアカデミアは歓喜に包まれることだろう。

 自身が彼に戻ってきてほしい理由はそれだけではないが、まずはそこだ。

 

 

 彼を再び表舞台に呼び戻す……そのためには。

 

「夢宮 遊真……」

 

 今日のデュエルで彼が唯一本気を出した相手。

つまり彼が氷月に何かしらの強い影響を与えたと言うこと……ならば、彼もまた、気にかけておくべきだろう。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 延々と続くかのように思える暗闇の廊下をコツコツと音を立てながら歩む1人の影。

 

「ええ……はい」

 

 黒のフード付きのコートに黒のズボン。

 そして真っ白なのっぺりとした面を顔に着けた異様な存在は上機嫌そうに耳元に当てた携帯に語りかけている。

 

「─────」

「ええ、彼らは無事合格していましたよ」

 

 その報告を聞いて携帯から漏れる声が消える。

 そして暫くすると再びその電話の主は口を開き始めたのだろう、再び携帯から通話している当人にしか聞き取る事の出来ない小さな声が漏れでる。

 

「─────」

「はい、勿論場所の目星は付けております……それにこちらには既に目もある程度配置しているので、近いうち『棺』の該当者も発見できるのではないかと」

 

 すると、電話の主の声は喜びでなのか声量が大きくなり近くであれば少しだけ聞き取れるほどになる。

 

「──が──願───を───」

「……当たり前でしょう、貴方様を裏切ることなどありはしません……それだけは私の名に誓いましょう」

 

 異様な存在のその言葉を聞き、満足したのか電話は切れ、辺りには暗闇同様静寂しか残らない。

 

「さて……いよいよですね」

 

 影はそう1人呟く。

 

「貴方様の為に全てを捧げる準備を始めるとしましょう」

 

 独白は終わり、その姿は歩みをやめず。

 やがて廊下の暗闇へ同化するように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

止まっていた歯車は確かに動き始めた。

それが回りきった先に待つのが何かは不明のまま。

ただ確実に分かることは、その歯車を止めることこそがこの世界を保つための手段であること。

 

だが、まだ彼らはそれに気づくことはない。いや、気づくことが出来ない。

 

 

──世界の崩壊はまだ始まったばかりなのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も最後まで呼んで頂き本当に有り難う御座います。

ガイアドレイクは私の好きなカードだったので今回出させていただきました。
未だに主人公の遊真君のデッキをどうするか若干迷走中ですが、また本格的なデュエルが始まる前にどうにかしたいです。


ではまた、次のお話で。
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