リアルは忙しく若干遅れましたが、どうぞご覧ください!
それでは、Ready GO!
王宮内の訓練場、そこで金属同士がぶつかり合う音が響いていた。
昼間など出入りする者が多い時間帯ならば不思議に思う事はないだろうが、時間は早朝……陽が昇ってまだ間もないと言うのに、1組の男女が得物を手にして対峙していた。
「……ふぅ」
片や木場タケル、その手に持つ得物はメロンディフェンダー。
「……はぁ」
片や八重樫雫、その手に握る得物はサーベルの様な柄のついた刀状のアーティファクト。
互いに一つ息を吐き呼吸を整え、暫し静寂が訪れる。
そして──
「「────!」」
同時に前進し、互いの距離を詰める。
「はああ!!」
雫が上段から刀を振るい──
「がぁ!!」
──それをタケルがメロンディフェンダーで受け止める。
「「……っ」」
そのままギリギリと互いの得物を押し付け合う。このままジリ貧かと思われたが、すぐにその均衡は破られた。
「──脇がガラ空きよ?」
──ドスッ!
「オグゥ!?」
中々の力で死角から鞘で脇腹を突かれたタケルは奇妙な悲鳴を上げて蹲った。
「だ、大丈夫?」
その様子に、攻撃を加えた雫も心配そうに覗き込む。
「ええトコ入ったぁ……ちょうど力緩めた所にモロ……ああ、フーディーニってこんな気持ちで死んだんやろか……」
目尻に涙を浮かべながらも割と余裕そうなタケルを見て、「ホッ……」と安堵の息を漏らす雫。
「今のが八重樫流刀術の技の1つ『無明打ち』よ。さっきみたいな鍔迫り合いの状態で死角から鞘で攻撃する、まあ不意打ちみたいなものね」
「不意打ちってか騙し討ちの気もするけど……はぁ……やっぱり盾一本やと限界あるなぁ」
「そうね。投擲武器として使うにしても、戻ってくるまで丸腰状態じゃ……」
「ええ標的やろな。特にトラウムソルジャー戦みたいな乱戦状態やとお荷物もええとこや。はぁ……せめてもうチョイ筋力と体力があればなぁ……」
そうぼやくとステータスプレートを取り出す。
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木場タケル 17歳 男 レベル:15
天職:創作者
筋力:110
体力:120
耐性:140
敏捷:150
魔力:140
魔耐:140
技能:思考具現化[+思考速度上昇][+体術模倣]・火属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+連続発動]・雷属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+連続発動]・複合魔法・属性耐性[+火属性効果上昇][+雷属性効果上昇]・気配感知[+熱源探知]・言語理解
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「この数日で迷宮潜る前よりもレベルは3倍になったけど……どうもステータスの伸びが悪くなってるなぁ……特に魔力が」
「派生技能は増えてきてるんだけどね……特に体術模倣なんて最初に披露された時はびっくりしたわよ。いきなり私の動きをほぼ完璧に真似てくるんだもの」
「言うても見た側から模倣できる訳ではないけどな……今の所はじっくり見て脳に焼き付けへんと……後、あくまで模倣は模倣。自分の体が追いつかへんかったら半端になって逆に危険やし」
「でも、動体視力は結構あるのね?眼球が私の攻撃をしっかり捉えているのが見えたわ。まあ、体が追いついていなかった様だけど……」
雫の言う通りタケルは動体視力が人並み以上には高い。が、その反面運動神経があまり高いとは言えず、見えても反応出来ないのが難点であると当人も認識している。
「体育でやる野球なんかは無理なく当てれるんやけどなぁ。素早い攻撃やとやっぱり体が追いつかん」
「……まあ、焦っても仕方ないわ。自分のペースでやるのが1番なんでしょう?」
「まあな……そしたら行くわ」
「ええ、行ってらっしゃい」
ハジメが消息を絶ち、タケルが雫に本音を吐き出してから早5日。
あれ以来、タケルは早朝に1人で訓練していると言う雫の元に出向いて共に模擬戦などをしてレベル上げを図っている。
事の発端としては、件の翌日にタケルが何か言いたげな雰囲気を出しているのを見かねた雫が声をかけた事だ。
曰く、「あれだけぶち撒けたんだから今更でしょ?」とのことらしい。
それでも多少渋っていたが、結局はこの早朝訓練への参加を打診するに至った。
「今はそれ程でもないけど、あの時は顔を真っ赤にしてたわよねぇ……ふふっ、良い傾向って事なのかしらね?」
タケルが去った後、素振りをしながら当時を振り返り感慨にふける雫。
その顔はまるで子の成長を喜ぶ母の様に、優しく綻んでいた。
◇
「う〜ん……やっぱ今のままやと火力不足やんなぁ……」
数刻空いて工房。そこでは相変わらず眉間にシワを寄せて悩むタケルの姿があった。
「このまま魔力の伸びが悪いと、周りとの差がドンドン広がって終いには完全に足手纏いや……それだけはぜっっったい嫌やし!」
それが他人であれ自分であれ足手纏いを嫌うタケルにとっては、今の状態は芳しくはないらしい。
だからと言って闇雲に武器を作っても何も変わらないのはわかっているのか、完全に手詰まりの状態らしく頭を抱えて唸っている。
「──あ〜、アカン頭痛なってきた……一回外の空気吸おう……」
それなりの時間頭を使っていた反動か頭痛を覚えて外に出る。
すると血相変えて雫が走ってくるのが見えた。
「あ!木場君ちょうど良かったわ!」
「何や?また誰か何かやらかしたか?」
探し他人を見つけた様に駆け寄ってくる。何事かとタケルが問うと、微妙そうに顔を歪める雫。
「う、う〜ん?やらかしたと言うか……やらかした事についてと言うか?」
「はい?」
「兎に角!今すぐ訓練場に行くわよ!貴方にも……いいえ、貴方が1番関係のある事なんだから!」
「え、あ、はい……」
矢継ぎ早に捲し立てられ軽く放心しながらも、先を急ぐ雫の背中を追う。
(え?俺、なんかしたっけか?)
そんな不安を抱き、モヤモヤしながらも訓練場に到着する。そこには殆どの生徒が集まっており、何人かはタケル達が入ってくるのを認識していたが、殆どはある1名の生徒に視線を落としていた。
「それで?ようやく部屋から出てきたと思えば、何の用だよ檜山」
その中の1人『
直後、檜山は膝を付き勢い良く額を床に擦り付ける。その様子に一同が唖然としていると、その状態のまま絞り出す様に言葉を紡ぐ。
「皆すまねぇ!!俺が……俺があの時トラップに引っかかったせいで……こんな事に!!本当にすまねえ!」
必死に謝罪の弁を述べる檜山へ向けられる眼差しは冷ややかな物だった。やはりあの状況を招いた事は許せないのだろう。
だが、皆それ以上は気まずそうに顔を逸らすだけで何も追及しない。
「……閉明塞聡、てか?」
「え?」
その様子にボソッとタケルが呟くと、隣りにいた雫が反応した。
「現実から目を背けてる……これ以上アイツを追及して、あの事にも触れられたらどうするかってな」
「あの事?」
「
「っ……」
それを聞いて雫も合点がいった。確かにあの時ハジメに当たった火球が誰の放ったモノかは特定できておらず、ここ数日皆その話を持ち出そうとはしていなかった。
「怖いんでしょうね……もし自分だったらって思うと……」
「どっちみちこれ以上の追及はされへんやろうし、多分アイツも狙ってこの場で謝罪してるまであるやろうなぁ」
「……でしょうね」
と、ボソボソと会話している2人を他所に、光輝が檜山へと近づいていく。
そしていまだに膝をついた檜山の肩に手を置くと、優しげな声で語りかけた。
「檜山、よく勇気を出して言ってくれたな。ありがとう」
「天之河……」
「犯してしまった罪は消えない……だが、これからしっかり償って行こう!大丈夫、俺も一緒に頑張るから。それが、死んだ南雲への弔いになる!」
「ああ……悪りぃ……」
そう呟くと、再び俯いてしまう檜山。
きっと光輝の言葉で感動しているのだろうと、学のない者なら思うのだろうが……
(ヒ、ヒヒヒヒ……上手く行ったぜ!)
その顔は醜く歪んでいた。その事からも分かる様に檜山は1ミリも反省などしていない。
あの日、迷宮から帰還した日に檜山は、とある人物と交渉した。その人物はハジメに火球を故意に当てたのが檜山であると認知しており、それをネタに協力を要請してきたのだ……自らの目的を果たす為に。
そして檜山もまた、己の野望の為、その要請を受けたのであった。
(アイツの言うとおり、この場での謝罪は有効みたいだなぁ!勇者様様だぜ!)
その人物は手始めに檜山へクラスメイトに謝罪するよう命令した。
勿論初めは渋ったが、目的遂行の為に立場を一定にしなければいかず、最後は苦い顔をしながら承諾した。が、ただ謝るのではなくこの状況で謝罪させたのは理由がある。
光輝だ。彼のカリスマで檜山の罪への追及を抑え、元にとまではいかなくとも比較的穏便に済むよう取り図った。
要するに光輝は2人に体よく利用されたのである。あとはこのまま徐々に計画を進めていくだけ……檜山がそう思いほくそ笑んだ時──
「……で?」
そんな声が聞こえた。そこまで大きい声でもなかったが、全員の耳に届いたらしいその声のする方を向くと……腕組みをしてこちらを見据えるタケルがいた。
そのまま汚物でも見るような目で前に出ると再び声を発するタケル。
「それで終わり?」
「それで終わりって……一体何が言いたいんだ木場?」
要領を得ないタケルの問いに光輝が疑問を投げかける。
「まさかと思うけどこれでチャラとか言わんよな?一緒に迷宮攻略したらそれでええんか?コイツの所為でどんだけの人間が危険に晒されたと思ってんねん。コイツの所為で人1人消息絶ってんねんぞ。最低でも豚箱にぶち込んでくれんと納得いかへんのう」
「ぶ、豚箱だと!?お前……大事な仲間になんて事を言うんだ!」
タケルの発言に光輝が食ってかかるも、どこ吹く風と言うようにタケルは続けた。
「“大事な仲間”?俺の目には地べたに這いつくばった生ゴミしか映ってへんけど?」
「な!?貴様それでも人間か!この間の時と言い、どうしてそんな事が平然と言えるんだ!」
「事実を言うただけや。コイツは罪を犯し、未だにそれに対する裁きを受けてない。それ相応に処分を下すのが道理ってモンやろ?あん時もしたやろこの話、鶏かお前は」
「だからと言って牢屋に入れるだなんて残酷すぎる!何をされるかわかったモンじゃない!」
「ええやん別に。寧ろ神の使徒って立場からしても殺させる事はない分全然マシやろ?」
「例え殺されなかろうが、受けた仕打ちに対する恐怖は簡単に拭える物じゃない!俺はさせないぞ!そんな事しよう物なら、俺が絶対に止めてみせる!俺は絶対に仲間を見捨てるような事はしない!」
高らかに宣言する光輝。それを見て場の空気が光輝一色に染まりかけていたが、それでもタケルは淡々と言葉を紡いだ。
「そうやってお前が放った言葉が、どれだけ周りに影響を及ぼすか考えた事あるか?」
「……何?」
「これも前言うたけどなぁ、お前がそうやって何の根拠もなく言うた言葉でも、“天之河光輝が宣言した”ってだけで箔がつくんや。現に戦争参加の表明をした時も、殆どの連中にはお前がおるから大丈夫って、これまた根拠のない安心感が生まれた。今もあの生ゴミを許すような空気が生成されつつある」
「っ……い、一体何が言いたいんだ!」
タケルの発言に苛立ちを隠せない様子で食ってかかる光輝。その光輝に対し、タケルはトドメとばかりに言い放つ。
「そのちっこい脳味噌
「……は?」
突然何を言ってるだコイツは……とでも言いたげな顔の光輝を尻目に続けるタケル。
「言葉は時に、どんな刀よりもよう人の心を傷つける刃となり、どんな縄よりも人の心を縛り付ける。本人は何気なく放った言葉でも、相手にとってはそうとは限らん。お前のその無責任な言葉が、どれだけ周りの心を傷つけてるんか……考えるだけで頭痛なるわ」
「な、なんだと!?俺が皆を傷つけているとでも言いたいのか!?そんな事はない!俺はしっかり皆を引っ張っていけている!」
「皆そうだろう!?」っと周囲に目を向けるも、タケルの言葉に思うところがあるのか皆一様に目を背ける。その様子に内心焦りを抱く光輝。
すると……徐に雫が前に出てきた。
「雫……」
安堵したように顔を綻ばせる光輝。きっと雫なら、付き合いの長い彼女ならば賛同してくれる……そう思ったのもつかの束の間。
次の雫の言葉で再び凍りつくこととなった。
「私も木場君に賛成。然るべき処分を受けるべきだわ」
「な!?何を言ってるんだ雫!?」
訳がわからないと言うように光輝が雫を問いただす。
「別におかしな事は言ってないでしょう?木場君が言ったように罪を犯したのなら当然の処置よ」
「そ、そんな……」
光輝は絶句した。余程雫がタケルに賛同したのが理解できないようだ。
「わ、私も!」
また別の声が上がる。発したのは
“投術師”の天職を持つ切れ長の目が特徴の勝気な女子生徒であり、迷宮においてトラウムソルジャーに襲われていた所をタケルに助けられた人物である。
「その……迷宮では助けてくれて、ありがと。だからって訳じゃないけど!私も木場の意見に賛成する!」
「……ん」
礼を述べられた事や賛同してもらえた事に、こそばゆい物を感じながら短く返事をするタケル。
「光輝」
「……龍太郎」
光輝にとって最後に砦とも言える龍太郎。彼ならばと期待を抱くも、当の本人はガリガリと後頭部を掻いて難しい顔をした。
「細けぇ事ぁわからねぇけどよ、男ならしっかりケジメは付けた方がいいと思う」
「り、龍太郎?」
「……悪りぃ。今回ばかりは、お前に賛成はできねえよ」
そう言いタケルを取り囲む輪に加わる龍太郎を見て、いよいよ信じられない物を見る目を向ける光輝。
それが引き金になったのか、檜山を許せない気持ちが元からあった生徒達は、次々とタケルに賛同して行った。残る生徒もオロオロと狼狽るだけで、別段光輝を擁護する者もいなかった。
「何で…何でなんだ皆!どうして俺より木場を信用するんだ!そんな不真面目な奴に!」
遂には余裕もなく吐き捨てる光輝に、雫が物申した。
「違うわよ」
「え?」
「木場君だからって訳じゃないわ。元々檜山君への処遇に疑問を覚えていた人達が、こうして集まっただけ。そのきっかけとなったのが偶々木場君だっただけよ」
「っ……くっ……!」
苦虫を噛み潰したように表情を歪ませる光輝。そして成り行きを見守っていたのか、メルドが訓練場に入って来るとすっかり蚊帳の外に追いやられていた檜山に告げる。
「大介、お前は地下牢に収容させてもらうぞ」
「……え?」
呆然とする檜山だが、すぐに脂汗をかき動揺する。
「ま、待って下さいメルドさん!檜山は充分反省しています!ですからどうか!」
往生際悪く光輝が食い下がるも、毅然とした態度でメルドがそれを制した。
「駄目だ。俺としても、今回の大介の失態をこのまま見過ごす訳にはいかん」
「なら!俺が直接掛け合っt「アホか」っ!何だと!?」
「お前はこの状況が分からんのか?クラスの殆どはお前の意見に賛同してへんねん。お前1人が掛け合ったところでどうこう出来るかい」
「……っ」
そう言われクラスメイトの顔を見渡すも、タケルの言うように肯定的な視線は感じ取れなかった。それにより、光輝は完全に押し黙ってしまう。
「そう言う事だ。ほら大介、行くぞ!」
メルドは話は終わったとばかりに檜山を連行する。流石にこの展開は予想していなかったのか抵抗を試みる檜山だが、当身を喰らわされ一瞬で意識を刈り取られ、そのまま担がれて連れて行かれてしまった。
「木場君」
「ん?」
呼ばれてそちらを見ると、雫が優しい笑顔を向けており、一言呟いた。
「お疲れ様」
「……ん」
労いの言葉をかけられ、再び短く返事をするタケル。
その様子を忌々しげに見る光輝だが、居た堪れなくなったのか足早に訓練場を跡にし、そのまま戻っては来なかった。
いかがでしたか?
まあ檜山は暫くは豚箱行きですね。タケル1人じゃあ恐らくはこうは行かなかったでしょう。単に雫がいてくれたから、こうして物申したりできたし、今回の結果を生み出せたと考えてます。
いやはやどうしようか考えて考えて結果この形に収まりました…
では長々と語るのもアレなので
また次回、チャオ〜