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それでは第2話、Ready GO!(金尾ボイス)
光が収まり、残像を振り払うと辺りを見渡してみる。
まず目に入ったのは巨大な壁画だった。神々しい迄の金髪をたなびかせた人物と、それを取り囲むように草木や動物が描かれている。
まるで金髪の人物を崇拝するかのような絵は、目を見張るほど美しいはずなのに、どこか薄ら寒さを感じた。
「タケル!」
ふと呼ばれて壁画から目を離し振り返ると、ハジメが目前まで迫っていた。どうやらタケルの安否を確認しに来たようだ。
周囲を見ればクラスメイト達や愛子先生もおり、皆困惑しているようだ。
「これは……あん時教室におった人間が全員おるっちゅうことか?」
「みたいだね。それにしても、ここは一体……それにこの絵も……なんか、ちょっと怖いね。」
どうやらハジメもタケルと同じ感想を壁画に抱いたらしい。タケルも同意する。
「まあそこら辺の話は、今俺らを取り囲んどる此奴らがしてくれるやろうなぁ。」
見れば、自分含むクラスメイト達を取り囲む複数の人影があった。
皆自分達に対し祈るように跪き頭を垂れているというどこか不気味な光景。
全員が同じ白地と金の刺繍の入った服を着ており、その中から、ひときわ豪華で煌びやかな装いの老人が前に出てこう言った。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ。」
落ち着いた声に優しげな表情を浮かべ自己紹介を始めるイシュタルと名乗る老人。
だがタケルとハジメには、その笑顔にはどこか裏があるように思えてならなかった。
◇
その後、一行は1つの部屋に案内された。おそらく晩餐会等でも開くのであろう煌びやかな装飾が至る所に施されており、10メートルはあろうかという机が数台並べられていた。
タケル達は其処に座らされ、話を聴く態勢を作る。
尚、困惑していた生徒達は光輝の鶴の一声で押し黙った。そのカリスマには本職教師も涙目である。
そんな光輝達は上座に近い席に座っており、それに続くように仲の良いモノ達が並んで座る。タケルとハジメは最後尾の席に腰を下ろすと、示し合わせたかのようにメイドがカートを押してやってくる。
そう、メイドだ。
肥えたオバサンではなく総じてレベルの高い綺麗な生メイドに、一瞬にして男子達の目が奪われてしまう。そして、そんな欲望に忠実な男子を女子達は一撃必殺の絶対零度並みの形相で見る。
ハジメも例に漏れず凝視してしまうが、突如寒気を感じ前を見ると……笑顔なのに全く目が笑っていない香織が目に入り、思わず「ヒェッ……」と声を漏らす。
タケルはというと、自身のそばに来た爆乳メイドをガン無視し、腕を胸の前で組んだ状態で目を伏せる。やはりこう言った類いには興味を示さないのか──
──と思いきや、去り際にチラッとその揺れる双丘を目に焼き付ける。障害者であれど男子高校生……エロの前ではやはり無力のようだ。
そんなこんなで、男子の形見が少々狭くなった後、イシュタルが口を開く。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され。」
そう言い、一行が呼ばれた事に対する説明を始める。要約すると──
1、トータスには人間族・魔人族・亜人族の3つの種族がおり、亜人族は人間族の愛玩道具……いわゆる奴隷として愛でられ、人間族と魔人族は古の時代から争いを繰り返している。
2、力で魔人族に劣る分数で勝負していたが、魔族が魔物を使役し始めたことで数の優勢がくずれる。
3、力で劣る人間族は徐々に押され始める。
4、一計を案じたイシュタル達が祈りを捧げると、エヒト神から神託がもたらされる。ざっくり言うと「異世界から勇者を召喚し、力をつけさせよ。」とのこと。
5、その言葉通り、地球から勇者とその一行を召喚し今に至る。
──ということらしい。
この話を聞いたタケルはというと……
(死ぬほどどうでもいい……)
ものすごく淡泊だった。元々他者への関心の薄いタケルにとって、この世界の事情など知ったことではないらしい。
そんなタケルの思考を知ってか知らずか、イシュタルは続ける。
「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい。」
イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。
イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。
「うわぁ……ジジイの頬染め顔とか誰徳やねん……キモチワルッ!」
「シッ!聞こえるよ!……まあ、概ね同感だけど。それより、どう思う?」
「どうって?」
「イシュタルさんの事、怪しくない?」
「……まあ、定石通り行くなら……疑ってかかった方が良いやろな。」
「……だね。」
ハジメはエヒト神という不確かな存在を疑いもなく信じるイシュタルに警戒を強める。
タケルはハジメほど感じ取れたわけではないが、普段そういう類いの作品を読んだりしている事もあり、最悪のパターンを想定する。
自閉症の特徴として「人の言葉の裏に隠された意味を理解できず、皮肉を字面通りに受け取りやすい」というのは以前例に挙げたが、タケルも例に漏れずその傾向にある。
小学校の頃などはあからさまな皮肉を字面通りに受け取りあまつさえお礼まで言ったそうだ。
現在はさすがにそこまでではないが、それでもそういう面は残っており、そこは洞察力の高いハジメがカバーしてくれている。本人もなるべく警戒するようにしているが、ちょうど良い塩梅が分からず警戒し過ぎて疑心暗鬼に陥る事があるため、ハジメのサポートは心から助かっていると言える。
そうして2人が周囲に聞こえない程度に話し合いをしていると、バンッ!!と勢いよく机をたたいて立ち上がる人がいた。
愛子先生だ。
「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
イシュタルの提案を真っ向から拒絶する愛子先生。大人として、教師として未来在る若者を守ろうと奮闘しているようだが悲しいかな……身長150センチ程の小さな体に加え顔立ちも幼く、生徒達からは「愛ちゃん先生」と呼ばれ親しまれ(遊ばれ?)ている彼女が怒っても、むしろ微笑ましい光景にしか映らず、生徒達もどこか和んでいる様子。
もっともタケルは「無意味なことを……」と、何処ぞのゲーム会社の社長の様な口調で冷めた反応をしており、ハジメも次にイシュタルから出るであろう言葉を予見し和むどころではないのだが……
そしてその予見通り、イシュタルから最悪の展開を助長する言葉が発せられ、生徒達は再び戦慄する。
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です。」
空間が時を刻むのを忘れてかのような静寂が訪れる。重苦しい空気の中愛子が再び疑問を投げかける。
「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」
そんな当然の疑問に、イシュタルは顔色一つ変えずに返す。
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
「そ、そんな……」
そう言い脱力した様子でヨロヨロと椅子に腰を落とす愛子。
それを見てようやく自分たちのおかれた現状を理解したのか、途端にざわつく生徒達。
「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」
「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」
「なんで、なんで、なんで……」
もはや阿鼻叫喚のパニック状態だ。だが無理もない……突如一方的に知らない世界に召喚されたと思えば帰れないと告げられたのだから。
ハジメとタケルはこの展開を予想していたとはいえ、やはり現実を突きつけられれば多少くるものがある。タケルに至っては、これから自分たちがしなければいけない事を想像して先程から動悸が収まらず、顔色も悪い。
そんな状況を打開しようとしたのか、光輝が勢いよく告げる。
「皆落ち着け!ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい。」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします。」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな。」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
そう高らかと告げる。爽やかかつ勇ましく宣言するその姿に生徒達は落ち着きを取り戻す。愛子は「えぇ!?」と驚愕していたが……
次いで光輝の幼なじみ達も名乗りを上げる。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」
「龍太郎……」
「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ。」
「雫……」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
熱血らしく友の呼び声に賛同する龍太郎、納得はしないが現状他に方法がないからと仕方なさそうに了承する雫、親友がやるならと不安に顔を曇らせながらも続く香織、思惑は違えどクラスの中心たる面子が参加を表明した事により、次々と賛同し始める生徒達。
「……最悪だ。」
「自称天才物理学者の真似して機上に振る舞おうとしてるとこ悪いけど、顔色悪いよ?大丈夫?」
「……とりあえず、あのキラキラネーム一回どついて良い?」
「ややこしくなるからやめて。」
「へい……で、どうする?」
「……今は下手に反対しない方が良いと思う。この世界の情報が皆無な上に、もし身一つで放り出されたら……」
「ああ……人生終了の未来が見えるな。はぁ……死ぬほどめんどくさいけど、やるしかないか。」
「うん……」
そう2人が話している間も、クラスの皆はヒートアップしている。愛子が涙目で必死に止めようとしてるが聞く者はいない。
その様子を満足げに見るイシュタル……だがハジメはタケルの心配をしながらも見逃さなかった。
生徒達がパニックになっているとき、まるで何故エヒト神に選ばれているというのに嘆いているのか……とでもいうような侮蔑的な視線、そして光輝の宣言を聞いたときの──いい人形を見つけたような不気味な笑顔を……
その事をタケルにも伝え、2人はイシュタルへの不信感を最大まで上げた上で今後の身の振り方を思案するのであった。
如何でしたでしょうか?
まだまだ感覚が掴めない今日この頃……
ところで、とある方の感想にも書いたのですが、実は私自身自閉症を持っており……それが判明したエピソードにこんな物があります。
-ー貴方は薄汚れてボロボロの服を着ています。そこへ1人の人物がやって来て君の服を見てこう言いました。
「それ、とっても良い服だね。」
--さて、貴方はこの言葉にどう言う感情を抱きますか?
そんな質問をされました。普通なら上記の台詞は完全に嫌味です。言葉尻に草生やしてるレベルです。
ですが、当時の私はこう答えたそうです。
--嬉しい。
それを母から聞いて、正直ゾッとしました。そんな嫌味すら私は字面通りに受け取っていたのか……と。
今では流石にそこまで露骨なのはわかるようになりましたが……それでも含みのある言い方をされるとわからない事はザラにあります。警戒はするようにしているのですが、やはり良い塩梅がわからない為疑心暗鬼になりそうです……
その点、タケルにはハジメという支えがいるのでまだ大丈夫ですがね。
それでは、皆さんもどうかご注意の程を……
また次回、チャオ〜